無蔵水(シマグチ)

むぞうみず(しまぐち)

概要

昔、今から二、三百年前のずっと大昔の話ですが、伊平屋村田名部落に、姿、形も華やぐ大層美しい女がいました。その女の名前は、新垣マジルーって名ですが、ある日、旅の漁師が釣りをしに田名部落へ来て、二、三か月も部落で釣りをしながら生活していたようです。それで、その新垣マジルーは、もう二、三か月もたつと、その漁師と知り合いになって、夫婦なるって約束したようだね。それから、その漁師は、また釣りをしに行って帰っては来、それから、二、三回もまた釣りしに行ったようですが、やがて釣りに行って、もう嵐に遭って難船(なんしん)してもう帰ってこなくなったから、部落の若者たちが、「今まで二か月、三か月たっても帰ってこないのは、あれはもう亡くなっているさ。帰ってこないのだから、妻(とぅじ)になれ。」ってからもう大変執心していたようですが、新垣マジルーは、「自分の夫は帰ってきますよ。必ず帰ってきますとも。あの人が来るまでは、絶対他の人の妻にはならない。あの人の妻になる。」って断っていたが、やはり毎日夕方になると、若者達が執心してから通って来るから、後はもうそこには居れなかったのか、家から逃げてから田名(だ な)の後に無蔵水(ん ぞ みじ)って言う高い石があるのですが、あの無蔵水の石の上に行き、機織りしながら朝な夕な自分の思いを寄せている男が帰ってくるのを龍宮の神様に念願(にんぐわん)していたら、三か月目には、とうとうずっと遠い沖から見覚えのある葵蒲笠(く ば がさ)が目に付いた。その葵蒲笠が目に入ったから、じっと見ているうちにとうとう自分のいる無蔵水の前に近寄ってきた。すると、マジルーの身振りで、その男はもう分かったので、無蔵水のその石の前へ船は着いた。後はもう自分の思っていたその男に出会うことができ、とうとうそこで縁を結び、一緒になることができた。 その女に掛けての歌ですが、「大田名(うふだな)ぬ後(くし)に 無蔵水(んぞみじ)ぬあしが〔田名の後に無蔵水があるが〕夫(うとぅ)振(ふ)ゆる女(あんぐわ)ありに浴(あ)みし〔夫を捨てる女はあれを浴びせ見習わせよ〕「夫(うとぅ)ん振(ふり)やびらん人(ひとぅ)ん振(ふり)やびらん〔夫も他の人も振っていません〕今(なま)童(わらび)やてぃる一人(ちゅい)や振(ふ)たる〔今、子どもだから、一人だけ振った。〕」って、歌垣をしたという話なんですが、それはもう本当に、田名部落にあった話。

再生時間:4:49

このお話の動画を見る

クリックすると動画が再生されます。

  • 島言葉で見る

    話者のお話を元にした方言バージョン

  • 共通語で見る

    話者のお話を元にした共通語バージョン

  • この映像の著作権は、沖縄県立博物館・美術館にあります。

    研究および教育普及目的以外での無断使用は固く禁じます。
    コンテンツの複製、利用については、博物館に必ず許可を得てください。

  • アンケートにご協力お願いします。

民話詳細DATA

レコード番号 47O380937
CD番号 47O38C047
決定題名 無蔵水(シマグチ)
話者がつけた題名
話者名 名嘉ヤス
話者名かな なかやす
生年月日 19141207
性別
出身地 沖縄県島尻郡伊平屋村字我喜屋
記録日 19800908
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 島尻郡伊平屋村我喜屋 T10 A03 
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 20
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 伊平屋村民話集 P21
キーワード 伊平屋村,田名部落,新垣マジルー,旅,漁師,夫婦,約束,嵐,難船,田名,無蔵水,機織り,龍宮の神様,念願,葵蒲笠,歌,歌垣
梗概(こうがい) 昔、今から二、三百年前のずっと大昔の話ですが、伊平屋村田名部落に、姿、形も華やぐ大層美しい女がいました。その女の名前は、新垣マジルーって名ですが、ある日、旅の漁師が釣りをしに田名部落へ来て、二、三か月も部落で釣りをしながら生活していたようです。それで、その新垣マジルーは、もう二、三か月もたつと、その漁師と知り合いになって、夫婦なるって約束したようだね。それから、その漁師は、また釣りをしに行って帰っては来、それから、二、三回もまた釣りしに行ったようですが、やがて釣りに行って、もう嵐に遭って難船(なんしん)してもう帰ってこなくなったから、部落の若者たちが、「今まで二か月、三か月たっても帰ってこないのは、あれはもう亡くなっているさ。帰ってこないのだから、妻(とぅじ)になれ。」ってからもう大変執心していたようですが、新垣マジルーは、「自分の夫は帰ってきますよ。必ず帰ってきますとも。あの人が来るまでは、絶対他の人の妻にはならない。あの人の妻になる。」って断っていたが、やはり毎日夕方になると、若者達が執心してから通って来るから、後はもうそこには居れなかったのか、家から逃げてから田名(だ な)の後に無蔵水(ん ぞ みじ)って言う高い石があるのですが、あの無蔵水の石の上に行き、機織りしながら朝な夕な自分の思いを寄せている男が帰ってくるのを龍宮の神様に念願(にんぐわん)していたら、三か月目には、とうとうずっと遠い沖から見覚えのある葵蒲笠(く ば がさ)が目に付いた。その葵蒲笠が目に入ったから、じっと見ているうちにとうとう自分のいる無蔵水の前に近寄ってきた。すると、マジルーの身振りで、その男はもう分かったので、無蔵水のその石の前へ船は着いた。後はもう自分の思っていたその男に出会うことができ、とうとうそこで縁を結び、一緒になることができた。 その女に掛けての歌ですが、「大田名(うふだな)ぬ後(くし)に 無蔵水(んぞみじ)ぬあしが〔田名の後に無蔵水があるが〕夫(うとぅ)振(ふ)ゆる女(あんぐわ)ありに浴(あ)みし〔夫を捨てる女はあれを浴びせ見習わせよ〕「夫(うとぅ)ん振(ふり)やびらん人(ひとぅ)ん振(ふり)やびらん〔夫も他の人も振っていません〕今(なま)童(わらび)やてぃる一人(ちゅい)や振(ふ)たる〔今、子どもだから、一人だけ振った。〕」って、歌垣をしたという話なんですが、それはもう本当に、田名部落にあった話。
全体の記録時間数 5:27
物語の時間数 4:49
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

トップに戻る

TOP