最終更新日:2015.03.27
写真1 与那国の龕(がん)
写真2 岩穴囲込墓
写真3 壁龕墓(へきがんぼ)
3月の学芸員講座で沖縄の葬墓制について取り上げたところ、多数の皆さまにご参加いただき、関心度の高さに非常に驚きました。「葬墓制」というとっつきにくい言葉ではありましたが、死者をどのように弔い葬るかという人類固有の習俗を紹介するため、葬法の種類や墓の形態等についてお話ししました。さらに、講座にご参加いただいた皆さまにアンケート調査を行い、葬墓制に対するお考えやイメージをお聞かせいただきました。この結果は、今年9月25日から開催する平成27年度博物館の特別展のなかで紹介したいと思います。
そこで、ここではその特別展の概要を少しご紹介いたします。
まず第一章では、世界の葬法について広く紹介し、その中で琉球列島で行われていた「風葬」という葬法が、世界のどのような地域で行われているのかみていきます。また、葬法と宗教との関係などについても概要を説明します。
第二章からは、いよいよ琉球列島に焦点をあてて展開します。この章では、琉球列島各地で出土した考古学の遺物や遺構から、沖縄では先史時代にどのように人を葬っていたかを探ります。渡具知木綿原(とぐちもめんばる)遺跡や真志喜安座間原(ましきあざまばる)遺跡でみられるような土葬の事例と、波之上洞窟や具志川島遺跡の風葬の事例とがみえるので、どちらも並行して行われていたことが伺えます。
これに対して13世紀後半からは王陵や按司(あじ)の墓でも風葬へと葬法が集約され、一般にも崖の洞穴や山の中などを葬所として遺体を遺棄していたことが考えられています。そこで、第三章では、近世の時代に実際にどのように人を葬っていったかを史料を通してみていくとともに、近代に入って、一般にも墓や龕などの使用が定着していくなかで、野辺送りがどのように行われたか、実際に使われた龕や葬具等を展示しながら紹介します。
第四章では、死者を葬る場所としての墓を中心にすえ、風葬と洗骨という2つの役割を果たしている事例や、現存する様々な形態の墓を写真や模型で紹介します。さらに洗骨した骨を納める容器である厨子(厨子甕)(ずし/ずしがめ)についても、さまざまな形態のものを展示します。
第五章では、戦後の沖縄の葬墓制について取りあげ、とくに行政や社会的な変化、コンクリート等の建材の普及、火葬にともなう葬儀等の外部化などの現象をみていきます。
最後に、学芸員講座でのアンケート調査をはじめ先人達の言葉を借りて、沖縄の人々が死者を弔う儀礼や墓を大切に守っていく根底に流れる死生観などについて考えていきます。
以上のような展覧会を企画するにあたり、これまでに県内に残る古いお墓や洗骨儀礼の形を追ってきました。時代とともに形は変われども、沖縄の人々が抱く祖先への思いや死者を大切に弔う思いは受け継がれていると思います。そうした思いこそ、家族との結びつきを深め、地縁とのつながりを強めているのでしょう。とても大きなテーマでありますが、できる限りわかりやすく多くの事例を紹介し、沖縄の葬墓制について考える場にしたいと思います。
主任学芸員 大湾ゆかり