
モーイの親は摂政、三司官だったようだが。昔はその人達が、いろいろな事を協議していたようだね。そして薩摩から難題が来て、どうすればよいのだろうと、大変苦労していたそうだ。その難題を一問でも答えることができなかったら、もう沖縄にとっては大変な恥だったらしい。そうして難題に対応するために協議しているところへ、モーイ親方がやって来たので、今度はこういう難題がきているということを話した。するとモーイは「今度は私を行かせて下さい。」と言うと、「これはお前みたいな子供にできることか。」と言われたようだ。「貴方達にはできなくても私にはできますよ。」と、モーイは返したそうだ。すると、もう残りの三司官達も、モーイが普通の頭ではないということは分かっているのだからね。「まず、モーイが言うのだから、行かせてごらん。」ということになった。それで「そうか。」と、モーイを行かせたそうだ。もう薩摩では、殿様の側には家老が座っていた。モーイが、「沖縄から御用を解いて持って来ました。」と言ったら「御用を解いて持って来たのだったら、入りなさい。」と中に入れてもらった。そこで「親に難題を出したのに、どうしておまえが来たのか。」「私の親が来るつもりだったのですが、急に産気づいてしまって来ることができずに私が代わりに来ました。」と。「お前はそういうふうな口のきき方をするが、お前の親は男がも産気づくというのか。」と。「いや、産気づいています。」「男がも産気づくと言うこともあるか。」等と、もう何回も言い合ったようだね。それでもモーイは、「産気づいています。」と我を張ったって。「確かに、男が産気づくということはないのですか。」と、「男がも産気づくということがあるのか。」と、もう薩摩も性根を悪くしてしまった。そこで、すかさずモーイは、「だったら雄鶏の卵というのがあるんですか。」と言ったようだね。そうしたら、もうその時には殿様は頭を振ってしまった。「もうよろしい。」と。それから、「灰縄を持って来ました。」と。灰縄は五十尋もあったそうだ。そこで縄を綯って、それを立派に巻いてから火をつけたって。もう縄の型はあるのだから、焼いても綱の型がそのまま残るでしょう。そこで、「これが灰縄です。これは縄だけど焼いてありますから灰縄になっています。」と、「じゃあ、これももうよろしい。」と。それで、今度は「弁が嶽を積む船がありませんので、それが積めるような船を貸して下さい。」と言った。薩摩でもそんな船はないでしょう。だから、「これもよろしい。」と。それも褒められたようだ。今度は、「もう、お前の望み通りの物を褒美としてあげよう。」と、いうことになった。「そうして下さいますか。」と。「私の望みというのは、今日一日でよろしいですので、薩摩の殿様にして下さい。」と申し出た。すると、家老の側にいた人達は、「合点がいかない。」ということでね。そう言ったものだから、殿様は「それは私が望み通りにすると言ったことだから、お前たちは口出しするな。」と言われた。「そういうことでしたら、今日一日だけ薩摩の殿様にして下さい。」「じゃあ、そうしなさい。」ということになった。そうして、モーイは殿様を側に下げて、殿様の着物を装ってそこに座ってしまった。「私は、今日は薩摩の殿様だから、私が言うのを聞け。聞かないのだったら合点ならぬ。」と言ったようだ。昔の家老というのは、ずっと殿様の側にいるのだから。モーイが、「私の言うことを聞かないんだったら、お前たちは合点ならぬ。沖縄の砂糖上納の書類を持って来なさい。」と言ったので、もう止むを得ず砂糖上納の書類を持って来たようだ。砂糖をいくら上納するというふうに書かれた本物の書類を持って来た。そこで、モーイは書類を開けて見て、見事にそこで燃やしてしまった。破って燃やしてしまった。すると側にいた人達は怒ってしまったのだが、それはもう殿様のやったことだからね……と。
それから周辺から槍を向けるのだが、槍が向けられると、すかさずモーイ親方はその槍を捕まえてしまった。昔でいう武士だからね。そうして捕まえて、前に引きずり降ろしてしまった。琴で槍を受け止め、その人を倒して踏みつけ、その上に立ったって。それから「私は、殿様はそれだけで良い。」と、その人を離してやった。もうこれだけたくさんの砂糖上納を沖縄が納めなくても済むようにと、書類を焼いてしまった。モーイ親方が一日殿様になったので、止むを得なくなって、もう合点がいかないということで槍を向けたら、側から捕まえられて、押し倒されてしまった。それで、もう沖縄の砂糖上納はそんなに多くは納めなくても済むようになったということだよ。昔は、砂糖上納を納めるということは、大変なことだったからね。
| レコード番号 | 47O374368 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C189 |
| 決定題名 | モーイ親方 難題 一日殿様 琴の太刀受け(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 仲程亀 |
| 話者名かな | なかほどかめ |
| 生年月日 | 18951010 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県読谷村牧原 |
| 記録日 | 19770508 |
| 記録者の所属組織 | 読谷村民話調査団 |
| 元テープ番号 | 読谷村牧原T02A17 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 13 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集13 大木・長田・牧原の民話P238 |
| キーワード | モーイの親は摂政三司官,薩摩から難題,、大変苦労していた,モーイ親方,私を行かせて下さい,モーイが普通の頭ではない,殿様の側には家老,産気づいた,雄鶏の卵,灰縄,弁が嶽を積む船がありません,褒美,一日だけ薩摩の殿様,沖縄の砂糖上納の書類を,破って燃やした,槍を向ける,武士,琴で槍を受け止めた |
| 梗概(こうがい) | モーイの親は摂政、三司官だったようだが。昔はその人達が、いろいろな事を協議していたようだね。そして薩摩から難題が来て、どうすればよいのだろうと、大変苦労していたそうだ。その難題を一問でも答えることができなかったら、もう沖縄にとっては大変な恥だったらしい。そうして難題に対応するために協議しているところへ、モーイ親方がやって来たので、今度はこういう難題がきているということを話した。するとモーイは「今度は私を行かせて下さい。」と言うと、「これはお前みたいな子供にできることか。」と言われたようだ。「貴方達にはできなくても私にはできますよ。」と、モーイは返したそうだ。すると、もう残りの三司官達も、モーイが普通の頭ではないということは分かっているのだからね。「まず、モーイが言うのだから、行かせてごらん。」ということになった。それで「そうか。」と、モーイを行かせたそうだ。もう薩摩では、殿様の側には家老が座っていた。モーイが、「沖縄から御用を解いて持って来ました。」と言ったら「御用を解いて持って来たのだったら、入りなさい。」と中に入れてもらった。そこで「親に難題を出したのに、どうしておまえが来たのか。」「私の親が来るつもりだったのですが、急に産気づいてしまって来ることができずに私が代わりに来ました。」と。「お前はそういうふうな口のきき方をするが、お前の親は男がも産気づくというのか。」と。「いや、産気づいています。」「男がも産気づくと言うこともあるか。」等と、もう何回も言い合ったようだね。それでもモーイは、「産気づいています。」と我を張ったって。「確かに、男が産気づくということはないのですか。」と、「男がも産気づくということがあるのか。」と、もう薩摩も性根を悪くしてしまった。そこで、すかさずモーイは、「だったら雄鶏の卵というのがあるんですか。」と言ったようだね。そうしたら、もうその時には殿様は頭を振ってしまった。「もうよろしい。」と。それから、「灰縄を持って来ました。」と。灰縄は五十尋もあったそうだ。そこで縄を綯って、それを立派に巻いてから火をつけたって。もう縄の型はあるのだから、焼いても綱の型がそのまま残るでしょう。そこで、「これが灰縄です。これは縄だけど焼いてありますから灰縄になっています。」と、「じゃあ、これももうよろしい。」と。それで、今度は「弁が嶽を積む船がありませんので、それが積めるような船を貸して下さい。」と言った。薩摩でもそんな船はないでしょう。だから、「これもよろしい。」と。それも褒められたようだ。今度は、「もう、お前の望み通りの物を褒美としてあげよう。」と、いうことになった。「そうして下さいますか。」と。「私の望みというのは、今日一日でよろしいですので、薩摩の殿様にして下さい。」と申し出た。すると、家老の側にいた人達は、「合点がいかない。」ということでね。そう言ったものだから、殿様は「それは私が望み通りにすると言ったことだから、お前たちは口出しするな。」と言われた。「そういうことでしたら、今日一日だけ薩摩の殿様にして下さい。」「じゃあ、そうしなさい。」ということになった。そうして、モーイは殿様を側に下げて、殿様の着物を装ってそこに座ってしまった。「私は、今日は薩摩の殿様だから、私が言うのを聞け。聞かないのだったら合点ならぬ。」と言ったようだ。昔の家老というのは、ずっと殿様の側にいるのだから。モーイが、「私の言うことを聞かないんだったら、お前たちは合点ならぬ。沖縄の砂糖上納の書類を持って来なさい。」と言ったので、もう止むを得ず砂糖上納の書類を持って来たようだ。砂糖をいくら上納するというふうに書かれた本物の書類を持って来た。そこで、モーイは書類を開けて見て、見事にそこで燃やしてしまった。破って燃やしてしまった。すると側にいた人達は怒ってしまったのだが、それはもう殿様のやったことだからね……と。 それから周辺から槍を向けるのだが、槍が向けられると、すかさずモーイ親方はその槍を捕まえてしまった。昔でいう武士だからね。そうして捕まえて、前に引きずり降ろしてしまった。琴で槍を受け止め、その人を倒して踏みつけ、その上に立ったって。それから「私は、殿様はそれだけで良い。」と、その人を離してやった。もうこれだけたくさんの砂糖上納を沖縄が納めなくても済むようにと、書類を焼いてしまった。モーイ親方が一日殿様になったので、止むを得なくなって、もう合点がいかないということで槍を向けたら、側から捕まえられて、押し倒されてしまった。それで、もう沖縄の砂糖上納はそんなに多くは納めなくても済むようになったということだよ。昔は、砂糖上納を納めるということは、大変なことだったからね。 |
| 全体の記録時間数 | 6:20 |
| 物語の時間数 | 6:20 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | 〇 |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |