アカマタ婿入り(方言)

概要

これからね、三月三日にどうして、浜で遊ぶならわしがあるか話してみようね。それは女の行事で、三月三日は、男の行事ではないんだ。それから、昔はよく三月三日には海からまだ誰にも踏まれてない真新しい砂を取って来て、それを便所へ通じる道や、水がめの前に播いておきなさいと言われた。砂を播いておけば、そこにはアカマターは来ないという意味だそうだ。どうして三月三日が女の節句かというと、昔、とても美しい娘がいたそうだ。この娘というのが両親が夜になると門より外には出さず、自分の家で寝ていたわけだが、この娘が妊娠してしまったようだね。それで両親は、「これは珍しいこともあるもんだ、家より外に出たことのない娘が、人と会って妊娠するはずがない。」と、とても不思議に思い、考え込んだ。その娘を騙したのはアカマターであった。アカマターが、人に化けて来て、ハブだからどこからでも入れた。昔の家は壁穴が多いから、ハブは穴や隙間(すきま)から入って来るでしょう。だから娘の寝ている所に美男子に化けて、娘と密通し妊娠したそうだね。〈アカマターが化けるということは例えば、魔女のようなものだね、あれは化けるでしょう。でも魔女は女だからいいが。〉美男子がやって来て、娘が妊娠したことに気づいた父親は、「ところでお母さんよ、今日は夜通し起きていて、隙間から娘の室を覗いてくれ。そいつが本当の人間か、人間ではないかを確かめておくれ。」と母親に、言い付けた。この母親は、娘の寝床の様子がかわってそこにたいそうの美男子がいるのを見た。そこで、昔はカタカシラといってあったが、〈カンプーを結っていたが、それをカタカシラという〉それは誰でも結っている。そのカタカシラに、昔はウーバーラといって芭蕉の糸をつむいで入れた籠があり、その糸はもう何万メートルもあるので、その糸を着物を縫う針に通して、その美男子が出て行く時にカタカシラに刺して帰したそうだ。それから父親が、「どうだったお母さん。」と聞いた。「なるほど、美男子だったね、しかし家の戸も開かないのに何処からこの男は入ったのだろう。これが不思議でたまらない。あまり珍しいのでその男のカタカシラに私の芭蕉籠の中の芭蕉糸を針に通して、それを刺して行かせたから、いっしょにその糸をさとって行こう。」と母親が言った。そして、辿って行くと、糸はほら穴につながっていた。アカマターがいるというほら穴に。「さあこれは大変だ、まさかこんな所に美男子が住むとは考えられないし、もしかすると、アカマターが化けたかも知れない。三月三日には、うちの娘も連れそって、浜で遊ぼうじゃないか。」と、両親は話し合った。このことに対して、この両親は関心があったようだね。「さあ今日は、三月三日だから浜で遊ぼうよ。」と親娘連れそって浜に行き、浜遊びをした。浜の真新しい砂を踏んだとたん、娘は流産した。その生まれた子は、全部アカマターの子だったそうだ。それから、三月三日は女の節句になり浜で遊ぶようになった。〈男の節句ではないよ〉、これが、美男子に化けたアカマターに女が騙された話なんだよ。この話は昔から伝わる三月三日の浜下りの起りなんだ。
昔、あるところに美しい娘がいたようだ。(その娘のところに)アカマターが男に化けて、毎夜のよう
に通ったそうだね。それで、不思議に思った隣りのお婆さんが、「あなたは、その男の人を本当の人間だと思っているのか、あれは人間ではないよ。」と言われたので、「そうでしょうか。」と、娘は考えたようだね。昔はウーバーラというのがあって、その中にたくさんの芭蕉糸を詰め込んでいたので(お婆さんが)「そのウーバーラの糸を針に通して(男が来たら)頭に刺してごらんなさい。」と教えてくれた。その準備をして待っているところへまたその男がやって来た。頭に針を刺して行かせた。そしてその後を追って行ってみると、アカマターは洞穴に入ってしまったと同時に、「頭が痛いよう。」と苦しんでいた。また、別のアカマターがそこにいた。(男に化けていたアカマターは)「私は人間に子を孕(はら)ませて来たんだ。」と話すと、別のアカマターが、「人間に子を孕ましたからといって、あの人たちが浜下りして子どもを下ろせばそれでおしまいさ。君が子を孕まして来たってその子は育たないさ。」とアカマター同士が話をしていた。また、アカマターの後をつけて行った人は、アカマターだということが分り、家に帰って来た。そして、三月になったとき、浜下りしてみると、アカマターの子を全部下ろしたという話である。昔の人は、こんなふうに話をして下さった。

再生時間:5:07

民話詳細DATA

レコード番号 47O370670
CD番号 47O37C031
決定題名 アカマタ婿入り(方言)
話者がつけた題名 浜下由来
話者名 屋良朝助
話者名かな やらちょうすけ
生年月日 19070608
性別
出身地 沖縄県読谷村瀬名波
記録日 19770815
記録者の所属組織 読谷村民話調査団第7班
元テープ番号 読谷村瀬名波T07A11
元テープ管理者 読谷村立歴史民俗資料館
分類 12,80
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 読谷村民話資料集4瀬名波の民話 P35
キーワード これからね、三月三日にどうして、浜で遊ぶならわしがあるか話してみようね。それは女の行事で、三月三日は、男の行事ではないんだ。それから、昔はよく三月三日には海からまだ誰にも踏まれてない真新しい砂を取って来て、それを便所へ通じる道や、水がめの前に播いておきなさいと言われた。砂を播いておけば、そこにはアカマターは来ないという意味だそうだ。どうして三月三日が女の節句かというと、昔、とても美しい娘がいたそうだ。この娘というのが両親が夜になると門より外には出さず、自分の家で寝ていたわけだが、この娘が妊娠してしまったようだね。それで両親は、「これは珍しいこともあるもんだ、家より外に出たことのない娘が、人と会って妊娠するはずがない。」と、とても不思議に思い、考え込んだ。その娘を騙したのはアカマターであった。アカマターが、人に化けて来て、ハブだからどこからでも入れた。昔の家は壁穴が多いから、ハブは穴や隙間(すきま)から入って来るでしょう。だから娘の寝ている所に美男子に化けて、娘と密通し妊娠したそうだね。〈アカマターが化けるということは例えば、魔女のようなものだね、あれは化けるでしょう。でも魔女は女だからいいが。〉美男子がやって来て、娘が妊娠したことに気づいた父親は、「ところでお母さんよ、今日は夜通し起きていて、隙間から娘の室を覗いてくれ。そいつが本当の人間か、人間ではないかを確かめておくれ。」と母親に、言い付けた。この母親は、娘の寝床の様子がかわってそこにたいそうの美男子がいるのを見た。そこで、昔はカタカシラといってあったが、〈カンプーを結っていたが、それをカタカシラという〉それは誰でも結っている。そのカタカシラに、昔はウーバーラといって芭蕉の糸をつむいで入れた籠があり、その糸はもう何万メートルもあるので、その糸を着物を縫う針に通して、その美男子が出て行く時にカタカシラに刺して帰したそうだ。それから父親が、「どうだったお母さん。」と聞いた。「なるほど、美男子だったね、しかし家の戸も開かないのに何処からこの男は入ったのだろう。これが不思議でたまらない。あまり珍しいのでその男のカタカシラに私の芭蕉籠の中の芭蕉糸を針に通して、それを刺して行かせたから、いっしょにその糸をさとって行こう。」と母親が言った。そして、辿って行くと、糸はほら穴につながっていた。アカマターがいるというほら穴に。「さあこれは大変だ、まさかこんな所に美男子が住むとは考えられないし、もしかすると、アカマターが化けたかも知れない。三月三日には、うちの娘も連れそって、浜で遊ぼうじゃないか。」と、両親は話し合った。このことに対して、この両親は関心があったようだね。「さあ今日は、三月三日だから浜で遊ぼうよ。」と親娘連れそって浜に行き、浜遊びをした。浜の真新しい砂を踏んだとたん、娘は流産した。その生まれた子は、全部アカマターの子だったそうだ。それから、三月三日は女の節句になり浜で遊ぶようになった。〈男の節句ではないよ〉、これが、美男子に化けたアカマターに女が騙された話なんだよ。この話は昔から伝わる三月三日の浜下りの起りなんだ。 昔、あるところに美しい娘がいたようだ。(その娘のところに)アカマターが男に化けて、毎夜のよう に通ったそうだね。それで、不思議に思った隣りのお婆さんが、「あなたは、その男の人を本当の人間だと思っているのか、あれは人間ではないよ。」と言われたので、「そうでしょうか。」と、娘は考えたようだね。昔はウーバーラというのがあって、その中にたくさんの芭蕉糸を詰め込んでいたので(お婆さんが)「そのウーバーラの糸を針に通して(男が来たら)頭に刺してごらんなさい。」と教えてくれた。その準備をして待っているところへまたその男がやって来た。頭に針を刺して行かせた。そしてその後を追って行ってみると、アカマターは洞穴に入ってしまったと同時に、「頭が痛いよう。」と苦しんでいた。また、別のアカマターがそこにいた。(男に化けていたアカマターは)「私は人間に子を孕(はら)ませて来たんだ。」と話すと、別のアカマターが、「人間に子を孕ましたからといって、あの人たちが浜下りして子どもを下ろせばそれでおしまいさ。君が子を孕まして来たってその子は育たないさ。」とアカマター同士が話をしていた。また、アカマターの後をつけて行った人は、アカマターだということが分り、家に帰って来た。そして、三月になったとき、浜下りしてみると、アカマターの子を全部下ろしたという話である。昔の人は、こんなふうに話をして下さった。
梗概(こうがい) これからね、三月三日にどうして、浜で遊ぶならわしがあるか話してみようね。それは女の行事で、三月三日は、男の行事ではないんだ。それから、昔はよく三月三日には海からまだ誰にも踏まれてない真新しい砂を取って来て、それを便所へ通じる道や、水がめの前に播いておきなさいと言われた。砂を播いておけば、そこにはアカマターは来ないという意味だそうだ。どうして三月三日が女の節句かというと、昔、とても美しい娘がいたそうだ。この娘というのが両親が夜になると門より外には出さず、自分の家で寝ていたわけだが、この娘が妊娠してしまったようだね。それで両親は、「これは珍しいこともあるもんだ、家より外に出たことのない娘が、人と会って妊娠するはずがない。」と、とても不思議に思い、考え込んだ。その娘を騙したのはアカマターであった。アカマターが、人に化けて来て、ハブだからどこからでも入れた。昔の家は壁穴が多いから、ハブは穴や隙間(すきま)から入って来るでしょう。だから娘の寝ている所に美男子に化けて、娘と密通し妊娠したそうだね。〈アカマターが化けるということは例えば、魔女のようなものだね、あれは化けるでしょう。でも魔女は女だからいいが。〉美男子がやって来て、娘が妊娠したことに気づいた父親は、「ところでお母さんよ、今日は夜通し起きていて、隙間から娘の室を覗いてくれ。そいつが本当の人間か、人間ではないかを確かめておくれ。」と母親に、言い付けた。この母親は、娘の寝床の様子がかわってそこにたいそうの美男子がいるのを見た。そこで、昔はカタカシラといってあったが、〈カンプーを結っていたが、それをカタカシラという〉それは誰でも結っている。そのカタカシラに、昔はウーバーラといって芭蕉の糸をつむいで入れた籠があり、その糸はもう何万メートルもあるので、その糸を着物を縫う針に通して、その美男子が出て行く時にカタカシラに刺して帰したそうだ。それから父親が、「どうだったお母さん。」と聞いた。「なるほど、美男子だったね、しかし家の戸も開かないのに何処からこの男は入ったのだろう。これが不思議でたまらない。あまり珍しいのでその男のカタカシラに私の芭蕉籠の中の芭蕉糸を針に通して、それを刺して行かせたから、いっしょにその糸をさとって行こう。」と母親が言った。そして、辿って行くと、糸はほら穴につながっていた。アカマターがいるというほら穴に。「さあこれは大変だ、まさかこんな所に美男子が住むとは考えられないし、もしかすると、アカマターが化けたかも知れない。三月三日には、うちの娘も連れそって、浜で遊ぼうじゃないか。」と、両親は話し合った。このことに対して、この両親は関心があったようだね。「さあ今日は、三月三日だから浜で遊ぼうよ。」と親娘連れそって浜に行き、浜遊びをした。浜の真新しい砂を踏んだとたん、娘は流産した。その生まれた子は、全部アカマターの子だったそうだ。それから、三月三日は女の節句になり浜で遊ぶようになった。〈男の節句ではないよ〉、これが、美男子に化けたアカマターに女が騙された話なんだよ。この話は昔から伝わる三月三日の浜下りの起りなんだ。 昔、あるところに美しい娘がいたようだ。(その娘のところに)アカマターが男に化けて、毎夜のよう に通ったそうだね。それで、不思議に思った隣りのお婆さんが、「あなたは、その男の人を本当の人間だと思っているのか、あれは人間ではないよ。」と言われたので、「そうでしょうか。」と、娘は考えたようだね。昔はウーバーラというのがあって、その中にたくさんの芭蕉糸を詰め込んでいたので(お婆さんが)「そのウーバーラの糸を針に通して(男が来たら)頭に刺してごらんなさい。」と教えてくれた。その準備をして待っているところへまたその男がやって来た。頭に針を刺して行かせた。そしてその後を追って行ってみると、アカマターは洞穴に入ってしまったと同時に、「頭が痛いよう。」と苦しんでいた。また、別のアカマターがそこにいた。(男に化けていたアカマターは)「私は人間に子を孕(はら)ませて来たんだ。」と話すと、別のアカマターが、「人間に子を孕ましたからといって、あの人たちが浜下りして子どもを下ろせばそれでおしまいさ。君が子を孕まして来たってその子は育たないさ。」とアカマター同士が話をしていた。また、アカマターの後をつけて行った人は、アカマターだということが分り、家に帰って来た。そして、三月になったとき、浜下りしてみると、アカマターの子を全部下ろしたという話である。昔の人は、こんなふうに話をして下さった。
全体の記録時間数 5:07
物語の時間数 5:07
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

トップに戻る

TOP