
奥山の牡丹が、首里の御殿殿内の男と(恋仲になったという。その奥山の牡丹は)安仁屋村の子でしょう。安仁屋村というのは、昔、首里の下に安仁屋村というのがあったって。ここは乞食となって暮らしてよいと許しがあったって。“いいかね”ここは、乞うて生活しなさいと。だから、(この人達は)普通の人ではないさあね。“いいかね”昔は、上納というのをどこでも払うでしょう。(だけどこの人達は)どこに、上納を納めるという事もない。(それほど)ここは困っていた。この(安仁屋村の)女は、町でも歩いていたのか、その奥山の牡丹は、首里の平良殿内の主人と、その長男の二人と出会った。この奥山の牡丹も美しかったんでしょうね。それで、(平良殿内の長男と牡丹の)二人は、一緒になって、一夜だけ一緒になって、一夜だけ寝たというのだが、(牡丹は)妊娠して子を産んださ。(だけど)もう、一夜見てからはもう、全く見なかったって、この首里の侍は、この女を全く見なかった。その間に(女は)子を産んだ。だけど、子が生まれてもどこの(誰との)子供とも言わない。賎民達は、皆な今日は満座(お七夜)だと許しを得て、者乞いにも行かず、お七夜を祝っているわけ。「私達の姉さんは風と子を産んで。」と。(牡丹が)誰との子供とも言わないで。どこの誰との子供だと全然言わないから、「私達の奥様が、風との子供を産んだ。お七夜のお祝いは、こんなにも楽しいね。」と、歌をうたい踊っているわけさあね、みずぼらしい家で、乞食達が。その後、この子供をつれて、外に出ると会ったわけさ、この男と。牡丹は、ばったり出会ったので、(牡丹が男に)「長い間、お目にかかれませんでした、恋しいひとよ。お元気でいらしたでしょうか。」と言ったが、(全然顔を見せなかった牡丹に、腹を立てた男は、わざと)「何が、『お元気でしたか。』だ。お前には、一回も出会ったことはない。私に見られたこともないくせに、何が『お元気でしたか。』だ。この畜生者。」と女に、歌でそのように言った。この男が (そのように)言ったので、(牡丹は)「情けもない。情があったからでしょう。貴方。」と答えると、「どうして情があるものか。」と、男が言った。(それで、牡丹は)「一夜の契りで、子供ができたよ。男の子が生まれたよ。」と言った。「本当に、お前と私の一夜の契りで、子供が、男の子が生まれているのか。そしたら、お前と私は、生まれる前からの縁だったのだ。」と言うさ。男が。そうして、男に(子供を)抱かせたら、この子を抱いて(この男は)首里の大きな御殿殿内の御長男であるから、この賤民との間で子供ができたということがわかれば、大変な事になるらしいね。そうだから、「この事を、世間にも一言も、もらしてくれるなよ。」と言うさ。“いいかね”女に、男が言うさ。その子を抱いていながら。それで、(その時に女が)「どうして、恋しい貴方のことを、世間にもらすでしょう。(たとえ)糸の筋目から、針を通す事ができても、私がどうして、恋しい貴方の名をはずかしめましょうか。どこにも言いません。」と言うさ。“いいかね”(それで、その女は)「私が、こうして、ここにいると、この安仁屋村にいるとこの子が(自分を)捜し訪ねてくる。」と、その子を男に渡したので、祖父 (その男の父親)が、育てているでしょう。この男との間にできている子はね。その子を、男にひき渡したので、自分は、人が一歩も足を入れないような奥山に行って、そこに住むようになるさ。“いいかね”そして、そこで自分一人暮らすんだね。そこで花、着を植えて、奥山で、花、着を育てて、その子を産んだ乞食の親分の(娘)牡丹は、山暮しをしていた。(牡丹の産んだ子が成長して)その子が、「私には、どうして、お母さんは、どうしたの。」と、きいたら、「お前が年頃になったら、あらゆる村々を巡って、君の母親を捜しなさい。」と、この父親が言った。〈「糸の筋目から、針を通すことができようとも、私がどうして、恋しい貴方の名をはずしめましょうか」というのは、貴方の事は、針の穴からでも漏らさない。世間の人には、何も漏らさないよ。という事を買いて、その御殿の男に(牡丹が)渡してあったでしょう。〉「お前、この書きつけを持って(手懸りに)親を捜しなさい。」と、(父親が言う。)(それでその子は)「私は、母親を捜してみせる。」と、父親に何度も言ったので、それでもう(父親は)「この書きつけを持って、親をさがしなさい。」と。いわれた通り、御獄御獄だね、拝所、拝所をたずねて歩き、親を捜したりするよ。 この男は、普天間権現にも(拝みにきた)。また、首里の平良町の殿内の里之子(であるこの男)の妻になったという女も、乳母と一緒に普天満権現に拝みにきている。また、賤民との間にできたその子(里之子)も、また、「私の親を、捜しださせて下さい。」と、普天間権現を拝みに行っているさ。そうして、次第、次第に奥山を歩いて行って、とうとう(母親を)捜しあてたわけさ。また、その女と、この男の妻になりたがって普天間に拝みにきた女と、「二人は一緒になろうね。」としめし合わせたんでしょうね。そうして行ったら、山に行くと、夜になって奥山に入ってしまった。すると、そこに家があったって。その親が、一人ですんでいる家が。その男が「私もここに泊めて下さい。」と、「泊めて下さい。」と言うと、「このような(みすぼらしい)家に、そのような(高貴)方々を、お泊めする事はできません。」(自分の)子供であるがわからないので。「別の所で、泊まって下さい。」と、その親は断るけれども、どうしても、ここで寝るんだといって、そこで寝た。このような、奥山なので、(その親が)着物をかぶせてあげたりしているわけさ。その時に、彼が(自分の書いた)書きつけをもっているのを、(親は)見たわけさ。そうして、その書きつけを、全部見ると、自分の子供だということがわかって、「私がつくった庭でも、見ておいで。」と、夜が明けると、庭を見に行かせたんだね。(その子が見に行くと)そこにも、ここも立派に花が咲いていた。それを見に行ったので、自分は川にポンと飛び込んだわけだよ。自殺するんだよ自分で。そうして、そこらあたりを、「お母さーん。」と呼んで捜してみたっていないでしょう。どこにも見あたらず、そこ(川)を見てみると、そこに落ちて死んでいたって。それで抱いてくるんだよ。そうして、首里につれて行った、というところまでだったでしょう。それまでだったのだよ。
| レコード番号 | 47O370832 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C038 |
| 決定題名 | 奥山の牡丹(方言) |
| 話者がつけた題名 | 奥山の牡丹 |
| 話者名 | 呉屋ナへ |
| 話者名かな | ごやなへ |
| 生年月日 | 18850504 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 沖縄県読谷村伊良皆 |
| 記録日 | 19770224 |
| 記録者の所属組織 | 読谷村民話調査団第5班 |
| 元テープ番号 | 読谷村伊良皆T02A08 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 20 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集1伊良皆の民話 P294 |
| キーワード | 奥山の牡丹,首里,御殿殿,安仁屋村,乞食,平良殿内,妊娠して子を産んだ,首里の侍,満座,お七夜,乞食達,賤民,御獄,拝所,普天間権現,乳母,自殺 |
| 梗概(こうがい) | 奥山の牡丹が、首里の御殿殿内の男と(恋仲になったという。その奥山の牡丹は)安仁屋村の子でしょう。安仁屋村というのは、昔、首里の下に安仁屋村というのがあったって。ここは乞食となって暮らしてよいと許しがあったって。“いいかね”ここは、乞うて生活しなさいと。だから、(この人達は)普通の人ではないさあね。“いいかね”昔は、上納というのをどこでも払うでしょう。(だけどこの人達は)どこに、上納を納めるという事もない。(それほど)ここは困っていた。この(安仁屋村の)女は、町でも歩いていたのか、その奥山の牡丹は、首里の平良殿内の主人と、その長男の二人と出会った。この奥山の牡丹も美しかったんでしょうね。それで、(平良殿内の長男と牡丹の)二人は、一緒になって、一夜だけ一緒になって、一夜だけ寝たというのだが、(牡丹は)妊娠して子を産んださ。(だけど)もう、一夜見てからはもう、全く見なかったって、この首里の侍は、この女を全く見なかった。その間に(女は)子を産んだ。だけど、子が生まれてもどこの(誰との)子供とも言わない。賎民達は、皆な今日は満座(お七夜)だと許しを得て、者乞いにも行かず、お七夜を祝っているわけ。「私達の姉さんは風と子を産んで。」と。(牡丹が)誰との子供とも言わないで。どこの誰との子供だと全然言わないから、「私達の奥様が、風との子供を産んだ。お七夜のお祝いは、こんなにも楽しいね。」と、歌をうたい踊っているわけさあね、みずぼらしい家で、乞食達が。その後、この子供をつれて、外に出ると会ったわけさ、この男と。牡丹は、ばったり出会ったので、(牡丹が男に)「長い間、お目にかかれませんでした、恋しいひとよ。お元気でいらしたでしょうか。」と言ったが、(全然顔を見せなかった牡丹に、腹を立てた男は、わざと)「何が、『お元気でしたか。』だ。お前には、一回も出会ったことはない。私に見られたこともないくせに、何が『お元気でしたか。』だ。この畜生者。」と女に、歌でそのように言った。この男が (そのように)言ったので、(牡丹は)「情けもない。情があったからでしょう。貴方。」と答えると、「どうして情があるものか。」と、男が言った。(それで、牡丹は)「一夜の契りで、子供ができたよ。男の子が生まれたよ。」と言った。「本当に、お前と私の一夜の契りで、子供が、男の子が生まれているのか。そしたら、お前と私は、生まれる前からの縁だったのだ。」と言うさ。男が。そうして、男に(子供を)抱かせたら、この子を抱いて(この男は)首里の大きな御殿殿内の御長男であるから、この賤民との間で子供ができたということがわかれば、大変な事になるらしいね。そうだから、「この事を、世間にも一言も、もらしてくれるなよ。」と言うさ。“いいかね”女に、男が言うさ。その子を抱いていながら。それで、(その時に女が)「どうして、恋しい貴方のことを、世間にもらすでしょう。(たとえ)糸の筋目から、針を通す事ができても、私がどうして、恋しい貴方の名をはずかしめましょうか。どこにも言いません。」と言うさ。“いいかね”(それで、その女は)「私が、こうして、ここにいると、この安仁屋村にいるとこの子が(自分を)捜し訪ねてくる。」と、その子を男に渡したので、祖父 (その男の父親)が、育てているでしょう。この男との間にできている子はね。その子を、男にひき渡したので、自分は、人が一歩も足を入れないような奥山に行って、そこに住むようになるさ。“いいかね”そして、そこで自分一人暮らすんだね。そこで花、着を植えて、奥山で、花、着を育てて、その子を産んだ乞食の親分の(娘)牡丹は、山暮しをしていた。(牡丹の産んだ子が成長して)その子が、「私には、どうして、お母さんは、どうしたの。」と、きいたら、「お前が年頃になったら、あらゆる村々を巡って、君の母親を捜しなさい。」と、この父親が言った。〈「糸の筋目から、針を通すことができようとも、私がどうして、恋しい貴方の名をはずしめましょうか」というのは、貴方の事は、針の穴からでも漏らさない。世間の人には、何も漏らさないよ。という事を買いて、その御殿の男に(牡丹が)渡してあったでしょう。〉「お前、この書きつけを持って(手懸りに)親を捜しなさい。」と、(父親が言う。)(それでその子は)「私は、母親を捜してみせる。」と、父親に何度も言ったので、それでもう(父親は)「この書きつけを持って、親をさがしなさい。」と。いわれた通り、御獄御獄だね、拝所、拝所をたずねて歩き、親を捜したりするよ。 この男は、普天間権現にも(拝みにきた)。また、首里の平良町の殿内の里之子(であるこの男)の妻になったという女も、乳母と一緒に普天満権現に拝みにきている。また、賤民との間にできたその子(里之子)も、また、「私の親を、捜しださせて下さい。」と、普天間権現を拝みに行っているさ。そうして、次第、次第に奥山を歩いて行って、とうとう(母親を)捜しあてたわけさ。また、その女と、この男の妻になりたがって普天間に拝みにきた女と、「二人は一緒になろうね。」としめし合わせたんでしょうね。そうして行ったら、山に行くと、夜になって奥山に入ってしまった。すると、そこに家があったって。その親が、一人ですんでいる家が。その男が「私もここに泊めて下さい。」と、「泊めて下さい。」と言うと、「このような(みすぼらしい)家に、そのような(高貴)方々を、お泊めする事はできません。」(自分の)子供であるがわからないので。「別の所で、泊まって下さい。」と、その親は断るけれども、どうしても、ここで寝るんだといって、そこで寝た。このような、奥山なので、(その親が)着物をかぶせてあげたりしているわけさ。その時に、彼が(自分の書いた)書きつけをもっているのを、(親は)見たわけさ。そうして、その書きつけを、全部見ると、自分の子供だということがわかって、「私がつくった庭でも、見ておいで。」と、夜が明けると、庭を見に行かせたんだね。(その子が見に行くと)そこにも、ここも立派に花が咲いていた。それを見に行ったので、自分は川にポンと飛び込んだわけだよ。自殺するんだよ自分で。そうして、そこらあたりを、「お母さーん。」と呼んで捜してみたっていないでしょう。どこにも見あたらず、そこ(川)を見てみると、そこに落ちて死んでいたって。それで抱いてくるんだよ。そうして、首里につれて行った、というところまでだったでしょう。それまでだったのだよ。 |
| 全体の記録時間数 | 10:13 |
| 物語の時間数 | 10:13 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |