
昔の、侍と百姓との差別の話だが、どのくらい百姓がいじめられていたかということは、もう分っている通りだがね。ある侍が、馬に乗ってある用事で、場所はどこと分らないが、とにかく馬に乗って行った。その侍が、行く道すがら畑を耕している農夫に、「私が用事を済まして来るまでに、鍬何回おとしたか、覚えておきなさい。」といい付けて行ってしまった。この農夫は、一日中の鍬を打つ数は、何度やっても分らないでしょう。分らないで(困っているとき)子どもがね、子どもが昼食時間に食事を持って来たが、このお父さんは心配してお茶を飲もうとせず、食事も食べようとしないで、もう黙りこくっていたようだ。 それで、その子は不思議に思って、「どうしたのお父さん、ひるごはんもあがらないで。」と言ったので、本当のことを言ったようだ。もう、子どもにね、「今行かれた侍がね、その人が用事行って来る間に、鍬を何回打ったか覚えておきなさいとの命令だが、それが分らない、返答できない、だから心配しているのだ。」と言った。この子どもには簡単なことで、「これなら心配しなくてもいいよ、お父さん、私が答えてあげよう。」と、言った。(お父さんは)その子に激励されて、「そうしようか。」としているうちに、まもなくその侍は戻って来たようだ。戻って来ると、〈今言ったように〉「先程言ったことだが、何回鍬を打ったか。」と質問した。すると、すぐ子どもが(侍に)向かって言った。親はもう返答できないので、困っているわけだ。親は分らなかった。一日中で何回鍬を打ったと、数えきれる農夫はいなかった。けれども、それはほとんど心配はなかった。代わりに子どもが、「貴方はそうおっしゃるけれどもね、その前に、私の父に、鍬何回打ったかと質問する前にね、それで貴方は用事に行ってくる間に、その馬に乗ってこられたが、その馬の足数は何回でここにいらしたのですか。」ということを聞いた。(侍は)もう返すことばもなく、その時に子どもは侍にとてもほめられた。頓智がある子、おりこうさんとたいそうほめられた。そこで今度は、お菓子をあげたそうだ。ふたつ、右の手にも左の手にもね。(侍は)「それでは、お前はしっかりしていい子なので、褒美にこのお菓子を食べなさい。」と言った。(お菓子を)あげて、ふたつ食べ終ってから、「とのお東子がおいしかったか、右手に持っているものと、左手に持っているものとはどれがおいしかったか。」と聞いた。 お菓子は二個とも同じものなので、右ともいえず左ともいえなかった。その二個だけしか食べてないのでね。そうすると、ものも言わずに、その子どもはふたつの手をパチッと打って聞かせたそうだ。そして、侍にね、「どの手が鳴っていましたか。右が鳴っているのですか、左が鳴っているのですか。」と聞いた。それからはもう、たやすく問題は片付いてね、そういう難しいこともなくなったという話である。
| レコード番号 | 47O371421 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C062 |
| 決定題名 | 侍と百姓の問答(方言) |
| 話者がつけた題名 | 侍と百姓の身分の違い |
| 話者名 | 町田宗進 |
| 話者名かな | まちだそうしん |
| 生年月日 | 19160305 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県読谷村儀間 |
| 記録日 | 19811121 |
| 記録者の所属組織 | 読谷ゆうがおの会 |
| 元テープ番号 | 読谷村儀間T09A15 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 13 |
| 発句(ほっく) | んかし |
| 伝承事情 | 年寄り |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集5儀間の民話 P206 |
| キーワード | 昔の、侍と百姓との差別の話だが、どのくらい百姓がいじめられていたかということは、もう分っている通りだがね。ある侍が、馬に乗ってある用事で、場所はどこと分らないが、とにかく馬に乗って行った。その侍が、行く道すがら畑を耕している農夫に、「私が用事を済まして来るまでに、鍬何回おとしたか、覚えておきなさい。」といい付けて行ってしまった。この農夫は、一日中の鍬を打つ数は、何度やっても分らないでしょう。分らないで(困っているとき)子どもがね、子どもが昼食時間に食事を持って来たが、このお父さんは心配してお茶を飲もうとせず、食事も食べようとしないで、もう黙りこくっていたようだ。,それで、その子は不思議に思って、「どうしたのお父さん、ひるごはんもあがらないで。」と言ったので、本当のことを言ったようだ。もう、子どもにね、「今行かれた侍がね、その人が用事行って来る間に、鍬を何回打ったか覚えておきなさいとの命令だが、それが分らない、返答できない、だから心配しているのだ。」と言った。この子どもには簡単なことで、「これなら心配しなくてもいいよ、お父さん、私が答えてあげよう。」と、言った。(お父さんは)その子に激励されて、「そうしようか。」としているうちに、まもなくその侍は戻って来たようだ。戻って来ると、〈今言ったように〉「先程言ったことだが、何回鍬を打ったか。」と質問した。すると、すぐ子どもが(侍に)向かって言った。親はもう返答できないので、困っているわけだ。親は分らなかった。一日中で何回鍬を打ったと、数えきれる農夫はいなかった。けれども、それはほとんど心配はなかった。代わりに子どもが、「貴方はそうおっしゃるけれどもね、その前に、私の父に、鍬何回打ったかと質問する前にね、それで貴方は用事に行ってくる間に、その馬に乗ってこられたが、その馬の足数は何回でここにいらしたのですか。」ということを聞いた。(侍は)もう返すことばもなく、その時に子どもは侍にとてもほめられた。頓智がある子、おりこうさんとたいそうほめられた。そこで今度は、お菓子をあげたそうだ。ふたつ、右の手にも左の手にもね。(侍は)「それでは、お前はしっかりしていい子なので、褒美にこのお菓子を食べなさい。」と言った。(お菓子を)あげて、ふたつ食べ終ってから、「とのお東子がおいしかったか、右手に持っているものと、左手に持っているものとはどれがおいしかったか。」と聞いた。,お菓子は二個とも同じものなので、右ともいえず左ともいえなかった。その二個だけしか食べてないのでね。そうすると、ものも言わずに、その子どもはふたつの手をパチッと打って聞かせたそうだ。そして、侍にね、「どの手が鳴っていましたか。右が鳴っているのですか、左が鳴っているのですか。」と聞いた。それからはもう、たやすく問題は片付いてね、そういう難しいこともなくなったという話である。 |
| 梗概(こうがい) | 昔の、侍と百姓との差別の話だが、どのくらい百姓がいじめられていたかということは、もう分っている通りだがね。ある侍が、馬に乗ってある用事で、場所はどこと分らないが、とにかく馬に乗って行った。その侍が、行く道すがら畑を耕している農夫に、「私が用事を済まして来るまでに、鍬何回おとしたか、覚えておきなさい。」といい付けて行ってしまった。この農夫は、一日中の鍬を打つ数は、何度やっても分らないでしょう。分らないで(困っているとき)子どもがね、子どもが昼食時間に食事を持って来たが、このお父さんは心配してお茶を飲もうとせず、食事も食べようとしないで、もう黙りこくっていたようだ。 それで、その子は不思議に思って、「どうしたのお父さん、ひるごはんもあがらないで。」と言ったので、本当のことを言ったようだ。もう、子どもにね、「今行かれた侍がね、その人が用事行って来る間に、鍬を何回打ったか覚えておきなさいとの命令だが、それが分らない、返答できない、だから心配しているのだ。」と言った。この子どもには簡単なことで、「これなら心配しなくてもいいよ、お父さん、私が答えてあげよう。」と、言った。(お父さんは)その子に激励されて、「そうしようか。」としているうちに、まもなくその侍は戻って来たようだ。戻って来ると、〈今言ったように〉「先程言ったことだが、何回鍬を打ったか。」と質問した。すると、すぐ子どもが(侍に)向かって言った。親はもう返答できないので、困っているわけだ。親は分らなかった。一日中で何回鍬を打ったと、数えきれる農夫はいなかった。けれども、それはほとんど心配はなかった。代わりに子どもが、「貴方はそうおっしゃるけれどもね、その前に、私の父に、鍬何回打ったかと質問する前にね、それで貴方は用事に行ってくる間に、その馬に乗ってこられたが、その馬の足数は何回でここにいらしたのですか。」ということを聞いた。(侍は)もう返すことばもなく、その時に子どもは侍にとてもほめられた。頓智がある子、おりこうさんとたいそうほめられた。そこで今度は、お菓子をあげたそうだ。ふたつ、右の手にも左の手にもね。(侍は)「それでは、お前はしっかりしていい子なので、褒美にこのお菓子を食べなさい。」と言った。(お菓子を)あげて、ふたつ食べ終ってから、「とのお東子がおいしかったか、右手に持っているものと、左手に持っているものとはどれがおいしかったか。」と聞いた。 お菓子は二個とも同じものなので、右ともいえず左ともいえなかった。その二個だけしか食べてないのでね。そうすると、ものも言わずに、その子どもはふたつの手をパチッと打って聞かせたそうだ。そして、侍にね、「どの手が鳴っていましたか。右が鳴っているのですか、左が鳴っているのですか。」と聞いた。それからはもう、たやすく問題は片付いてね、そういう難しいこともなくなったという話である。 |
| 全体の記録時間数 | 3:03 |
| 物語の時間数 | 3:03 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | 〇 |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |