蛇婿入り(共通語)

概要

昔とても顔立ちの美しい娘がいた。その娘の寝床に欹髻(かたかしら)姿のすてきな男が毎晩夜中の同じ時刻に人目を忍んできて娘と仲よく寝泊まりし、夜が明けないうちに帰って行ったそうだ。娘は不思議に思い、その男に、「あなたはなんとおっしゃる方ですか。教えて下さい。」とその男に聞くと、「明日の夜は必ず教えてやるよ。」と言って夜の明けないうちに帰って行った。だから、次の日に聞いてもまた明日となかなか教えてくれないので、これはただ者ではないと思ったから正体が分かるまでと、丁寧(ていねい)にもてなし付き合っているうちに身ごもってしまった。娘は、これは大変だと隣りの物知りの婆さんを訪ねて、「お婆さん、私はひどい目にあってしまいました。どうしようか。」とこれまでのことをありのまま話し、「その通ってくる男の子を身ごもっていますがどうすればよいか教えて下さい。」と言うと、婆さんは、「ああ、そういうことなら、麻糸(あさいと)を籠(かご)にいっぱい紡(つむ)いで、その糸を針目に通しておき、男が帰る時に忘れずに男の欹髻(かたかしら)にこっそりとその針を挿(さ)して帰らせなさい。」と教えたので、女が用意して待っていると、男はいつものように来たので、帰る時に用意しておいた針を男の欹髻(かたかしら)にこっそり挿しておくと、男は気付かないでそのまま帰って行った。女は朝早く起きて男が引いて行った麻糸をたどり後を追って行くと、糸は遠い山の中の奥の岩穴の中に入っていき、その岩穴の中から話し声がするので、岩穴の入り口の側に隠(かく)れて聞いていると、中の話し声はいつも自分と付き合っている男の声だった。「俺(おれ)は大変なことになっている。」「何事が起きたのか。」と聞く声がした。「俺の頭に刺されている針を取ってくれ。痛くてしょうがない。」と言った。すると、仲間たちは、「これは、どうしたんだ。」「俺は人間を騙(だま)して妻にし、女を身ごもらせたが、その女に今日はこの針と糸で、後をつけられてしまった。でも俺の勝ちだ。人間に俺の子を身ごもらせたのだから。」と自慢すると、そこにいた仲間たちは、「人間に身ごもらしたからと威張(い ば)っても人間は馬鹿じゃないよ、君が身ごもらせた子はやすやすと流してしまうんだ。」と仲間が笑うと、「じゃ、どうやって流すのか。」「それは、もうやがて三月三日の節句(せっく)になる。その日に、蓬餅(よもぎもち)を作って食べてから、磯辺(いそべ)に行き、磯の溝(みぞ)を飛び跳ねて歩くと、お腹の子は全部流れてしまうよ。」と話していた。娘は良い話を聞いたと家に帰り、お婆さんにそのことを伝えるとお婆さんは、「そうか。その男は蛇が入間に化けてあんたを騙(だま)し身ごもらせたんだ。そんなら節句(せっく)がきたら忘れずに蓬餅を作って食べて磯の溝(みぞ)を飛びなさい。」と教えてもらった。そのうちに節句になったので、早速蓬餅を作って食べてから磯(いそ)に行き溝(みぞ)ごとに飛び跳(は)ねて歩いているうちに、お腹の中の子はするすると流れ出たので、その娘はよかったと喜び胸を撫(な)で下ろした。流れ出た子はほんとに蛇であり、それが一匹ではなくたくさん生きたまま海中にうようよ泳いでいき、それが海蛇になった。三月三日の節句は女の祝いで、女に生まれたからは節句には必ず蓬餅を作って食べて磯に行き、海水で足を濡らしきれいに洗う風習が今まで伝えられている。これを浜下りと言う。

再生時間:5:25

民話詳細DATA

レコード番号 47O341553
CD番号 47O34C119
決定題名 蛇婿入り(共通語)
話者がつけた題名
話者名 後真地加美
話者名かな ついまじかみ
生年月日 18990103
性別
出身地 沖縄県八重山郡与那国町祖納
記録日 19760805
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 与那国町祖納 T53 A01
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 12
発句(ほっく)
伝承事情 お父さんから聞いた。
文字化資料 日本昔話通観第26巻 P74 八重山諸島民話集 P24
キーワード 美しい娘,寝床,欹髻,かたかしら,男,毎晩,夜中,寝泊まり,正体,身ごもってしまった,物知りの婆さん,麻糸,針目,挿して,岩穴,話し声,人間,自慢,三月三日の節句,蓬餅,よもぎもち,磯辺,飛び跳ねて歩く,海蛇,浜下り
梗概(こうがい) 昔とても顔立ちの美しい娘がいた。その娘の寝床に欹髻(かたかしら)姿のすてきな男が毎晩夜中の同じ時刻に人目を忍んできて娘と仲よく寝泊まりし、夜が明けないうちに帰って行ったそうだ。娘は不思議に思い、その男に、「あなたはなんとおっしゃる方ですか。教えて下さい。」とその男に聞くと、「明日の夜は必ず教えてやるよ。」と言って夜の明けないうちに帰って行った。だから、次の日に聞いてもまた明日となかなか教えてくれないので、これはただ者ではないと思ったから正体が分かるまでと、丁寧(ていねい)にもてなし付き合っているうちに身ごもってしまった。娘は、これは大変だと隣りの物知りの婆さんを訪ねて、「お婆さん、私はひどい目にあってしまいました。どうしようか。」とこれまでのことをありのまま話し、「その通ってくる男の子を身ごもっていますがどうすればよいか教えて下さい。」と言うと、婆さんは、「ああ、そういうことなら、麻糸(あさいと)を籠(かご)にいっぱい紡(つむ)いで、その糸を針目に通しておき、男が帰る時に忘れずに男の欹髻(かたかしら)にこっそりとその針を挿(さ)して帰らせなさい。」と教えたので、女が用意して待っていると、男はいつものように来たので、帰る時に用意しておいた針を男の欹髻(かたかしら)にこっそり挿しておくと、男は気付かないでそのまま帰って行った。女は朝早く起きて男が引いて行った麻糸をたどり後を追って行くと、糸は遠い山の中の奥の岩穴の中に入っていき、その岩穴の中から話し声がするので、岩穴の入り口の側に隠(かく)れて聞いていると、中の話し声はいつも自分と付き合っている男の声だった。「俺(おれ)は大変なことになっている。」「何事が起きたのか。」と聞く声がした。「俺の頭に刺されている針を取ってくれ。痛くてしょうがない。」と言った。すると、仲間たちは、「これは、どうしたんだ。」「俺は人間を騙(だま)して妻にし、女を身ごもらせたが、その女に今日はこの針と糸で、後をつけられてしまった。でも俺の勝ちだ。人間に俺の子を身ごもらせたのだから。」と自慢すると、そこにいた仲間たちは、「人間に身ごもらしたからと威張(い ば)っても人間は馬鹿じゃないよ、君が身ごもらせた子はやすやすと流してしまうんだ。」と仲間が笑うと、「じゃ、どうやって流すのか。」「それは、もうやがて三月三日の節句(せっく)になる。その日に、蓬餅(よもぎもち)を作って食べてから、磯辺(いそべ)に行き、磯の溝(みぞ)を飛び跳ねて歩くと、お腹の子は全部流れてしまうよ。」と話していた。娘は良い話を聞いたと家に帰り、お婆さんにそのことを伝えるとお婆さんは、「そうか。その男は蛇が入間に化けてあんたを騙(だま)し身ごもらせたんだ。そんなら節句(せっく)がきたら忘れずに蓬餅を作って食べて磯の溝(みぞ)を飛びなさい。」と教えてもらった。そのうちに節句になったので、早速蓬餅を作って食べてから磯(いそ)に行き溝(みぞ)ごとに飛び跳(は)ねて歩いているうちに、お腹の中の子はするすると流れ出たので、その娘はよかったと喜び胸を撫(な)で下ろした。流れ出た子はほんとに蛇であり、それが一匹ではなくたくさん生きたまま海中にうようよ泳いでいき、それが海蛇になった。三月三日の節句は女の祝いで、女に生まれたからは節句には必ず蓬餅を作って食べて磯に行き、海水で足を濡らしきれいに洗う風習が今まで伝えられている。これを浜下りと言う。
全体の記録時間数 6:24
物語の時間数 5:25
言語識別 共通語
音源の質
テープ番号
予備項目1

トップに戻る

TOP