唐旅をした兄弟(シマグチ)

概要

ある所に、長男、次男といた。次男はもうごく平凡な人であった。嫡子はもう大変優秀で偉い人だったそうだよ。(嫡子は)子供時代から頭も大変よくて、理屈も分かる人であった。そうであったので、嫡子は次男に少しは社会勉強もさせたいと思い、「あなたはお金だけを儲けてもいけないよ。お金も儲けて、人間は生まれた以上は自分のために楽しみもしないといけないよ。」と。やっぱり兄さんは、大変頭がよかったのでね。「そうですか兄さん。」と。「あなたはまた、へそくりもたくさん持っているみたいだけど。」と(兄さんは弟に)言った。私達が若い時代にはね、今の中国は支那と呼んでいたよ。またその以前は、唐と言っていた。唐ね、今の中国には沖縄の人は唐と言っていた。その頃は、沖縄と中国は政治も一つだったらしい。沖縄の人は、唐によく旅をしていたそうだ。(それで兄は弟に)「私もまだあそこへは行ったことがないし、あなたも行ったことはないから、唐へ視察しに行こう。」「じゃあ行ってみますか兄さん。」と話をしたわけだ。いよいよ、「何月の何日に出発しようね。」と日も決まって、出発の間近になってからね。出発する前に、ただ手ぶらで行って自分のお金だけを使って、楽しんできてもしようがないと思ってね。弟の方は家でクバ笠を作っており、大変上手であった。兄さんは弟がクバ笠を作るのが上手であるということで、「あなたはここでもクバ笠を売ってお金を儲けているんだからね。今度は、唐でよけいに繁盛するはずだからね。クバ笠をたくさん作って持って行こうね。」と。あそこでは、売れそうだと考えたんでしょうね。お互いに。売れそうだということになったので、「そうならばもう上等だよ兄さん、私がたくさん作っておくよ。」と言った。準備もできたので笠も持って、唐に出発することになった。そして唐に着いた。品物は持っているんだから、それを売らないことにはお金はつくれないわけだ。さっそく笠の行商を始めることになり、ある地方で、「笠を買って下さい。」と歩いた。でも、ちっとも笠を買ってくれなかった。「ああ!持って来なければよかった。兄さんこれはどうするんですか。また同じように島に持ち返すわけにもいけませんよ。」と言った。(それから、笠も売れないので)お寺などの有名な所を、笠も担いだまま見物に行った。「笠を買ってくれる人もいないので、見物を始めようね。」と。もう、お寺と言っていいでしょうね。(この座喜味城にもね、工事が始まらない前は、石灯籠というまるい建物があったよ。上部に飾りもついてね)それが(笠は)二十四持っていたようだ。また、その石灯籠も二十四立っていたそうだよ、それは神様だと信じられていたわけだね。数えてみると、自分も笠を二十四持っていた。「この笠は買ってくれる人もいないんだから、この石灯籠は全部神様であるんだから、神様にこの笠を全部被せて帰ろうね。」と。二十四の石灯籠に全部被せてしまったので、もうこの笠は全部売れたということだ。お金はないよう。ただ寄付だよ。そうしたら、「もうこれでいいよ、神様であるんだからいいよ。」と。兄さんが言っているんではなくて、(弟が)「いいよ兄さん。」と言った。もうその時にそこから帰る途中に、「いぇー、いぇーひゃー、いぇー、いぇー。」と三回ほど人の声が聞こえたそうだ。「人ひとりとしていないのに人の声が聞こえるけどどうしてかな。」と、振り返って立ち止まり聞いてみると。「あなたたち二人は、ありがとう。何年も昔から、雨が降ろうと風が吹こうと外灯籠で、今まで濡れてばかりいたけど、あなた達が笠を譲って被せて、(今からは)雨にも不自由がないはずだありがとう。」という言葉が神様からあった。「不思議なことだなあ、うかがっておきます。」と、そういうふうにして。ここのお寺、お宮といっていいのか、「ここの方向に黄金を埋めてあるからね。何尺掘ればそこにあるから、あなたたちはそこを掘りなさい。」「ああ珍しいことだ本当かなあ。」と、その現場を捜しあてて掘ってみたら、黄金がたくさん出てきた。出てきた黄金を二人で見ると、すぐに使えるような金ではなかった。これは黄金であるんだからね。さあこれは神様からの授かりであるから、何も悪い事ではない。だから、「私達が持って行こうね。」と持って行った。兄さんは頭は秀れていたからね。ある所の旅館で、ゆっくりくつろいでいる時の話だがね。「あのね、次男、これは私達の島へ持って帰ってもね、この黄金ですぐに何か買うこともできないから、お金と替えて行こう。」と。そうして、黄金をお金と替えてくれる所を捜しあてて行った。すると相当なお金と替えることができたそうだ。手にいれたもんだから、二人は大変喜んだ。兄さんはもう大変頭も秀れていたからね。お金はたくさん次男が持っていた。もう今でいう当時の料亭みたいな飲み屋みたいな所で、「一夜泊まり飲んだり食べたりして帰ろうね。」と(いうことになった。)そしてそこに入ってみると、あまりにも楽しい所なので一夜のつもりであったが、そこで食べたり飲んだり楽しみをしすぎて日が過ぎていくのも分からなかった。あまりにも楽しい所なので、滞在が長びいてしまって、今度はもうこのたくさんのお金を全部使いはたしてしまった。飲んだりしてね。もう今度もまた次男はもうがっかりしてしまった。これも兄さんの考えであったからね。もうこんな大金を全部使いはたしてしまった。沖縄へ帰る旅費さえもなかった。そうこうしてこの飲み屋をたくさんのお金を儲けさせてしまった。がっかりして、「もうどうしたら帰ることができるだろう。」と、二人で心配していた。その様子を見ていた女中達が、「あなた達はどうなさったんですか、どこか気分でも悪いんじゃないですか、こんなにしょんぼりなさって。」と言った。「ああ、はっきり言うけどね、私達がここへ来てから今日まで、あまりにも長いこと遊んでしまった。それでたくさんのお金を見事に使いはたしてしまってね。沖縄へ帰るにはどうしたらいいか、ここからでることもできずにこうして黙っているんだよ。」と女中に言った。女中はまた、「ああ、そうなんですか。」と。今度はまた、「そうでしたら、あなた達が持っていたお金を返すことはできないがね。ここに大変新しくていい絵があります。偉い絵があります。この絵をあなた達にさしあげますので、沖縄に帰る時はこの絵を持って船に乗りさえすれば、あなた達に大変ためになります。またお金も元あったお金が入ってきます。ですからこの絵を持って船に乗り、沖縄へ帰って下さい。」と言う人がいたそうだ。「そうですか、ありがとうございます。私達に(この絵を)あげますか。」と言ったからね。「さしあげますよ。」と言った。「ありがとう。」と。「お金はなくてもよろしいですよ。船に乗る時も、すぐ乗せて下さいと言って乗りさえすれば、沖縄に帰るまでに何もあなた達が困るようなことは絶対にありません。かえって幸福がまわってきますよ。」と言ったそうだ。それで(二人は)、「ありがとう。」と(受け取った)。そして、その絵だけを持って、二人で沖縄へ帰る船にね、船に乗りこんだようだ。乗りこんだら、その船旅の途中で暴風がおこってしまった。暴風がおこったので、またその絵は暴風の時に、風を静める絵であるからね、「暴風がおこった場合にはそれを広げて下さい。そうすればたちまち波も静かになりますよ。」と、この絵をあげる時に言ったそうだ。「ああ、ありがたいことです。」と受け取っていた、という話は聞いていたからね。暴風がおこったので、遭難しそうになり船長はもうあわてふためいていた。「絶対に心配はするな、私達がそれに対抗する道具を持っているからね、私達がこの絵を広げると、すぐに波もいつもの静かな海になるよ。」と言われたからね。船長は「そうか、でもどうしてお前達がそのような道具を持っているのか。」と言った。すると「持ってますよ。」「ああそうなら広げてくれ。」ということになった。そしてその場で絵を広げたら、さっそく波も静かになり、風もおさまりいつもの静かな海になり、無事に帰ることができた。この船長は、「この道具を私に譲ってくれないか。あなたたちが言う通りの値段で買うから売ってくれないか。」と願ったからね。「もうこれはちょっと売りにくいですよ。」と言ったんだが。「いいえ、これはもう私が何よりも一番に欲しい道具であるから、譲ってくれ。」と言った。「もうそうでしたら、そのようにしましょう。」と、船長に売ることになった。すると、唐で飲んだり食べたりした、たくさんのお金と同じくらいの金額を船長から渡された。そして渡されたので、もうそのお金も受け取ってね、前と同じ金額で船長が絵を買い取り、沖縄に帰って来た。もうこの二人は貧乏であったんだが、そのお金で財産買ったり、家を造ったりして、大変豊かになった。生活にも困らない明るいよい生活をするようになったそうだ。

再生時間:12:57

民話詳細DATA

レコード番号 47O373026
CD番号 47O37C131
決定題名 唐旅をした兄弟(シマグチ)
話者がつけた題名 唐旅をした兄弟
話者名 当山三次郎
話者名かな とうやまさんじろう
生年月日 19010810
性別
出身地 沖縄県読谷村座喜味
記録日 19770227
記録者の所属組織 読谷村民話調査団
元テープ番号 読谷村座喜味T03A07
元テープ管理者 読谷村立歴史民俗資料館
分類 12
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 読谷村民話資料集10座喜味の民話 P63
キーワード 次男はもうごく平凡な人,嫡子はもう大変優秀で偉い人,唐旅,クバ笠,お寺,座喜味城,石灯籠が二十四,神様,三回ほど人の声,黄金,神様からの授かり,旅館,黄金をお金と替える,料亭,飲み屋,お金を全部使いはたした,女中,絵,船,暴風,風を静める絵,船長
梗概(こうがい) ある所に、長男、次男といた。次男はもうごく平凡な人であった。嫡子はもう大変優秀で偉い人だったそうだよ。(嫡子は)子供時代から頭も大変よくて、理屈も分かる人であった。そうであったので、嫡子は次男に少しは社会勉強もさせたいと思い、「あなたはお金だけを儲けてもいけないよ。お金も儲けて、人間は生まれた以上は自分のために楽しみもしないといけないよ。」と。やっぱり兄さんは、大変頭がよかったのでね。「そうですか兄さん。」と。「あなたはまた、へそくりもたくさん持っているみたいだけど。」と(兄さんは弟に)言った。私達が若い時代にはね、今の中国は支那と呼んでいたよ。またその以前は、唐と言っていた。唐ね、今の中国には沖縄の人は唐と言っていた。その頃は、沖縄と中国は政治も一つだったらしい。沖縄の人は、唐によく旅をしていたそうだ。(それで兄は弟に)「私もまだあそこへは行ったことがないし、あなたも行ったことはないから、唐へ視察しに行こう。」「じゃあ行ってみますか兄さん。」と話をしたわけだ。いよいよ、「何月の何日に出発しようね。」と日も決まって、出発の間近になってからね。出発する前に、ただ手ぶらで行って自分のお金だけを使って、楽しんできてもしようがないと思ってね。弟の方は家でクバ笠を作っており、大変上手であった。兄さんは弟がクバ笠を作るのが上手であるということで、「あなたはここでもクバ笠を売ってお金を儲けているんだからね。今度は、唐でよけいに繁盛するはずだからね。クバ笠をたくさん作って持って行こうね。」と。あそこでは、売れそうだと考えたんでしょうね。お互いに。売れそうだということになったので、「そうならばもう上等だよ兄さん、私がたくさん作っておくよ。」と言った。準備もできたので笠も持って、唐に出発することになった。そして唐に着いた。品物は持っているんだから、それを売らないことにはお金はつくれないわけだ。さっそく笠の行商を始めることになり、ある地方で、「笠を買って下さい。」と歩いた。でも、ちっとも笠を買ってくれなかった。「ああ!持って来なければよかった。兄さんこれはどうするんですか。また同じように島に持ち返すわけにもいけませんよ。」と言った。(それから、笠も売れないので)お寺などの有名な所を、笠も担いだまま見物に行った。「笠を買ってくれる人もいないので、見物を始めようね。」と。もう、お寺と言っていいでしょうね。(この座喜味城にもね、工事が始まらない前は、石灯籠というまるい建物があったよ。上部に飾りもついてね)それが(笠は)二十四持っていたようだ。また、その石灯籠も二十四立っていたそうだよ、それは神様だと信じられていたわけだね。数えてみると、自分も笠を二十四持っていた。「この笠は買ってくれる人もいないんだから、この石灯籠は全部神様であるんだから、神様にこの笠を全部被せて帰ろうね。」と。二十四の石灯籠に全部被せてしまったので、もうこの笠は全部売れたということだ。お金はないよう。ただ寄付だよ。そうしたら、「もうこれでいいよ、神様であるんだからいいよ。」と。兄さんが言っているんではなくて、(弟が)「いいよ兄さん。」と言った。もうその時にそこから帰る途中に、「いぇー、いぇーひゃー、いぇー、いぇー。」と三回ほど人の声が聞こえたそうだ。「人ひとりとしていないのに人の声が聞こえるけどどうしてかな。」と、振り返って立ち止まり聞いてみると。「あなたたち二人は、ありがとう。何年も昔から、雨が降ろうと風が吹こうと外灯籠で、今まで濡れてばかりいたけど、あなた達が笠を譲って被せて、(今からは)雨にも不自由がないはずだありがとう。」という言葉が神様からあった。「不思議なことだなあ、うかがっておきます。」と、そういうふうにして。ここのお寺、お宮といっていいのか、「ここの方向に黄金を埋めてあるからね。何尺掘ればそこにあるから、あなたたちはそこを掘りなさい。」「ああ珍しいことだ本当かなあ。」と、その現場を捜しあてて掘ってみたら、黄金がたくさん出てきた。出てきた黄金を二人で見ると、すぐに使えるような金ではなかった。これは黄金であるんだからね。さあこれは神様からの授かりであるから、何も悪い事ではない。だから、「私達が持って行こうね。」と持って行った。兄さんは頭は秀れていたからね。ある所の旅館で、ゆっくりくつろいでいる時の話だがね。「あのね、次男、これは私達の島へ持って帰ってもね、この黄金ですぐに何か買うこともできないから、お金と替えて行こう。」と。そうして、黄金をお金と替えてくれる所を捜しあてて行った。すると相当なお金と替えることができたそうだ。手にいれたもんだから、二人は大変喜んだ。兄さんはもう大変頭も秀れていたからね。お金はたくさん次男が持っていた。もう今でいう当時の料亭みたいな飲み屋みたいな所で、「一夜泊まり飲んだり食べたりして帰ろうね。」と(いうことになった。)そしてそこに入ってみると、あまりにも楽しい所なので一夜のつもりであったが、そこで食べたり飲んだり楽しみをしすぎて日が過ぎていくのも分からなかった。あまりにも楽しい所なので、滞在が長びいてしまって、今度はもうこのたくさんのお金を全部使いはたしてしまった。飲んだりしてね。もう今度もまた次男はもうがっかりしてしまった。これも兄さんの考えであったからね。もうこんな大金を全部使いはたしてしまった。沖縄へ帰る旅費さえもなかった。そうこうしてこの飲み屋をたくさんのお金を儲けさせてしまった。がっかりして、「もうどうしたら帰ることができるだろう。」と、二人で心配していた。その様子を見ていた女中達が、「あなた達はどうなさったんですか、どこか気分でも悪いんじゃないですか、こんなにしょんぼりなさって。」と言った。「ああ、はっきり言うけどね、私達がここへ来てから今日まで、あまりにも長いこと遊んでしまった。それでたくさんのお金を見事に使いはたしてしまってね。沖縄へ帰るにはどうしたらいいか、ここからでることもできずにこうして黙っているんだよ。」と女中に言った。女中はまた、「ああ、そうなんですか。」と。今度はまた、「そうでしたら、あなた達が持っていたお金を返すことはできないがね。ここに大変新しくていい絵があります。偉い絵があります。この絵をあなた達にさしあげますので、沖縄に帰る時はこの絵を持って船に乗りさえすれば、あなた達に大変ためになります。またお金も元あったお金が入ってきます。ですからこの絵を持って船に乗り、沖縄へ帰って下さい。」と言う人がいたそうだ。「そうですか、ありがとうございます。私達に(この絵を)あげますか。」と言ったからね。「さしあげますよ。」と言った。「ありがとう。」と。「お金はなくてもよろしいですよ。船に乗る時も、すぐ乗せて下さいと言って乗りさえすれば、沖縄に帰るまでに何もあなた達が困るようなことは絶対にありません。かえって幸福がまわってきますよ。」と言ったそうだ。それで(二人は)、「ありがとう。」と(受け取った)。そして、その絵だけを持って、二人で沖縄へ帰る船にね、船に乗りこんだようだ。乗りこんだら、その船旅の途中で暴風がおこってしまった。暴風がおこったので、またその絵は暴風の時に、風を静める絵であるからね、「暴風がおこった場合にはそれを広げて下さい。そうすればたちまち波も静かになりますよ。」と、この絵をあげる時に言ったそうだ。「ああ、ありがたいことです。」と受け取っていた、という話は聞いていたからね。暴風がおこったので、遭難しそうになり船長はもうあわてふためいていた。「絶対に心配はするな、私達がそれに対抗する道具を持っているからね、私達がこの絵を広げると、すぐに波もいつもの静かな海になるよ。」と言われたからね。船長は「そうか、でもどうしてお前達がそのような道具を持っているのか。」と言った。すると「持ってますよ。」「ああそうなら広げてくれ。」ということになった。そしてその場で絵を広げたら、さっそく波も静かになり、風もおさまりいつもの静かな海になり、無事に帰ることができた。この船長は、「この道具を私に譲ってくれないか。あなたたちが言う通りの値段で買うから売ってくれないか。」と願ったからね。「もうこれはちょっと売りにくいですよ。」と言ったんだが。「いいえ、これはもう私が何よりも一番に欲しい道具であるから、譲ってくれ。」と言った。「もうそうでしたら、そのようにしましょう。」と、船長に売ることになった。すると、唐で飲んだり食べたりした、たくさんのお金と同じくらいの金額を船長から渡された。そして渡されたので、もうそのお金も受け取ってね、前と同じ金額で船長が絵を買い取り、沖縄に帰って来た。もうこの二人は貧乏であったんだが、そのお金で財産買ったり、家を造ったりして、大変豊かになった。生活にも困らない明るいよい生活をするようになったそうだ。
全体の記録時間数 12:57
物語の時間数 12:57
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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