
昔、アカナーと鬼がいた。アカナーは木で舟を造って、鬼は土で舟を造った。アカナーと鬼が魚釣りに行くと、アカナーにいっぱいの魚が食いついたが、鬼のものには食いつかなくなった。それで鬼がアカナーに、「どうして、お前にはそんなに魚が食いつくのに、私には魚は食いつかないのか」と聞いた。「それは、艫(とも)に小便を引っかけてから、梶(うぇーく)でトントン叩いたら、魚はそこに集まって食いつくさ」と言った。鬼が小便をかけてから、艫をウェークで叩くと、鬼の土舟は割れて沈んだ。それで、アカナーは、「ここにいたら鬼に喰われてしまう」と言って、急いで舟を漕いでシマに帰り、鬼に見つからないように、クッスー山〔唐がらし山〕に隠れた。鬼はアカナーを捜にそこまで来ていた。アカナーが唐がらしを持って歩いていたので、鬼は、「お前は、その唐がらしをどうするのか」と聞く。アカナーが、「これで顔を洗ったら、唐も大和も近くに見える」と言う。鬼が唐がらしで顔を洗って目にこすりつけると、目が開かなくなる。アカナーは、大きなクムイ〔池〕の所にあるユシギという木の上に登って隠れていた。そこへ、目が焼きただれた鬼が顔を洗いに来た。鬼は、木の上に隠れているアカナーの影が池に映っているのを見て、アカナーが水の中に隠れていると思い、池の水を全部飲みほす。鬼は、タナゲー〔手長エビ〕やターイユ〔鮒〕がパッタパッタしているのを取って、下の毛に縛った。それを見たアカナーが、可笑しくて「アハハハー」と笑ったので、鬼に見つかる。鬼が、「どんなして登ったか」とアカナーに聞くと、アカナーは、「蟻が登るようにして登った」と言った。アカナーは、蟻は逆さまに登るので、鬼は登れないと思って言ったのに、本当に鬼が登って来た。アカナーは大変だと思って、鬼が木の真ん中あたりに登って来た時、「天の神様、潮汲み、水汲みをします。かわいいと思うなら、鉄の畚(おーら)を下ろして私を引き上げてください。かわいいと思わないなら、灰で綯った縄の畚を下ろして引き上げて下さい」と願った。天から鉄の畚を下ろしてアカナーを引き上げるが、間に合わずに、鬼がどんどん登って来て畚に乗り込もうとして、アカナーの片足は鬼に喰いちぎられた。そして、どんどんアカナーは引き上げられていったので、鬼もアカナーの真似をして、「かわいいと思うなら鉄の畚を下ろして引き上げて下さい、かわいいと思わないのなら、灰畚を下ろして引き上げて下さい」と言った。(神様は鬼を)いとおしく思わなかったから、灰畚を下ろして引き上げた。真ん中あたりに来たらその灰畚が切れて、鬼はポタッと落ちた。そしてユシギの木の股に落ちてきて死んだ。この鬼の霊が蚊になって、ユシギのプープーという。山のユシギはこんなに大きくなる。シマの者はシマのプープーという。この中には藪蚊が入っていて、これは鬼の魂。それで、月に影があるのは、アカナーが桶を担いで、天の御神の水汲み、潮汲みをしている影だという。その伝えよ。
| レコード番号 | 47O220204 |
|---|---|
| CD番号 | 47O22C010 |
| 決定題名 | アカナーと鬼(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | アカナーと鬼 |
| 話者名 | 山城光次郎 |
| 話者名かな | やましろこうじろう |
| 生年月日 | 18921122 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県大宜味村田嘉里 |
| 記録日 | 19830303 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄県口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 大宜味村田嘉里T09A01 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | むかしよ |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 『おおぎみの昔話』(平成10年3月31日 大宜味村教育委員会発行)P173 |
| キーワード | アカナー,鬼,木の舟,土の舟,魚釣り,艫(とも),小便,梶(うぇーく),トントン叩く,土舟,沈む,クッスー山〔唐がらし山〕,唐がらし,顔を洗う,唐,大和,見える,クムイ〔池〕,ユシギ,木の上,隠れる,目が焼きただれ,影が池に映る,水の中,池の水,飲みほす,タナゲー〔手長エビ〕,ターイユ〔鮒〕,下の毛,笑う,蟻,天の神様,潮汲み,水汲み,かわいい,鉄の畚(おーら),灰で綯った縄の畚,片足,喰いちぎる,真似,灰畚,鬼の霊,蚊,ユシギのプープー,シマの者,シマのプープー,藪蚊,鬼の魂,月に影,桶を担いで,天の御神,水汲み,潮汲み |
| 梗概(こうがい) | 昔、アカナーと鬼がいた。アカナーは木で舟を造って、鬼は土で舟を造った。アカナーと鬼が魚釣りに行くと、アカナーにいっぱいの魚が食いついたが、鬼のものには食いつかなくなった。それで鬼がアカナーに、「どうして、お前にはそんなに魚が食いつくのに、私には魚は食いつかないのか」と聞いた。「それは、艫(とも)に小便を引っかけてから、梶(うぇーく)でトントン叩いたら、魚はそこに集まって食いつくさ」と言った。鬼が小便をかけてから、艫をウェークで叩くと、鬼の土舟は割れて沈んだ。それで、アカナーは、「ここにいたら鬼に喰われてしまう」と言って、急いで舟を漕いでシマに帰り、鬼に見つからないように、クッスー山〔唐がらし山〕に隠れた。鬼はアカナーを捜にそこまで来ていた。アカナーが唐がらしを持って歩いていたので、鬼は、「お前は、その唐がらしをどうするのか」と聞く。アカナーが、「これで顔を洗ったら、唐も大和も近くに見える」と言う。鬼が唐がらしで顔を洗って目にこすりつけると、目が開かなくなる。アカナーは、大きなクムイ〔池〕の所にあるユシギという木の上に登って隠れていた。そこへ、目が焼きただれた鬼が顔を洗いに来た。鬼は、木の上に隠れているアカナーの影が池に映っているのを見て、アカナーが水の中に隠れていると思い、池の水を全部飲みほす。鬼は、タナゲー〔手長エビ〕やターイユ〔鮒〕がパッタパッタしているのを取って、下の毛に縛った。それを見たアカナーが、可笑しくて「アハハハー」と笑ったので、鬼に見つかる。鬼が、「どんなして登ったか」とアカナーに聞くと、アカナーは、「蟻が登るようにして登った」と言った。アカナーは、蟻は逆さまに登るので、鬼は登れないと思って言ったのに、本当に鬼が登って来た。アカナーは大変だと思って、鬼が木の真ん中あたりに登って来た時、「天の神様、潮汲み、水汲みをします。かわいいと思うなら、鉄の畚(おーら)を下ろして私を引き上げてください。かわいいと思わないなら、灰で綯った縄の畚を下ろして引き上げて下さい」と願った。天から鉄の畚を下ろしてアカナーを引き上げるが、間に合わずに、鬼がどんどん登って来て畚に乗り込もうとして、アカナーの片足は鬼に喰いちぎられた。そして、どんどんアカナーは引き上げられていったので、鬼もアカナーの真似をして、「かわいいと思うなら鉄の畚を下ろして引き上げて下さい、かわいいと思わないのなら、灰畚を下ろして引き上げて下さい」と言った。(神様は鬼を)いとおしく思わなかったから、灰畚を下ろして引き上げた。真ん中あたりに来たらその灰畚が切れて、鬼はポタッと落ちた。そしてユシギの木の股に落ちてきて死んだ。この鬼の霊が蚊になって、ユシギのプープーという。山のユシギはこんなに大きくなる。シマの者はシマのプープーという。この中には藪蚊が入っていて、これは鬼の魂。それで、月に影があるのは、アカナーが桶を担いで、天の御神の水汲み、潮汲みをしている影だという。その伝えよ。 |
| 全体の記録時間数 | 8:38 |
| 物語の時間数 | 8:30 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |