
昔、沖縄の男の人はカタカシラといって、斜めに髷を結っていたでしょう。このカタカシラというのは、どうやって出たかというたらね、坊主御主加那志前という人は、ハギ頭をされておってね、片一方に髪の毛が残られていて、ここでカンプーを結われていたらしい。そうしたら、御主加那志前がそうしているから、またお使いの者たちも、みんなすぐもう片側に結ったからね、これが名前はカタカシラになったって。「それじゃいけない。恰好が悪いから直させないといかんな。」と言われて、坊主御主は読谷山王子を呼ばれなさって、「お前から、私には似せないで、みんなには、髪を真ん中の上に結いなさいと強く言いなさいよ。」と言われたってね。それでも、やはりカタカシラは、直らなかったんです。また、あるとき、この読谷山王子様が、「この御主加那志前のやり方は悪いなあ。」と思われて、この人がもう坊主御主加那志前に意見を言われたら、この坊主御主は浦添村の小湾に別荘を造らせてね、そして、「私は王になりたくない。お前が王の位に座ってくれないか。」と言われたから、「いけません。嫡子は嫡子。あなた様が王は継ぐんです。私には王になる力はありません。」と読谷山王子が言われたからね、「どうしても出来ないか。」と聞くから、読谷山王子は、「嫡子を押し込めてはできませんから、どうかあなた様が立たれてください。」とお断りしたら、王様は、「私では政治はできないんだよ。」と言われたから、「それじゃあ、ご加勢をしますから、あなたは王の位に就いていてください。」と言われるので王の位に就かれたそうだ。こんなにして王の位についてからね、この後で読谷山王子に、「さあ、それじゃあ、加勢をすると言うんだから、私の願いを聞いてくれよ。私は小湾に行くから、またなにかあったら、合図をしてくれよ。」と言われて、坊主御主は小湾に立って行かれたって。坊主御主が小湾に行かれたら、奥さんも使用人も連れて行って、暮らしておられたらしい。そしてこの坊主御主は、田舎の人の恰好をなされって、冬瓜をたくさん作られいたそうだよ。その冬瓜を安く売ったから、村の畑の人たちからもう文句が出たんだよ。「やな坊主御主が冬瓜作ったから、私たちの野菜は売れないさ。」と言ったらしいよ。それからも、坊主御主の冬瓜はどんどんできてね、それがとても大きくて百姓が作るものは売れないんですよ。だから坊主御主は村の人に憎まれていたから、こんどは、次男の読谷山王子が、「これじゃあ、いけないなあ。こんどはいたずらしに行かないとな。」と言ってね、姿をかえてね、馬に乗られてこの坊主御主が冬瓜を作っている畑に行って、一生懸命みんなコッコイコッコイして踏み荒らしていたらね、坊主御主が百姓の姿をして、その畑におられたから、読谷山王子は、それが坊主御主と気がつかないふりをして、「おい、ウスメー。」と言われたら、田舎の人の恰好をしている坊主御主は顔は上げないでね、フーンと言われて、「なんでございますか。」と言うから、王子もわざと、「おい、坊主御主のお屋敷はどこにあるか。」と言われたからね、そしたら、「どこのどこにありますから。」「それじゃあ、教えてくれないか。ウスメー、道はどこから行くか。」と言ったら、坊主御主はわざと遠回りをする道を教えていたって。そしたら、「ごくろうだったな。ああそうだったのか、ウスメー。それじゃあ行こうな。」と王子様は、小湾の屋敷の方においでになられたそうです。坊主御主は、読谷山王子おいでになられる間にね、近道をされなさって帰ったら、読谷山王子は行くところは分かるんだがね、知恵はこの人より上だから教えられた道をわざと遠回りをして、小湾の屋敷に行くのに、長く時間をかけたんだよ。そうするうちに屋敷に王様は帰って来ていて、「読谷山王子が来るはずだ。」と言って、屋敷にいるんだよ。「兄上様おられますか。」と言ったから、「おられますから、お入りください。」と言われたんだろう。そうしたから、「入りましょうね。」と言われて入られたら、坊主御主はもうそこに立派きれいに着飾ってね、こんなに座っておられたって。読谷山王子は知恵があるから、「兄上様、お元気でいらっしゃいましたか。」と言って挨拶してお辞儀をしたからね、「お前も元気だったか。」と言われたそうだ。「エーサイ、近頃、噂に聞くとどこのウスメーかわからないが自分だけ作物をよく作って、シマの人を困らせているそうですね。」と言ったからね、「そうなのかな、これは私はわからないな。」と言ったら、読谷山王子は、「ああ、そうですか。この百姓たちが見てるとその方はなんでもなさるんですよ。」と言われたからね、「そうだね、私はこんなことはまったく知らなかったよ。お前が聞かせてくれるからわかるんだよ。」と言われたそうだよ。「そんなに教えたかったらね、変わった貧乏人も農民も見て、作物はどんな状態か言ってくれ。」と言っていると、「世間の噂ではね、どこのウスメーなのかわからないがね。毎日一生懸命朝早くから、畑に入っていらっしゃいますよと噂を聞いてね、それで私はあなたにお尋ねしているんですよ。あなたは王様だからあるいはわかると思って、問うているんですよ。」と言ったから、坊主御主は、「それはまったく私の耳には入っていないなあ。」と嘘をつかれよったそうだよ。その後からこの坊主御主は、百姓を困らせるようなことをしなかったって。そうしてまたね、この王子様はね、嫡子の王様の代わりにね、支那に行かれたそうだよ。その支那に行かれた場合にね、支那のほうで大火事が出たそうだよ。そしたら、この人は、ずっと高い台に下から上に登られておられたんだよ。それでね、これ山火事だったそうだが、読谷山王子に家来の者がね、「サリ、山火事が起こって、一大事になっています。この火事の火は、この城に向かってきています。」と言ったらね、「へーっ。」と言われて、そうして、扇子をね、扇子をこんなに抜かれて広げられてね、「神様が優れいるのなら、この大雨を振らせください。山火事を消してください。」と言って、三回扇を振られたそうだよ。後は、大きい雨が降ってね、そうして、この火は消えていたそうだ。読谷山王子のおかげで火が消えたから、このときから、その部落では、「読谷山王子が扇を三回振ったから、大雨が降って山火事も消えて助かった。」と言ってね、だからね、その島はね、今もってもね、火事のときは、沖縄では、「ホーハイ、ホーハイ。」と言うけど、この島では、火事になると、「読谷山王子、読谷山王子。」と言って水をかけるって。読谷山王子と言ったら、火事のときでも火が消えるそうだよ。この話はね、首里の石嶺の部隊におった陳という支那人から聞いたんだよ。この人が外に出てきてね、また支那人十名ぐらい出てきて、「読谷山王子様の屋敷を見せて下さい。」と言って、うちに頼んだんだよ。そして、「はい、ご案内しましょう。」と言って連れて行ったよ。そうして、ここだよと言ったからね、「そうですか。」と言うと、みんなで、こんなして手を合わせていたよ。「お助けくださいまして、どうもありがとうございました。」と、みんな手を合わせてね。そのとき私は、それを見ていて泣きましたよ。
| レコード番号 | 47O361894 |
|---|---|
| CD番号 | 47O36C072 |
| 決定題名 | 坊主御主 カタカシラ 畑仕事(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | カタカシラの話 |
| 話者名 | 名嘉真敏子 |
| 話者名かな | なかまとしこ |
| 生年月日 | 19101103 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 沖縄県那覇市首里 |
| 記録日 | 19811213 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 北中城村補足調査7班T38A01 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 15 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | お年寄りや母親から聞いた |
| 文字化資料 | 北中城の民話 P317 |
| キーワード | - |
| 梗概(こうがい) | 昔、沖縄の男の人はカタカシラといって、斜めに髷を結っていたでしょう。このカタカシラというのは、どうやって出たかというたらね、坊主御主加那志前という人は、ハギ頭をされておってね、片一方に髪の毛が残られていて、ここでカンプーを結われていたらしい。そうしたら、御主加那志前がそうしているから、またお使いの者たちも、みんなすぐもう片側に結ったからね、これが名前はカタカシラになったって。「それじゃいけない。恰好が悪いから直させないといかんな。」と言われて、坊主御主は読谷山王子を呼ばれなさって、「お前から、私には似せないで、みんなには、髪を真ん中の上に結いなさいと強く言いなさいよ。」と言われたってね。それでも、やはりカタカシラは、直らなかったんです。また、あるとき、この読谷山王子様が、「この御主加那志前のやり方は悪いなあ。」と思われて、この人がもう坊主御主加那志前に意見を言われたら、この坊主御主は浦添村の小湾に別荘を造らせてね、そして、「私は王になりたくない。お前が王の位に座ってくれないか。」と言われたから、「いけません。嫡子は嫡子。あなた様が王は継ぐんです。私には王になる力はありません。」と読谷山王子が言われたからね、「どうしても出来ないか。」と聞くから、読谷山王子は、「嫡子を押し込めてはできませんから、どうかあなた様が立たれてください。」とお断りしたら、王様は、「私では政治はできないんだよ。」と言われたから、「それじゃあ、ご加勢をしますから、あなたは王の位に就いていてください。」と言われるので王の位に就かれたそうだ。こんなにして王の位についてからね、この後で読谷山王子に、「さあ、それじゃあ、加勢をすると言うんだから、私の願いを聞いてくれよ。私は小湾に行くから、またなにかあったら、合図をしてくれよ。」と言われて、坊主御主は小湾に立って行かれたって。坊主御主が小湾に行かれたら、奥さんも使用人も連れて行って、暮らしておられたらしい。そしてこの坊主御主は、田舎の人の恰好をなされって、冬瓜をたくさん作られいたそうだよ。その冬瓜を安く売ったから、村の畑の人たちからもう文句が出たんだよ。「やな坊主御主が冬瓜作ったから、私たちの野菜は売れないさ。」と言ったらしいよ。それからも、坊主御主の冬瓜はどんどんできてね、それがとても大きくて百姓が作るものは売れないんですよ。だから坊主御主は村の人に憎まれていたから、こんどは、次男の読谷山王子が、「これじゃあ、いけないなあ。こんどはいたずらしに行かないとな。」と言ってね、姿をかえてね、馬に乗られてこの坊主御主が冬瓜を作っている畑に行って、一生懸命みんなコッコイコッコイして踏み荒らしていたらね、坊主御主が百姓の姿をして、その畑におられたから、読谷山王子は、それが坊主御主と気がつかないふりをして、「おい、ウスメー。」と言われたら、田舎の人の恰好をしている坊主御主は顔は上げないでね、フーンと言われて、「なんでございますか。」と言うから、王子もわざと、「おい、坊主御主のお屋敷はどこにあるか。」と言われたからね、そしたら、「どこのどこにありますから。」「それじゃあ、教えてくれないか。ウスメー、道はどこから行くか。」と言ったら、坊主御主はわざと遠回りをする道を教えていたって。そしたら、「ごくろうだったな。ああそうだったのか、ウスメー。それじゃあ行こうな。」と王子様は、小湾の屋敷の方においでになられたそうです。坊主御主は、読谷山王子おいでになられる間にね、近道をされなさって帰ったら、読谷山王子は行くところは分かるんだがね、知恵はこの人より上だから教えられた道をわざと遠回りをして、小湾の屋敷に行くのに、長く時間をかけたんだよ。そうするうちに屋敷に王様は帰って来ていて、「読谷山王子が来るはずだ。」と言って、屋敷にいるんだよ。「兄上様おられますか。」と言ったから、「おられますから、お入りください。」と言われたんだろう。そうしたから、「入りましょうね。」と言われて入られたら、坊主御主はもうそこに立派きれいに着飾ってね、こんなに座っておられたって。読谷山王子は知恵があるから、「兄上様、お元気でいらっしゃいましたか。」と言って挨拶してお辞儀をしたからね、「お前も元気だったか。」と言われたそうだ。「エーサイ、近頃、噂に聞くとどこのウスメーかわからないが自分だけ作物をよく作って、シマの人を困らせているそうですね。」と言ったからね、「そうなのかな、これは私はわからないな。」と言ったら、読谷山王子は、「ああ、そうですか。この百姓たちが見てるとその方はなんでもなさるんですよ。」と言われたからね、「そうだね、私はこんなことはまったく知らなかったよ。お前が聞かせてくれるからわかるんだよ。」と言われたそうだよ。「そんなに教えたかったらね、変わった貧乏人も農民も見て、作物はどんな状態か言ってくれ。」と言っていると、「世間の噂ではね、どこのウスメーなのかわからないがね。毎日一生懸命朝早くから、畑に入っていらっしゃいますよと噂を聞いてね、それで私はあなたにお尋ねしているんですよ。あなたは王様だからあるいはわかると思って、問うているんですよ。」と言ったから、坊主御主は、「それはまったく私の耳には入っていないなあ。」と嘘をつかれよったそうだよ。その後からこの坊主御主は、百姓を困らせるようなことをしなかったって。そうしてまたね、この王子様はね、嫡子の王様の代わりにね、支那に行かれたそうだよ。その支那に行かれた場合にね、支那のほうで大火事が出たそうだよ。そしたら、この人は、ずっと高い台に下から上に登られておられたんだよ。それでね、これ山火事だったそうだが、読谷山王子に家来の者がね、「サリ、山火事が起こって、一大事になっています。この火事の火は、この城に向かってきています。」と言ったらね、「へーっ。」と言われて、そうして、扇子をね、扇子をこんなに抜かれて広げられてね、「神様が優れいるのなら、この大雨を振らせください。山火事を消してください。」と言って、三回扇を振られたそうだよ。後は、大きい雨が降ってね、そうして、この火は消えていたそうだ。読谷山王子のおかげで火が消えたから、このときから、その部落では、「読谷山王子が扇を三回振ったから、大雨が降って山火事も消えて助かった。」と言ってね、だからね、その島はね、今もってもね、火事のときは、沖縄では、「ホーハイ、ホーハイ。」と言うけど、この島では、火事になると、「読谷山王子、読谷山王子。」と言って水をかけるって。読谷山王子と言ったら、火事のときでも火が消えるそうだよ。この話はね、首里の石嶺の部隊におった陳という支那人から聞いたんだよ。この人が外に出てきてね、また支那人十名ぐらい出てきて、「読谷山王子様の屋敷を見せて下さい。」と言って、うちに頼んだんだよ。そして、「はい、ご案内しましょう。」と言って連れて行ったよ。そうして、ここだよと言ったからね、「そうですか。」と言うと、みんなで、こんなして手を合わせていたよ。「お助けくださいまして、どうもありがとうございました。」と、みんな手を合わせてね。そのとき私は、それを見ていて泣きましたよ。 |
| 全体の記録時間数 | 6:14 |
| 物語の時間数 | 5:40 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ○ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |