真玉橋の人柱(共通語)

概要

那覇の国場(こくば)から南風原の津嘉山(つかざん)に行くところの橋が真玉橋(まだんばし)でしょ。人柱を立てたというのはあの橋ですよ。あそこはね、ずっと大昔は橋がなくて船で渡しよったんですよ。それがようやく橋を架けて歩いて渡れるようになっていたが、暴風の時なんかはね、橋が流されて人が歩かれんし、また大水の出たときも橋が流されて、何人という人も流されて死んだからね、橋の工事をする地頭代(じとぅでー)に、首里の王様からね、「これはもうどうにかして、丈夫に長らく持つような橋にしなければいかん。」と命令されたから、向こうの豊見城(とみぐすく)の地頭代(じとぅでー)が、今の村長のような役目だから、その地頭代が全ての豊見城役員なんか集めて吟味しているときにですよ、豆腐売(とうふう)やーしている一人の女が来たらしいです。この女も御神人(うかみんちゅ)らしくて、何かあるとよくこれを当てる人らしいよ。「あんた方が吟味するのは何の事ですか。」と言うたからね。村長ほかの手下の者が、「お前は、百姓の女のくせに、こんなに大きな問題で話し合っている前にきて、でしゃばってこれは何か。」と言ったら、その女は、「ああ、どんな百姓でもまた女でも、何か分かるところがあるから、聞いてみたんです。」と言うていたんですよ。だけど地頭代は、「この女がこんなことを聞くのは不思議だ。橋を架けるのに何かこれは分かる所もあるだろう。まずどんなか聞いてみよう。」と言うてね、「どんなことが分かるか。」と言うたらね、「なんぼあんた方が苦労してもまた造っても、この橋は大雨がきたりしたらすぐに崩されるよ。この橋は人間では完成できない。それで、この橋を造るときに、七元結(ななむとぅい)の髪の女の人を橋の人柱になしたならば、いつまでも長らえてね、あんた方は首里(すい)の王様にも褒められるよ。」と言うからね、役人が、「そうしたらば、この七元結(ななむとぅ)やーの女は、この村にいるか。」と言うたら、「ああ、これはおります。」とその女が言うから、だからもう早速、村中の女を集めて、皆一列に並べて、七元結(ななむとぅい)ある髪を調べてみたらね、この七結やーは、それを言った豆腐売(とうふう)やのこの女が当たっているわけさ。だからね、「これはもうお前の口から出たことであるから。」と言うたら、「ああ私はどんなしても、自分は神のシラウチであるから仕方ない。自分は人柱になってもうこの橋に埋められて、この橋を成功させて国を建てなければいかん。」と言うから、その女の人は、この橋のためにね、人柱になることになって、夫も連れてきてね、「お前の奥さんは七結の髪であるから、もう人柱になって国のために尽くすようにようにしなさい。」と言うていたらね、この女の人は二つになる女の子供一人産んでいてね、親はいよいよ生き埋めで別れるってときに、この自分の子供を抱いてね、「お母さんは人先に物を言うたから、この橋に人柱になって埋められるから、お前は大きくなっても人先に物を言わないようにしなさい。」と言うて、それから女はこの橋に埋められて、真玉橋を架けたら、どんな大雨でも流されない丈夫な橋になったそうだ。夫は、哀れして向こうの真玉橋の近くでは、子供を育てることは出来ないのでね、この二つなる子供をおんぶして、山原(やんばる)の屋我地に行ってね、田舎シュヤーという所に子供を連れて行って、綱なったり、いろいろな仕事をしてこの子供養っていたらね、この女の子供はね、非常に別嬪だが、親の遺言(い ごん)でチグー〔唖〕になってね、物を言わない。この真玉橋を架けた豊見城の地頭代は、死ぬ時に次の地頭代継がす長男の手捕まえてね、また遺言している。「自分は、あの女のために役目も務めて、こんなにも幸せにしている。あの親子は、今頃は向こうの山原に行って、もうお前と同じ年頃なっているから、お前はどんなことがあっても、あの親子を探して、あの女の娘を奥さんにしなさい。」この長男にはね、身分の同じ侍の方が、お母さんとたいがい相談して、「自分の娘を奥さんしてくれ。」と、奥さんにするようにしているがね、長男は父親の遺言を守って、「私は、お母さんの言うあの娘は、奥さんにはしない。私は父親の遺言にあるあの女を探して、あれが生きていれば、私はどんなことがあっても妻にする。」と言うてね、国頭の今日はあの村、明日はこの村言うて人探しして、「那覇からこういうふうな親子が来ていないか。今頃どこにどこにいるか。」と聞いて、あっちの村だと聞くとこっちからまたその村に行ってね、また次のあの村に行って、後はもう屋我地まで行ったらね、あっちこっちの美童(みやらび)達がね、屋我地の浜辺でマンナーを取ったりして遊んで歩いているから、この侍が行って、美童(みやらび)達に、「こういうふうな人間はこっちに来てないか。」と聞くと、「ああ、その人なら私等の友達で、やがて来ますよ。だがね、あれは物は言わないよ。それでも、顔がきれいな娘で、村でも評判者だから、私の奥さんしてくれとあっちこっちから皆結婚申込みされているよ。」「やっぱ、そうですか。そんなら、まずこの女に会うてからやっぱ話つけよう。」と言うているとね、その時にこの女が来たそうですよ。その女は、「謝敷板干瀬(じゃしちいたびし)に、うちゃいひく波や 謝敷美童ぬ 笑われ歯ぐち。」と歌われたように、きれいな娘だから、その侍は、「あんたを自分の奥さんにしたいから首里に行こう。」とこういう話をしたけど、やっぱチーグーなっているからね、ものは言わんけど、身振りで断っているらしい。侍は、その娘の親にもお土産もたくさんくれてね、あれこれ話したら、その娘の父親は、「私の娘は、身分の低い者の子で、田舎の者であるから、向こうに行ったらばまたそれでやられるから、あんたの嫁にはできん。」と断ると、長男は、「いやそんなことはないから、必ず行こう。今までこんなに哀れしていたが、これからは、あんたの娘さんを私の奥して、僕等と那覇で暮らしてください。」と言うて、この女と父親を連れてね、首里上(しゅりあがり)りってね、首里に行って、「自分の親の遺言であるから、この人を奥さんにします。」とお母さんにそう言うたらね、お母さんは、「どんな親の遺言であっても、私等は侍であって、お前はこっち豊見城の地頭代になっている。ものを言わん女を妻にして、どうして政治をとってこの村を治めることができるか。この娘がものさえ言えれば、もう嫁にして、私を前にして言うてる父親の遺言を守るがね、これは物言わないからもう止む得ない。仕方がないから、この娘は返して、もう自分が相談してるあの娘を奥さんにしなさい。」と言うているから、その口をきけない娘のお父さんは、「お前はね、母親が人柱になったから、今までこんなして哀れして、情けでもって国元から皆にお土産ももらって、侍の奥さんになれるというから山原からやっぱ来たわけであるが、こういうふうになったら、どういう顔を持って山原(やんばる)に帰っていくか、もう親子こっちで死ぬより他ない。」と言うてね、この女の子供を抱きしめて泣いている。そして、自分の亡くなった奥さんにさ、「お前はね、国を助けて私らを幸せにさせるかと思ったら、こういうふうにまたも私らこんなにして元の姿に変えていくか。お前には死んでも後生がないのか。後生があるなら、今のお前の娘の立場は、ものさえ言えば、こっちの嫁に取ると言うがどうか。」と言うて、娘を叩きなから泣いていたらね、そのときハベル〔蝶〕が飛んで来てね、そしたら、その娘がお父さんの手外して、「まじゅ、待てハベル。物いらちたぼり。〔まず待て蝶よ。物を言わせてください〕。」という歌を娘は、自分で歌ったからね、「お父さん、里主。」と言うてね、そうして物言い始めたからもうびっくりしていたら、「自分は親の遺言でチグーになったわけで、人より先に物言うてはいけないというその遺言でこういうふうになっています。そしたら、お母さんが、ハベルになっ来て私に今ものを言わした。」と言うてね、それで、それからやっぱこの橋も永続的に壊れないで、人柱になった人の娘は、侍の奥さんになって、その娘の父親も一緒になって侍の家で暮らしたという。

再生時間:17:15

民話詳細DATA

レコード番号 47O380893
CD番号 47O38C045
決定題名 真玉橋の人柱(共通語)
話者がつけた題名
話者名 仲里文蔵
話者名かな なかざとぶんぞう
生年月日 19101107
性別
出身地 沖縄県島尻郡伊平屋村字田名
記録日 19800907
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 島尻郡伊平屋村田名 T08 B03 
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 12,60
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 伊平屋村民話集 P103
キーワード 那覇,国場,南風原,津嘉山,真玉橋,人柱,暴風,大水,地頭代,首里,王様,豊見城,豆腐売,御神人,七元結,髪,神,シラウチ,山原,屋我地,田舎シュヤー,遺言,チグー,国頭,美童,みやらび,謝敷板干瀬,謝敷美童,チーグー,首里上り,後生,ハベル,歌,里主
梗概(こうがい) 那覇の国場(こくば)から南風原の津嘉山(つかざん)に行くところの橋が真玉橋(まだんばし)でしょ。人柱を立てたというのはあの橋ですよ。あそこはね、ずっと大昔は橋がなくて船で渡しよったんですよ。それがようやく橋を架けて歩いて渡れるようになっていたが、暴風の時なんかはね、橋が流されて人が歩かれんし、また大水の出たときも橋が流されて、何人という人も流されて死んだからね、橋の工事をする地頭代(じとぅでー)に、首里の王様からね、「これはもうどうにかして、丈夫に長らく持つような橋にしなければいかん。」と命令されたから、向こうの豊見城(とみぐすく)の地頭代(じとぅでー)が、今の村長のような役目だから、その地頭代が全ての豊見城役員なんか集めて吟味しているときにですよ、豆腐売(とうふう)やーしている一人の女が来たらしいです。この女も御神人(うかみんちゅ)らしくて、何かあるとよくこれを当てる人らしいよ。「あんた方が吟味するのは何の事ですか。」と言うたからね。村長ほかの手下の者が、「お前は、百姓の女のくせに、こんなに大きな問題で話し合っている前にきて、でしゃばってこれは何か。」と言ったら、その女は、「ああ、どんな百姓でもまた女でも、何か分かるところがあるから、聞いてみたんです。」と言うていたんですよ。だけど地頭代は、「この女がこんなことを聞くのは不思議だ。橋を架けるのに何かこれは分かる所もあるだろう。まずどんなか聞いてみよう。」と言うてね、「どんなことが分かるか。」と言うたらね、「なんぼあんた方が苦労してもまた造っても、この橋は大雨がきたりしたらすぐに崩されるよ。この橋は人間では完成できない。それで、この橋を造るときに、七元結(ななむとぅい)の髪の女の人を橋の人柱になしたならば、いつまでも長らえてね、あんた方は首里(すい)の王様にも褒められるよ。」と言うからね、役人が、「そうしたらば、この七元結(ななむとぅ)やーの女は、この村にいるか。」と言うたら、「ああ、これはおります。」とその女が言うから、だからもう早速、村中の女を集めて、皆一列に並べて、七元結(ななむとぅい)ある髪を調べてみたらね、この七結やーは、それを言った豆腐売(とうふう)やのこの女が当たっているわけさ。だからね、「これはもうお前の口から出たことであるから。」と言うたら、「ああ私はどんなしても、自分は神のシラウチであるから仕方ない。自分は人柱になってもうこの橋に埋められて、この橋を成功させて国を建てなければいかん。」と言うから、その女の人は、この橋のためにね、人柱になることになって、夫も連れてきてね、「お前の奥さんは七結の髪であるから、もう人柱になって国のために尽くすようにようにしなさい。」と言うていたらね、この女の人は二つになる女の子供一人産んでいてね、親はいよいよ生き埋めで別れるってときに、この自分の子供を抱いてね、「お母さんは人先に物を言うたから、この橋に人柱になって埋められるから、お前は大きくなっても人先に物を言わないようにしなさい。」と言うて、それから女はこの橋に埋められて、真玉橋を架けたら、どんな大雨でも流されない丈夫な橋になったそうだ。夫は、哀れして向こうの真玉橋の近くでは、子供を育てることは出来ないのでね、この二つなる子供をおんぶして、山原(やんばる)の屋我地に行ってね、田舎シュヤーという所に子供を連れて行って、綱なったり、いろいろな仕事をしてこの子供養っていたらね、この女の子供はね、非常に別嬪だが、親の遺言(い ごん)でチグー〔唖〕になってね、物を言わない。この真玉橋を架けた豊見城の地頭代は、死ぬ時に次の地頭代継がす長男の手捕まえてね、また遺言している。「自分は、あの女のために役目も務めて、こんなにも幸せにしている。あの親子は、今頃は向こうの山原に行って、もうお前と同じ年頃なっているから、お前はどんなことがあっても、あの親子を探して、あの女の娘を奥さんにしなさい。」この長男にはね、身分の同じ侍の方が、お母さんとたいがい相談して、「自分の娘を奥さんしてくれ。」と、奥さんにするようにしているがね、長男は父親の遺言を守って、「私は、お母さんの言うあの娘は、奥さんにはしない。私は父親の遺言にあるあの女を探して、あれが生きていれば、私はどんなことがあっても妻にする。」と言うてね、国頭の今日はあの村、明日はこの村言うて人探しして、「那覇からこういうふうな親子が来ていないか。今頃どこにどこにいるか。」と聞いて、あっちの村だと聞くとこっちからまたその村に行ってね、また次のあの村に行って、後はもう屋我地まで行ったらね、あっちこっちの美童(みやらび)達がね、屋我地の浜辺でマンナーを取ったりして遊んで歩いているから、この侍が行って、美童(みやらび)達に、「こういうふうな人間はこっちに来てないか。」と聞くと、「ああ、その人なら私等の友達で、やがて来ますよ。だがね、あれは物は言わないよ。それでも、顔がきれいな娘で、村でも評判者だから、私の奥さんしてくれとあっちこっちから皆結婚申込みされているよ。」「やっぱ、そうですか。そんなら、まずこの女に会うてからやっぱ話つけよう。」と言うているとね、その時にこの女が来たそうですよ。その女は、「謝敷板干瀬(じゃしちいたびし)に、うちゃいひく波や 謝敷美童ぬ 笑われ歯ぐち。」と歌われたように、きれいな娘だから、その侍は、「あんたを自分の奥さんにしたいから首里に行こう。」とこういう話をしたけど、やっぱチーグーなっているからね、ものは言わんけど、身振りで断っているらしい。侍は、その娘の親にもお土産もたくさんくれてね、あれこれ話したら、その娘の父親は、「私の娘は、身分の低い者の子で、田舎の者であるから、向こうに行ったらばまたそれでやられるから、あんたの嫁にはできん。」と断ると、長男は、「いやそんなことはないから、必ず行こう。今までこんなに哀れしていたが、これからは、あんたの娘さんを私の奥して、僕等と那覇で暮らしてください。」と言うて、この女と父親を連れてね、首里上(しゅりあがり)りってね、首里に行って、「自分の親の遺言であるから、この人を奥さんにします。」とお母さんにそう言うたらね、お母さんは、「どんな親の遺言であっても、私等は侍であって、お前はこっち豊見城の地頭代になっている。ものを言わん女を妻にして、どうして政治をとってこの村を治めることができるか。この娘がものさえ言えれば、もう嫁にして、私を前にして言うてる父親の遺言を守るがね、これは物言わないからもう止む得ない。仕方がないから、この娘は返して、もう自分が相談してるあの娘を奥さんにしなさい。」と言うているから、その口をきけない娘のお父さんは、「お前はね、母親が人柱になったから、今までこんなして哀れして、情けでもって国元から皆にお土産ももらって、侍の奥さんになれるというから山原からやっぱ来たわけであるが、こういうふうになったら、どういう顔を持って山原(やんばる)に帰っていくか、もう親子こっちで死ぬより他ない。」と言うてね、この女の子供を抱きしめて泣いている。そして、自分の亡くなった奥さんにさ、「お前はね、国を助けて私らを幸せにさせるかと思ったら、こういうふうにまたも私らこんなにして元の姿に変えていくか。お前には死んでも後生がないのか。後生があるなら、今のお前の娘の立場は、ものさえ言えば、こっちの嫁に取ると言うがどうか。」と言うて、娘を叩きなから泣いていたらね、そのときハベル〔蝶〕が飛んで来てね、そしたら、その娘がお父さんの手外して、「まじゅ、待てハベル。物いらちたぼり。〔まず待て蝶よ。物を言わせてください〕。」という歌を娘は、自分で歌ったからね、「お父さん、里主。」と言うてね、そうして物言い始めたからもうびっくりしていたら、「自分は親の遺言でチグーになったわけで、人より先に物言うてはいけないというその遺言でこういうふうになっています。そしたら、お母さんが、ハベルになっ来て私に今ものを言わした。」と言うてね、それで、それからやっぱこの橋も永続的に壊れないで、人柱になった人の娘は、侍の奥さんになって、その娘の父親も一緒になって侍の家で暮らしたという。
全体の記録時間数 17:34
物語の時間数 17:15
言語識別 共通語
音源の質
テープ番号
予備項目1

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