
昔、ある人が親豚を飼っていた。その豚はとても良い豚で、子供を次々に産んだので家庭のためになっている豚だったので、豚の主は大切にして何年もの間飼っていた。ある時に、ある家の男が寝ていると、夜中にとても美しくとても良い香りが漂う女が寝床に入ってきて、「私をあなたと寝かせて下さい。」と言った。男は、こんなハイカラな女は帰すことはできないと喜んで、その夜抱き合って二人で寝ていると、夜が明けないうちに、その女は、「私はもう行かなければいけない。」と帰って行ったので、その男は、「この女はどこの女だろう。また来てくれないかなあ。」と夜になるのを待っていた。夜になって、また同じ時刻にその女が来たので、その男は喜んで、また二人抱き合って寝ていると、また夜の明けないうちにその女は帰って行ったので、「あの女の家を聞いておくんだった。」と思っていた。夜ごと来るうちに、その女は身ごもり、「私はあなたの子供を身ごもりました。」と言った。その男は相手がどこのだれともわからないので、どこから来ているのかと思って、後をつけて行くと、その女は豚小屋に行った。飼い主も夜になると親豚がいなくなるのでこれは不思議なことだと思って隣りの婆さんに物習いに行ったら、「そんなことなら、お前の家の親豚が化けていると思われるから、豚がいなくなる時刻前に、門口のトムヒラの上に登って座って、一番鶏が鳴くまでじっと座っていなさい。」と言うので、婆さんが言うとおり、その夜、時刻前に門口のトムヒラの上に座っていた。ちょうど、夜中にその豚が豚小屋から出て井戸の側で釣瓶の水で肌を洗うときれいな女になって、とても良い香りを漂わせていたので、「これは不思議なことだ。」とその女が出ていく後を追って見たら、ある家の男の寝床に入っていったので、後戻りしてきて、また門口のトムヒラの上に登って待っていると、ちょうど一番鶏の鳴く前にまたその女が戻って来て、豚小屋に入って行った。もう夜も明けたので、トムヒラから降りて豚小屋を見たら、豚になっていたので、また隣りの婆さんに、「こういう事情です。お婆さん。」と話したら、「それなら、ダシカという木を切ってきて、その木を三角に切って研いでから、その木で豚を突いて殺しなさい。」とおっしゃったので、山に行ってダシカ木を切ってきて、先を三角に研いで持って行って、「お前は昼間は豚なのに、夜は人間に化けて、人間の子を身ごもっている。お前のような動物を飼っていると私の恥になる。」と豚に言い伝えて、突こうとしたら、豚はその主に、「あなたがどんなに突いたって私は死なない。私はどこどこの家の男の子どもを身ごもっていて、その男を連れてきてその男に私を突かせたら私は死ぬから、行って連れてきて私を突かせて下さい。」と言ったので、その男のところへ行って話して連れてきて、「その豚はあなたに突かれたら、自分は死ぬと私に言っているから、あなたが声をかけてから突きなさい。」と言ったので、「お前はこんな豚なのに夜はとても良い香りをさせて女になってやって来て私を騙したから、お前に種つけをしたのだが、お前をこのままにしておいたら、私の恥になるから今のうちに私がハンクヤ棒で突くから死んでしまえ。」と言葉をかけて、その男がダシカ木で突いたので豚は死んだ。これは年寄たちの昔からの話だから、嘘だとは考えられない。本当の話だと思われる。人間でも年を取って急に物忘れしておかしくなることもあるから、木でも草でも年をとると、若い木とは違って人間のようになるから嘘ではなく本当のことだと思われる。動物でもまた昔から動物は長く飼えば化けるということは親たちがいつも話していなさったことであるから、これは本当の話だと思われる。
| レコード番号 | 47O341603 |
|---|---|
| CD番号 | 47O34C123 |
| 決定題名 | 美女に化けた豚(方言) |
| 話者がつけた題名 | 豚化け女房 |
| 話者名 | 前粟蔵加祢 |
| 話者名かな | まえあわくらかね |
| 生年月日 | 19050612 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県八重山郡与那国町比川 |
| 記録日 | 19760804 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 与那国町比川 T55 B01 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | ンカチ |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 八重山諸島民話集 P203 |
| キーワード | 親豚,男,良い香り,女,寝床,同じ時刻,身ごもり,豚小屋,飼い主,隣りの婆さん,物習い,門口,トムヒラ,一番鶏,井戸,水,ダシカ,三角,恥,ハンクヤ棒 |
| 梗概(こうがい) | 昔、ある人が親豚を飼っていた。その豚はとても良い豚で、子供を次々に産んだので家庭のためになっている豚だったので、豚の主は大切にして何年もの間飼っていた。ある時に、ある家の男が寝ていると、夜中にとても美しくとても良い香りが漂う女が寝床に入ってきて、「私をあなたと寝かせて下さい。」と言った。男は、こんなハイカラな女は帰すことはできないと喜んで、その夜抱き合って二人で寝ていると、夜が明けないうちに、その女は、「私はもう行かなければいけない。」と帰って行ったので、その男は、「この女はどこの女だろう。また来てくれないかなあ。」と夜になるのを待っていた。夜になって、また同じ時刻にその女が来たので、その男は喜んで、また二人抱き合って寝ていると、また夜の明けないうちにその女は帰って行ったので、「あの女の家を聞いておくんだった。」と思っていた。夜ごと来るうちに、その女は身ごもり、「私はあなたの子供を身ごもりました。」と言った。その男は相手がどこのだれともわからないので、どこから来ているのかと思って、後をつけて行くと、その女は豚小屋に行った。飼い主も夜になると親豚がいなくなるのでこれは不思議なことだと思って隣りの婆さんに物習いに行ったら、「そんなことなら、お前の家の親豚が化けていると思われるから、豚がいなくなる時刻前に、門口のトムヒラの上に登って座って、一番鶏が鳴くまでじっと座っていなさい。」と言うので、婆さんが言うとおり、その夜、時刻前に門口のトムヒラの上に座っていた。ちょうど、夜中にその豚が豚小屋から出て井戸の側で釣瓶の水で肌を洗うときれいな女になって、とても良い香りを漂わせていたので、「これは不思議なことだ。」とその女が出ていく後を追って見たら、ある家の男の寝床に入っていったので、後戻りしてきて、また門口のトムヒラの上に登って待っていると、ちょうど一番鶏の鳴く前にまたその女が戻って来て、豚小屋に入って行った。もう夜も明けたので、トムヒラから降りて豚小屋を見たら、豚になっていたので、また隣りの婆さんに、「こういう事情です。お婆さん。」と話したら、「それなら、ダシカという木を切ってきて、その木を三角に切って研いでから、その木で豚を突いて殺しなさい。」とおっしゃったので、山に行ってダシカ木を切ってきて、先を三角に研いで持って行って、「お前は昼間は豚なのに、夜は人間に化けて、人間の子を身ごもっている。お前のような動物を飼っていると私の恥になる。」と豚に言い伝えて、突こうとしたら、豚はその主に、「あなたがどんなに突いたって私は死なない。私はどこどこの家の男の子どもを身ごもっていて、その男を連れてきてその男に私を突かせたら私は死ぬから、行って連れてきて私を突かせて下さい。」と言ったので、その男のところへ行って話して連れてきて、「その豚はあなたに突かれたら、自分は死ぬと私に言っているから、あなたが声をかけてから突きなさい。」と言ったので、「お前はこんな豚なのに夜はとても良い香りをさせて女になってやって来て私を騙したから、お前に種つけをしたのだが、お前をこのままにしておいたら、私の恥になるから今のうちに私がハンクヤ棒で突くから死んでしまえ。」と言葉をかけて、その男がダシカ木で突いたので豚は死んだ。これは年寄たちの昔からの話だから、嘘だとは考えられない。本当の話だと思われる。人間でも年を取って急に物忘れしておかしくなることもあるから、木でも草でも年をとると、若い木とは違って人間のようになるから嘘ではなく本当のことだと思われる。動物でもまた昔から動物は長く飼えば化けるということは親たちがいつも話していなさったことであるから、これは本当の話だと思われる。 |
| 全体の記録時間数 | 11:11 |
| 物語の時間数 | 10:28 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◯ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |