1. 博物館企画展「三線のチカラ」雑感

博物館企画展「三線のチカラ」雑感

最終更新日:2014.05.29

2月18日から5月11日まで開催している、「三線のチカラ―形の美と音の妙」は沖縄県立博物館として15年ぶり、新博物館・美術館としては初の三線展となる。沖縄県の宝である県指定文化財三線が一堂に会する機会はめったにない機会で、シンポジウムや演奏会など10件の関連催事も好評を得ている。三線の展示公開の嚆矢は、東恩納寛惇先生らの尽力によって1939年(昭和14年)に開催された、首里城南殿での三線祭だと思う。当時の三線ファンにとっては垂涎の的であったにちがいない。今回は本土からの熱心なファンの姿が見られ、ハワイからの初めての里帰り三線も話題になった。沖縄における三線は家宝で、門外不出の個人蔵が多い。所蔵者のご協力に感謝したい。

今回の展示には三線の形と音の世界を共有することで、沖縄文化の価値意識を県内外の人々に理解してもらいたいとの狙いがある。ウチナーンチュが嗜好してきた三線の形(型)があること。また、チーガ(胴)への蛇皮張りの具合やチーガ内部にも細工が施され、音へのこだわりがあったことなどに留意して展示構成した。

三線及び三線音楽をグローバルな視点から捉えることができたのがシンポジウムであった。基調講演を行った英国在住のロビン・トンプソン氏は、「三線音楽のもつファジーさ、西洋音楽では捉えきれない独特の世界観に魅了され、沖縄の伝統音楽の世界に入った」と述べた。三線音楽への理解と普及への助けになるとして、工工四の譜面と工工四の声楽譜を五線譜に置き換える試みを提起した。

また、工芸と楽器の両面性を備えた完成度の高い三線づくりの契機にするため、三線製作事業協同組合の協力で「三線打ティーワジャコンテスト」を初めて開催した。56点の応募があり、一次審査で形の審査を行い、56挺から15挺に絞った中で、二次審査で音の審査を行い、その総合評点で県知事賞以下8賞を選出した。どの作品も職人の気概を感じるもので、展示会の後半に華を添え、その量は圧巻であり観覧者を唸らせるものであった。

戦後69回目の慰霊の日が近づいてきた。王国時代、明治、大正、昭和、平成の時代の中で、受難の時代も越えてきた三線は、王国時代の「品格と期待」を担いつつ、沖縄の近現代を歩んできた「沖縄の心」を表す遺品でもある。そのチカラも感じていただいたと思っている。

三線名器開鐘の競演

三線名器開鐘の競演


主幹学芸員 園原謙

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