
姥捨山の話をします。昔は六十一歳になるともう年寄りだといって、すぐ山に捨てられたということらしいですが。ある時、ある字に大変親孝行の息子がいて、「私のお母さんはもう六十一歳になってしまったので、捨てなければいけないのだが、どうしたらいいものか。」と、大変哀れんでいた。すると、お母さんは「しょうがないさあ、私は六十一歳になっているのだから、山に連れて行って捨てなさい。」と言うのだが、その子は大変親孝行者で、どうしても捨てることができなかった。それで、ずっと山奥の人目につかないような所に、お母さんを連れて行って、そこに小屋を造って住まわせていたらしい。食事も運んで差し上げていたらしい。そうしていたが、親はもう「六十一にもなれば私はそのまま山で、おなかをすかせて、この世を去るから。」と言うのだが、息子は親のことを案じるばかりであった。息子は親の元へ通って一日に、二、三度の食事も差し上げていたので、お祖母さんは大変元気に暮らしていたようだが。ある時、戦争が始まった。するともう、その村に問題が出され、字中の人で一生懸命に考えるのだが、解決策がなかなか見つからない。それはどんな問題かというと、一つは灰で縄を綯いなさい。さもなければ、すぐにでも兵を寄せるよ、ということ。もう一つはまた、雄鶏の卵を必ず持って来なさいという、この二つの問題を出された。息子はもう「この問題は字中の皆で考えても、なかなか答えを見つけることができない。どうしたら良いものだろうか。」と、大変悩んでいた。すると、ある時ふと思いついて「こうなっては、亀の甲より年の甲という言葉もあるので、私達のお母さんは山に捨ててあるが、まずは聞いてきてみよう。年寄りだったらお分かりになられるかもしれないし…。その二つの問題をもし解くことができなければ、すぐにでも兵を押し寄せて来るというし、どうしよう。」と。自分のお母さんの元へ行き、「実はこれこれしかじかで、他国から問題を二つ出されて、それを解くことができなければ、すぐに兵を寄せて来るというのだが、どうしよう。」と、お母さんに相談して、話を聞いた。すると、お母さんは、「これは大変簡単な事ですよ。灰で縄を綯いなさいというのは、お前では分からないはずだが、縄を瓦の上に置いて、それに火をつけて燃やせば立派に灰で縄を綯っているようになるし。」。またもう一つの雄鶏の卵はというのも、そのお母さんが教えてくれたそうだ。「雄鶏の卵というのも大変簡単な問題だよ。お前たち男が子を生んだということがあるか、と。そう答えると、あそこも何も言うことができずに負けることになるよ。さあ、今言ったことで返事をすれば、戦も勝っているよ。」と言って、お母さんが教えてくれたって。もうその息子は大変喜んで、「ああやっぱり、亀の甲より年の甲といって、お年寄りのようには話もこのような考えがないもんだ。」と言って、そこの村頭の所に駆けつけた。そうして「村頭、私に大変良い考えがあります。灰で縄を綯いなさいというのは、縄をすぐ瓦の上に置いて燃やせば立派な灰で縄を綯ったような形ができるし。また雄鶏の卵という問題は、父親が卵を生むとか、子を生んだということは、いまだかつて聞いたこともないと答えれば良いと、私はこのように考えております。」と言った。(そうしているうちに)向こうから「この問題ふたつは、お前たち分かっているのか。」と言って来た。灰で縄を綯いなさいというのに対してもうその子が、お母さんの言われた通りにやってみると、すぐにできたって。「もう縄は綯ってありますよ。」と言って解いた。また、「貴方のところでは男が子を生みますか。」と言ったら、「ああ、貴方のところはもう頭が良いよ。私達の国よりずっと頭が良い。」と言われて、その人は負けて帰られて、戦もしなくて済んだそうだよ。そうしたので、「お前は何と頭が良いことか、あの答えを良く考えつくことができたもんだな。」と言うので、「実は私が考えついたものではありません。私を生んでくれたお母さんを捨てることができず、山の中に住まわせています。さっきの答えも私の考えではなく、私のお母さんから教えてもらったものなんです。」と言うと、「ああ、そうか。これは今からはどんなことがあっても、六十一歳になろうとも、捨てるものではない。年寄りは宝。今からはもう、決して捨てることはしないでおこうなあ。」と、お母さんを山からすぐに呼び戻して、家に連れて来てからも立派に孝行をして、大切に世話をしたという話です。
| レコード番号 | 47O374303 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C187 |
| 決定題名 | 姥捨て山 難題(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 比嘉静 |
| 話者名かな | ひがしず |
| 生年月日 | 19151017 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 沖縄県読谷村大湾 |
| 記録日 | 19770508 |
| 記録者の所属組織 | 読谷村民話調査団 |
| 元テープ番号 | 読谷村大木T04B04 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集13 大木・長田・牧原の民話P109 |
| キーワード | 姥捨山,六十一歳,山に捨てられた,大変親孝行の息子,小屋,食事も運んで差し上げていた,戦争が始まった,村に問題が出された,灰縄,雄鶏の卵,亀の甲より年の甲と,父親が卵を生む,年寄りは宝 |
| 梗概(こうがい) | 姥捨山の話をします。昔は六十一歳になるともう年寄りだといって、すぐ山に捨てられたということらしいですが。ある時、ある字に大変親孝行の息子がいて、「私のお母さんはもう六十一歳になってしまったので、捨てなければいけないのだが、どうしたらいいものか。」と、大変哀れんでいた。すると、お母さんは「しょうがないさあ、私は六十一歳になっているのだから、山に連れて行って捨てなさい。」と言うのだが、その子は大変親孝行者で、どうしても捨てることができなかった。それで、ずっと山奥の人目につかないような所に、お母さんを連れて行って、そこに小屋を造って住まわせていたらしい。食事も運んで差し上げていたらしい。そうしていたが、親はもう「六十一にもなれば私はそのまま山で、おなかをすかせて、この世を去るから。」と言うのだが、息子は親のことを案じるばかりであった。息子は親の元へ通って一日に、二、三度の食事も差し上げていたので、お祖母さんは大変元気に暮らしていたようだが。ある時、戦争が始まった。するともう、その村に問題が出され、字中の人で一生懸命に考えるのだが、解決策がなかなか見つからない。それはどんな問題かというと、一つは灰で縄を綯いなさい。さもなければ、すぐにでも兵を寄せるよ、ということ。もう一つはまた、雄鶏の卵を必ず持って来なさいという、この二つの問題を出された。息子はもう「この問題は字中の皆で考えても、なかなか答えを見つけることができない。どうしたら良いものだろうか。」と、大変悩んでいた。すると、ある時ふと思いついて「こうなっては、亀の甲より年の甲という言葉もあるので、私達のお母さんは山に捨ててあるが、まずは聞いてきてみよう。年寄りだったらお分かりになられるかもしれないし…。その二つの問題をもし解くことができなければ、すぐにでも兵を押し寄せて来るというし、どうしよう。」と。自分のお母さんの元へ行き、「実はこれこれしかじかで、他国から問題を二つ出されて、それを解くことができなければ、すぐに兵を寄せて来るというのだが、どうしよう。」と、お母さんに相談して、話を聞いた。すると、お母さんは、「これは大変簡単な事ですよ。灰で縄を綯いなさいというのは、お前では分からないはずだが、縄を瓦の上に置いて、それに火をつけて燃やせば立派に灰で縄を綯っているようになるし。」。またもう一つの雄鶏の卵はというのも、そのお母さんが教えてくれたそうだ。「雄鶏の卵というのも大変簡単な問題だよ。お前たち男が子を生んだということがあるか、と。そう答えると、あそこも何も言うことができずに負けることになるよ。さあ、今言ったことで返事をすれば、戦も勝っているよ。」と言って、お母さんが教えてくれたって。もうその息子は大変喜んで、「ああやっぱり、亀の甲より年の甲といって、お年寄りのようには話もこのような考えがないもんだ。」と言って、そこの村頭の所に駆けつけた。そうして「村頭、私に大変良い考えがあります。灰で縄を綯いなさいというのは、縄をすぐ瓦の上に置いて燃やせば立派な灰で縄を綯ったような形ができるし。また雄鶏の卵という問題は、父親が卵を生むとか、子を生んだということは、いまだかつて聞いたこともないと答えれば良いと、私はこのように考えております。」と言った。(そうしているうちに)向こうから「この問題ふたつは、お前たち分かっているのか。」と言って来た。灰で縄を綯いなさいというのに対してもうその子が、お母さんの言われた通りにやってみると、すぐにできたって。「もう縄は綯ってありますよ。」と言って解いた。また、「貴方のところでは男が子を生みますか。」と言ったら、「ああ、貴方のところはもう頭が良いよ。私達の国よりずっと頭が良い。」と言われて、その人は負けて帰られて、戦もしなくて済んだそうだよ。そうしたので、「お前は何と頭が良いことか、あの答えを良く考えつくことができたもんだな。」と言うので、「実は私が考えついたものではありません。私を生んでくれたお母さんを捨てることができず、山の中に住まわせています。さっきの答えも私の考えではなく、私のお母さんから教えてもらったものなんです。」と言うと、「ああ、そうか。これは今からはどんなことがあっても、六十一歳になろうとも、捨てるものではない。年寄りは宝。今からはもう、決して捨てることはしないでおこうなあ。」と、お母さんを山からすぐに呼び戻して、家に連れて来てからも立派に孝行をして、大切に世話をしたという話です。 |
| 全体の記録時間数 | 4:43 |
| 物語の時間数 | 4:43 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |