
ある夫婦が結婚しても長い間子どもに恵まれなかったそうだ。長らく子どもは産まれず、それから何十年か経って男の子が産まれた。すると父親は、このような喜びはまれな事だと、自分がこれまで親しく交っていたジュリ(料亭女と言うのかね、今では)を家に連れて来て、何十年ぶりに男の子が産まれたのだから、盛大な出産祝をやろうと思い、父親はジュリの所へ行った。長い間ジュリのところへは行ってなかった。すると連れに行った目当てのジュリは死んでしまっていた。それから、首里の坂下にマカン道という所があって、そこを通って「もう私が親しくしている女は死んでしまったのだね。」と思いながら、帰る途中で美しい女の人に会った。道中で、大変美しい女に、それで、「ハイ」「ハイサイ」とあいさつをかわした。「お父さんはどこへ行かれるんですか。」と聞かれたので、「私は今、自分がとても親しくしていたジュリがいて、何十年ぶりかで妻に男の子が産まれたので、そのジュリを家に連れて来てお祝いをやろうと思い、出向いて行ったら死んでしまって会えなかったので、残念でたまらない。今家に帰る途中です」と答えた。「それでは私が行ってさしあげましょう。歌や三味線も上手な方ですので自分が祝いの座を盛り上げます。」と言ったので、そのジュリを連れて行ったそうです。家では酒も肴も出してもてなしてやると、その美女は歌や踊りで祝いの座を盛り上げにぎわらせてくれた。すると、そこの家の子どもを産んだ人が、「これほどまでに踊りもうまいし、歌もなんと上手なんだろう。すばらしい女の人が来ているもんだ。」と思った。(昔の家は今のように立派な建物ではないでしょう。)一目見てみようと思い、節穴からのぞいてみると、美女だと思って見ると、人間ではなく幽霊であったそうだ。「ティンゲー」という、それが踊っていたわけ。そしたらその家の妻は、「お父さん、ちょっと来て。」と自分の夫を呼んで、「今日は大変な事になってしまったよ。あの人は人間ではないんですよ。あのように歌や踊りで祝いの座を盛り上げてくれているが、実は幽霊なんですよ。大変困った事になってしまった。」と夫婦で考え込みながら踊り、女の人をみていると、夜明けを告げる一番鶏が鳴く頃になったので「ああ、今日は実にいい祝いをさせてもらいました。これで帰ります。」と帰って行ったらしい。幽霊は鶏の鳴く頃を恐がるようです。そこで父親が、「幽霊の後を追って見てみよう。」とついて行くと、すぐに墓のある所へ行ったそうだ。墓の前に行ったものの墓の入口には「えん魔王」という大物がいるそうだ。大物がいて、「貴方は、鶏が鳴いてしまったので今日は入れない。明日の晩までここに立っていなさい。明日の晩になったら入れてあげよう。鶏が夜明けを告げたので入れない。」と言ったので「どうして、私は今まで子どもの産まれた家に行っていて、そこで踊りもして祝いをして来たのだ。ちゃんとした証拠だってあるのです。」「どういう証拠があると言うんだ。」とえん魔王が尋ねたので、「その家の産まれた子どもの魂を取って来ます。」と答えた。「その家では夫婦で(子どもを)抱いているのに、どのようにして子どもの魂を取って来るのだ。」と聞き返した。「(子どもが)くしゃみをしたすきに取って来ます。」と言った。「で、そこの人が“クスクェー”と言ったらどうするんだ。」「それは自分以外だれも知りません。『クスクェー』とは誰がも言いません。その証拠に子どもの魂をちゃんと取ってまいります。」とえん魔王と相談をして出かけて行った。 (幽霊とえん魔王)二人の話を聞いた父親は、急いで家に帰り妻にわけを話し、「その子がくしゃみをしたら『クスクェー』と言いなさい。」と二人して相談をし子どもをしっかりと抱いて座っていた。するとそこへ案の定幽霊がやって来たんだって。で、その子が「イッヒィー」とくしゃみをしたので、夫婦が揃って「クスクェー」と言い返したので、幽霊はその子の魂を取ることが出来なかった。そのような事から昔から今まで(くしゃみをすると)クスクェーと言うようになったんだとさ。
| レコード番号 | 47O372066 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C089 |
| 決定題名 | クスケー由来(方言) |
| 話者がつけた題名 | クスケー由来 |
| 話者名 | 金城カメ |
| 話者名かな | きんじょうかめ |
| 生年月日 | 19090220 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 沖縄県那覇市首里 |
| 記録日 | 19770221 |
| 記録者の所属組織 | 読谷村民話調査団第13班 |
| 元テープ番号 | 読谷村渡慶次T03B04 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集7渡慶次の民話 P13 |
| キーワード | 夫婦が子どもに恵まれない,男の子が産まれた,ジュリ,盛大な出産祝,首里の坂下,マカン道,美女,歌や三味線,節穴,幽霊,ティンゲー,夜明けを告げる一番鶏,墓,えん魔王,子どもの魂,くしゃみ,クスクェー |
| 梗概(こうがい) | ある夫婦が結婚しても長い間子どもに恵まれなかったそうだ。長らく子どもは産まれず、それから何十年か経って男の子が産まれた。すると父親は、このような喜びはまれな事だと、自分がこれまで親しく交っていたジュリ(料亭女と言うのかね、今では)を家に連れて来て、何十年ぶりに男の子が産まれたのだから、盛大な出産祝をやろうと思い、父親はジュリの所へ行った。長い間ジュリのところへは行ってなかった。すると連れに行った目当てのジュリは死んでしまっていた。それから、首里の坂下にマカン道という所があって、そこを通って「もう私が親しくしている女は死んでしまったのだね。」と思いながら、帰る途中で美しい女の人に会った。道中で、大変美しい女に、それで、「ハイ」「ハイサイ」とあいさつをかわした。「お父さんはどこへ行かれるんですか。」と聞かれたので、「私は今、自分がとても親しくしていたジュリがいて、何十年ぶりかで妻に男の子が産まれたので、そのジュリを家に連れて来てお祝いをやろうと思い、出向いて行ったら死んでしまって会えなかったので、残念でたまらない。今家に帰る途中です」と答えた。「それでは私が行ってさしあげましょう。歌や三味線も上手な方ですので自分が祝いの座を盛り上げます。」と言ったので、そのジュリを連れて行ったそうです。家では酒も肴も出してもてなしてやると、その美女は歌や踊りで祝いの座を盛り上げにぎわらせてくれた。すると、そこの家の子どもを産んだ人が、「これほどまでに踊りもうまいし、歌もなんと上手なんだろう。すばらしい女の人が来ているもんだ。」と思った。(昔の家は今のように立派な建物ではないでしょう。)一目見てみようと思い、節穴からのぞいてみると、美女だと思って見ると、人間ではなく幽霊であったそうだ。「ティンゲー」という、それが踊っていたわけ。そしたらその家の妻は、「お父さん、ちょっと来て。」と自分の夫を呼んで、「今日は大変な事になってしまったよ。あの人は人間ではないんですよ。あのように歌や踊りで祝いの座を盛り上げてくれているが、実は幽霊なんですよ。大変困った事になってしまった。」と夫婦で考え込みながら踊り、女の人をみていると、夜明けを告げる一番鶏が鳴く頃になったので「ああ、今日は実にいい祝いをさせてもらいました。これで帰ります。」と帰って行ったらしい。幽霊は鶏の鳴く頃を恐がるようです。そこで父親が、「幽霊の後を追って見てみよう。」とついて行くと、すぐに墓のある所へ行ったそうだ。墓の前に行ったものの墓の入口には「えん魔王」という大物がいるそうだ。大物がいて、「貴方は、鶏が鳴いてしまったので今日は入れない。明日の晩までここに立っていなさい。明日の晩になったら入れてあげよう。鶏が夜明けを告げたので入れない。」と言ったので「どうして、私は今まで子どもの産まれた家に行っていて、そこで踊りもして祝いをして来たのだ。ちゃんとした証拠だってあるのです。」「どういう証拠があると言うんだ。」とえん魔王が尋ねたので、「その家の産まれた子どもの魂を取って来ます。」と答えた。「その家では夫婦で(子どもを)抱いているのに、どのようにして子どもの魂を取って来るのだ。」と聞き返した。「(子どもが)くしゃみをしたすきに取って来ます。」と言った。「で、そこの人が“クスクェー”と言ったらどうするんだ。」「それは自分以外だれも知りません。『クスクェー』とは誰がも言いません。その証拠に子どもの魂をちゃんと取ってまいります。」とえん魔王と相談をして出かけて行った。 (幽霊とえん魔王)二人の話を聞いた父親は、急いで家に帰り妻にわけを話し、「その子がくしゃみをしたら『クスクェー』と言いなさい。」と二人して相談をし子どもをしっかりと抱いて座っていた。するとそこへ案の定幽霊がやって来たんだって。で、その子が「イッヒィー」とくしゃみをしたので、夫婦が揃って「クスクェー」と言い返したので、幽霊はその子の魂を取ることが出来なかった。そのような事から昔から今まで(くしゃみをすると)クスクェーと言うようになったんだとさ。 |
| 全体の記録時間数 | 4:54 |
| 物語の時間数 | 4:54 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | △ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |