
二人の兄弟がいた。兄はとても裕福で、弟はいつも心配ばかりの困難な暮らしをしていた。兄は親のことをかまわず、次男にばかり親の面倒を見させていた。親が亡くなると、兄は親の法事さえもしないで、弟が墓参りや法事をやった。弟は、夜寝るとき、いつも、やせ牛の腹から出たモーブシの玉といって、自分の思い通りに何でもかなうという玉の夢ばかり見る。それが本当なのかどうか、翌日お茶とお茶請けを持って墓参りに行く。そこには本当に宝物が光っていた。「これは本当だったんだ。親孝行したおかげで、天からのお助けがあったのだな」と言って、それを持って帰った。そしたら何でも望み通りになって、弟はたちまち立身して裕福になった。兄がこれを羨ましく思って、「いったいお前は、どうしてそんなに金をもうけて立派に暮らしているのか」と聞いた。弟は、「天から、親孝行だからといって、お爺さんの墓へ行って手を合わせてくるように言われたので墓へ行ったら、そこに宝物が落ちていて、それで、何でも自分の思い通りになったんですよ」と言った。欲ばりな兄は、「今まで親孝行しなかったのは私が悪かった。兄弟なんだから、これからは仲良くしよう」と言って、「四、五日、玉を貸してくれ」と言った。真面目な弟はそれを貸した。兄は、四、五日その玉を借りているうちに、もっとお金持ちになったので、玉を返してくれと言われても返してくれなかった。それで、弟は、飼っている猫と犬に頼んで、「兄のところへ行って玉を取り返してきてくれ」と、二匹を行かせた。兄の家は、うんとお金をもうけて、中門を鉄で造ってあったので開けることができず、中に入れなかった。そこで、猫と犬は相談をし、犬が猫に「お前はどんなところでも這い上がって登れるからこの塀を登っていって内側から、門の鍵をあけてくれ」と言った。猫は塀を登っていって中に入り鍵をあけると、犬を中へ入れた。その時綺麗な雌鼠がそこを通った。それで、猫はその鼠をつかまえて、「お前達の主人が、私たちの主人の宝玉を借りたまま返そうともしない。お前達鼠は、家のすみずみまで知っているはずだから、捜して取ってきてくれ」と言った。鼠は、二、三日のうちに嫁入りをするというので、「ちょうどいい。お前の仲間を集めて、主人が隠した宝の玉を捜して取ってこさせろ」と言って、見つけてくるまで嫁入りをするという雌鼠を人質に取った。「あの宝の玉を持ってくるまでは放さない。持ってきたら放してやる」と言ったので、それから鼠たちは、家のすみずみどこでも知っているので、その玉を見つけてきて、人質の鼠と交換した。この犬と猫はこうやって、その玉を鼠たちから取って帰るとき、途中に川があった。どうやって川を渡ろうかということになって、犬は川泳ぎがじょうずなので、猫は宝の玉を持って板きれに乗って、猫が犬に、「君は先に泳いで渡って行って、この糸を引いてくれ」と言った。犬はその板きれに猫と宝の玉を乗せて渡るわけ。猫はその途中で魚を見つけたので、魚を食おうとして、くわえていた玉を川の中へ落としてしまった。そこで今度は魚をつかまえて、「この下に玉を落としたから」と言って、玉を取って来るあいだこの魚を人質に取った。そして、この魚が宝の玉を持ってきたので、それを持って帰る途中、犬と猫は道を歩きながらも、「玉は誰が取った、誰が取った」と言ってはしょっちゅう喧嘩をした。それで、猫は自分の家が近くなったので、宝の玉をくわえて急に走り出した。犬をおいてきぼりにして走って行って、主人の前に行き、「この犬ときたら、らちがあかない。私が取り返してきたのです」と言って、主人に頭をなでられた。それで、犬は猫に、「君が悪いんだ」と言っても、聞き入れてもらえなかった。それから、猫は主人にほめられて、「お前のほうが、主人に尽くしてくれる」と言って、猫は冬の寒いときになると主人の膝の上に座らせてもらった。「犬の奴め、お前はらちがあかないから、泥棒の番でもしろ」と言われて、犬は冬でも縁の下で泥棒の番をするようになったって。
| レコード番号 | 47O220196 |
|---|---|
| CD番号 | 47O22C009 |
| 決定題名 | 犬と猫と宝物(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | 犬と猫と宝物 |
| 話者名 | 山城光次郎 |
| 話者名かな | やましろこうじろう |
| 生年月日 | 18921122 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県大宜味村田嘉里 |
| 記録日 | 19830303 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 大宜味村田嘉里T08A09 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | あれは |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 『おおぎみの昔話』(平成10年3月31日 大宜味村教育委員会発行)P63 |
| キーワード | 二人の兄弟,兄は裕福,弟は困難な暮らし,兄は欲張り,弟は親孝行,親が亡くなる,弟が墓参り,モーブシの玉,思い通りに何でもかなう玉,夢を見る,墓参りに行く,宝物,望み通りになる,宝物を借りる,玉を返さない,猫と犬,鼠,宝の玉, 人質,途中に川,魚,主人,泥棒の番 |
| 梗概(こうがい) | 二人の兄弟がいた。兄はとても裕福で、弟はいつも心配ばかりの困難な暮らしをしていた。兄は親のことをかまわず、次男にばかり親の面倒を見させていた。親が亡くなると、兄は親の法事さえもしないで、弟が墓参りや法事をやった。弟は、夜寝るとき、いつも、やせ牛の腹から出たモーブシの玉といって、自分の思い通りに何でもかなうという玉の夢ばかり見る。それが本当なのかどうか、翌日お茶とお茶請けを持って墓参りに行く。そこには本当に宝物が光っていた。「これは本当だったんだ。親孝行したおかげで、天からのお助けがあったのだな」と言って、それを持って帰った。そしたら何でも望み通りになって、弟はたちまち立身して裕福になった。兄がこれを羨ましく思って、「いったいお前は、どうしてそんなに金をもうけて立派に暮らしているのか」と聞いた。弟は、「天から、親孝行だからといって、お爺さんの墓へ行って手を合わせてくるように言われたので墓へ行ったら、そこに宝物が落ちていて、それで、何でも自分の思い通りになったんですよ」と言った。欲ばりな兄は、「今まで親孝行しなかったのは私が悪かった。兄弟なんだから、これからは仲良くしよう」と言って、「四、五日、玉を貸してくれ」と言った。真面目な弟はそれを貸した。兄は、四、五日その玉を借りているうちに、もっとお金持ちになったので、玉を返してくれと言われても返してくれなかった。それで、弟は、飼っている猫と犬に頼んで、「兄のところへ行って玉を取り返してきてくれ」と、二匹を行かせた。兄の家は、うんとお金をもうけて、中門を鉄で造ってあったので開けることができず、中に入れなかった。そこで、猫と犬は相談をし、犬が猫に「お前はどんなところでも這い上がって登れるからこの塀を登っていって内側から、門の鍵をあけてくれ」と言った。猫は塀を登っていって中に入り鍵をあけると、犬を中へ入れた。その時綺麗な雌鼠がそこを通った。それで、猫はその鼠をつかまえて、「お前達の主人が、私たちの主人の宝玉を借りたまま返そうともしない。お前達鼠は、家のすみずみまで知っているはずだから、捜して取ってきてくれ」と言った。鼠は、二、三日のうちに嫁入りをするというので、「ちょうどいい。お前の仲間を集めて、主人が隠した宝の玉を捜して取ってこさせろ」と言って、見つけてくるまで嫁入りをするという雌鼠を人質に取った。「あの宝の玉を持ってくるまでは放さない。持ってきたら放してやる」と言ったので、それから鼠たちは、家のすみずみどこでも知っているので、その玉を見つけてきて、人質の鼠と交換した。この犬と猫はこうやって、その玉を鼠たちから取って帰るとき、途中に川があった。どうやって川を渡ろうかということになって、犬は川泳ぎがじょうずなので、猫は宝の玉を持って板きれに乗って、猫が犬に、「君は先に泳いで渡って行って、この糸を引いてくれ」と言った。犬はその板きれに猫と宝の玉を乗せて渡るわけ。猫はその途中で魚を見つけたので、魚を食おうとして、くわえていた玉を川の中へ落としてしまった。そこで今度は魚をつかまえて、「この下に玉を落としたから」と言って、玉を取って来るあいだこの魚を人質に取った。そして、この魚が宝の玉を持ってきたので、それを持って帰る途中、犬と猫は道を歩きながらも、「玉は誰が取った、誰が取った」と言ってはしょっちゅう喧嘩をした。それで、猫は自分の家が近くなったので、宝の玉をくわえて急に走り出した。犬をおいてきぼりにして走って行って、主人の前に行き、「この犬ときたら、らちがあかない。私が取り返してきたのです」と言って、主人に頭をなでられた。それで、犬は猫に、「君が悪いんだ」と言っても、聞き入れてもらえなかった。それから、猫は主人にほめられて、「お前のほうが、主人に尽くしてくれる」と言って、猫は冬の寒いときになると主人の膝の上に座らせてもらった。「犬の奴め、お前はらちがあかないから、泥棒の番でもしろ」と言われて、犬は冬でも縁の下で泥棒の番をするようになったって。 |
| 全体の記録時間数 | 11:06 |
| 物語の時間数 | 10:14 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |