産神問答(方言)

概要

昔とぅん、昔、ある所にとても仲の良い友達二人がいた。あるとき二人は潮干狩りに海岸に行き、潮が引いたかなと見たらまだころあいではないので、二人は石の陰で潮が引くまでと寝ていたら、外側から、「サリー、サリー。」と言う人の声が聞えて、誰かが寝ている所を覗くので、これは何だろうと怖ろしく、ぱっと目が覚めて見ると声をかけたのは神様のような気がしたので、寝たまま身動きしないでいると、その神様が言われるには、「村で今晩赤子を産む人がいるが、生まれたらその子を育てるには、どう育てればよいか、教えにいくから、俺と一緒に行かないか。」と言われた。枕にしていた寄木が、「ああ、俺は人間を二人預っているので、今夜は行けませんから、あなた一人で行って下さい。」と言ったので、「ああ、そうか。」と神様は村の方に行った。側で寝ていた友人は、そのことを全く知らずにいたらしく、潮が引きころあいになったので、「もう時間だ。起きなさい。」と起こして、磯に下りて行き、潮干狩もすんで磯から上がったが、まだまだ夜が明けないので、また一寝入りと、二人は寝ていると、また、「サリー、サリー。」と声が聞えたので、なんだろうと気をつけると同じ神様が現われて言われるには、「今晩生まれる子は女の子と男の子だが、女の子はあそこにある俵などを持ってきて積み上げ、その陰で育つ運を授けてきだ。また男の子は、そこにある箕(うむい)や篩(どぅらち)などを陰にして育つ運を授けてきだ。だから、女の子は金持ちの生まれ相。男の子は箕や篩などを作る生まれ相だ。」と予言して神様は消えてしまったって。そのときになって、それを聞いていた男は目を覚ました。「これはそういうことか。自分の妻は身ごもって産み月だ。また友達の妻も身ごもって産み月だ。もし私の妻に男の子が生まれたら、貧乏な生まれ相になるんだなあ。でも誰に男の子が生まれるかは、運任せだな。」と思った。友人はそのことは何も知らないから、そのうちに夜が明けて歩いて帰りながら、「男の子と女の子が生まれたら、二人を夫婦にしよう。今話した約束は生まれる子供たちが成長するまで忘れないでね」と約束した。二人は喜んでわが家に帰ると、神様の予言どおり、それぞれの家に子供が生まれて、神様の話を聞いていた一人の家には貧乏な運の男の子が生まれ、知らないで寝ていた家には金持ちの運の女の子が生まれた。男の子の親は、「神様の話を聞いていてよかった。もし女の子の親が神様の話を聞いていたら大変だった。彼が話を聞いていたら、二人を夫婦にさせないから、俺の子供は生涯貧乏から抜け出せない生まれ相で、箕や篩作りになるだろう。」と喜び、二人それぞれの家でお産祝いをし、二人はそれまでよりなお仲よくなって暮らしているうちに、子供たち二人は成長し適齢期になったので、二人の親たちは約束どおり、二人を夫婦にした。その若夫婦はとても仲よく、真面目に人一倍働き、見る見るうちに両家とも、何不自由のない金持ちになり、何不足のない満ち足りた暮らしをしていた。あるとき、妻は、「私たちは毎日こんなに賛沢をしているが、金がなく不自由している人の暮らしを考えると私たちはあまりにも賛沢すぎる。今のままではいけない。少々引き締めよう。」と里芋を炊いて、夫に召上ってと、差し出したところ夫は、「こんな物が食えるか。」と怒りだし、一口も食べようとせず、箸も取らずに御膳ごと庭に投げ捨て、妻をさんざんに叩き、「お前みたいな者をここに置いていては、いつもまずい物ばかり食わされる。今日限り俺の家から出て行け。」とどなり散らして追い出した。妻は仕方なく泣きながら実家に帰っていったが、しばらくすると隣り村からその女に縁談があったので、元の夫に対する意地もあって、再婚を決意し、隣の村に嫁いでいった。今度の夫はとても立派な真面目な青年で、夫婦協力して、毎日働いたので見る見るうちに金持ちになり何不足ない楽な暮らしをしていた。また一方の前の夫は、妻を追い出してからは、潮が引くように貧乏になり、生まれる前の神様の予言どおりに、箕や篩を作り、村々を売り歩いて、その日ぐらしの生活をしていた。ある日、前の夫が作った品物を持って隣り村を売り歩いていると、立派な家があったので、この家なら買ってもらえると思って、中に入り、「箕や篩を買いませんか。」と声をかけると女が出てきて、物売りの顔をじっと見ると、女は、「ああ、この男は私の先夫ではないか。」と確かめると、間違いなく元の夫だったので、急いでお茶を出し、「どうぞ。」と差し出しながら元の夫の今の暮らし振りをみようと、そこにある里芋を急いで炊いて差し出すと、元の夫は空腹らしく、差し出された里芋をあわてて、見る見るうちに全部食べつくしてしまった。女は驚いて、「味はどうだったでしょう。」と聞くと、「ああ、とてもおいしかった。ありがとう。」「ああ、そんなにおいしかったんですか。実は、私はあなたから、里芋を食わせたと怒られ、追い出された元の妻です。」と言ったとたん、その男はびっくりして、座ったまま息を吸い込んで、そのまま倒れて死んでしまったので、女は大あわてで、これは大変だと主人が野良から帰らないうちにと、死体を家の中に引っ張り入れ、竃の後の方に穴を掘り、その穴に埋めて、「あなたは火の神になって、ご飯やお汁などのお初を受け取って、私たちを見守って下さい。」と祈っているところに、主人が野良から帰って来て、「君、そこで何をしているんだ。」と言われたので、「私は、今こんなことがあって。」とこと情を話すと、「ああ、そんなことなのか。」と主人も承知し、「今からは火の神と信じて拝み、朝夕のご飯のお初、お汁のお初を供え、心から信じたら、これ以上に何ことも人一倍、豊かになり、農作物もできて、楽な暮らしができるよう守って下さるはずだから。」と話したら、主人は、「君がそう思うなら、お互いに拝み、神様に守っていただき、よりよい暮らしをしよう。」と承諾し、それからは毎日の食べ物のお初を供えてから、二人が食べるという祭り方をしたことから、その死んだ男が火の神となっていると。今、現在も家々の台所に火の神として拝んでいる。火の神は一名、家の神とも言うが、火の神は男だと昔から言っている。

再生時間:8:50

民話詳細DATA

レコード番号 47O341523
CD番号 47O34C117
決定題名 産神問答(方言)
話者がつけた題名
話者名 前粟蔵永渡
話者名かな まえあわぐらえいと
生年月日 19061102
性別
出身地 沖縄県八重山郡与那国町
記録日 19760805
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 与那国町久部良 T51 B04
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 12
発句(ほっく) ンカチトンソー、ンカチ
伝承事情 姉の夫のおじさんで美崎さんという瓦焼職人の人から聞いた。採訪時から数えて十年ほど前に孫に話したこともある。
文字化資料 八重山諸島民話集 P49
キーワード 友達,潮干狩り,サリー,神様,赤子,寄木,女の子,男の子,俵,陰,運,箕,うむい,篩,どぅらち,金持ち,生まれ相,予言,妻,産み月,夫婦,約束,貧乏,お産祝い,里芋,追い出した,縁談,真面目な青年,死体,竃の後,穴を,火の神
梗概(こうがい) 昔とぅん、昔、ある所にとても仲の良い友達二人がいた。あるとき二人は潮干狩りに海岸に行き、潮が引いたかなと見たらまだころあいではないので、二人は石の陰で潮が引くまでと寝ていたら、外側から、「サリー、サリー。」と言う人の声が聞えて、誰かが寝ている所を覗くので、これは何だろうと怖ろしく、ぱっと目が覚めて見ると声をかけたのは神様のような気がしたので、寝たまま身動きしないでいると、その神様が言われるには、「村で今晩赤子を産む人がいるが、生まれたらその子を育てるには、どう育てればよいか、教えにいくから、俺と一緒に行かないか。」と言われた。枕にしていた寄木が、「ああ、俺は人間を二人預っているので、今夜は行けませんから、あなた一人で行って下さい。」と言ったので、「ああ、そうか。」と神様は村の方に行った。側で寝ていた友人は、そのことを全く知らずにいたらしく、潮が引きころあいになったので、「もう時間だ。起きなさい。」と起こして、磯に下りて行き、潮干狩もすんで磯から上がったが、まだまだ夜が明けないので、また一寝入りと、二人は寝ていると、また、「サリー、サリー。」と声が聞えたので、なんだろうと気をつけると同じ神様が現われて言われるには、「今晩生まれる子は女の子と男の子だが、女の子はあそこにある俵などを持ってきて積み上げ、その陰で育つ運を授けてきだ。また男の子は、そこにある箕(うむい)や篩(どぅらち)などを陰にして育つ運を授けてきだ。だから、女の子は金持ちの生まれ相。男の子は箕や篩などを作る生まれ相だ。」と予言して神様は消えてしまったって。そのときになって、それを聞いていた男は目を覚ました。「これはそういうことか。自分の妻は身ごもって産み月だ。また友達の妻も身ごもって産み月だ。もし私の妻に男の子が生まれたら、貧乏な生まれ相になるんだなあ。でも誰に男の子が生まれるかは、運任せだな。」と思った。友人はそのことは何も知らないから、そのうちに夜が明けて歩いて帰りながら、「男の子と女の子が生まれたら、二人を夫婦にしよう。今話した約束は生まれる子供たちが成長するまで忘れないでね」と約束した。二人は喜んでわが家に帰ると、神様の予言どおり、それぞれの家に子供が生まれて、神様の話を聞いていた一人の家には貧乏な運の男の子が生まれ、知らないで寝ていた家には金持ちの運の女の子が生まれた。男の子の親は、「神様の話を聞いていてよかった。もし女の子の親が神様の話を聞いていたら大変だった。彼が話を聞いていたら、二人を夫婦にさせないから、俺の子供は生涯貧乏から抜け出せない生まれ相で、箕や篩作りになるだろう。」と喜び、二人それぞれの家でお産祝いをし、二人はそれまでよりなお仲よくなって暮らしているうちに、子供たち二人は成長し適齢期になったので、二人の親たちは約束どおり、二人を夫婦にした。その若夫婦はとても仲よく、真面目に人一倍働き、見る見るうちに両家とも、何不自由のない金持ちになり、何不足のない満ち足りた暮らしをしていた。あるとき、妻は、「私たちは毎日こんなに賛沢をしているが、金がなく不自由している人の暮らしを考えると私たちはあまりにも賛沢すぎる。今のままではいけない。少々引き締めよう。」と里芋を炊いて、夫に召上ってと、差し出したところ夫は、「こんな物が食えるか。」と怒りだし、一口も食べようとせず、箸も取らずに御膳ごと庭に投げ捨て、妻をさんざんに叩き、「お前みたいな者をここに置いていては、いつもまずい物ばかり食わされる。今日限り俺の家から出て行け。」とどなり散らして追い出した。妻は仕方なく泣きながら実家に帰っていったが、しばらくすると隣り村からその女に縁談があったので、元の夫に対する意地もあって、再婚を決意し、隣の村に嫁いでいった。今度の夫はとても立派な真面目な青年で、夫婦協力して、毎日働いたので見る見るうちに金持ちになり何不足ない楽な暮らしをしていた。また一方の前の夫は、妻を追い出してからは、潮が引くように貧乏になり、生まれる前の神様の予言どおりに、箕や篩を作り、村々を売り歩いて、その日ぐらしの生活をしていた。ある日、前の夫が作った品物を持って隣り村を売り歩いていると、立派な家があったので、この家なら買ってもらえると思って、中に入り、「箕や篩を買いませんか。」と声をかけると女が出てきて、物売りの顔をじっと見ると、女は、「ああ、この男は私の先夫ではないか。」と確かめると、間違いなく元の夫だったので、急いでお茶を出し、「どうぞ。」と差し出しながら元の夫の今の暮らし振りをみようと、そこにある里芋を急いで炊いて差し出すと、元の夫は空腹らしく、差し出された里芋をあわてて、見る見るうちに全部食べつくしてしまった。女は驚いて、「味はどうだったでしょう。」と聞くと、「ああ、とてもおいしかった。ありがとう。」「ああ、そんなにおいしかったんですか。実は、私はあなたから、里芋を食わせたと怒られ、追い出された元の妻です。」と言ったとたん、その男はびっくりして、座ったまま息を吸い込んで、そのまま倒れて死んでしまったので、女は大あわてで、これは大変だと主人が野良から帰らないうちにと、死体を家の中に引っ張り入れ、竃の後の方に穴を掘り、その穴に埋めて、「あなたは火の神になって、ご飯やお汁などのお初を受け取って、私たちを見守って下さい。」と祈っているところに、主人が野良から帰って来て、「君、そこで何をしているんだ。」と言われたので、「私は、今こんなことがあって。」とこと情を話すと、「ああ、そんなことなのか。」と主人も承知し、「今からは火の神と信じて拝み、朝夕のご飯のお初、お汁のお初を供え、心から信じたら、これ以上に何ことも人一倍、豊かになり、農作物もできて、楽な暮らしができるよう守って下さるはずだから。」と話したら、主人は、「君がそう思うなら、お互いに拝み、神様に守っていただき、よりよい暮らしをしよう。」と承諾し、それからは毎日の食べ物のお初を供えてから、二人が食べるという祭り方をしたことから、その死んだ男が火の神となっていると。今、現在も家々の台所に火の神として拝んでいる。火の神は一名、家の神とも言うが、火の神は男だと昔から言っている。
全体の記録時間数 9:01
物語の時間数 8:50
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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