お茶売りの話(方言)

概要

昔、お茶売りがお茶を担いで売り歩いていた。そのお茶売りは首里百姓なんだが、お茶を売りつくし夕方になったので、乗物といってもないし、ある侍の家へ行ってみた。「今日一晩は、貴方の家に泊めてくれませんか。」「ああ、泊まりなさい。」ということになり、泊めてもらうことにした。このお茶売りの百姓は、床の間に弓が飾られているのを見て、「もう、私はいまだかつて弓というのを引いたことがない。この家の皆が眠った後でこの弓で引き試しをしてみよう。」と考えながら眠った。昔のことなので、まっ暗だから皆が眠った頃、お茶売りはクチャ(裏座)の方へ弓を引いてみた。〈クチャというのは、奥、裏座のことよ〉すると、ものすごい音がして、お茶売りは、もしかしたらここの家族を殺したかも知れないと思い、とても心配で一晩中眠れなかった。翌朝、その侍の家には娘が二人いて、二人が交互に「お茶をおあがり。」と言いながらお茶売りを起こしに行った。しかし、全く起きるようすもない。ついには主人が行き、「起きてお茶をあがりなさいと言ってもきかない、どこか痛いのか、どうして起きないんだ。」と言った。お茶売りは、「実は、私は悪いこととは知りつつ、貴方の弓を小手調べしようと思い、弓を引き試ししようと奥へ向かって引いてしまった。ものすごい音がして、貴方の家族の誰かを射ってしまったと心配して、一晩中眠れず、ずっと起きていたものですから。」と答えた。「変だなあ」と、主人と一緒に奥の方へ行ってみた。なんと、銭箱に手を入れたままの盗人を射ってあった。主人は、「ああ、これはお前のおかげで私達はこんなにたくさんのお金を盗まれずにすんだ。娘二人のうちから一人を嫁にもらってくれないか。」と言われ、請われて婿に選ばれたわけだ。そうして、たぶん姉より妹の方が美人だったのでしょうね。(お茶売りも)若かったので、妹の方を妻にしたいと願い、その侍の家の婿養子になることになった。しかし、姉の方は、「もう私はいやがられてしまった。憎らしい恋敵、この男を殺してしまいたいものだ。」と考えていた。妹の方を妻に選び、姉はのけものにされてと(怒っていた。)そうして、お茶売りは喜んでそこの家の婿養子となり、とてもすばらしい婿としてそこで暮らしていたそうだ。それから、多幸山にフェーライ(おいはぎ)が出ない前、人ばかりを喰う虎がのさばっていた。公儀の〈今の県庁に当たる〉侍の中から頑丈者を選び、虎退治に行かすが、どうすることもできず皆逃げ出してしまった。ついには、喰われてしまい帰らない者まで出て、どうすることもできず虎退治に公儀は頭を痛めていた。そんな折、このお茶売りは、まっ暗な中でも盗人を射ったと知れわたり、[   ]公儀から、「あのお茶売りなら退治できる、誰にもできなかったことでも…。」と言われた。昔のお金で、「お金を一万貫やるから、また、その虎を退治できたら、公儀に務めさせ侍にする。」と、そのお茶売りのもとへ使者がおもむいた。そこで、何月何日に退治せよと命令されたので、お茶売りは断わることもできず、多幸山へ行ったようだね。何月何日は虎退治をして来いと、言われたので日を決めて行ったわけだ。その日は、妻は弁当を作って持たそうと、朝早く起きて準備に精を出していた。また、恋敵の姉は、「今日こそは」と考え、「今日はお前がこうしていてはいけない。私が作ってあげよう。」と言って妹が作っている弁当をよこ取りした。姉が弁当を作り、その中に毒を入れ、包んで持たせた。お茶売りは、弁当を馬の鞍に結え、馬に乗って出発したようだ。多幸山に着くと、うわさ通りとてつもない大きな虎が口をガバッとあけて、こちらに歩いて来た。お茶売りは虎に向かって弓を引くこともできない、もう命が大切だと、急いでひき返した。馬で帰る途中、鞍に結えてあった弁当箱がはずれ、落としてしまったようだね。虎は、そのお茶売りを追う様子はなく、その落ちた弁当を喰っていた。その弁当には毒が入っているので、虎はそれを全部たいらげてしまい、そこで死んでしまった。「あの虎は私を追って来ようとしたが、もう来ないのだろうか。」と、お茶売りは弓を引きながら戻った。弓を引いた印を残そうと射ったわけだ。そして虎は、そのお茶売りが殺したということになったので、姉の方は、とても不思議がっていたが…。ついには、何から何まで、そのお茶売りは運がよくてうまくいった。もしかしたら、姉が恋敵でなかったら虎は殺せなかったかも知れない。姉の方が、弁当に毒を入れて持たせたから、虎を退治できたのだ。その後から、多幸山にはフェーライ(おいはぎ)が出没したんだよ。その前は、虎がいる間は、フェーライは多幸山にいなかったそうだ。

再生時間:5:59

民話詳細DATA

レコード番号 47O371350
CD番号 47O37C059
決定題名 お茶売りの話(方言)
話者がつけた題名 お茶売りの話
話者名 宮城正栄
話者名かな みやぎせいえい
生年月日 19001025
性別
出身地 沖縄県読谷村儀間
記録日 19770814
記録者の所属組織 読谷村民話調査団第16班
元テープ番号 読谷村儀間T06B04
元テープ管理者 読谷村立歴史民俗資料館
分類 12
発句(ほっく) んかし
伝承事情
文字化資料 読谷村民話資料集5儀間の民話 P176
キーワード お茶売り,首里百姓,侍の家,床の間に弓,クチャ(裏座),侍の家に娘が二人,銭箱に手,盗人,婿,妹を妻に,多幸山にフェーライ,人を喰う虎,虎退治,恋敵の姉,弁当に毒,弁当を落とした,虎は死んだ
梗概(こうがい) 昔、お茶売りがお茶を担いで売り歩いていた。そのお茶売りは首里百姓なんだが、お茶を売りつくし夕方になったので、乗物といってもないし、ある侍の家へ行ってみた。「今日一晩は、貴方の家に泊めてくれませんか。」「ああ、泊まりなさい。」ということになり、泊めてもらうことにした。このお茶売りの百姓は、床の間に弓が飾られているのを見て、「もう、私はいまだかつて弓というのを引いたことがない。この家の皆が眠った後でこの弓で引き試しをしてみよう。」と考えながら眠った。昔のことなので、まっ暗だから皆が眠った頃、お茶売りはクチャ(裏座)の方へ弓を引いてみた。〈クチャというのは、奥、裏座のことよ〉すると、ものすごい音がして、お茶売りは、もしかしたらここの家族を殺したかも知れないと思い、とても心配で一晩中眠れなかった。翌朝、その侍の家には娘が二人いて、二人が交互に「お茶をおあがり。」と言いながらお茶売りを起こしに行った。しかし、全く起きるようすもない。ついには主人が行き、「起きてお茶をあがりなさいと言ってもきかない、どこか痛いのか、どうして起きないんだ。」と言った。お茶売りは、「実は、私は悪いこととは知りつつ、貴方の弓を小手調べしようと思い、弓を引き試ししようと奥へ向かって引いてしまった。ものすごい音がして、貴方の家族の誰かを射ってしまったと心配して、一晩中眠れず、ずっと起きていたものですから。」と答えた。「変だなあ」と、主人と一緒に奥の方へ行ってみた。なんと、銭箱に手を入れたままの盗人を射ってあった。主人は、「ああ、これはお前のおかげで私達はこんなにたくさんのお金を盗まれずにすんだ。娘二人のうちから一人を嫁にもらってくれないか。」と言われ、請われて婿に選ばれたわけだ。そうして、たぶん姉より妹の方が美人だったのでしょうね。(お茶売りも)若かったので、妹の方を妻にしたいと願い、その侍の家の婿養子になることになった。しかし、姉の方は、「もう私はいやがられてしまった。憎らしい恋敵、この男を殺してしまいたいものだ。」と考えていた。妹の方を妻に選び、姉はのけものにされてと(怒っていた。)そうして、お茶売りは喜んでそこの家の婿養子となり、とてもすばらしい婿としてそこで暮らしていたそうだ。それから、多幸山にフェーライ(おいはぎ)が出ない前、人ばかりを喰う虎がのさばっていた。公儀の〈今の県庁に当たる〉侍の中から頑丈者を選び、虎退治に行かすが、どうすることもできず皆逃げ出してしまった。ついには、喰われてしまい帰らない者まで出て、どうすることもできず虎退治に公儀は頭を痛めていた。そんな折、このお茶売りは、まっ暗な中でも盗人を射ったと知れわたり、[   ]公儀から、「あのお茶売りなら退治できる、誰にもできなかったことでも…。」と言われた。昔のお金で、「お金を一万貫やるから、また、その虎を退治できたら、公儀に務めさせ侍にする。」と、そのお茶売りのもとへ使者がおもむいた。そこで、何月何日に退治せよと命令されたので、お茶売りは断わることもできず、多幸山へ行ったようだね。何月何日は虎退治をして来いと、言われたので日を決めて行ったわけだ。その日は、妻は弁当を作って持たそうと、朝早く起きて準備に精を出していた。また、恋敵の姉は、「今日こそは」と考え、「今日はお前がこうしていてはいけない。私が作ってあげよう。」と言って妹が作っている弁当をよこ取りした。姉が弁当を作り、その中に毒を入れ、包んで持たせた。お茶売りは、弁当を馬の鞍に結え、馬に乗って出発したようだ。多幸山に着くと、うわさ通りとてつもない大きな虎が口をガバッとあけて、こちらに歩いて来た。お茶売りは虎に向かって弓を引くこともできない、もう命が大切だと、急いでひき返した。馬で帰る途中、鞍に結えてあった弁当箱がはずれ、落としてしまったようだね。虎は、そのお茶売りを追う様子はなく、その落ちた弁当を喰っていた。その弁当には毒が入っているので、虎はそれを全部たいらげてしまい、そこで死んでしまった。「あの虎は私を追って来ようとしたが、もう来ないのだろうか。」と、お茶売りは弓を引きながら戻った。弓を引いた印を残そうと射ったわけだ。そして虎は、そのお茶売りが殺したということになったので、姉の方は、とても不思議がっていたが…。ついには、何から何まで、そのお茶売りは運がよくてうまくいった。もしかしたら、姉が恋敵でなかったら虎は殺せなかったかも知れない。姉の方が、弁当に毒を入れて持たせたから、虎を退治できたのだ。その後から、多幸山にはフェーライ(おいはぎ)が出没したんだよ。その前は、虎がいる間は、フェーライは多幸山にいなかったそうだ。
全体の記録時間数 5:59
物語の時間数 5:59
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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