最終更新日:2009.09.17
御手洗港の風景
借り出し作業
満舟寺と扁額(梁光地書)
今回のコラムでは、展示会準備の一部を紹介します。
今年、10月6日(火)から11月29日(日)にかけて、博物館特別展 薩摩の琉球侵攻400年「琉球使節、江戸へ行く!~琉球慶賀使・謝恩使一行2,000キロの旅絵巻~」が博物館3階の企画・特別展示室にて開催されます。展示会には「展示資料」が欠かせません。その借り出し作業のため、先日、広島県にうかがって参りました。
あるテーマに合わせた展示会を開催するためには、自館が収蔵している資料だけではなく、他館の収蔵資料を借用する場合が多々あります。その際には、事前に先方と交渉して許可をいただいたあと、実際に借り出し作業を行います。借りる側が責任を持って借用するため、作業には必ず借りる側の学芸員が立ち会います。また、借用するのは貴重な資料ばかりなので、取り扱いには美術品等を取り扱う技能を持った業者と一緒に伺います。先方の担当者と借用する資料の現状を確認したあと、安全な輸送を行うために梱包作業を行い、陸海空それぞれに合わせた経路をとって、確実に博物館に搬入します。これが借り出し作業のおおまかな流れです。
写真で紹介しているのは、広島県呉市豊町というところにある大崎下島にて、展示資料の借り出し作業を行った一場面です。ここ大崎下島には、御手洗(みたらい)という地区があり、江戸時代に港が整備されて以降、潮待ち・風待ちの港として栄えました。御手洗は、かつての町並みとその雰囲気をよく残していて、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。
ここには、江戸と琉球を往復した琉球使節も訪れていて、ゆかりの資料が残されています。例えば、御手洗の山手側にひっそりと佇む「満舟寺」の扁額は、1807年に御手洗を訪れた琉球使節の楽師・梁光地(當間親雲上)が揮毫した文字を扁額に仕立てたものです。現在、揮毫した文字は掛軸に仕立てられており、御手洗港の近くにある江戸みなとまち展示館で公開されています。今回の展示会ではこの掛軸をお借りしましたので、琉球使節展にてぜひみなさまに対面してほしい一品です。
このほかにも、ここでは紹介しきれないほど、琉球使節と各地との交流を伝えるさまざまな例があります。ぜひ展示会にて、琉球と各地との結びつきを発見してください!
主任 崎原恭子