
昔、ある首里の侍がね。首里のあの当時の王府に勤めていて、この人は神人というより易の係であったらしいんだが、沖縄で言う書物の係であった。この人は、千里までも見通せるぐらいの能力と徳のある人であった。私は現在、私の時代はこのようにして首里で勤めして、楽に良い生活をしているんだが。私から何代目かの、ずっと先の子や孫の時代に、確かに私の子や孫の時代に、私が今している仕事を王府に奪い取られてしまうだろう。その理由というのは、この何代目かの子や孫が酒に身を持ち崩して、(それで)王府から「お前がはこの役目は果たせない。」と、このように奪い取られる時期がくるのを、この人は自分の感で分かってしまった。私はこのようにして自分の仕事は先祖代々からしっかり守って、人並のことはしたんだが。子や孫の時代でこのようなことができるということは、これほどの心配ごとはない。これをどうにか防がねばいけないと考えて、どうすれば防ぐことができるだろうと考えていると。私達に先祖代々から伝わってくる黄金枕に私達の遺言を書き入れて、子や孫に譲らないといけないと考えた。そういうふうにして、この黄金枕は代々子や孫に譲った。そうしてこの何代目の子や孫ということは分からないが、この時期がきた時にこの黄金枕を親の譲りとして持っている子孫が、まさにその通りに酒に身を持ち崩して、首里の王府から追われたようである。それでこの黄金に、どういうふうに遺言は書いて入れてあるかというとね。今から何百年後に、必ず首里城の唐破風が朽て落ちる時がくるからね。私の感にそういうふうに見えて、また私の書物の方からもそういうふうに見えるからね。その場合にこの子孫に、黄金枕に入っている(遺言)を首里王府に持たせて、首里王府の御主加那志とか、按司、ウナザラなどを救わないといけないということであったらしいが。その通りにこの何代目か後に酒に身を持ち崩した人は、もう首里城を追われて仕事もなく、妻子も養うことができなかった。いわばルンペンみたいにして暮らしていたようだ。そうしてある日、この橋の名は何という橋だったのか分からないが、ある橋の下で宿をとって寝ていると、大きな岩が壊れてきて押しつぶされる夢を見たようだ。そして飛び起きて「ああ、これは夢だったんだね。」と、寝るんだがまたも岩が崩れてきて押しつぶされる夢を見たからね。何かのひょうしにその黄金枕を取って、その橋の石垣に投げたようだ。そうすると(その)黄金枕が砕けて、砕けた中から紙が出てきて、書き物が出てきた。それを取り読んでみると、何という年の何月何日の何時何分に、必ず首里城の唐破風が崩れるからね。そこの下で、城の王やウナザラ、重役などが集まり、大変重要な事を吟味しているからね。あんたは、この親祖父の遺言を急いで持って行き首里城に行ってあそこに連絡しなさい。急いで首里城の王やウナザラ、重役などの人達を救いなさい。いわばあんたは、これから立身するということはないから。(このことは)親祖父や子孫のことを考えて心配して、あんたを立身させるためのことだからね。これは嘘ではないんだから、急いで首里城に行って(みんなを)救いなさい。」と。そういうことでこの書物を見たら、もう今日の日であった。もうこれは一大事な事だということで、すぐ一目散に(首里城に)行った。するとそこではもう唐破風の下で、会議をしていた。そうして、「サリサリー。」と入って行き、この書いた物を見せて、「急いでこの唐破風から出て下さい。」と。それで最初は馬鹿にして、「お前みたいなやつは!ここから職も取り上げられて追われた酒飲みの馬鹿者が、たわごとばかり言って。」と、言い返そうとするが。必ず、もう必ず(御覧になって下さいと)大変せかした。それで「じゃ、一応見てみよう。」と。門番が見ると、もうこれは一大事なことだと、急いで伝えたようだ。そうして王はそれを聞いて、「はい!臣下達よ、急いでここを出なさい。」と、すると(そこを)出ると同時に、ゴーッという大きな音を立てて(唐破風は)壊れたようである。その唐破風は落ちたようだ。そういうことで書物というものは昔から、無視することはできないということである。書物というものは無視できないという言葉がある。あんたの親祖父のために、私達の命や重役の命も無事に助かったからね。いったんはここから職も取り上げられて離任されたことだが、あんたの親祖父の勲功に目をつぶり、今後はまた元の職に戻すから、帰ってきて沖縄のために尽くしなさいと、(いうことであった)。それからこの人は心を入れかえて、琉球王国のために尽くした。その時からますます書物というのは重要な物であるということで、沖縄ではこの易というのは大変尊ばれたそうだ。それでこの一つの運命というのは巡り巡り必ずあるということで、このことから出ているそうだ。
| レコード番号 | 47O373194 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C138 |
| 決定題名 | 易者の話(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | 易者の話 |
| 話者名 | 照屋寛良 |
| 話者名かな | てるやかんりょう |
| 生年月日 | 19080510 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県読谷村座喜味 |
| 記録日 | 19770816 |
| 記録者の所属組織 | 読谷村民話調査団 |
| 元テープ番号 | 読谷村座喜味T08A01 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集10座喜味の民話 P218 |
| キーワード | 首里の侍,王府勤め,神人,易の係,書物の係,千里までも見通せる,子や孫,酒に身を持ち崩す,黄金枕,遺言,親の譲り,首里城の唐破風,首里王府の御主加那志,按司,ウナザラ,ルンペン,橋の名,橋の下で宿,大きな岩,橋の石垣に投げた,門番,親祖父の勲功 |
| 梗概(こうがい) | 昔、ある首里の侍がね。首里のあの当時の王府に勤めていて、この人は神人というより易の係であったらしいんだが、沖縄で言う書物の係であった。この人は、千里までも見通せるぐらいの能力と徳のある人であった。私は現在、私の時代はこのようにして首里で勤めして、楽に良い生活をしているんだが。私から何代目かの、ずっと先の子や孫の時代に、確かに私の子や孫の時代に、私が今している仕事を王府に奪い取られてしまうだろう。その理由というのは、この何代目かの子や孫が酒に身を持ち崩して、(それで)王府から「お前がはこの役目は果たせない。」と、このように奪い取られる時期がくるのを、この人は自分の感で分かってしまった。私はこのようにして自分の仕事は先祖代々からしっかり守って、人並のことはしたんだが。子や孫の時代でこのようなことができるということは、これほどの心配ごとはない。これをどうにか防がねばいけないと考えて、どうすれば防ぐことができるだろうと考えていると。私達に先祖代々から伝わってくる黄金枕に私達の遺言を書き入れて、子や孫に譲らないといけないと考えた。そういうふうにして、この黄金枕は代々子や孫に譲った。そうしてこの何代目の子や孫ということは分からないが、この時期がきた時にこの黄金枕を親の譲りとして持っている子孫が、まさにその通りに酒に身を持ち崩して、首里の王府から追われたようである。それでこの黄金に、どういうふうに遺言は書いて入れてあるかというとね。今から何百年後に、必ず首里城の唐破風が朽て落ちる時がくるからね。私の感にそういうふうに見えて、また私の書物の方からもそういうふうに見えるからね。その場合にこの子孫に、黄金枕に入っている(遺言)を首里王府に持たせて、首里王府の御主加那志とか、按司、ウナザラなどを救わないといけないということであったらしいが。その通りにこの何代目か後に酒に身を持ち崩した人は、もう首里城を追われて仕事もなく、妻子も養うことができなかった。いわばルンペンみたいにして暮らしていたようだ。そうしてある日、この橋の名は何という橋だったのか分からないが、ある橋の下で宿をとって寝ていると、大きな岩が壊れてきて押しつぶされる夢を見たようだ。そして飛び起きて「ああ、これは夢だったんだね。」と、寝るんだがまたも岩が崩れてきて押しつぶされる夢を見たからね。何かのひょうしにその黄金枕を取って、その橋の石垣に投げたようだ。そうすると(その)黄金枕が砕けて、砕けた中から紙が出てきて、書き物が出てきた。それを取り読んでみると、何という年の何月何日の何時何分に、必ず首里城の唐破風が崩れるからね。そこの下で、城の王やウナザラ、重役などが集まり、大変重要な事を吟味しているからね。あんたは、この親祖父の遺言を急いで持って行き首里城に行ってあそこに連絡しなさい。急いで首里城の王やウナザラ、重役などの人達を救いなさい。いわばあんたは、これから立身するということはないから。(このことは)親祖父や子孫のことを考えて心配して、あんたを立身させるためのことだからね。これは嘘ではないんだから、急いで首里城に行って(みんなを)救いなさい。」と。そういうことでこの書物を見たら、もう今日の日であった。もうこれは一大事な事だということで、すぐ一目散に(首里城に)行った。するとそこではもう唐破風の下で、会議をしていた。そうして、「サリサリー。」と入って行き、この書いた物を見せて、「急いでこの唐破風から出て下さい。」と。それで最初は馬鹿にして、「お前みたいなやつは!ここから職も取り上げられて追われた酒飲みの馬鹿者が、たわごとばかり言って。」と、言い返そうとするが。必ず、もう必ず(御覧になって下さいと)大変せかした。それで「じゃ、一応見てみよう。」と。門番が見ると、もうこれは一大事なことだと、急いで伝えたようだ。そうして王はそれを聞いて、「はい!臣下達よ、急いでここを出なさい。」と、すると(そこを)出ると同時に、ゴーッという大きな音を立てて(唐破風は)壊れたようである。その唐破風は落ちたようだ。そういうことで書物というものは昔から、無視することはできないということである。書物というものは無視できないという言葉がある。あんたの親祖父のために、私達の命や重役の命も無事に助かったからね。いったんはここから職も取り上げられて離任されたことだが、あんたの親祖父の勲功に目をつぶり、今後はまた元の職に戻すから、帰ってきて沖縄のために尽くしなさいと、(いうことであった)。それからこの人は心を入れかえて、琉球王国のために尽くした。その時からますます書物というのは重要な物であるということで、沖縄ではこの易というのは大変尊ばれたそうだ。それでこの一つの運命というのは巡り巡り必ずあるということで、このことから出ているそうだ。 |
| 全体の記録時間数 | 9:11 |
| 物語の時間数 | 9:11 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | △ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |