いぬとねことゆびわ(しまぐち)
金持ちが犬と猫を飼っていたのさ。この猫と犬は昔はそんなに仲が悪くはないのによ、そうさね、盗人の「この猫さえいなければ、私だって猫のように可愛がられるのにさ。主人は、私には外で寒い思いさせて盗人の番をさせて、猫は、いつもそばにおいて、なでなでして可愛がるし、これはいやなもんだなあ。」と思っていたのさ。ある日、そこの家の宝物は、その名が猿のサンメージと言う宝らしいが、主人が、「これ、あそこの家に持って行けよ。」とそこへ届けるようにいいつけたら、「はい。」と言って、犬がくわえてよ、猫はまたその犬を追って歩いてるわけさ。そうして、川原に来たらよ、「ここは危ないよ、良く気をつけて歩きなさいよ。」と猫が犬に言ってるわけさ。犬は、「ウオー。」と吠えて、走りながら、「ワン。」と返答したわけ。そうしたら、くわえた宝物をその川原小に落っことしてしまったのさ。「うん、これは大変なことになった。」と言って、そうしているそのうちにもう魚が寄ってきたようだ。猫は物取るのは上手なやからだから、その魚を取って来たのさ。魚を取って来て、押さえていたら、この魚は、結婚式の新嫁だそうだから、もうそのうちに魚たちがまた集まってよ、「これは、今日の結婚式の新婦ですがどうか助けて下さい。」そうしたら、「ん、それはそうだが。それなら、私たちがそこに落とした宝物、それ持って来てくれたら、それと交換するさ。」そして、その魚の新嫁と宝物を換えてよ、今度は二人の者が連れ添って宝物を持って行くのだが、山近くまで来て川があったから、またも前を走っている犬がこの宝物を川原に落っことして、流してしまったのさ。そうだから、今度は犬が追いかけたが、宝物は水中に沈んでしまって犬が追いつけないでいたら、そのうちにずっと下では、宝物が木の小枝に引っ掛かっているから、今度は猫は飛べるから、川を飛びこえて、猫が取って来て、またも犬に持たせたさ。それで、二人はそうこうして、道中困難な目に合ったが、まあ何とかかんとか目的地に持って行き、その宝物を差し上げたって。それで、二人の帰りしなの話なのさ。犬が、「おい、今までお前はいつも主人の前で食べ物も与えられ、なでられ可愛がられているが、私はそんなことされなかったよ。今回はこの宝物を無事届けたから、お前と同じように私も可愛がって下さるよね。」「そう、そうですとも。」と言って、二人とも相槌うちながら帰って来て、そうしてから主人に、「もう、無事に持って来ましたよ。」と報告したら、「よく頑張った。」と主人に二人とも褒められ、御馳走をもらって犬も猫も大喜びしたさ。ところで、犬はいつも下心では、「私も猫と同じになりたいなあ。」思っていたから、猫が家の中に入るとき自分も猫を追って行って家の中に入ったわけ。そうしたら、主人は猫は家に入っても怒らないが、犬には、「お前みたいなものは。」と言って、薪の棒を振り回ししつつ追い払ってしまったさ。それが一回でもない、二回も犬が裸足で入ってきて追い払われたから良くないさ。こんなに主人が犬にむごく当たったから、それから犬は、「これは猫がいるためだから、猫を追っ払わなくてはならない。」と思ったから、そして猫が来たら、ワンと吠え、また猫もいつも犬にいじめられているから、あとは憎くなって、犬に、ワーオと鳴いて向かって行ったって。それからというもの、犬と猫は仲が悪くなり、犬と猫の仲の悪さはこれから始まったとさ。まあ、これは作り話だな。
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レコード番号 | 47O361892 |
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CD番号 | 47O36C072 |
決定題名 | 犬と猫と指輪(シマグチ) |
話者がつけた題名 | - |
話者名 | 玉城安亀 |
話者名かな | たまきあんき |
生年月日 | 18981005 |
性別 | 男 |
出身地 | 沖縄県北中城村字喜舎場98 |
記録日 | 19811213 |
記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
元テープ番号 | 北中城村補足調査1班T37B04 |
元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
分類 | 11 |
発句(ほっく) | - |
伝承事情 | - |
文字化資料 | 北中城の民話 P508 |
キーワード | 犬,猫,猿のサンメージ,川原,指輪,宝物,魚,犬と猫 |
梗概(こうがい) | 金持ちが犬と猫を飼っていたのさ。この猫と犬は昔はそんなに仲が悪くはないのによ、そうさね、盗人の「この猫さえいなければ、私だって猫のように可愛がられるのにさ。主人は、私には外で寒い思いさせて盗人の番をさせて、猫は、いつもそばにおいて、なでなでして可愛がるし、これはいやなもんだなあ。」と思っていたのさ。ある日、そこの家の宝物は、その名が猿のサンメージと言う宝らしいが、主人が、「これ、あそこの家に持って行けよ。」とそこへ届けるようにいいつけたら、「はい。」と言って、犬がくわえてよ、猫はまたその犬を追って歩いてるわけさ。そうして、川原に来たらよ、「ここは危ないよ、良く気をつけて歩きなさいよ。」と猫が犬に言ってるわけさ。犬は、「ウオー。」と吠えて、走りながら、「ワン。」と返答したわけ。そうしたら、くわえた宝物をその川原小に落っことしてしまったのさ。「うん、これは大変なことになった。」と言って、そうしているそのうちにもう魚が寄ってきたようだ。猫は物取るのは上手なやからだから、その魚を取って来たのさ。魚を取って来て、押さえていたら、この魚は、結婚式の新嫁だそうだから、もうそのうちに魚たちがまた集まってよ、「これは、今日の結婚式の新婦ですがどうか助けて下さい。」そうしたら、「ん、それはそうだが。それなら、私たちがそこに落とした宝物、それ持って来てくれたら、それと交換するさ。」そして、その魚の新嫁と宝物を換えてよ、今度は二人の者が連れ添って宝物を持って行くのだが、山近くまで来て川があったから、またも前を走っている犬がこの宝物を川原に落っことして、流してしまったのさ。そうだから、今度は犬が追いかけたが、宝物は水中に沈んでしまって犬が追いつけないでいたら、そのうちにずっと下では、宝物が木の小枝に引っ掛かっているから、今度は猫は飛べるから、川を飛びこえて、猫が取って来て、またも犬に持たせたさ。それで、二人はそうこうして、道中困難な目に合ったが、まあ何とかかんとか目的地に持って行き、その宝物を差し上げたって。それで、二人の帰りしなの話なのさ。犬が、「おい、今までお前はいつも主人の前で食べ物も与えられ、なでられ可愛がられているが、私はそんなことされなかったよ。今回はこの宝物を無事届けたから、お前と同じように私も可愛がって下さるよね。」「そう、そうですとも。」と言って、二人とも相槌うちながら帰って来て、そうしてから主人に、「もう、無事に持って来ましたよ。」と報告したら、「よく頑張った。」と主人に二人とも褒められ、御馳走をもらって犬も猫も大喜びしたさ。ところで、犬はいつも下心では、「私も猫と同じになりたいなあ。」思っていたから、猫が家の中に入るとき自分も猫を追って行って家の中に入ったわけ。そうしたら、主人は猫は家に入っても怒らないが、犬には、「お前みたいなものは。」と言って、薪の棒を振り回ししつつ追い払ってしまったさ。それが一回でもない、二回も犬が裸足で入ってきて追い払われたから良くないさ。こんなに主人が犬にむごく当たったから、それから犬は、「これは猫がいるためだから、猫を追っ払わなくてはならない。」と思ったから、そして猫が来たら、ワンと吠え、また猫もいつも犬にいじめられているから、あとは憎くなって、犬に、ワーオと鳴いて向かって行ったって。それからというもの、犬と猫は仲が悪くなり、犬と猫の仲の悪さはこれから始まったとさ。まあ、これは作り話だな。 |
全体の記録時間数 | 5:58 |
物語の時間数 | 5:47 |
言語識別 | 方言 |
音源の質 | ○ |
テープ番号 | - |
予備項目1 | - |