
あのね、「鼻の下は口」というのは宇座にあった話である。これは、山原船がね、山原船が、とても良い順風に遭って、山原めざして速い速度でしぶきを飛ばしていた。良い順風といえば、順風が良ければポンポン船より(山原船が)早かった。帆船なのだがね。良い順風に遭って、風を我が物にして、余裕綽々三味線を弾き鳴らしながら速度をあげて走っていた。そこで、宇座の人がね、ターヌハタという所のおじいさんが、魚を釣っていたようだ。おじいさんの船すれすれに大きな山原船が来たので、私の船に突き当たりはしないかと、その人はびっくりして、「この船は何ものかよー。」と叫んだようだ。私の船に突き当たりはしないだろうかと。でも、山原船の乗組員は専門であるので、突き当たらない程度にわざっとすれすれにおじいさんをからかって通った。それで、すぐ「この船は何船かよー。」と叫んだので、「この船はよーじいさん!松船だぞー。」と笑をたたえて通り過ぎた。「この青二才め、こいつらは…。」とつぶやき、自分の船にケガはなかったのでとそのまま見過ごした。すると、残波を越えると、北に風向きが変わって、北風になったので、(山原船は)あわてふためいてひっ返して来て、宇座の、宇座口という入江付近で、「口はどこかねーじいさん!」と騒ぎたてたようだ。さあ今のうちだと、「口を知らぬか、鼻の下さー。」と言った。「こいつらは私をからかったのだから。」と思っていたが、同じ海の仲間だし、それは冗談のつもりであった。そして、「口はここからだよ。私が案内するので一緒に来なさい。」と、宇座口に入れて、イノー内に入れた。そこに錨をおろして停泊した。イノー内に入れば船はどうもないでしょう。その時は正月の後だったそうだ。正月が終ったばかりなので、その山原船の乗組貝を全員、自分の家に連れて行って、正月の豚肉を御馳走して、みな食べられたという話があったよ。やはり海に出る者はその同志がしか心も分らないと「そこに一晩は泊まりなさい。風がおさまってから出て行くといい、遠慮しなくていいから。」と、そのように泊めたという話がある。それが、「口を知らぬか、鼻の下だよ」ということ、「口は鼻の下」という話はこのことであるよ。
| レコード番号 | 47O371828 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C079 |
| 決定題名 | 鼻の下は口(方言) |
| 話者がつけた題名 | 鼻の下は口 |
| 話者名 | 新城平永 |
| 話者名かな | あらしろへいえい |
| 生年月日 | 19210305 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県読谷村宇座 |
| 記録日 | 19830222 |
| 記録者の所属組織 | 読谷ゆうがおの会 |
| 元テープ番号 | 読谷村宇座T09B12 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 13 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集6宇座の民話 P162 |
| キーワード | 鼻の下は口,宇座,山原船,余裕綽々三味線を弾き鳴らし,ターヌハタのおじいさん,松船,残波,北風,宇座口,イノー内,正月の後,豚肉を御馳走 |
| 梗概(こうがい) | あのね、「鼻の下は口」というのは宇座にあった話である。これは、山原船がね、山原船が、とても良い順風に遭って、山原めざして速い速度でしぶきを飛ばしていた。良い順風といえば、順風が良ければポンポン船より(山原船が)早かった。帆船なのだがね。良い順風に遭って、風を我が物にして、余裕綽々三味線を弾き鳴らしながら速度をあげて走っていた。そこで、宇座の人がね、ターヌハタという所のおじいさんが、魚を釣っていたようだ。おじいさんの船すれすれに大きな山原船が来たので、私の船に突き当たりはしないかと、その人はびっくりして、「この船は何ものかよー。」と叫んだようだ。私の船に突き当たりはしないだろうかと。でも、山原船の乗組員は専門であるので、突き当たらない程度にわざっとすれすれにおじいさんをからかって通った。それで、すぐ「この船は何船かよー。」と叫んだので、「この船はよーじいさん!松船だぞー。」と笑をたたえて通り過ぎた。「この青二才め、こいつらは…。」とつぶやき、自分の船にケガはなかったのでとそのまま見過ごした。すると、残波を越えると、北に風向きが変わって、北風になったので、(山原船は)あわてふためいてひっ返して来て、宇座の、宇座口という入江付近で、「口はどこかねーじいさん!」と騒ぎたてたようだ。さあ今のうちだと、「口を知らぬか、鼻の下さー。」と言った。「こいつらは私をからかったのだから。」と思っていたが、同じ海の仲間だし、それは冗談のつもりであった。そして、「口はここからだよ。私が案内するので一緒に来なさい。」と、宇座口に入れて、イノー内に入れた。そこに錨をおろして停泊した。イノー内に入れば船はどうもないでしょう。その時は正月の後だったそうだ。正月が終ったばかりなので、その山原船の乗組貝を全員、自分の家に連れて行って、正月の豚肉を御馳走して、みな食べられたという話があったよ。やはり海に出る者はその同志がしか心も分らないと「そこに一晩は泊まりなさい。風がおさまってから出て行くといい、遠慮しなくていいから。」と、そのように泊めたという話がある。それが、「口を知らぬか、鼻の下だよ」ということ、「口は鼻の下」という話はこのことであるよ。 |
| 全体の記録時間数 | 3:12 |
| 物語の時間数 | 3:12 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |