宝瓢箪(方言)

たからひょうたん

概要

昔(むかち)とぅん、昔、東側は金持ち、西側には貧乏人の子供がいた。東側の金持ちは大百姓で沢山の穀物を作り不足なく暮らしており、また西側の貧乏人の子供は三度の食こともどうして食べようかと毎日暮らしていた。そのうち正月が近くなってきたので、金持ちは自分の作った米を炊き、お金があるから豚もつぶして何不足なく仕度して食べていた。貧乏者の子供は、お金持ちの人が食べている米を自分も食べてみたいので、金持ちの屋敷に行って、「私にお米を一升だけ売って下さい。」とお願いした。お金持ちが売らなかったので、「この米がなる苗はどうして作るのですか。教えて下さい。」とお願いしたら、「苗代を固くなるぐらい踏んでから種を蒔きなさい。」と教えたので、「はい。」と子供は苗代を固く踏んでから種を蒔くと、それから毎日いつ芽がでるだろうと田を見に行ったが、十日経っても二十日経っても苗は生えてこなかった。子供は、「ああ、残念だ。金持ちが稲を作ると豊作だが、貧乏人が作ると苗が生えないのかなあ。」と苗代の回りを廻りながら泣いていると天から爺さんが降りてきて、「子供よ、なんで残念がっているのかね。」と言ったので、「お爺さん、金持ちは野菜を作っても豊作、稲を作っても豊作で食べているけれど、私のような貧乏人は金持ちの人の真似をして苗代を踏んで種を蒔いても芽がでないので困っています。」と言うと、「そうか、じゃあ瓢箪を三本植えてあげよう。その瓢箪の実は食べないで、積んで置くんだよ。」と言って、瓢箪の苗を三本植えてくれた。その瓢箪にはとても沢山実がなったので、牛に実を乗せて家に運んで積んで置くと、その瓢箪はみるみるうちに米になったので、その子供は金持ちになった。そのとき瓢箪の苗をくれたお爺さんがやってきて、「人の物をうらやましく思って、金持ちから習うから嘘を教えられたのだ。油断しないで立派に働き金持ちに負けるなよ。」と教えて行ったので、「ありがとう、爺さん。」とお礼を言ってお送りした。東側の金持ちは、西の子供が米倉を建てて米を入れると、不思議に思って聞きにきた。「お前はちょっとの間に米倉を建てているが、どうしてこんなになったのか。」と言ったので、「あなたが、おっしゃったようにしていると、爺さんが来なさって、瓢箪を三本植えて下さったが、それを倉に積んだら米俵になったから、そのお米を売って食べている。」と言うと、「そうか、じゃ、私も同じようにしたらその爺さんがいらっしゃって下さるかね。」と言ったので、「おいでになるはずですよ。」と言った。東の金持ちは西の子供の真似をして、苗代を踏み固めて籾を下ろし、苗代の回りを廻りながら泣いていると天からお爺さんが降りて来て、「あなたは何で、そこにいるのか。」と言うので、「ああ、隣りの子供は貧乏人だったが、ちょっとの間に金持ちになったので、その真似をしています。瓢箪の苗を本当に植えて下さるかね。」と言った。「はい、瓢箪を三本植えるから時期が来たら取るんだよ。瓢箪が実って倉庫に入れたら、蟻の一匹も入れないように準備しなさいよ。」とおっしゃったので、「ありがとう。お爺さん。」と言って、倉庫に蟻一匹も入らないように作って、時期が来ると牛に鞍を掛けて実を運んで倉庫に全部入れた。するとお爺さんがやってきて、「もういいか。」と、その金持ちを倉庫に入れ、倉庫の戸を閉めて帰って行った。そしたら倉庫に入っていた金持ちはもう出られなくなっているうちに、倉庫の中で蟻に刺されて死んでしまった。その爺さんは神様だから、貧乏人の子供が物を習いにと行ったとき、金持ちが嘘を教えていじめていたのをちゃんと見ていたから罰を与えたということだ。

再生時間:6:35

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民話詳細DATA

レコード番号 47O341608
CD番号 47O34C123
決定題名 宝瓢箪(方言)
話者がつけた題名 貧乏人と金持ちの話
話者名 目差ウナリ
話者名かな めざしうなり
生年月日 19010219
性別
出身地 沖縄県八重山郡与那国町祖納
記録日 19760805
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 与那国町祖納 T71 A02
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 12
発句(ほっく) ンカチトン
伝承事情
文字化資料 八重山諸島民話集 P64
キーワード 東,金持ち,西,貧乏人,苗代,爺さん,瓢箪,米,嘘,米倉,踏み固めて,蟻,倉庫,罰
梗概(こうがい) 昔(むかち)とぅん、昔、東側は金持ち、西側には貧乏人の子供がいた。東側の金持ちは大百姓で沢山の穀物を作り不足なく暮らしており、また西側の貧乏人の子供は三度の食こともどうして食べようかと毎日暮らしていた。そのうち正月が近くなってきたので、金持ちは自分の作った米を炊き、お金があるから豚もつぶして何不足なく仕度して食べていた。貧乏者の子供は、お金持ちの人が食べている米を自分も食べてみたいので、金持ちの屋敷に行って、「私にお米を一升だけ売って下さい。」とお願いした。お金持ちが売らなかったので、「この米がなる苗はどうして作るのですか。教えて下さい。」とお願いしたら、「苗代を固くなるぐらい踏んでから種を蒔きなさい。」と教えたので、「はい。」と子供は苗代を固く踏んでから種を蒔くと、それから毎日いつ芽がでるだろうと田を見に行ったが、十日経っても二十日経っても苗は生えてこなかった。子供は、「ああ、残念だ。金持ちが稲を作ると豊作だが、貧乏人が作ると苗が生えないのかなあ。」と苗代の回りを廻りながら泣いていると天から爺さんが降りてきて、「子供よ、なんで残念がっているのかね。」と言ったので、「お爺さん、金持ちは野菜を作っても豊作、稲を作っても豊作で食べているけれど、私のような貧乏人は金持ちの人の真似をして苗代を踏んで種を蒔いても芽がでないので困っています。」と言うと、「そうか、じゃあ瓢箪を三本植えてあげよう。その瓢箪の実は食べないで、積んで置くんだよ。」と言って、瓢箪の苗を三本植えてくれた。その瓢箪にはとても沢山実がなったので、牛に実を乗せて家に運んで積んで置くと、その瓢箪はみるみるうちに米になったので、その子供は金持ちになった。そのとき瓢箪の苗をくれたお爺さんがやってきて、「人の物をうらやましく思って、金持ちから習うから嘘を教えられたのだ。油断しないで立派に働き金持ちに負けるなよ。」と教えて行ったので、「ありがとう、爺さん。」とお礼を言ってお送りした。東側の金持ちは、西の子供が米倉を建てて米を入れると、不思議に思って聞きにきた。「お前はちょっとの間に米倉を建てているが、どうしてこんなになったのか。」と言ったので、「あなたが、おっしゃったようにしていると、爺さんが来なさって、瓢箪を三本植えて下さったが、それを倉に積んだら米俵になったから、そのお米を売って食べている。」と言うと、「そうか、じゃ、私も同じようにしたらその爺さんがいらっしゃって下さるかね。」と言ったので、「おいでになるはずですよ。」と言った。東の金持ちは西の子供の真似をして、苗代を踏み固めて籾を下ろし、苗代の回りを廻りながら泣いていると天からお爺さんが降りて来て、「あなたは何で、そこにいるのか。」と言うので、「ああ、隣りの子供は貧乏人だったが、ちょっとの間に金持ちになったので、その真似をしています。瓢箪の苗を本当に植えて下さるかね。」と言った。「はい、瓢箪を三本植えるから時期が来たら取るんだよ。瓢箪が実って倉庫に入れたら、蟻の一匹も入れないように準備しなさいよ。」とおっしゃったので、「ありがとう。お爺さん。」と言って、倉庫に蟻一匹も入らないように作って、時期が来ると牛に鞍を掛けて実を運んで倉庫に全部入れた。するとお爺さんがやってきて、「もういいか。」と、その金持ちを倉庫に入れ、倉庫の戸を閉めて帰って行った。そしたら倉庫に入っていた金持ちはもう出られなくなっているうちに、倉庫の中で蟻に刺されて死んでしまった。その爺さんは神様だから、貧乏人の子供が物を習いにと行ったとき、金持ちが嘘を教えていじめていたのをちゃんと見ていたから罰を与えたということだ。
全体の記録時間数 6:45
物語の時間数 6:35
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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