べんとうのおかえし
人の家に使われている子供が、畑を耕しに弁当を持っていくが、神様がその弁当を全部食べてしまった。それで、お腹がすいてどうしようもないので、「今日は私に二人分の弁当を持たせてください」と主人に願った。(子供が)「目の前に置いてある弁当が食べられているのに全然分からない。私に弁当を作って持たせてくれているが、私は食べていません。お腹をすかせて畑を耕している」(というと、主人は)「お前は(弁当を)持っていっているのに、弁当を盗まれても分からないのか」と怒る。今度は、(その子が)願ったとおり二人分の弁当を作って持たさせた。この時ひょっと首を上げてみると、その人が弁当を開けて食べていた。「これまで私はひもじい思いをしていたが、あなたが私の弁当を召し上がっていたのですね」と(子供が)いうと、「私は旅から旅へまわっている者だが、お前があの弁当を私にくれるのら、今また家までいくのだが、あの弁当を譲ってくれないか」といった。「そういうことなら召し上がって戻ってきてください」と(子供がいった)。(神は)「私は三世相もしているので、一度は遊びにきなさいね」といい、そして「来るときは大きい家に入ってから来なさいよ」といった。「はい」といって行く。「どこどこへ行くのだが宿を貸してください」と子供がいうと、「何しに行くのか」ときかれ、かくかくしかじかでと答えた。この家には大変美しい娘がいた。ところが17、8になった頃、一言もしゃべらないおしになった。(その家の主人が)「それなら、私の娘はおしになってしまっているがどうしてなのかきいてきてくれないか」と頼むと、(子供は)引き受けた。さらに歩いていくと日が暮れたので、ある家に入って行った。そこの主人が「どこへ行くのか」ときくと、「私はどこそこにスーコーヤーが住んでいらっしゃるので、スーコーに行く」といった。「それなら、年から年中咲いていた私の花木が、この頃咲かなくなったがどうしてなのか。ついでにこれもきいてくれないか」と(その家の主人がいった)。そこの家を出てしばらく行くと、離れ島になっていて舟がないので渡れない。歩いて行くと山から蛇がスルスルと下りて来て、「お前はどこへ行くのか」という。子供が、「向こうへ渡りたいのだが渡れない」というと、(蛇は)「私は海に千年、陸に千年生きてきたが、自分の力では空に昇れなくなってしまった。どうしてなのかそれもきいてきてもらいたい」という。子供はこれも引き受けた。今度はスンチャラクドゥで、蛇のことから(先に)きくと、「あれは欲張りで、左の目の中にヌブシの玉が二つ入っているから天に昇れない」ということだった。「それではどうしたらいいのか」と子供がきくと、「二つの玉のうちの一つをだれかに分けると、簡単に昇ることができるよ」。子供が神様がいったとおりのことを話すと、蛇は「私のことをやってくれたのはお前だから、ヌブシの玉を一つあげよう」といった。するとたちまち黒雲が湧き立ち、雷が鳴りひびいて蛇は煙を巻き上げ天に昇った。もう大丈夫と思った蛇は、「お前にやったものは返しなさい」という。返すと蛇は再び落ちてきた。「これはやっぱりお前にやる」といって(蛇はヌブシの玉を)子供に渡し、天に昇って行った。次に、花木は西に咲いている木の枝を一つ取ると、この花木は年から年中咲くという。それで、ここの主人も「私のことをやってくれたのはお前なので、この枝はお前にやろう」といって、切ってきた枝をくれた。次におしになった娘のことだが、門の前で遊んでいたその娘が、その子(男の子)を見て今まで一言もしゃべらなかったのに急に「来る、来る」といって裏座に隠れた。(娘の親たちは)「娘がしゃべれるようになったのはあなたのお陰だ。この娘と夫婦になって私たちの後を継いでほしい」ということになった。
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レコード番号 | 47O230222 |
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CD番号 | 47O23C013 |
決定題名 | 弁当のお返し(方言) |
話者がつけた題名 | 山神と童子 |
話者名 | 与那嶺ヒロ |
話者名かな | よなみねひろ |
生年月日 | 19071001 |
性別 | 女 |
出身地 | 沖縄県那覇市久米 |
記録日 | 19760818 |
記録者の所属組織 | 沖縄国際大学口承研 |
元テープ番号 | 粟国T09A14 |
元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
分類 | 12 |
発句(ほっく) | - |
伝承事情 | - |
文字化資料 | 粟国島の民話P128 |
キーワード | 童,神様,弁当,三つの願い,長者 |
梗概(こうがい) | 人の家に使われている子供が、畑を耕しに弁当を持っていくが、神様がその弁当を全部食べてしまった。それで、お腹がすいてどうしようもないので、「今日は私に二人分の弁当を持たせてください」と主人に願った。(子供が)「目の前に置いてある弁当が食べられているのに全然分からない。私に弁当を作って持たせてくれているが、私は食べていません。お腹をすかせて畑を耕している」(というと、主人は)「お前は(弁当を)持っていっているのに、弁当を盗まれても分からないのか」と怒る。今度は、(その子が)願ったとおり二人分の弁当を作って持たさせた。この時ひょっと首を上げてみると、その人が弁当を開けて食べていた。「これまで私はひもじい思いをしていたが、あなたが私の弁当を召し上がっていたのですね」と(子供が)いうと、「私は旅から旅へまわっている者だが、お前があの弁当を私にくれるのら、今また家までいくのだが、あの弁当を譲ってくれないか」といった。「そういうことなら召し上がって戻ってきてください」と(子供がいった)。(神は)「私は三世相もしているので、一度は遊びにきなさいね」といい、そして「来るときは大きい家に入ってから来なさいよ」といった。「はい」といって行く。「どこどこへ行くのだが宿を貸してください」と子供がいうと、「何しに行くのか」ときかれ、かくかくしかじかでと答えた。この家には大変美しい娘がいた。ところが17、8になった頃、一言もしゃべらないおしになった。(その家の主人が)「それなら、私の娘はおしになってしまっているがどうしてなのかきいてきてくれないか」と頼むと、(子供は)引き受けた。さらに歩いていくと日が暮れたので、ある家に入って行った。そこの主人が「どこへ行くのか」ときくと、「私はどこそこにスーコーヤーが住んでいらっしゃるので、スーコーに行く」といった。「それなら、年から年中咲いていた私の花木が、この頃咲かなくなったがどうしてなのか。ついでにこれもきいてくれないか」と(その家の主人がいった)。そこの家を出てしばらく行くと、離れ島になっていて舟がないので渡れない。歩いて行くと山から蛇がスルスルと下りて来て、「お前はどこへ行くのか」という。子供が、「向こうへ渡りたいのだが渡れない」というと、(蛇は)「私は海に千年、陸に千年生きてきたが、自分の力では空に昇れなくなってしまった。どうしてなのかそれもきいてきてもらいたい」という。子供はこれも引き受けた。今度はスンチャラクドゥで、蛇のことから(先に)きくと、「あれは欲張りで、左の目の中にヌブシの玉が二つ入っているから天に昇れない」ということだった。「それではどうしたらいいのか」と子供がきくと、「二つの玉のうちの一つをだれかに分けると、簡単に昇ることができるよ」。子供が神様がいったとおりのことを話すと、蛇は「私のことをやってくれたのはお前だから、ヌブシの玉を一つあげよう」といった。するとたちまち黒雲が湧き立ち、雷が鳴りひびいて蛇は煙を巻き上げ天に昇った。もう大丈夫と思った蛇は、「お前にやったものは返しなさい」という。返すと蛇は再び落ちてきた。「これはやっぱりお前にやる」といって(蛇はヌブシの玉を)子供に渡し、天に昇って行った。次に、花木は西に咲いている木の枝を一つ取ると、この花木は年から年中咲くという。それで、ここの主人も「私のことをやってくれたのはお前なので、この枝はお前にやろう」といって、切ってきた枝をくれた。次におしになった娘のことだが、門の前で遊んでいたその娘が、その子(男の子)を見て今まで一言もしゃべらなかったのに急に「来る、来る」といって裏座に隠れた。(娘の親たちは)「娘がしゃべれるようになったのはあなたのお陰だ。この娘と夫婦になって私たちの後を継いでほしい」ということになった。 |
全体の記録時間数 | 6:51 |
物語の時間数 | 6:47 |
言語識別 | 方言 |
音源の質 | ◎ |
テープ番号 | - |
予備項目1 | - |