
昔々、あるところに漁師がいた。その妻は一人子を産んで亡くなった。漁師は、「もうここでは暮らしてはいけないから」と言って、その子をおぶって、もっと暮らしやすい所へ行こうとする道の途中、四、五人の子供達が、白蛇を捕まえて、いたずらして遊んでいるのを見た。漁師が、「かわいそうだから、海に逃がしてやらないか」と言うと、子供達は、「これはせっかく私達が捕ってきたものだから。いたずらしておもしろいよ」と言った。「それじゃあ、小父さんは、お金もそんなになくてわずかしかないけど、財布ごと君達にあげるから逃がしてやってくれないか」と言うと、「お金をくれるなら、逃がします」と言って、海に放してやった。しばらく行って、漁師は、ある小屋にたどり着いたので、そこで一晩泊まることにした。そしたら、その子はもう腹も空いて泣いた。でも、さっきの子供達にお金もやってしまったので、何も買って食べさせることができない。夜中になって、その家の戸をたたいて合図する者がいた。「今ごろ誰だろう」と思って見ると、若い女の人だった。「見たことのない女だが、不思議なことだ」と思っていると、女は、「その子を私に育てさせて下さい」と言った。漁師は驚いたものの、「お願いします」と言った。そうやって、一年が経った。女が、「もうこの子は、一年も過ぎて乳も飲まなくなった。実は私は本当の人間ではない。あなたが助けたあの白蛇の親なのですよ。私はいつまでもここにはいられません」と言った。漁師は、「蛇でもいいからいて下さい」と頼んだ。「そういわけにはいきません。もう帰ります」「それじゃあ、これから、この子が泣いたらどうしたらいいのですか。誰が見てくれるのですか。」「それは、心配いりません」と言って、女は、自分の片目を取って、「これを見れば寂しくもない、泣きもしませんよ。それにまたあなたの望みもかなうので、これを持っていなさい」と言って、片目を渡した。「あなたは片目が無いままですか」「なに、自分の目一つでも見ることができます」と言った。夕暮れになって、突然空中が黒くなったかと思うと、女は、海の中へ帰っていなくなってしまったそうだ。その話が、王様の耳に入り、家来を連れて来て、「そんな不思議な玉があるなら、ぜひそれをゆずってくれ」と言った。漁師はいやだとも言えなかった。王様は、「この子がほどほどに大きくなったら、良い勤めをさせてやるから」と言って、玉を持っていってしまった。その子はすぐに大きくなるわけでもないし、思い通りにいかなくなったので、漁師は浜へ行って、「せっかく、あんな立派な物をもらって喜んでいたのに、王様に取られてなくなってしまったよ」と言った。すると、また白蛇が現れて、「なにも心配はいりません。もう一つあるのだから」と言って、もう一つの目玉もあげた。そして、「もう私は、なにも見えなくなった。これからは、音を聞くことはできるから、あなたたちがあとあと、お寺を作って鐘を吊るして、夕方になったら、その鐘を鳴らしておくれ。鐘の音は聞こえるからね」と言ったと。そういう昔話があったという話をしていました。
| レコード番号 | 47O220485 |
|---|---|
| CD番号 | 47O22C023 |
| 決定題名 | 蛇女房(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | 蛇女房 |
| 話者名 | 前田スミ |
| 話者名かな | まえだすみ |
| 生年月日 | 19180115 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 沖縄県大宜味村根路銘安根 |
| 記録日 | 19830304 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 大宜味村饒波T20A10 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | むかしむかしあるところに |
| 伝承事情 | テレビのない時代にラジオで |
| 文字化資料 | 『おおぎみの昔話』(平成10年3月31日 大宜味村教育委員会発行)P33 |
| キーワード | 漁師,妻は一人子を産んで亡くなる,子をおぶって,道の途中,四、五人の子供達,白蛇,いたずら,海に逃がして,お金をくれる,海に放す,小屋,一晩泊まる,子が泣く,夜中,家の戸をたたく,若い女,子を育てる,一年も過ぎて,助けた,白蛇の親,片目を取って渡す,海の中へ帰った,王様,不思議な玉,ゆずってくれ,浜へ行く,もう一つの目玉,音を聞く,お寺,鐘を鳴らして |
| 梗概(こうがい) | 昔々、あるところに漁師がいた。その妻は一人子を産んで亡くなった。漁師は、「もうここでは暮らしてはいけないから」と言って、その子をおぶって、もっと暮らしやすい所へ行こうとする道の途中、四、五人の子供達が、白蛇を捕まえて、いたずらして遊んでいるのを見た。漁師が、「かわいそうだから、海に逃がしてやらないか」と言うと、子供達は、「これはせっかく私達が捕ってきたものだから。いたずらしておもしろいよ」と言った。「それじゃあ、小父さんは、お金もそんなになくてわずかしかないけど、財布ごと君達にあげるから逃がしてやってくれないか」と言うと、「お金をくれるなら、逃がします」と言って、海に放してやった。しばらく行って、漁師は、ある小屋にたどり着いたので、そこで一晩泊まることにした。そしたら、その子はもう腹も空いて泣いた。でも、さっきの子供達にお金もやってしまったので、何も買って食べさせることができない。夜中になって、その家の戸をたたいて合図する者がいた。「今ごろ誰だろう」と思って見ると、若い女の人だった。「見たことのない女だが、不思議なことだ」と思っていると、女は、「その子を私に育てさせて下さい」と言った。漁師は驚いたものの、「お願いします」と言った。そうやって、一年が経った。女が、「もうこの子は、一年も過ぎて乳も飲まなくなった。実は私は本当の人間ではない。あなたが助けたあの白蛇の親なのですよ。私はいつまでもここにはいられません」と言った。漁師は、「蛇でもいいからいて下さい」と頼んだ。「そういわけにはいきません。もう帰ります」「それじゃあ、これから、この子が泣いたらどうしたらいいのですか。誰が見てくれるのですか。」「それは、心配いりません」と言って、女は、自分の片目を取って、「これを見れば寂しくもない、泣きもしませんよ。それにまたあなたの望みもかなうので、これを持っていなさい」と言って、片目を渡した。「あなたは片目が無いままですか」「なに、自分の目一つでも見ることができます」と言った。夕暮れになって、突然空中が黒くなったかと思うと、女は、海の中へ帰っていなくなってしまったそうだ。その話が、王様の耳に入り、家来を連れて来て、「そんな不思議な玉があるなら、ぜひそれをゆずってくれ」と言った。漁師はいやだとも言えなかった。王様は、「この子がほどほどに大きくなったら、良い勤めをさせてやるから」と言って、玉を持っていってしまった。その子はすぐに大きくなるわけでもないし、思い通りにいかなくなったので、漁師は浜へ行って、「せっかく、あんな立派な物をもらって喜んでいたのに、王様に取られてなくなってしまったよ」と言った。すると、また白蛇が現れて、「なにも心配はいりません。もう一つあるのだから」と言って、もう一つの目玉もあげた。そして、「もう私は、なにも見えなくなった。これからは、音を聞くことはできるから、あなたたちがあとあと、お寺を作って鐘を吊るして、夕方になったら、その鐘を鳴らしておくれ。鐘の音は聞こえるからね」と言ったと。そういう昔話があったという話をしていました。 |
| 全体の記録時間数 | 4:29 |
| 物語の時間数 | 4:20 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | △ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |