
宮古のナナハラという島で、親の代から犬を飼っている家があった。村の金持ちの人が嫁に来てくれといったが断っていた。他村の青年たちが、嫁に来てくれと頼んでも断ったので、(青年たちは)忍んで行った。(行く途中、一人の青年が)後生の人に出会った。「どこへ行くのか」と青年がきくと、後生の人は、「どこそこの娘は妻になってくれと頼んでも断っているそうだから、これから忍びに行くところだよ」と答えた。青年は「自分もそうだよ」とi言った。青年が「後生で一番怖いものは何か」ときくと、後生の人は「一番恐いのは朝のミーチチャー鳥の鳴き声だ」と言った。今度は後生の人が「現世では何が恐いか」ときいた。自分もその鳥が怖い、と話しながら二人は歩いていった。川を渡るところに来ると、その後生の人が「あんたはミーウイだな」と言った。「君は何か」とたずねると、「自分はフルーなのでシューは引けない。あんたはミーウイなのでシューが引ける」と言って、歩くときは後生の人はいつも下の方を歩き、青年は上の方を歩いた。青年が、「私が先に入っていく。私の妻になるというなら君は帰りなさい。私が断られたら君の妻にしなさい」と相談して一緒に行った。そして、この女の家に着くと、青年が先に入っていった。青年が女に、「あなたは他村の青年たちが嫁にしょうとしているのに、みんな断っているね。私の嫁になりなさい」と言うと、女は「いやだ」と言った。青年が「私を断ったら命がなくなるよ」と言うと、女は「何の権利があって命を取るのか。断る」と言った。そこで、青年は「私は断られた。今度は君が行きなさい」と言って、後世の人を行かせたところ、この人も断られた。後世の人は女の首をしめた。すると青年は急いで屋根の上に登り、着物の袖を振りながら鳴き声をあげた。後世の人は(驚いて)ピョンと飛んだ。青年が屋根から下りると、女の人は気絶していた。そこで女の頭を引いて息をふき返させた。青年は、「あなたは私の妻になったら命はあるが、断ったら後世に連れて行かれるよ」と言った。女は「命が助かったのであなたの妻になる」と言った。そのとき犬は家にはいなかった。親は犬を飼っていたが人を寄せ付けなかったので、二人でユミウジンを作った。「(犬は)昼は働いて疲れているので、私がすかして釜の側に連れて行って寝かせるから、その時、ユミウジンで突きなさいよ」と妻がいった。犬はよく働いて、最初は肉をくわえて来たが、しまいにはお金などを持ってくるようになった。その妻が子供を産んだので、犬はかもうとした。余りひどいので妻は犬と一緒に食事をするようになった。そして犬と関係してしまった。妻の体には犬の爪跡がついていた。夫は、<ああ、この女は犬の妻だったので青年たちの求婚を断っていたのだな。どうしょう。畜生の妻になっている女を自分の妻にするかなあ>と思い悩んでいた。後は、<このことは誰も知らない。自分さえ黙っていればいい>といって結局、妻にした。犬が寝ていたところをユミウジンで突いた。犬が死んだので浜に捨てた。妻は犬が死んだので、アシャーヨーといって泣いていた。そして浜で葬った。これは宮古の話である。
| レコード番号 | 47O230092 |
|---|---|
| CD番号 | 47O23C006 |
| 決定題名 | 犬婿入り 犬の爪跡(方言) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 末吉カマ |
| 話者名かな | すえよしかま |
| 生年月日 | 18900000 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 沖縄県粟国村浜 |
| 記録日 | 19760818 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄国際大学口承研 |
| 元テープ番号 | 粟国T04A13 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 30 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | 母親から聞いた。 |
| 文字化資料 | - |
| キーワード | 犬,爪跡,後生の人 |
| 梗概(こうがい) | 宮古のナナハラという島で、親の代から犬を飼っている家があった。村の金持ちの人が嫁に来てくれといったが断っていた。他村の青年たちが、嫁に来てくれと頼んでも断ったので、(青年たちは)忍んで行った。(行く途中、一人の青年が)後生の人に出会った。「どこへ行くのか」と青年がきくと、後生の人は、「どこそこの娘は妻になってくれと頼んでも断っているそうだから、これから忍びに行くところだよ」と答えた。青年は「自分もそうだよ」とi言った。青年が「後生で一番怖いものは何か」ときくと、後生の人は「一番恐いのは朝のミーチチャー鳥の鳴き声だ」と言った。今度は後生の人が「現世では何が恐いか」ときいた。自分もその鳥が怖い、と話しながら二人は歩いていった。川を渡るところに来ると、その後生の人が「あんたはミーウイだな」と言った。「君は何か」とたずねると、「自分はフルーなのでシューは引けない。あんたはミーウイなのでシューが引ける」と言って、歩くときは後生の人はいつも下の方を歩き、青年は上の方を歩いた。青年が、「私が先に入っていく。私の妻になるというなら君は帰りなさい。私が断られたら君の妻にしなさい」と相談して一緒に行った。そして、この女の家に着くと、青年が先に入っていった。青年が女に、「あなたは他村の青年たちが嫁にしょうとしているのに、みんな断っているね。私の嫁になりなさい」と言うと、女は「いやだ」と言った。青年が「私を断ったら命がなくなるよ」と言うと、女は「何の権利があって命を取るのか。断る」と言った。そこで、青年は「私は断られた。今度は君が行きなさい」と言って、後世の人を行かせたところ、この人も断られた。後世の人は女の首をしめた。すると青年は急いで屋根の上に登り、着物の袖を振りながら鳴き声をあげた。後世の人は(驚いて)ピョンと飛んだ。青年が屋根から下りると、女の人は気絶していた。そこで女の頭を引いて息をふき返させた。青年は、「あなたは私の妻になったら命はあるが、断ったら後世に連れて行かれるよ」と言った。女は「命が助かったのであなたの妻になる」と言った。そのとき犬は家にはいなかった。親は犬を飼っていたが人を寄せ付けなかったので、二人でユミウジンを作った。「(犬は)昼は働いて疲れているので、私がすかして釜の側に連れて行って寝かせるから、その時、ユミウジンで突きなさいよ」と妻がいった。犬はよく働いて、最初は肉をくわえて来たが、しまいにはお金などを持ってくるようになった。その妻が子供を産んだので、犬はかもうとした。余りひどいので妻は犬と一緒に食事をするようになった。そして犬と関係してしまった。妻の体には犬の爪跡がついていた。夫は、<ああ、この女は犬の妻だったので青年たちの求婚を断っていたのだな。どうしょう。畜生の妻になっている女を自分の妻にするかなあ>と思い悩んでいた。後は、<このことは誰も知らない。自分さえ黙っていればいい>といって結局、妻にした。犬が寝ていたところをユミウジンで突いた。犬が死んだので浜に捨てた。妻は犬が死んだので、アシャーヨーといって泣いていた。そして浜で葬った。これは宮古の話である。 |
| 全体の記録時間数 | 7:39 |
| 物語の時間数 | 6:58 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | 〇 |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |