子供の寿命(シマグチ)

こどものじゅみょう

概要

たいそう昔、沖縄にあった事。とても裕福な金持ちの一人息子で、その子一人だそうだ。もうその子を失ったら大変だと一つだけあるスンカンを割ったらなくなるのと同じことでね。それが、その一人息子が重い病気になってしまったので物知りの所へ行った。(物知りといったら今のユタだね)「貴方たちの子は、今度はもうとても危ないので、私の本の中に貴方たちの子を助ける方法が書かれているので、私が言うことをよく聞きなさい。」と言った。「何でしょうか。」と聞くと、「ここから、貴方たちのところから北の方角に向かって行くと、北の方角の深い山の底に、木も生えてなく、草も生えてない枯れた所があるので、そこで北のお星様と、南のお星様が集まられて、碁を打たれているので、そこへ行って、お願いしなさい。子どもを救うお願いをしなさい。」と。そして、北の方角へずっと行って、深山へ行くと、そこに、山奥に、草がはげている所、木も生えてなく、草がはげている所に神様が二人碁を打っておられたそうだ。そして、碁に夢中になった所に、「ごめん下さい、ごめん下さい。」と、夫婦で行くと、一人の神様が、「ここでシジャが何か言っているようだが。」と。(生身にはシジャと言うそうだ。昔のことばではね)そして、振り返ってみると、その神様が「何だ、お前たちは、人がこんなに夢中になって碁を打っているところヘ『ごめん下さい、ごめん下さい』と言うが何の願い事があるのか。」「もう本当の話を申し上げましょう。私たちの家庭のことですが、悪も欲もやっておりませんが、一人息子が、とても重い病気にかかって、この子を失なうと私たちには何の望みもありません。」「それで、貴方の子は幾つか。」と言ったので、「十八歳です。」と。「さあそれでは南のお星様、帳簿をあけれ。」と帳簿をあけさせたそうだ。すると、某(なにがし)の何番地の一人息子は十八歳に死ぬと書かれていたそうだ。天が引き取ると書かれていたそうだ。「はい!貴方たちの子は十八歳に、まず天の帳簿にこのようにあるなあ。」「そうすると、お願いにあがったのは、貴方方お二人に頼らなければ助からないといって、物知りに教えられてここへ来たわけです。」「ああそうか。では南のお星様、またも帳簿をあけなさい、この人たちは誠かそうでないか調べる。」「この人たちは誠、洗っても落ちません。夫婦、子も大変誠な者です。」「あっそうか、では、せっかく誠実な者たちであるならば、なるべくは命を延ばさせてあげよう。この浮世は自分たち二人の勝手だからね。」と。そうして、「お前たち夫婦よ、お前たちが沖縄でいちばんおいしいと思うもの、沖縄でそれ以上の薬はないというほどのもので、おいしいのは何か。」と聞いたので、「そうですね、沖縄で薬にもなっておいしいものといえば山羊汁ではないでしょうか。」と言ったようだ。「そのとおりだ。山羊汁は人間薬、そしてまた、もうひとつ沖縄で無くてはならない品物、それを食べると、人の真心が表われるもの、もう飲み物では何か、お前たちは分かるか。」と言ったので、夫婦は考えた。「そうですね、沖縄で飲んでおもしろくもあれば、またくずれるのも、本当の真心表わすものといえば金城御酒ではないでしょうか。首里の金城御酒。」「うんうん、これだ。酒を飲ますと、人の心が分かるのでこれだ。それでは、私の前に山羊汁、山羊薬を持ってきなさい。私たちが食べるのではない。これは天の神々に供えるものなので、私たちが食べるのではないよ。」そうして、供えさせて、「お前たちの子どもに徳をつけようね、よし、南のお星様よ、あなたは帳簿神なので、私が一番大将だが、あなたが帳簿を持っているので、上に八の字を書きなさい。」そして、「お前の子どもは、上に、十八の上に八をつけたよ、分かったか、それでは、八月八日になぞられて大きなお祝いをしなさいよ。」今からもう何十年先のことは、はい、これがトーカチ(注 )、八十八、トーカチの由来はそうだったらしい。

再生時間:5:37

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民話詳細DATA

レコード番号 47O373087
CD番号 47O37C133
決定題名 子供の寿命(シマグチ)
話者がつけた題名 米寿由来
話者名 照屋寛良
話者名かな てるやかんりょう
生年月日 19080510
性別
出身地 沖縄県読谷村座喜味
記録日 19770227
記録者の所属組織 読谷村民話調査団
元テープ番号 読谷村座喜味T04B12
元テープ管理者 読谷村立歴史民俗資料館
分類 12
発句(ほっく)
伝承事情 夕食後に祖父から聞いた。
文字化資料 読谷村民話資料集10座喜味の民話 P135
キーワード 裕福な金持ちの一人息子,重い病気,物知り,北の方角の深い山の底,で北のお星様,南のお星様,碁,神様,シジャ,十八歳,帳簿,大変誠な者,山羊汁は人間薬,人の真心が表われる,首里の金城御酒,天の神々に供える,子どもに徳,上に八の字,十八の上に八,八月八日,大きなお祝い,トーカチの由来
梗概(こうがい) たいそう昔、沖縄にあった事。とても裕福な金持ちの一人息子で、その子一人だそうだ。もうその子を失ったら大変だと一つだけあるスンカンを割ったらなくなるのと同じことでね。それが、その一人息子が重い病気になってしまったので物知りの所へ行った。(物知りといったら今のユタだね)「貴方たちの子は、今度はもうとても危ないので、私の本の中に貴方たちの子を助ける方法が書かれているので、私が言うことをよく聞きなさい。」と言った。「何でしょうか。」と聞くと、「ここから、貴方たちのところから北の方角に向かって行くと、北の方角の深い山の底に、木も生えてなく、草も生えてない枯れた所があるので、そこで北のお星様と、南のお星様が集まられて、碁を打たれているので、そこへ行って、お願いしなさい。子どもを救うお願いをしなさい。」と。そして、北の方角へずっと行って、深山へ行くと、そこに、山奥に、草がはげている所、木も生えてなく、草がはげている所に神様が二人碁を打っておられたそうだ。そして、碁に夢中になった所に、「ごめん下さい、ごめん下さい。」と、夫婦で行くと、一人の神様が、「ここでシジャが何か言っているようだが。」と。(生身にはシジャと言うそうだ。昔のことばではね)そして、振り返ってみると、その神様が「何だ、お前たちは、人がこんなに夢中になって碁を打っているところヘ『ごめん下さい、ごめん下さい』と言うが何の願い事があるのか。」「もう本当の話を申し上げましょう。私たちの家庭のことですが、悪も欲もやっておりませんが、一人息子が、とても重い病気にかかって、この子を失なうと私たちには何の望みもありません。」「それで、貴方の子は幾つか。」と言ったので、「十八歳です。」と。「さあそれでは南のお星様、帳簿をあけれ。」と帳簿をあけさせたそうだ。すると、某(なにがし)の何番地の一人息子は十八歳に死ぬと書かれていたそうだ。天が引き取ると書かれていたそうだ。「はい!貴方たちの子は十八歳に、まず天の帳簿にこのようにあるなあ。」「そうすると、お願いにあがったのは、貴方方お二人に頼らなければ助からないといって、物知りに教えられてここへ来たわけです。」「ああそうか。では南のお星様、またも帳簿をあけなさい、この人たちは誠かそうでないか調べる。」「この人たちは誠、洗っても落ちません。夫婦、子も大変誠な者です。」「あっそうか、では、せっかく誠実な者たちであるならば、なるべくは命を延ばさせてあげよう。この浮世は自分たち二人の勝手だからね。」と。そうして、「お前たち夫婦よ、お前たちが沖縄でいちばんおいしいと思うもの、沖縄でそれ以上の薬はないというほどのもので、おいしいのは何か。」と聞いたので、「そうですね、沖縄で薬にもなっておいしいものといえば山羊汁ではないでしょうか。」と言ったようだ。「そのとおりだ。山羊汁は人間薬、そしてまた、もうひとつ沖縄で無くてはならない品物、それを食べると、人の真心が表われるもの、もう飲み物では何か、お前たちは分かるか。」と言ったので、夫婦は考えた。「そうですね、沖縄で飲んでおもしろくもあれば、またくずれるのも、本当の真心表わすものといえば金城御酒ではないでしょうか。首里の金城御酒。」「うんうん、これだ。酒を飲ますと、人の心が分かるのでこれだ。それでは、私の前に山羊汁、山羊薬を持ってきなさい。私たちが食べるのではない。これは天の神々に供えるものなので、私たちが食べるのではないよ。」そうして、供えさせて、「お前たちの子どもに徳をつけようね、よし、南のお星様よ、あなたは帳簿神なので、私が一番大将だが、あなたが帳簿を持っているので、上に八の字を書きなさい。」そして、「お前の子どもは、上に、十八の上に八をつけたよ、分かったか、それでは、八月八日になぞられて大きなお祝いをしなさいよ。」今からもう何十年先のことは、はい、これがトーカチ(注 )、八十八、トーカチの由来はそうだったらしい。
全体の記録時間数 5:37
物語の時間数 5:37
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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