
平安座の海岸の近くの周囲はね、田んぼが多かった。今はもう田んぼ一つもないけどね。それで、川はないので、田んぼ圃のあっちこっちに、深い池を掘っとった。そこから田んぼに水を引いて、釣瓶で汲んでおったんだね。それは、たとえば、五メートルぐらいの真四角の池だとか、もっと大きいのは十メートルぐらい深いんですよ。僕等が飛び込みできるような所もあったからね。僕等が小さいころは、今の夏休みなどは暑いから、朝から夕方まで遊んでの帰りとか、海水浴しての帰りとか、よくその近くの恰好のいいクムイ (池)に行って、フナと一緒になって、泥水で鼻つまらして遊んで、泳いだり潜ったりして遊ぶわけ。ところが、それは、親ごさんたちからすると、子供らだけでそういう遊びすると、溺れるという危険性があるわけでね。つまり、もう日が暮れる前には帰ってきなさいよと、ただ言ったって始まらないよな、子供たちというのは。ところが、お年寄りはね、こう言ったんだよ。僕等が小さいときは、おそらく昔からそうだったと思うんだが、その田んぼのクムイにはフカゾークークーという、まあ、一人キジムナーの従兄弟(いとこ)ぐらいのやつがいるわけだね。だから年寄りは「日が暮れたら、フカーゾクークーに捕まって溺れさせられるよ。そいつに捕まってしまえば、その池で溺れさせられるよ。そいつに捕まったら溺れて死ぬぞ。だから、そのフカゾークークーに捕まらない時間に、明るい時間に帰ってこないと大変だよう。」と言ったんだよ。そしたら僕等も「おい、もう日が暮れかけてきたから、ぼつぼつフカゾークークが出るから早く帰ろう。」と。こういうふうにお互い同士言いあってね。フカゾークークーが出ないうちに、捕まらないうちに、逃げて帰るわけね。これはキジムナーとも違う。シチというのとも違う。当時は、キジムナーがおるし、シチというのがおるし、田んぼにはまたフカゾークークーというのがおる。皆さん、山鳩や家で飼われているふつうの鳩。その鳴き声をどういうふうに表現します。鶏は「コケコッコー」と、 R羊は「ベー」と、鳩は「クックックー」と鳴きますよ。鳩が「クックックー」と鳴かないで、長く鳴くときがあるでしょう。これを平安座ではね、「コッコッコッ」という鳴き方するんですよ。たとえば、山鳩が、我々には目のとまらない草むらに隠れておるわけね。僕等がそれを聞いたときには、「フカゾークークー、ワークワ ッスビチャー。」と聞こえるんだよ。年寄りがみんな、そういうふうにいうわけね。「フカゾークークー、ワークワ ッスビチャー。」と言うのはね、ワークワ ッというのは私の子供。スビチャーというのは引っぱって行く。つまりフカゾークークーが自分の子を引っぱっていくという意味ね。そうすると、子供の我々にしたら、目には見えないけれど、夕方どこか草むらで鳩が鳴くと、「フカゾークークー、ワークワ ッスビチャーと鳴いてるよ。あり、始まったよ。」って言ってね。いかにもその、フカゾークークーが出てくるような雰囲気になるわけだね、あのころは。「もう危ないから、もう怖いから帰ろう、帰ろうと」と。だから昔の人はよくそれを知っていたわけさ。
| レコード番号 | 47O412032 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C078 |
| 決定題名 | フカゾークークー(共通語) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 西村勇 |
| 話者名かな | にしむらいさむ |
| 生年月日 | 19290520 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 与那城村平安座 |
| 記録日 | 19870801 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 与那城村T19B06 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 20 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | よなぐすくの民話P284 |
| キーワード | 平安座の海岸,子供,フカゾークークー,山鳩 |
| 梗概(こうがい) | 平安座の海岸の近くの周囲はね、田んぼが多かった。今はもう田んぼ一つもないけどね。それで、川はないので、田んぼ圃のあっちこっちに、深い池を掘っとった。そこから田んぼに水を引いて、釣瓶で汲んでおったんだね。それは、たとえば、五メートルぐらいの真四角の池だとか、もっと大きいのは十メートルぐらい深いんですよ。僕等が飛び込みできるような所もあったからね。僕等が小さいころは、今の夏休みなどは暑いから、朝から夕方まで遊んでの帰りとか、海水浴しての帰りとか、よくその近くの恰好のいいクムイ (池)に行って、フナと一緒になって、泥水で鼻つまらして遊んで、泳いだり潜ったりして遊ぶわけ。ところが、それは、親ごさんたちからすると、子供らだけでそういう遊びすると、溺れるという危険性があるわけでね。つまり、もう日が暮れる前には帰ってきなさいよと、ただ言ったって始まらないよな、子供たちというのは。ところが、お年寄りはね、こう言ったんだよ。僕等が小さいときは、おそらく昔からそうだったと思うんだが、その田んぼのクムイにはフカゾークークーという、まあ、一人キジムナーの従兄弟(いとこ)ぐらいのやつがいるわけだね。だから年寄りは「日が暮れたら、フカーゾクークーに捕まって溺れさせられるよ。そいつに捕まってしまえば、その池で溺れさせられるよ。そいつに捕まったら溺れて死ぬぞ。だから、そのフカゾークークーに捕まらない時間に、明るい時間に帰ってこないと大変だよう。」と言ったんだよ。そしたら僕等も「おい、もう日が暮れかけてきたから、ぼつぼつフカゾークークが出るから早く帰ろう。」と。こういうふうにお互い同士言いあってね。フカゾークークーが出ないうちに、捕まらないうちに、逃げて帰るわけね。これはキジムナーとも違う。シチというのとも違う。当時は、キジムナーがおるし、シチというのがおるし、田んぼにはまたフカゾークークーというのがおる。皆さん、山鳩や家で飼われているふつうの鳩。その鳴き声をどういうふうに表現します。鶏は「コケコッコー」と、 R羊は「ベー」と、鳩は「クックックー」と鳴きますよ。鳩が「クックックー」と鳴かないで、長く鳴くときがあるでしょう。これを平安座ではね、「コッコッコッ」という鳴き方するんですよ。たとえば、山鳩が、我々には目のとまらない草むらに隠れておるわけね。僕等がそれを聞いたときには、「フカゾークークー、ワークワ ッスビチャー。」と聞こえるんだよ。年寄りがみんな、そういうふうにいうわけね。「フカゾークークー、ワークワ ッスビチャー。」と言うのはね、ワークワ ッというのは私の子供。スビチャーというのは引っぱって行く。つまりフカゾークークーが自分の子を引っぱっていくという意味ね。そうすると、子供の我々にしたら、目には見えないけれど、夕方どこか草むらで鳩が鳴くと、「フカゾークークー、ワークワ ッスビチャーと鳴いてるよ。あり、始まったよ。」って言ってね。いかにもその、フカゾークークーが出てくるような雰囲気になるわけだね、あのころは。「もう危ないから、もう怖いから帰ろう、帰ろうと」と。だから昔の人はよくそれを知っていたわけさ。 |
| 全体の記録時間数 | 9:12 |
| 物語の時間数 | 9:12 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | △ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |