
名前は忘れておるから、ある人としてね。同姓同名の人がいたそうです。これはもう昔の話です。那覇(なは)の泉崎(いずみざき)のね、ある人は、家庭があんまり豊かでないので、昔は髪につける水油(みずあぶら)を売っていたそうですがね。片一方の方は、高利貸をして生活していたそうですね。それである時、豊見城(とみぐすく)、今の豊見城村(とみぐすくそん)に行って油を売った。そしたらその油売りのおじさんは、かぶる笠を忘れたそうですね。油売った所に。その後にもう一人の高利貸が来て、金を返せと追ったらね。ないもんだから、延期を申し入れたら、暴力をふるってとうとう死に致らしめたそうですね。それで公儀(こうじ)は、これを取り調べするに笠があったと、確かにこの油売りの笠だと。そして有無を言わさず、その平等所(ひらじゅ)といいますね、昔はね。そこに引っぱって行って、そして判決は死刑ということであったが。その妻がですね、「私の夫はそんなする人じゃない。私はもう妻になって久しいが、私(わたくし)が十分気持ちは分かるから、そんな大それた事をする人じゃない。油売りがまたどうして人の命を奪うでしょうか。これは何かの間違いですから、調べ直して下さい。」と言っても、「いや動かざるその笠があるじゃないか。」「そんだらもうしかたがないから。三日間延期して下さい。」と、公儀(こうじ)はね、「よかろう。」と。「三日間だよ。」と念をおして。その女は、そのう嶽々(たきだき)ね、いわゆる神々を拝んでね。「私の夫が、そういうことをするとは思いませんが、もし無実の罪であるならば、神様のお力でお救い下さい。」と、身を清めて夜、昼となく祈願して歩いた。夜も昼も。そしてもう、疲れ疲れてね。「もう夜が明けたら、うちの主人はもう死刑だ。」と、「ああ、神も私もないもんだ。」と、こうやっていたら、そこの裏門の所でふらついてね。もう立てなくなったそうだ。そしたら、耳をすまして聞いていたら、その台所の方が明るかった。そして覗いて見たら、何かその下男連中が一生懸命仕事をしておると、台所の仕事をね。何だろうと耳をすまして聞いたら、その下男連中の話を盗み聞きしたわけさ。「今おまえ何時なると思う。」「もう夜が明けるんだよ。」「我々をたたき起こして、鶏をつぶさせるということはおまえ分かっておる。意味分かるか。」「私は分からんよ。」「主人の連中が、主人のみなさんが、酒を飲んで座興にただ腹へったから、鶏つぶせという理由じゃないか。」と言うたら、「いや違う、違う。」「どういう理由だ。」「実はこういうしかじかで、金を取り立てに豊見城(とみしろ)に行ったら、返さないもんだから、暴行に及んで死に致らしめた。それをその笠を忘れた油売りが、加害者だというので、もう死刑決まったが、妻がね、非常に感心なもんで、三日間猶予をもらった。それでも夜は明けるんだ。三日の夜は明ける。もう大丈夫。もう鶏をつぶして、飲み直しに命拾いのお祝(いわい)しようじゃないかということで、今鶏をつぶさせて、お互いはたたき起こされて、鶏をつぶしているわけなんだよ。」それは神の引き合わせでしょうね。それを聞いて喜んだのはもう、もうふるいたってね、首里(しゅり)にはせさんじて、「犯人をつかまえました。」と。死刑はやめろということになって。この役人が行ったら、もう酒を飲んでぐったりして、台所だけ鶏の料理をしておるのに忙しかった。一網打尽にとりまかれて、この人たちが罪に復した。ということじたいその女のね夫を信頼する心、神はまた真面目なほうの方に見方してくれた。神がかりみたような、伝説みたような話を読んだ覚えがありますがね。
| レコード番号 | 47O372079 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C089 |
| 決定題名 | 貞女の話(共通語) |
| 話者がつけた題名 | 貞女の話 |
| 話者名 | 神谷乗敏 |
| 話者名かな | かみやじょうびん |
| 生年月日 | 19040314 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県読谷村渡慶次 |
| 記録日 | 19770816 |
| 記録者の所属組織 | 読谷村民話調査団第6班 |
| 元テープ番号 | 読谷村渡慶次T04A01 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 20 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | 本 |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集7渡慶次の民話 P204 |
| キーワード | 同姓同名,那覇の泉崎,水油,高利貸,豊見城村,油売りのおじさん,かぶる笠を忘れた,平等,判決は死刑,妻,嶽々,神々を拝んだ,台所の下男 |
| 梗概(こうがい) | 名前は忘れておるから、ある人としてね。同姓同名の人がいたそうです。これはもう昔の話です。那覇(なは)の泉崎(いずみざき)のね、ある人は、家庭があんまり豊かでないので、昔は髪につける水油(みずあぶら)を売っていたそうですがね。片一方の方は、高利貸をして生活していたそうですね。それである時、豊見城(とみぐすく)、今の豊見城村(とみぐすくそん)に行って油を売った。そしたらその油売りのおじさんは、かぶる笠を忘れたそうですね。油売った所に。その後にもう一人の高利貸が来て、金を返せと追ったらね。ないもんだから、延期を申し入れたら、暴力をふるってとうとう死に致らしめたそうですね。それで公儀(こうじ)は、これを取り調べするに笠があったと、確かにこの油売りの笠だと。そして有無を言わさず、その平等所(ひらじゅ)といいますね、昔はね。そこに引っぱって行って、そして判決は死刑ということであったが。その妻がですね、「私の夫はそんなする人じゃない。私はもう妻になって久しいが、私(わたくし)が十分気持ちは分かるから、そんな大それた事をする人じゃない。油売りがまたどうして人の命を奪うでしょうか。これは何かの間違いですから、調べ直して下さい。」と言っても、「いや動かざるその笠があるじゃないか。」「そんだらもうしかたがないから。三日間延期して下さい。」と、公儀(こうじ)はね、「よかろう。」と。「三日間だよ。」と念をおして。その女は、そのう嶽々(たきだき)ね、いわゆる神々を拝んでね。「私の夫が、そういうことをするとは思いませんが、もし無実の罪であるならば、神様のお力でお救い下さい。」と、身を清めて夜、昼となく祈願して歩いた。夜も昼も。そしてもう、疲れ疲れてね。「もう夜が明けたら、うちの主人はもう死刑だ。」と、「ああ、神も私もないもんだ。」と、こうやっていたら、そこの裏門の所でふらついてね。もう立てなくなったそうだ。そしたら、耳をすまして聞いていたら、その台所の方が明るかった。そして覗いて見たら、何かその下男連中が一生懸命仕事をしておると、台所の仕事をね。何だろうと耳をすまして聞いたら、その下男連中の話を盗み聞きしたわけさ。「今おまえ何時なると思う。」「もう夜が明けるんだよ。」「我々をたたき起こして、鶏をつぶさせるということはおまえ分かっておる。意味分かるか。」「私は分からんよ。」「主人の連中が、主人のみなさんが、酒を飲んで座興にただ腹へったから、鶏つぶせという理由じゃないか。」と言うたら、「いや違う、違う。」「どういう理由だ。」「実はこういうしかじかで、金を取り立てに豊見城(とみしろ)に行ったら、返さないもんだから、暴行に及んで死に致らしめた。それをその笠を忘れた油売りが、加害者だというので、もう死刑決まったが、妻がね、非常に感心なもんで、三日間猶予をもらった。それでも夜は明けるんだ。三日の夜は明ける。もう大丈夫。もう鶏をつぶして、飲み直しに命拾いのお祝(いわい)しようじゃないかということで、今鶏をつぶさせて、お互いはたたき起こされて、鶏をつぶしているわけなんだよ。」それは神の引き合わせでしょうね。それを聞いて喜んだのはもう、もうふるいたってね、首里(しゅり)にはせさんじて、「犯人をつかまえました。」と。死刑はやめろということになって。この役人が行ったら、もう酒を飲んでぐったりして、台所だけ鶏の料理をしておるのに忙しかった。一網打尽にとりまかれて、この人たちが罪に復した。ということじたいその女のね夫を信頼する心、神はまた真面目なほうの方に見方してくれた。神がかりみたような、伝説みたような話を読んだ覚えがありますがね。 |
| 全体の記録時間数 | 7:12 |
| 物語の時間数 | 7:12 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | △ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |