
糸満の根人(にーちゅ)の方がおってですよ、この人は多分昔の区長のようなことをしている人だったでしょうね。ところが金銭に困って、今度は薩摩の侍あがりの商人からですね、来年の三月に返す約束でお金を借りたようです。 ところが、次の年の三月の返済日になっても、金の準備はできないし、向こうからは、この薩摩の商人が催促に来ているんですよ。それで、「今しばらくは払えないけれど、あと二、三ヵ月待ったら金ができるからその間まで待ってくれんか。」というふうなお願いしたわけですよ。そうしたところが相手は怒ってですね、「貴様、約束通りにどうして払わんか。人を侮辱するなら、切り捨ててやる。」
と言って、剣を抜いて殺そうと思った途端に、この人が、「意地ぬ出(い)じらー手(てぃー)引き、手(てぃー)ぬ出(い)じらー意地引き〔怒りが出たら手を引っこめ、手が出たら、怒りを鎮めろ〕。」というふうなことを言うたらしいですよ。そうしたところ、相手も沖縄の方言が分かっておったんでしょうね。「そうか、そうだったら来年の三月までには、またきっと来るから、そのときに返してくれ。」というふうな約束で、自分はお帰りになったと。 そして、この薩摩の商人が家に帰ったところが、その商人の留守の家には、商人のお母さんと嫁の二人の家族がおったらしい。そして、物騒な世の中なのに、もう嫁が留守番をしているのですからね、「これは危険だ。」と、夜寝るときには、お母さんは男の服装をしてですね、また妻は普通の服装で寝ておったらしいです。それで、この商人が家の戸を開けてみたら、妻が男と寝ているような格好でいるのを見たから、「こいつはもう間男しているな。切って捨てようか。」と言ってね、剣を振り回したところが、その途端に、糸満のあの根人(にーちゅ)の方が言った、「ちょっと待てよ。糸満のあの根人(にーちゅ)は『意地のいじらー手引き、手ぬいじらー意地引き』というふうなこと言うたから、まずは確かめてから、その始末をつけよう。」
と言って、確かめてみたところが、男に見えたのは、自分のお母さんだっから、もし、これを切った場合には、自分のお母さんの命も妻の命もないでしょう。「もうあの人の言うことを聞かなかったら、親子大変なことになりよったさ。あの人は命の恩人だ。あの糸満の人に貸した金は絶対取らん。」と、感謝して、それから、翌年に糸満に行ったらしいんです。そうしたところが、糸満の根人(にーちゅ)の方は、またお金をね、準備して待っておったらしい。だから、薩摩の商人が来ると、「さあ、どうぞ入ってください。」と薩摩の商人にお茶もあげて、御飯もあげて、それから、「どうもありがとうございます。長い間貸してもらって、返済します。」というふうなことを言って、お金を返済しようとすると、ところが、本人はもう、「あなたは恩人だからね、恩人のあんたからは、決してお金を取ることはできない。」と言ってね、全然取らん。糸満の人は、また、義理堅かったんでしょうね。「いや、これは、もう恩義のあるお金ですから、ぜひ取って下さい。」「いや、君のおかげで僕のお母さんと妻が助かっておるんだ。この金は私取らんから。」 それから、こっちは払うと言い、向こうは取らんと押し問答してですね、言い合いしておったんですがね、糸満の根人が、「もうそうであったら、こっちの岩の下に埋めたらどうですか。」というふうなことで、そのお金をそこの岩の下に埋めたから、それが糸満の白銀堂の始まりということになったらしいです。 この白銀堂は、今みんなが参拝するようになった。
| レコード番号 | 47O380743 |
|---|---|
| CD番号 | 47O38C037 |
| 決定題名 | 白銀堂由来(共通語) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 上原忠信 |
| 話者名かな | うえはらちゅうしん |
| 生年月日 | 19121130 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県糸満市町端 |
| 記録日 | 19800907 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 島尻郡伊平屋村前泊 T03 A09 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 12,52 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 伊平屋村民話集 P99 |
| キーワード | 糸満,根人,薩摩,侍,商人,返済,意地,留守,剣,恩人,白銀堂 |
| 梗概(こうがい) | 糸満の根人(にーちゅ)の方がおってですよ、この人は多分昔の区長のようなことをしている人だったでしょうね。ところが金銭に困って、今度は薩摩の侍あがりの商人からですね、来年の三月に返す約束でお金を借りたようです。 ところが、次の年の三月の返済日になっても、金の準備はできないし、向こうからは、この薩摩の商人が催促に来ているんですよ。それで、「今しばらくは払えないけれど、あと二、三ヵ月待ったら金ができるからその間まで待ってくれんか。」というふうなお願いしたわけですよ。そうしたところが相手は怒ってですね、「貴様、約束通りにどうして払わんか。人を侮辱するなら、切り捨ててやる。」 と言って、剣を抜いて殺そうと思った途端に、この人が、「意地ぬ出(い)じらー手(てぃー)引き、手(てぃー)ぬ出(い)じらー意地引き〔怒りが出たら手を引っこめ、手が出たら、怒りを鎮めろ〕。」というふうなことを言うたらしいですよ。そうしたところ、相手も沖縄の方言が分かっておったんでしょうね。「そうか、そうだったら来年の三月までには、またきっと来るから、そのときに返してくれ。」というふうな約束で、自分はお帰りになったと。 そして、この薩摩の商人が家に帰ったところが、その商人の留守の家には、商人のお母さんと嫁の二人の家族がおったらしい。そして、物騒な世の中なのに、もう嫁が留守番をしているのですからね、「これは危険だ。」と、夜寝るときには、お母さんは男の服装をしてですね、また妻は普通の服装で寝ておったらしいです。それで、この商人が家の戸を開けてみたら、妻が男と寝ているような格好でいるのを見たから、「こいつはもう間男しているな。切って捨てようか。」と言ってね、剣を振り回したところが、その途端に、糸満のあの根人(にーちゅ)の方が言った、「ちょっと待てよ。糸満のあの根人(にーちゅ)は『意地のいじらー手引き、手ぬいじらー意地引き』というふうなこと言うたから、まずは確かめてから、その始末をつけよう。」 と言って、確かめてみたところが、男に見えたのは、自分のお母さんだっから、もし、これを切った場合には、自分のお母さんの命も妻の命もないでしょう。「もうあの人の言うことを聞かなかったら、親子大変なことになりよったさ。あの人は命の恩人だ。あの糸満の人に貸した金は絶対取らん。」と、感謝して、それから、翌年に糸満に行ったらしいんです。そうしたところが、糸満の根人(にーちゅ)の方は、またお金をね、準備して待っておったらしい。だから、薩摩の商人が来ると、「さあ、どうぞ入ってください。」と薩摩の商人にお茶もあげて、御飯もあげて、それから、「どうもありがとうございます。長い間貸してもらって、返済します。」というふうなことを言って、お金を返済しようとすると、ところが、本人はもう、「あなたは恩人だからね、恩人のあんたからは、決してお金を取ることはできない。」と言ってね、全然取らん。糸満の人は、また、義理堅かったんでしょうね。「いや、これは、もう恩義のあるお金ですから、ぜひ取って下さい。」「いや、君のおかげで僕のお母さんと妻が助かっておるんだ。この金は私取らんから。」 それから、こっちは払うと言い、向こうは取らんと押し問答してですね、言い合いしておったんですがね、糸満の根人が、「もうそうであったら、こっちの岩の下に埋めたらどうですか。」というふうなことで、そのお金をそこの岩の下に埋めたから、それが糸満の白銀堂の始まりということになったらしいです。 この白銀堂は、今みんなが参拝するようになった。 |
| 全体の記録時間数 | 3:28 |
| 物語の時間数 | 3:08 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | △ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |