鬼女房(方言)

概要

恩納松金が、何といおうか、助かった日は、五月五日なんだよ。その道理というのは、恩納松金は、名の知れた好男子だったそうだ。〈昔の、美人はほとんど恩納村の出身のようだよ。吉屋チルーにしたって恩納村の生まれでしょう。〉それほどの好男子だったので、彼を恋慕う娘達がたくさんいた。でも、結婚となれば、一人としかできないでしょう。二人とはできない。そんな話が芝居であったよ。そして、ある女がね、「私は少し容姿も悪いし、他の人より劣るから、私は化けて〈昔はおしろい等もつけなかったでしょう。今は、おしろいをつけたり口紅をぬったりするが。〉私は美しく化け、恩納松金を忍んでこよう。」ということになった。そして忍びに行ったようだね。きれいに化粧をして、昔は化粧をする人はいなかったからね。会いに行ったら、その恩納松金も「この人はこんなにも美しい。」と、ひと目でその女に惚れ込んでしまった。また、ある二人の女の人が、恩納松金を慕っていた。二人は、「私たち二人のうちから、恩納松金に望まれようね、あなたが気に入るか、それとも私を気に入ってくれるだろうか」と、会いに行ったそうだ。そして来たんだが……。しかし、恩納松金はすでに、一番先に来た女の人に心を奪われていた。その女の人が、「私をあなたの妻にして下さい。」と言ったら、恩納松金は妻にすると答えた。何でも一番最初に出会うのはいいからね。「あの人を私は妻にする。この二人とはしない。」と言った。そして恩納松金は、その女を妻にすることになった。女が川へ洗濯に、〈芝居での話だよ〉、たらいを持って洗濯に行くのだが、ほつれた髪をなびかせ、髪も銀の簪をさし、美しく装い、〈もう芝居での話だよ〉、たらいを持って川の方へ洗濯へ行った。それを見た恩納松金は、「私の妻にする人はなんて美しいんだろう。」と思っていた。そして、川で洗濯をすませ、それを干して家の中に入ると、鬼になっていた。座敷に入るとね。それから、恩納松金を慕っている二人の女の人が、「ああ、恩納松金、あまりにも美しいね。彼女に私たちは負けてしまった。心配だなあ。」と。「そうだその二人はどのようにして、夫婦は座わっているのか、立っているのか、食事をしているのかなあ。」と、今度は様子を見に行くことにした。その恩納松金の家は、障子張りであったので、唾で穴をあけ中を見た。すると、女は鬼、恩納松金はちゃんとした人であった。二人は話し合っているようだが、恩納松金は目を騙されて全然気がついてなかった。恩納松金は、鬼だとも知らず、ちゃんとした女だと思っていた。そうしてびっくりして、女たち二人は見に行ったのだが、「鬼なんだ、鬼なんだ。」と非常に慌てたようだ。あわてふためき、青年を呼ぶことにした。青年を呼び、「恩納松金を助けてあげないと、鬼に食われてしまう。大切な恩納松金だよ。」と言った。そして、助けることになった。「あなたたちが言っていることは本当か、恩納松金が望んでいる人は、妻に迎えた人は鬼に見えたのか。」と言ったら、「本当に見たよ。本当に鬼を見たよ。」と。「それじゃあ、今夜、青年たちが集まらないうちに、彼の家の障子に穴をあけ、夫婦が座わっているところを見てこよう。」ということになった。そして、青年が三、四人連れ立って見に行くと、障子に穴をあけてみると、女は鬼であった。恩納松金は、その鬼と座り込んで話し合っていた。お茶を飲んだり、酒を飲んでみたりしていた。それを見ていた男たちは、「鬼だ、鬼だ。」と、もう押し合いになっていた。ひとりが見て「鬼だ。」といったので、もうみんなは押し合いになって大騒ぎである。もう一人が見ても、二人、三人、四人全員が見ても鬼にまちがいなかった。「もうこうなったら恩納松金から助けなければならない。明日の何時頃に太鼓を打って、青年は集まりなさい。青年会を開くから集まりなさいと合図しよう。そうして恩納松金を助けよう。」ということになった。翌日太鼓をたたいて、「今日の何時には、青年は事務所に集まりなさい。」と。どんどん太鼓をたたいて呼んだ。そして、恩納松金も下駄をはき、昔は下駄をはいていたから、下駄をはき玄関から出て来た。戸を開いて出てきた。その時、その鬼は美しい女になり変わっていた。そして玄関にて、「約束しましたよ。心変わりなどしないで下さい。」と歌った。その女が、「約束しましたよ、心変わりなどしませんように、早く行って来て下さい。」と、そして恩納松金は出かけたが‥‥。そして恩納松金が青年たちが集まっているところヘ行くと、みんなが、「おまえの身体に歯形は入ってないか。」と、あの人もこの人も、みんなが歯形は入っていないかとつかまえたそうだ。「なぜ、どうして私にそのようなことを言うのかね。」と聞くと、「おまえが妻にしている女は、実は鬼なんだよ。」と。「鬼だと、あなたがたは、私が美人を妻にしたからといって、私に向かって、私の妻のことを鬼というのか、あなたたちは情けないね、鬼だなんて。」と怒った。「本当に鬼なんだからどうするか、私たちは青年みんなで見ているんだよ、確かに鬼だよ、おまえはそんなことを言っているがね。」「いや絶対にちがう。」と、そこで賭をすることになった。賭をしたので、恩納松金の妻は鬼かどうかみんなで見に行ったようだね。見に行ったら、本当に鬼であった。もうそれからずっと逃げて。恩納松金が逃げ出したのでその鬼がずっと追って来た。出て来たら女になってね。そして、波之上の……。波之上の門番が立っている所……。今はあるかどうか分からないよ。その波之上の寺に、恩納松金は隠れに行ったそうだ。もう神様が助けてくれるだろうとね。途中でその鬼は恩納松金を慕っていた二人の女を殺してしまった。「こいつらが私の男を奪おうとして、ひっぱり出したんだ。」と二人を道中で殺し、捨てた。二人共殺して、菖蒲の葉が茂っている所に捨てた。それから、この恩納松金は、波之上の寺に、寺の後に隠れていた。坊主が呪いをして守っていたが、また門番の二人の男たちに、「ここにどんな好男子が来ても、どんな美女が来ても入れないでくれ、二人にお願いする。」と言われた。もうその鬼は、恩納松金がそこに隠れていることは分かっていた。波之上の寺の後方に入っていることを分かっているので、どんどん追いかけてきた。鬼は、そこへ着くと姿を変え、美しい女になっていた。その二人の門番は、「すごい美人が来る。」ともう着ている芭蕉の着物の裾もはねてはないかと、気にかけた。もう好かれるという考えでね。そして、西、東に立っているわけだが、その美人は、「ねえ、この門から中へ誰かが入って行ったかね。私を中に入れてくれないかね。」と頼んだ。「いやできない。」「どうして、なぜできないのか、入れてくれ。」と強く頼んだが「いやできない。」と言った。恩納松金が「絶対入れるな、どんな女が来ても入れないでくれ」と、頼まれていたので、ダメだと言った。ついにその女は、割り込んで鬼になって出てきた。 鬼になったので、二人はびっくりして門から退き、そのすきに入ったようだね。「ワァー、鬼だよ。」と。そこで、坊主は、私たちが組踊(注2)に使う扇を持っているが、それが恩納松金の頭上でずっと回っていた。坊主が呪いをしているわけだ。鬼から助けるためにね。そして扇は回り、ヌータンキータンと坊主は呪いをしていた。経文が分からないと呪いもできない。その鬼は恩納松金をどんどん追いかけて来た。逃げたらまた追ってと。また坊主もどんどん追いかけてきた。その後には鬼が追っていた。そして恩納松金をつかまえるために。すると、菖蒲の葉の中で、鬼に殺された女たちがそこまで来た恩納松金を、その菖蒲の葉の中に隠したようだね。隠したら、その二人が、かざぐるまを持って、その鬼が来たら、そのかざぐるま、これくらいのかざぐるまを廻した。すると、そこで鬼は死んでしまった。死んだので恩納松金は助かった。この二人が守ってくれたのだ。後から坊主も息を切らせ、追っかけて来た。「もう恩納松金は、どこに行ったのか。」と言ったら助かっていることがわかった。でも助けた女はいないんだよね、二人とも殺されているんだから。恩納松金を慕っていた女たち二人は、その鬼に殺されているんだから、殺されたが、その二人がカジマヤーを廻して、それで助けられたと。そして坊主に、「どうしたら、恩義を返せるだろうか、その女たち二人が、私のことを思ってくれていたのだが、私は鬼を妻にしてしまった。どうしたら、二人の供養できるか」と聞いた。「今日は、五月五日、おまえは菖蒲の葉の中で助かったので、五月五日はアマガシを作ってそこにおそなえするといい。」とおしえた。それからアマガシを作るようになったという道理。芝居があった。

再生時間:9:14

民話詳細DATA

レコード番号 47O371990
CD番号 47O37C086
決定題名 鬼女房(方言)
話者がつけた題名 五月五日由来
話者名 知花キヨ
話者名かな ちばなきよ
生年月日 19121016
性別
出身地 沖縄県読谷村儀間
記録日 19770221
記録者の所属組織 読谷村民話調査団第14班
元テープ番号 読谷村渡慶次T02A23
元テープ管理者 読谷村立歴史民俗資料館
分類 12
発句(ほっく)
伝承事情 芝居
文字化資料 読谷村民話資料集7渡慶次の民話 P17
キーワード 恩納松金,五月五日,好男子,妻は鬼,身体に歯形,波之上の寺,菖蒲の葉,坊主が呪い,鬼は美女に,経文,アマガシ
梗概(こうがい) 恩納松金が、何といおうか、助かった日は、五月五日なんだよ。その道理というのは、恩納松金は、名の知れた好男子だったそうだ。〈昔の、美人はほとんど恩納村の出身のようだよ。吉屋チルーにしたって恩納村の生まれでしょう。〉それほどの好男子だったので、彼を恋慕う娘達がたくさんいた。でも、結婚となれば、一人としかできないでしょう。二人とはできない。そんな話が芝居であったよ。そして、ある女がね、「私は少し容姿も悪いし、他の人より劣るから、私は化けて〈昔はおしろい等もつけなかったでしょう。今は、おしろいをつけたり口紅をぬったりするが。〉私は美しく化け、恩納松金を忍んでこよう。」ということになった。そして忍びに行ったようだね。きれいに化粧をして、昔は化粧をする人はいなかったからね。会いに行ったら、その恩納松金も「この人はこんなにも美しい。」と、ひと目でその女に惚れ込んでしまった。また、ある二人の女の人が、恩納松金を慕っていた。二人は、「私たち二人のうちから、恩納松金に望まれようね、あなたが気に入るか、それとも私を気に入ってくれるだろうか」と、会いに行ったそうだ。そして来たんだが……。しかし、恩納松金はすでに、一番先に来た女の人に心を奪われていた。その女の人が、「私をあなたの妻にして下さい。」と言ったら、恩納松金は妻にすると答えた。何でも一番最初に出会うのはいいからね。「あの人を私は妻にする。この二人とはしない。」と言った。そして恩納松金は、その女を妻にすることになった。女が川へ洗濯に、〈芝居での話だよ〉、たらいを持って洗濯に行くのだが、ほつれた髪をなびかせ、髪も銀の簪をさし、美しく装い、〈もう芝居での話だよ〉、たらいを持って川の方へ洗濯へ行った。それを見た恩納松金は、「私の妻にする人はなんて美しいんだろう。」と思っていた。そして、川で洗濯をすませ、それを干して家の中に入ると、鬼になっていた。座敷に入るとね。それから、恩納松金を慕っている二人の女の人が、「ああ、恩納松金、あまりにも美しいね。彼女に私たちは負けてしまった。心配だなあ。」と。「そうだその二人はどのようにして、夫婦は座わっているのか、立っているのか、食事をしているのかなあ。」と、今度は様子を見に行くことにした。その恩納松金の家は、障子張りであったので、唾で穴をあけ中を見た。すると、女は鬼、恩納松金はちゃんとした人であった。二人は話し合っているようだが、恩納松金は目を騙されて全然気がついてなかった。恩納松金は、鬼だとも知らず、ちゃんとした女だと思っていた。そうしてびっくりして、女たち二人は見に行ったのだが、「鬼なんだ、鬼なんだ。」と非常に慌てたようだ。あわてふためき、青年を呼ぶことにした。青年を呼び、「恩納松金を助けてあげないと、鬼に食われてしまう。大切な恩納松金だよ。」と言った。そして、助けることになった。「あなたたちが言っていることは本当か、恩納松金が望んでいる人は、妻に迎えた人は鬼に見えたのか。」と言ったら、「本当に見たよ。本当に鬼を見たよ。」と。「それじゃあ、今夜、青年たちが集まらないうちに、彼の家の障子に穴をあけ、夫婦が座わっているところを見てこよう。」ということになった。そして、青年が三、四人連れ立って見に行くと、障子に穴をあけてみると、女は鬼であった。恩納松金は、その鬼と座り込んで話し合っていた。お茶を飲んだり、酒を飲んでみたりしていた。それを見ていた男たちは、「鬼だ、鬼だ。」と、もう押し合いになっていた。ひとりが見て「鬼だ。」といったので、もうみんなは押し合いになって大騒ぎである。もう一人が見ても、二人、三人、四人全員が見ても鬼にまちがいなかった。「もうこうなったら恩納松金から助けなければならない。明日の何時頃に太鼓を打って、青年は集まりなさい。青年会を開くから集まりなさいと合図しよう。そうして恩納松金を助けよう。」ということになった。翌日太鼓をたたいて、「今日の何時には、青年は事務所に集まりなさい。」と。どんどん太鼓をたたいて呼んだ。そして、恩納松金も下駄をはき、昔は下駄をはいていたから、下駄をはき玄関から出て来た。戸を開いて出てきた。その時、その鬼は美しい女になり変わっていた。そして玄関にて、「約束しましたよ。心変わりなどしないで下さい。」と歌った。その女が、「約束しましたよ、心変わりなどしませんように、早く行って来て下さい。」と、そして恩納松金は出かけたが‥‥。そして恩納松金が青年たちが集まっているところヘ行くと、みんなが、「おまえの身体に歯形は入ってないか。」と、あの人もこの人も、みんなが歯形は入っていないかとつかまえたそうだ。「なぜ、どうして私にそのようなことを言うのかね。」と聞くと、「おまえが妻にしている女は、実は鬼なんだよ。」と。「鬼だと、あなたがたは、私が美人を妻にしたからといって、私に向かって、私の妻のことを鬼というのか、あなたたちは情けないね、鬼だなんて。」と怒った。「本当に鬼なんだからどうするか、私たちは青年みんなで見ているんだよ、確かに鬼だよ、おまえはそんなことを言っているがね。」「いや絶対にちがう。」と、そこで賭をすることになった。賭をしたので、恩納松金の妻は鬼かどうかみんなで見に行ったようだね。見に行ったら、本当に鬼であった。もうそれからずっと逃げて。恩納松金が逃げ出したのでその鬼がずっと追って来た。出て来たら女になってね。そして、波之上の……。波之上の門番が立っている所……。今はあるかどうか分からないよ。その波之上の寺に、恩納松金は隠れに行ったそうだ。もう神様が助けてくれるだろうとね。途中でその鬼は恩納松金を慕っていた二人の女を殺してしまった。「こいつらが私の男を奪おうとして、ひっぱり出したんだ。」と二人を道中で殺し、捨てた。二人共殺して、菖蒲の葉が茂っている所に捨てた。それから、この恩納松金は、波之上の寺に、寺の後に隠れていた。坊主が呪いをして守っていたが、また門番の二人の男たちに、「ここにどんな好男子が来ても、どんな美女が来ても入れないでくれ、二人にお願いする。」と言われた。もうその鬼は、恩納松金がそこに隠れていることは分かっていた。波之上の寺の後方に入っていることを分かっているので、どんどん追いかけてきた。鬼は、そこへ着くと姿を変え、美しい女になっていた。その二人の門番は、「すごい美人が来る。」ともう着ている芭蕉の着物の裾もはねてはないかと、気にかけた。もう好かれるという考えでね。そして、西、東に立っているわけだが、その美人は、「ねえ、この門から中へ誰かが入って行ったかね。私を中に入れてくれないかね。」と頼んだ。「いやできない。」「どうして、なぜできないのか、入れてくれ。」と強く頼んだが「いやできない。」と言った。恩納松金が「絶対入れるな、どんな女が来ても入れないでくれ」と、頼まれていたので、ダメだと言った。ついにその女は、割り込んで鬼になって出てきた。 鬼になったので、二人はびっくりして門から退き、そのすきに入ったようだね。「ワァー、鬼だよ。」と。そこで、坊主は、私たちが組踊(注2)に使う扇を持っているが、それが恩納松金の頭上でずっと回っていた。坊主が呪いをしているわけだ。鬼から助けるためにね。そして扇は回り、ヌータンキータンと坊主は呪いをしていた。経文が分からないと呪いもできない。その鬼は恩納松金をどんどん追いかけて来た。逃げたらまた追ってと。また坊主もどんどん追いかけてきた。その後には鬼が追っていた。そして恩納松金をつかまえるために。すると、菖蒲の葉の中で、鬼に殺された女たちがそこまで来た恩納松金を、その菖蒲の葉の中に隠したようだね。隠したら、その二人が、かざぐるまを持って、その鬼が来たら、そのかざぐるま、これくらいのかざぐるまを廻した。すると、そこで鬼は死んでしまった。死んだので恩納松金は助かった。この二人が守ってくれたのだ。後から坊主も息を切らせ、追っかけて来た。「もう恩納松金は、どこに行ったのか。」と言ったら助かっていることがわかった。でも助けた女はいないんだよね、二人とも殺されているんだから。恩納松金を慕っていた女たち二人は、その鬼に殺されているんだから、殺されたが、その二人がカジマヤーを廻して、それで助けられたと。そして坊主に、「どうしたら、恩義を返せるだろうか、その女たち二人が、私のことを思ってくれていたのだが、私は鬼を妻にしてしまった。どうしたら、二人の供養できるか」と聞いた。「今日は、五月五日、おまえは菖蒲の葉の中で助かったので、五月五日はアマガシを作ってそこにおそなえするといい。」とおしえた。それからアマガシを作るようになったという道理。芝居があった。
全体の記録時間数 9:14
物語の時間数 9:14
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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