
昔、ある村に、たいへん金持ちの主人がおりました。その主人は、遊廓通いばかりして、遊女と遊ぶのが好きだった。そうして、たびたび遊廓に行って遊んでいる内に、自分の妻に男の子が出来たって。主人は、子供のお祝いの時にどうしても自分の遊女でも連れてきて、芝居を盛大にやろうと考えた。そして、自分の家の使用人である男を遊廓に行かせて、その遊女を連れてくるように言いつけた。男は遊廓へ行ったが、あいにくその遊女は死んでしまっていなかった。がっかりして帰ってくる時に、ある墓の前で女の人が立っていたって。女は男に聞いた。「あなたはどこに行きましたか」「私の主人に男の子が生まれて、そのお祝いがあるんです。遊廓にこうこういうような遊女がいるから、連れてきなさいと言われたので、行きましたが、すでに亡くなっていました」「それじゃあ、私でもいいなら、私を連れて行ってもらえませんか」と女の人が言うので、男は、「はい」と言って、女の人を連れて行った。そしたら、芝居もよくできて、「こんなにできた芝居はないなあ」主人もたいへん喜んだそうです。ところが、その様子を隣のお婆さんが、戸の節が一つなくなったところから見たら、この女の人は、上半身は見えるんだけれども、下が見えない。これは生きている人間ではないと。それで、その女がいよいよ芝居も済んで帰るときにあとをつけて行ったって。すると、墓の前で、女が、「今帰りました」と言うそうです。そしたら、「あなたは今までどこに行っていたか」と中から返事がした。「じつは、こうこういうふうで、私が前に遊んでいた人に男の子ができて、私も芝居に誘われて行きました」「あなたは、後生の者が、生きた人間の所で芝居をやったのか。そんなことは許されない。墓の中に入れることはできない」と。そうして女の人は断られたけれど、どうしても墓の中に入らなければいけない。女は墓の中の後生の人に言った。「それでは、私がその男の子の魂を取ってきたら、入れてもらえますか」と。「うん、それなら入れてやろう。だが、人間というのは勘が早いから、あなたはどんなにしてその子の魂を取るのか」と聞いたら、「子供がくしゃみをした時に取ります」と。「しかしくしゃみをした時に、人間が『クスクェーバナ』と言ったら、子供の魂を取ることは出来ないよ。「大丈夫です」と。そう言ったもんだから、あとをつけて行った主人はそれだけ聞いて、自分の家にかけて行って、「子供がくしゃみしたら、その魂を取ると言ってたよ。『クスクェーバナ』と言ったら魂を取ることができないと言ってたから」と家の者に伝えた。しばらくして、その子がくしゃみをしたそうです。そのときに、「クスクェーバナ」と言ったので、その子供は魂をとられずにすんだそうです。
| レコード番号 | 47O410907 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C029 |
| 決定題名 | クスクェー由来(共通語) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 兼城太勇 |
| 話者名かな | かねしろたいゆう |
| 生年月日 | 19120415 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 与那城村照間 |
| 記録日 | 19861125 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 与那城村T04B06 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | よなぐすくの民話P124 |
| キーワード | 金持ち,遊廓通い,妻に男の子,子供のお祝い,遊女,墓の前,隣のお婆さん,戸の節,後生の者,子の魂,くしゃみ,クスクェーバナ |
| 梗概(こうがい) | 昔、ある村に、たいへん金持ちの主人がおりました。その主人は、遊廓通いばかりして、遊女と遊ぶのが好きだった。そうして、たびたび遊廓に行って遊んでいる内に、自分の妻に男の子が出来たって。主人は、子供のお祝いの時にどうしても自分の遊女でも連れてきて、芝居を盛大にやろうと考えた。そして、自分の家の使用人である男を遊廓に行かせて、その遊女を連れてくるように言いつけた。男は遊廓へ行ったが、あいにくその遊女は死んでしまっていなかった。がっかりして帰ってくる時に、ある墓の前で女の人が立っていたって。女は男に聞いた。「あなたはどこに行きましたか」「私の主人に男の子が生まれて、そのお祝いがあるんです。遊廓にこうこういうような遊女がいるから、連れてきなさいと言われたので、行きましたが、すでに亡くなっていました」「それじゃあ、私でもいいなら、私を連れて行ってもらえませんか」と女の人が言うので、男は、「はい」と言って、女の人を連れて行った。そしたら、芝居もよくできて、「こんなにできた芝居はないなあ」主人もたいへん喜んだそうです。ところが、その様子を隣のお婆さんが、戸の節が一つなくなったところから見たら、この女の人は、上半身は見えるんだけれども、下が見えない。これは生きている人間ではないと。それで、その女がいよいよ芝居も済んで帰るときにあとをつけて行ったって。すると、墓の前で、女が、「今帰りました」と言うそうです。そしたら、「あなたは今までどこに行っていたか」と中から返事がした。「じつは、こうこういうふうで、私が前に遊んでいた人に男の子ができて、私も芝居に誘われて行きました」「あなたは、後生の者が、生きた人間の所で芝居をやったのか。そんなことは許されない。墓の中に入れることはできない」と。そうして女の人は断られたけれど、どうしても墓の中に入らなければいけない。女は墓の中の後生の人に言った。「それでは、私がその男の子の魂を取ってきたら、入れてもらえますか」と。「うん、それなら入れてやろう。だが、人間というのは勘が早いから、あなたはどんなにしてその子の魂を取るのか」と聞いたら、「子供がくしゃみをした時に取ります」と。「しかしくしゃみをした時に、人間が『クスクェーバナ』と言ったら、子供の魂を取ることは出来ないよ。「大丈夫です」と。そう言ったもんだから、あとをつけて行った主人はそれだけ聞いて、自分の家にかけて行って、「子供がくしゃみしたら、その魂を取ると言ってたよ。『クスクェーバナ』と言ったら魂を取ることができないと言ってたから」と家の者に伝えた。しばらくして、その子がくしゃみをしたそうです。そのときに、「クスクェーバナ」と言ったので、その子供は魂をとられずにすんだそうです。 |
| 全体の記録時間数 | 5:57 |
| 物語の時間数 | 5:24 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | 〇 |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |