1. 史跡をめぐる―尚巴志王即位600年を記念して-

史跡をめぐる―尚巴志王即位600年を記念して-

最終更新日:2022.11.17

1.はじめに

 1429年に沖縄本島を統一することになる尚巴志が1422年、首里城において琉球国中山王に即位しました。しかし、その約20年前までは現在の南城市佐敷周辺を治める小領主であったことは意外性があります。1402年に根拠地を佐敷グスクから島添大里グスクに移し、そして1406年に中山王である武寧を弑して、父である思紹が王位に就いたと共に首里城へと移るといった一連の展開は目まぐるしいものがあります。
 前回の学芸員コラムでは尚巴志が首里城へ移るまでの足跡を辿る史跡めぐりを令和4年11月12日に実施する旨を記しましたが、今回はその実施した状況とその後の感想について少し書き綴っていきたいと思います。
 

2. 速攻で参加受付を締め切る。その理由は?



 

 今回の史跡めぐりで一番のメリットを挙げるとすると尚巴志にまつわる場所でその人物の話が聞けるリアル感と、発掘調査の成果を現地で辿ることができるといった点にあります。そのためか、参加受付開始からわずか2時間で参加定員20名を満たすという、予想外の状況となりました。一方で止む無く参加をお断りさせていただいた方々も多くいらっしゃいました。
 今回事前申し込みと20名の定員枠を設けさせていただいたのは、現地で見学できるスペースと参加者の駐車スペースが限られていることが理由にあります。多くの方々に参加していただきたかったのですが、上記の理由でどうしても参加人数を限らなければならなかったことを、ご希望に添えなかった方々にはご理解賜りたく思っております。

3.盛りだくさんの現地解説

 午前は佐敷グスク、午後から島添大里グスクのスケジュールで参加者20名と共に史跡めぐりを行いましたが、あいにく当日は朝から雨模様でした。今回は特別に南城市教育委員会の専門員である横山さんに両グスクを解説していただきました。10時開始14時解散で進めていきましたが、幸い小雨程度でとくに悪天候とはならずに結果、予定通りに終えることができました(写真1)。
小雨が降る中での開催
 (写真1)小雨が降る中での開催

 佐敷グスクでは尚巴志の時代にどのように使われていたのか、そして発掘調査で多くの中国産陶磁器や柱穴が確認されたことなど詳細な説明がありました。また佐敷グスク周辺の立地や周辺にある遺跡から、14世紀後半から15世紀前半にかけての様相なども解説していただきました(写真2)。
佐敷グスクでの解説
島添大里グスクでの解説
(写真2)佐敷グスクでの解説

 島添大里グスクでは過去の発掘調査成果を中心にグスクの歴史的由来、更にはグスク内にある展望台から首里や勝連半島方面を望みながら、当時の様子について解説を行っていただきました(写真3)。最後に南城市指定文化財であるチチンガーを見学して解散という、盛りだくさんの内容で終えることができました。
島添大里グスクでの解説
島添大里グスクでの解説
(写真3)島添大里グスクでの解説

 

4.地元と連携することの強み

 尚巴志は南城市佐敷で生まれ、1429年に三山を統一しましたが、その出発点となった佐敷グスクと更に飛躍する場所となった島添大里グスクを実際に訪ね歩くことで、参加者の方々は尚巴志についてより理解が深まったものと思われます。
 今回は南城市教育委員会の協力無しには実現できなかった企画であると共に、地元の遺跡であるからこそ知ることができる発掘調査成果を多く聞くことができました。
 話は変わりますが南城市役所において令和4年11月27日までミニ展示『英雄 尚巴志』展を開催しております。こちらも南城市教育委員会の後援によって実現することが叶いました(写真4)。
 また、12月1日から12月26日にかけてこの『英雄 尚巴志』展はうるま市勝連の阿麻和利パークに場所を移して開催いたします。こちらもうるま市教育委員会の後援により、尚巴志を陰で支えた伊覇按司が拠った伊波グスク関係資料を新たに展示して実施いたします。
 南城市、うるま市共に尚巴志にまつわる資料の展示や催しを行うにあたっては、地元との連携を如何に綿密にしていくのかが、成功への大きな鍵になってくることに改めて知ることとなりました。 
南城市役所での『英雄 尚巴志』展の様子
(写真4)南城市役所での『英雄 尚巴志』展の様子

主任学芸員 山本正昭

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