【開催主旨】
　袋中上人(1552~1639)が京都に檀王法林寺を開創したのは、琉球から帰国後5年を経た慶長16年(1611)のことで、2011年は同寺の開創400年にあたる。袋中上人は仏教研究のため中国・明に渡ろうと試みたが、豊臣秀吉の朝鮮俊略後間もない時期であったため、これを果たすことができなかった。そこで、上人はルソンを経て琉球に上陸し、3年間の月日を過ごした。その間、上人は琉球で浄土念仏の教化につとめ、尚寧王の帰依を受け、帰国後は『琉球神道記』『琉球往来』などを著した。今日その著作は、古琉球の宗教世界や当時の風俗習慣などの文化を知る上で貴重な資料である。
　本展では、檀王法林寺開創400年を記念し、はじめて琉球に浄土念仏を広め、エイサーを伝えたといわれる袋中上人の事蹟をたどる。また、この展示会は九州国立博物館との初の共同企画展として開催された。
 
【展示内容】
　展示構成は袋中上人のプロフィールを袋中上人絵詞伝で紹介し、尚寧王よりいただいた貴重な資料の数々を展示した。また、「袋中上人ふれあいコーナー」を設けて、上人に親しむコーナーを設けた。この展示は、『五重略釈』に記される袋中上人の手形を計測し、当館が所蔵する絵画資料としての袋中上人の実物大の大きさを再現して、凹型の手形と合わせて、展示したところ、好評であった。本展のサブタイトルに「エイサーの起源をたどる」を付したが、エイサーが袋中上人による移入説に対して、王府時代の文献資料や近代の新聞資料、エイサーのことばの起源などについて言及し、今日の沖縄の民俗に係るエイサーの状況について、パネルと映像で紹介した。また、袋中上人との直接的関係はないが、京都東福寺が所蔵する新たに発見された琉球漆器を初公開した。この漆器は、琉球漆器の移動経路が明確にわかる3ヶ所の箱書きがあるもので、貴重であることから別コーナーを設けて展示した。
 
【展示資料】
〇袋中上人絵詞伝（上下巻）
（所有者：京都・袋中華、京都国立博物館寄託資料）
〇袋中上人絵詞伝上巻
（所有者：鶯龍寺、京都府立山城郷土資料館寄託資料）
〇クバ団扇
（京都府視程文化財　所有者：京都・檀王法林寺）
〇波溺飛龍図前掛（重要民俗文化財所有者：財団法人黒主山保存会、京都国立博物館寄託資料）
〇黒漆塗楼閣人物飾棚（京都府指定文化財所有者：京都・檀王法林寺）
〇司馬温公家訓螺銅掛板（京都府指定文化財所有者：京都・檀王法林寺、京都国立博物館寄託資料）
〇朱漆垣松螺錮卓（京都府指定文化財所有者：京都·檀王法林寺、京都国立博物館寄託資料）
〇絹本著色袋中良定像尚寧王自画替
（京都府指定文化財所有者：京都・檀王法林寺、京都国立博物館寄託資料）
〇払子（京都府指定文化財所有者：京都・檀王法林寺）
〇琉球神道記袋中良定筆（重要文化財所有者：京都・袋中庵、京都国立博物館寄託資料）
〇賂朕集自筆（京都府指定文化財所有者：京都・檀王法林寺）
〇鶴蓮華文七宝面盆（京都府指定文化財所有者：京都·檀王法林寺、京都国立博物館寄託資料）
〇鋳銅鼎形香炉（京都府指定文化財所有者：京都·檀王法林寺）
〇宝塔形舎利容器（京都府指定文化財所有者：京都・檀王法林寺）
〇五重略釈（内題・浄土五重相伝次第抄） 自筆（京都府指定文化財所有者：京都· 檀王法林寺）
〇南無阿弥陀仏名号札袋中筆・木版（所有者：京都・檀王法林寺）
〇六字名号袋中筆（所有者：京都・檀王法林寺）
〇朱漆山水模様箔絵盆井食籠（所有者：京都・東福寺）
〇絹本著色袋中良定像（当館）
〇袋中上人行化碑（拓本） （所有者：那覇市歴史博物館）
〇エイサー関係パネル類、エイサー紹介の映像(DVD)

【関連事業】
〔エイサー実演・ワークショップ〕
日時：平成24年2月25日（日）午後2時～3時
場所：当館美術館屋外展示スペース
出演者：うるま市無形民俗文化財「平敷屋エイサー」保存会(32名）

【文化講座】
「琉球と袋中上人」
日時：平成24年2月11日（土）14:00~15:30
講師：知名定寛（神戸女子大学文学部史学科教授）
会場：沖縄県立博物館・美術館　講堂