
昔、壺借という人がいて、その人はもうすごく貧乏者だったから、家も寝たら足も外にでるぐらいで、いつも山から薪を取ってきて、それを売って暮らしておったらしいですよ。そしたら、あるときから、薪を取ってくるけれども泥棒にみな取られてしまう。「これは困る。もう取られんように薪の上にゴザひいて、ここの上に寝たら取る者のいないはずな。」ちゅうもんで、だから、そこに寝たらしいです。そしたら、夢の中で天から鎖のようなもんでね、ガラガラガラーと白髪のお年寄りが下りて来たんだ。「お前はね、運がもう貧乏性で、いくらお前が働いても、ぜったい金持ちになりきれんからね、あきらめなさいよ。」と言うたらしい。「いくらあんたが言っても私は絶対あきめません。」「どうしてもあきらめたほうがいい。」と言ったそうです。「いや、絶対あきらめません。」と言うたら、「じゃあ、それでは私について来い。」いうて、その神様がね、その人を降りてきた鎖に乗っけて、またガラガラガラーして天に上がる。そしたらね、そこに大きな広っぱがあって、そこにこんな壺がよ、壺が大きな家みたいような壺から、だんだんだんだん小さいのが、こう次々にものすごく並んでおったらしい。その壺の中ぜんぶにね、水が少しづつ入って、それが溜まっておったらしい。一番終いのものは、とても小さい壺で、それも水が入っているが、いつまでたっても一杯には溜まらん。大きいものから水が入っても、その小さい壺は水が少し入るたんびにパタパタして、もう水がこぼれるんですよ。「お前のクエブーの壺は、あの小さい壺だよ。いくら働いてもこぼれて溜まらない。だからお前はもうあきらめたほうがいい。」と言うんで、見ると一番大きな家みたいな壺にはね、まだ水が溜まってなかったそうです。「この大きなもの誰のもんですか。」と聞いたら、「これはね、二、三年後の十二月ごろに生まれる赤ちゃんの壺だよ。」「生まれるまで、これをわしに貸してくれませんか。」と頼んだらしい。そしたら、「お前がそんな言うなら、貸すことは貸すけど、その子が生まれたら帰さなならんよ。」と言うから、「それでいいですから、貸してください。」と。で、この大きな壺の主は、まだお腹にいないころのことだった。「よろしい。」と言うから、その人は、この大きな壺を借りて、そして帰って来たら、目が覚めたら夢であった。しかし、それからその夢があたってもうどんどん、どんどん塵もあくたもお金になるくらいに、働けば、働くほどお金がたまって。もう終いには、下男、下女まで使うほど、二、三年では大きな金持ちになってしまって、「珍しいなあ。」と思っておった。二、三年後、お腹大きい乞食の女がね、この家にやって来てね、そんとき、豆腐作っておったらしい。「なにか食わしてください。腹へっておるから。」とその乞食が言ったら、下女はね、「はい。」言うて持って来て、豆腐を腹一杯食べさせてやったら、乞食の女は、あんまりたくさん食べて、そいでもう帰ろうとして、玄関のところに出たときにね、「腹が痛い。」ちゅうんで、もう子どもが出来るということになったから、その壺借という人はね、思い出してね、「ああ、この子かも分からない。」と言うて、「よし、よし、入りなさい。」と言うたら、下女は、「こんな汚い者をここに入れますか。」と言うて、「いやいや、この人はね、入れなあいかん。」と言うて、自分の裏の座敷に通してね、ここでお産をさせやったって、「もう、あんたはいつまでもここにおっていいから。」と言って、もうその後はね、家族同様にしたから、その子どもの大きな壺のクエブーはね、最後まで、いつまでも自分のクエブーなったというおもしろい話。
| レコード番号 | 47O361839 |
|---|---|
| CD番号 | 47O36C069 |
| 決定題名 | 鉄門の福分(共通語) |
| 話者がつけた題名 | 壺借のクエブー |
| 話者名 | 大城栄光 |
| 話者名かな | おおしろえいこう |
| 生年月日 | 19151106 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県北中城村字熱田 |
| 記録日 | 19811213 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 北中城村字熱田調査17班T34A13 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 北中城の民話 P438 |
| キーワード | 壺借,貧乏者,金持ち,壺,乞食,豆腐,クエブー,鉄門の福分 |
| 梗概(こうがい) | 昔、壺借という人がいて、その人はもうすごく貧乏者だったから、家も寝たら足も外にでるぐらいで、いつも山から薪を取ってきて、それを売って暮らしておったらしいですよ。そしたら、あるときから、薪を取ってくるけれども泥棒にみな取られてしまう。「これは困る。もう取られんように薪の上にゴザひいて、ここの上に寝たら取る者のいないはずな。」ちゅうもんで、だから、そこに寝たらしいです。そしたら、夢の中で天から鎖のようなもんでね、ガラガラガラーと白髪のお年寄りが下りて来たんだ。「お前はね、運がもう貧乏性で、いくらお前が働いても、ぜったい金持ちになりきれんからね、あきらめなさいよ。」と言うたらしい。「いくらあんたが言っても私は絶対あきめません。」「どうしてもあきらめたほうがいい。」と言ったそうです。「いや、絶対あきらめません。」と言うたら、「じゃあ、それでは私について来い。」いうて、その神様がね、その人を降りてきた鎖に乗っけて、またガラガラガラーして天に上がる。そしたらね、そこに大きな広っぱがあって、そこにこんな壺がよ、壺が大きな家みたいような壺から、だんだんだんだん小さいのが、こう次々にものすごく並んでおったらしい。その壺の中ぜんぶにね、水が少しづつ入って、それが溜まっておったらしい。一番終いのものは、とても小さい壺で、それも水が入っているが、いつまでたっても一杯には溜まらん。大きいものから水が入っても、その小さい壺は水が少し入るたんびにパタパタして、もう水がこぼれるんですよ。「お前のクエブーの壺は、あの小さい壺だよ。いくら働いてもこぼれて溜まらない。だからお前はもうあきらめたほうがいい。」と言うんで、見ると一番大きな家みたいな壺にはね、まだ水が溜まってなかったそうです。「この大きなもの誰のもんですか。」と聞いたら、「これはね、二、三年後の十二月ごろに生まれる赤ちゃんの壺だよ。」「生まれるまで、これをわしに貸してくれませんか。」と頼んだらしい。そしたら、「お前がそんな言うなら、貸すことは貸すけど、その子が生まれたら帰さなならんよ。」と言うから、「それでいいですから、貸してください。」と。で、この大きな壺の主は、まだお腹にいないころのことだった。「よろしい。」と言うから、その人は、この大きな壺を借りて、そして帰って来たら、目が覚めたら夢であった。しかし、それからその夢があたってもうどんどん、どんどん塵もあくたもお金になるくらいに、働けば、働くほどお金がたまって。もう終いには、下男、下女まで使うほど、二、三年では大きな金持ちになってしまって、「珍しいなあ。」と思っておった。二、三年後、お腹大きい乞食の女がね、この家にやって来てね、そんとき、豆腐作っておったらしい。「なにか食わしてください。腹へっておるから。」とその乞食が言ったら、下女はね、「はい。」言うて持って来て、豆腐を腹一杯食べさせてやったら、乞食の女は、あんまりたくさん食べて、そいでもう帰ろうとして、玄関のところに出たときにね、「腹が痛い。」ちゅうんで、もう子どもが出来るということになったから、その壺借という人はね、思い出してね、「ああ、この子かも分からない。」と言うて、「よし、よし、入りなさい。」と言うたら、下女は、「こんな汚い者をここに入れますか。」と言うて、「いやいや、この人はね、入れなあいかん。」と言うて、自分の裏の座敷に通してね、ここでお産をさせやったって、「もう、あんたはいつまでもここにおっていいから。」と言って、もうその後はね、家族同様にしたから、その子どもの大きな壺のクエブーはね、最後まで、いつまでも自分のクエブーなったというおもしろい話。 |
| 全体の記録時間数 | 5:38 |
| 物語の時間数 | 5:15 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | ○ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |