
黒金座主(くろかねざーしゅ)という人は坊主だったんだよ。この人は妖術使いで、三世相(さんじんそー)だったって。首里のアヤーメー達(たー)はみんな男たちを勤めに出すでしょう。だから、黒金座主のところに行って、運勢を占ってもらっていた。そうしたら黒金座主は、妖術を使って大雨を降らせて、アヤーメー達(たー)が帰るときになって雨を降らせて、「今日は雨が降るからね、ここに泊まりなさい。」と言って騙した。こうして、何回となく、女の人が占いに来たら必ず雨を降らせて、みんな女を騙していたって。そしたら、大村親方(うふむらうぇーかた)という人がこれを聞いて、「世間ではあんなに言っているけど、本当かなあ。」と思ってね、今度は自分の妻を黒金座主のところへ行かせた。ところが、行く前は髪も立派に結って、ジーファーもさして行ったんだけど、黒金座主のところで占ってもらったら、だまされたわけさ。妻が家に帰ってきたので、大村親方が、「お前、後ろを向いてごらん。」と言ったら、髪が乱れていたって。それを見た大村親方は、「ああ、騙されたんだなぁ。」と思ったわけさ。今度は親方が黒金座主のところに行って、「どうだ。お前と私と碁を打ってお前が負けたらお前の耳を斬る。私が負けたら私の耳を斬れ。」と言ったら、「それでいい。」と。そして二人で碁を打ったら、黒金座主は負けたんだね。親方に負けて、耳を斬られて死んだわけさ。ところが、黒金座主は死んだあとからも、大村の子が生まれるたびに、みんなクシャミをさせて魂を取ったって。それで、大村の子はみんな育たなかった。そしたら、あるとき子守(くわうむちゃー)が、「大村御殿(うふむらうるん)の後(くし)なかい 耳切(みみち)り坊主(ぼーじゅ)が立(た)っちょんどぉ〔大村御殿の後ろに耳切り坊主が立ってるよ〕鎌(いらな)ん刀(かたな)ん持(む)っ ちょんどぉ 泣(な)ちぃねえ耳をグスグス〔イラナも刀も持ってるよ。泣いたら耳をグスグス切られるよ〕」と歌ってるらしい。黒金座主は耳を斬られているから、泣いたら耳グスグスと斬られるよって歌ってるでしょう。この子守に黒金座主の魂が憑いているわけさ。その子守歌を聞いて、ある人が、「お前が歌っているのは、意味が分かるのか。」と聞くと、「私は分かりませんよ。私はなんて歌ったんですか。」と言って、自分でも分からないって。それでこの人は黒金座主が子供の魂を取っていたのを悟って、「こういうわけだよ。」と大村の家の人に教えたわけさ。「今度は子供がクシャミをしたら、クシャミをしたときに黒金座主が子供の魂を取るので、『クスケー。』と言いなさい。」と。だから、「子供がクシャミをしたら『クスケー』といいなさい」というのはこのときからなんだよ。そのあとから、大村御殿は栄えたって。
| レコード番号 | 47O411509 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C054 |
| 決定題名 | 黒金座主(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 宮城マカト |
| 話者名かな | みやごまかと |
| 生年月日 | 19000817 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 与那城村与那城 |
| 記録日 | 19870301 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 与那城村T26A13 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 20 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | よなぐすくの民話P434 |
| キーワード | 黒金座主,坊主,妖術使い,三世相,首里のアヤーメー達,運勢,大雨,大村親方,碁,耳を斬る,クシャミ,大村御殿,子供の魂,クスケー |
| 梗概(こうがい) | 黒金座主(くろかねざーしゅ)という人は坊主だったんだよ。この人は妖術使いで、三世相(さんじんそー)だったって。首里のアヤーメー達(たー)はみんな男たちを勤めに出すでしょう。だから、黒金座主のところに行って、運勢を占ってもらっていた。そうしたら黒金座主は、妖術を使って大雨を降らせて、アヤーメー達(たー)が帰るときになって雨を降らせて、「今日は雨が降るからね、ここに泊まりなさい。」と言って騙した。こうして、何回となく、女の人が占いに来たら必ず雨を降らせて、みんな女を騙していたって。そしたら、大村親方(うふむらうぇーかた)という人がこれを聞いて、「世間ではあんなに言っているけど、本当かなあ。」と思ってね、今度は自分の妻を黒金座主のところへ行かせた。ところが、行く前は髪も立派に結って、ジーファーもさして行ったんだけど、黒金座主のところで占ってもらったら、だまされたわけさ。妻が家に帰ってきたので、大村親方が、「お前、後ろを向いてごらん。」と言ったら、髪が乱れていたって。それを見た大村親方は、「ああ、騙されたんだなぁ。」と思ったわけさ。今度は親方が黒金座主のところに行って、「どうだ。お前と私と碁を打ってお前が負けたらお前の耳を斬る。私が負けたら私の耳を斬れ。」と言ったら、「それでいい。」と。そして二人で碁を打ったら、黒金座主は負けたんだね。親方に負けて、耳を斬られて死んだわけさ。ところが、黒金座主は死んだあとからも、大村の子が生まれるたびに、みんなクシャミをさせて魂を取ったって。それで、大村の子はみんな育たなかった。そしたら、あるとき子守(くわうむちゃー)が、「大村御殿(うふむらうるん)の後(くし)なかい 耳切(みみち)り坊主(ぼーじゅ)が立(た)っちょんどぉ〔大村御殿の後ろに耳切り坊主が立ってるよ〕鎌(いらな)ん刀(かたな)ん持(む)っ ちょんどぉ 泣(な)ちぃねえ耳をグスグス〔イラナも刀も持ってるよ。泣いたら耳をグスグス切られるよ〕」と歌ってるらしい。黒金座主は耳を斬られているから、泣いたら耳グスグスと斬られるよって歌ってるでしょう。この子守に黒金座主の魂が憑いているわけさ。その子守歌を聞いて、ある人が、「お前が歌っているのは、意味が分かるのか。」と聞くと、「私は分かりませんよ。私はなんて歌ったんですか。」と言って、自分でも分からないって。それでこの人は黒金座主が子供の魂を取っていたのを悟って、「こういうわけだよ。」と大村の家の人に教えたわけさ。「今度は子供がクシャミをしたら、クシャミをしたときに黒金座主が子供の魂を取るので、『クスケー。』と言いなさい。」と。だから、「子供がクシャミをしたら『クスケー』といいなさい」というのはこのときからなんだよ。そのあとから、大村御殿は栄えたって。 |
| 全体の記録時間数 | 4:46 |
| 物語の時間数 | 4:20 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |