黒金座主と北谷王子(シマグチ)

概要

黒金座主は、沖縄の若挟町の護道院という寺の方にね、寄って来ているんだよ。そうしたら、沖縄の人は、学問といってもできないけど、昔は、坊主がなんでもしていました。この人は坊主だから易もしていたんだよ。易でそこら辺の城でも、この坊主は世話人であったって。この人は、いつも野心はあるんだから、まあ始めはもう大変繁盛していましたって。それで、もう術をかけて雨を降らしてみたり、裏座の方で、もう術を掛けて、女たちに悪戯したりしたから、これが噂になって皆に聞かれているんだよ。そうしたから、もう人は来なくなったから、こんどは首里の金持ちの人や王様も取り入る仕組みをしているんだよ。だけど、王様にはもう手はつけられないでしょう。それで、王様を崇めると言っている首里の人たちは、この人は、術だから何に化けるか分からないんだが、顔もどこもかも殴られて、人に見られないほど蹴りとばされてきたというからね。だから、王様は、密かに大村御殿の北谷王子という方に、その黒金座主を退治する内々の話をしていたんだよ。それで、一番始めに大村御殿の北谷王子は、黒金座主の護道院に行くことにして、もうそのときは、黒金座主の護道院は、草も生え放題になって、荒れていたって。もうこの人は、その寺に行って、「今日は寂しいから、碁をしよう。」と言ったそうだ。黒金座主は、囲碁が上手なんです。大村御殿も上手だよ。黒金座主も力のあるかぎりパチパチ打ってやっていながら、術をかけて来るから、もう大村御殿は、あれの術を知っていたからよ。「やがて、どうにかしよう。」と太刀を取ることを考えているんだよ。それで、術を架けて来るのを見ると、大村御殿は、もうわざわざ、自分はあくびをしたりなにしたりして、術にかかりかけたふりをしているんだよ。後になったら、「あんたが、負けたらどうする。」「私が勝ったらどうする。」と二人は言って,パチパチして、碁を打っていると、大村御殿が勝ちそうになって、「どうかねえ。護道の坊さん。」と言ったら、黒金座主もう負けそうになったら、なにかに化けて、そこから逃げようとしたんだよ。向こうに行っては、鼠になったり、行灯を飛び越えて、鳩になってみたりしているんだよ。だから、大村御殿は、術を掛けてそこに行くことを分かっているんだよ。黒金座主は、すぐにこの行灯のほうに鳩になっていたら大村御殿に捕まえられて、顔や耳を切られて、もう血もだらだらして逃げようとしたら、止どめを刺されて殺されているんだよ。それから、大村御殿には、黒金座主が耳を切られている姿のマジムンになって来るというのさ。それで、御城や首里那覇の人たちがもう、「大村御殿のそばに、マジムンたちが来ているさ。」と。あんなに言っていたそうだ。そうして、大村御殿では、男の子が生まれるたびに、その黒金座主のマジムンにやられて死んでしまうと言うんだよ。後はもう察してからさあ、大村御殿は男の子が生まれたら、「大きな女の子が生まれたよ。」とふれ歩いたって。それで、男が生まれても 「大きな女が生まれたよ。」と言ったら、それからは、生まれた子どもが助かったという話なんですよ。もう死んでも、魂なんだから、黒金座主の魂は、終いには青い火になって、逃げて行ったそうだよ。

再生時間:6:45

民話詳細DATA

レコード番号 47O361614
CD番号 47O36C062
決定題名 黒金座主と北谷王子(シマグチ)
話者がつけた題名
話者名 新垣徳章
話者名かな あらかきとくしょう
生年月日 19040105
性別
出身地 沖縄県北中城村字大城
記録日 19810924
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 北中城村字大城調査1班T25B07
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 20
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 北中城の民話 P326
キーワード 黒金座主,若挟町,護道院,坊主,大村御殿,北谷王子
梗概(こうがい) 黒金座主は、沖縄の若挟町の護道院という寺の方にね、寄って来ているんだよ。そうしたら、沖縄の人は、学問といってもできないけど、昔は、坊主がなんでもしていました。この人は坊主だから易もしていたんだよ。易でそこら辺の城でも、この坊主は世話人であったって。この人は、いつも野心はあるんだから、まあ始めはもう大変繁盛していましたって。それで、もう術をかけて雨を降らしてみたり、裏座の方で、もう術を掛けて、女たちに悪戯したりしたから、これが噂になって皆に聞かれているんだよ。そうしたから、もう人は来なくなったから、こんどは首里の金持ちの人や王様も取り入る仕組みをしているんだよ。だけど、王様にはもう手はつけられないでしょう。それで、王様を崇めると言っている首里の人たちは、この人は、術だから何に化けるか分からないんだが、顔もどこもかも殴られて、人に見られないほど蹴りとばされてきたというからね。だから、王様は、密かに大村御殿の北谷王子という方に、その黒金座主を退治する内々の話をしていたんだよ。それで、一番始めに大村御殿の北谷王子は、黒金座主の護道院に行くことにして、もうそのときは、黒金座主の護道院は、草も生え放題になって、荒れていたって。もうこの人は、その寺に行って、「今日は寂しいから、碁をしよう。」と言ったそうだ。黒金座主は、囲碁が上手なんです。大村御殿も上手だよ。黒金座主も力のあるかぎりパチパチ打ってやっていながら、術をかけて来るから、もう大村御殿は、あれの術を知っていたからよ。「やがて、どうにかしよう。」と太刀を取ることを考えているんだよ。それで、術を架けて来るのを見ると、大村御殿は、もうわざわざ、自分はあくびをしたりなにしたりして、術にかかりかけたふりをしているんだよ。後になったら、「あんたが、負けたらどうする。」「私が勝ったらどうする。」と二人は言って,パチパチして、碁を打っていると、大村御殿が勝ちそうになって、「どうかねえ。護道の坊さん。」と言ったら、黒金座主もう負けそうになったら、なにかに化けて、そこから逃げようとしたんだよ。向こうに行っては、鼠になったり、行灯を飛び越えて、鳩になってみたりしているんだよ。だから、大村御殿は、術を掛けてそこに行くことを分かっているんだよ。黒金座主は、すぐにこの行灯のほうに鳩になっていたら大村御殿に捕まえられて、顔や耳を切られて、もう血もだらだらして逃げようとしたら、止どめを刺されて殺されているんだよ。それから、大村御殿には、黒金座主が耳を切られている姿のマジムンになって来るというのさ。それで、御城や首里那覇の人たちがもう、「大村御殿のそばに、マジムンたちが来ているさ。」と。あんなに言っていたそうだ。そうして、大村御殿では、男の子が生まれるたびに、その黒金座主のマジムンにやられて死んでしまうと言うんだよ。後はもう察してからさあ、大村御殿は男の子が生まれたら、「大きな女の子が生まれたよ。」とふれ歩いたって。それで、男が生まれても 「大きな女が生まれたよ。」と言ったら、それからは、生まれた子どもが助かったという話なんですよ。もう死んでも、魂なんだから、黒金座主の魂は、終いには青い火になって、逃げて行ったそうだよ。
全体の記録時間数 6:58
物語の時間数 6:45
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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