あれは西原の人だったそうだ。御殿のお供として昔はいたんだね。御殿のお供をして、御殿の御前で、「私共が秀れると、どのくらいの人物になれますでしょうか。」と聞くと、「お前達のような百姓は(せいぜい)三年地頭代ぐらいにしかなれないだろう。」と、(言われた。)地頭代といったら村長のことさ。「村の大将の村長ぐらいしかなれない。それだけでも頑張らないといけないよ。」と。「それくらいだったら、私達は盗人にはしった方がいい。盗人になって、いつまでも名を残した方がずっといいです。」と言ってその夜から出て行ってね。それで西原で〈運玉森とあるでしょう。今も〉そこで(人に)知られないように盗人の訓練をしていて、昼は西原の我謝まで、馬と走り勝負をし、夜は又木の葉を積んで、それの上から足音をたてないで歩く練習をし、そうして盗みを始めた。この盗人は、根っからの盗人ではなくて、盗み出しては貧乏な者に分け与えたそうだ。無い者にね。しばらくすると、これの弟子(になるのを望む者が現われて)「私も貴方の弟子にして下さい。」と言って来た。「弟子にしてやってもいいが、お前がいつまでも続けてくれるなら仲間として組んでもよいが。」と承諾した。さっそく、ふたり一緒に人の家に盗みに行って、取りたい分だけを盗み出して後、自分(運玉義留)は逃げて、弟子は戸棚に押し込んで帰ってきた。(義留は弟子が)どのように逃げて来るだろうかと、試したんだろうね。それは、自分だけ逃げ、後から入った弟子は、戸棚に押し込めてあるのだからね。そこで、その家では、ガサガサと物音がしたもんだから、「私達の戸棚に鼠が入っているようだ。」と言った。またガサガサ音がして、「ほらほら、戸棚に鼠が入っている。開けて調べないといけない。」と言って、開けてみると、「ワッ!。」と大声を出したかと思うと、弟子が一目散に逃げて行った。それで、「お前は、どうやって逃げてこれたか。」と運玉儀留が聞くと、「こうこうして逃げて来た。」と答えた。「それなら、お前を私の弟子にしよう。」と言って、二人は組んで盗みをするようになった。その弟子というのは油(あんだ)喰(け)ぇ坊主(ぼーじゃー)、運玉義留(うんたまぎるう)というのが大将さ。それは、運玉森に住んでいた人で、義留という名前だったそうだ。それで、運玉森で盗みを習ったから運玉義留とよばれた。西原の人だったそうだ、この人は。
レコード番号 | 47O370650 |
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CD番号 | 47O37C031 |
決定題名 | 運玉義留(方言) |
話者がつけた題名 | 運玉義留 |
話者名 | 屋良朝乗 |
話者名かな | やらちょうじょう |
生年月日 | 18921225 |
性別 | 男 |
出身地 | 沖縄県読谷村瀬名波 |
記録日 | 19770815 |
記録者の所属組織 | 読谷村民話調査団第3班 |
元テープ番号 | 読谷村瀬名波T06B07 |
元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
分類 | 20 |
発句(ほっく) | - |
伝承事情 | 劇 |
文字化資料 | 読谷村民話資料集4瀬名波の民話 P268 |
キーワード | 西原の人,御殿のお供,百姓,三年地頭代,村長,盗人,運玉森,西原の我謝,馬と走り勝負,木の葉の上から足音をたてないで歩く練習,貧乏者に分け与えた,戸棚に鼠,運玉義留 |
梗概(こうがい) | あれは西原の人だったそうだ。御殿のお供として昔はいたんだね。御殿のお供をして、御殿の御前で、「私共が秀れると、どのくらいの人物になれますでしょうか。」と聞くと、「お前達のような百姓は(せいぜい)三年地頭代ぐらいにしかなれないだろう。」と、(言われた。)地頭代といったら村長のことさ。「村の大将の村長ぐらいしかなれない。それだけでも頑張らないといけないよ。」と。「それくらいだったら、私達は盗人にはしった方がいい。盗人になって、いつまでも名を残した方がずっといいです。」と言ってその夜から出て行ってね。それで西原で〈運玉森とあるでしょう。今も〉そこで(人に)知られないように盗人の訓練をしていて、昼は西原の我謝まで、馬と走り勝負をし、夜は又木の葉を積んで、それの上から足音をたてないで歩く練習をし、そうして盗みを始めた。この盗人は、根っからの盗人ではなくて、盗み出しては貧乏な者に分け与えたそうだ。無い者にね。しばらくすると、これの弟子(になるのを望む者が現われて)「私も貴方の弟子にして下さい。」と言って来た。「弟子にしてやってもいいが、お前がいつまでも続けてくれるなら仲間として組んでもよいが。」と承諾した。さっそく、ふたり一緒に人の家に盗みに行って、取りたい分だけを盗み出して後、自分(運玉義留)は逃げて、弟子は戸棚に押し込んで帰ってきた。(義留は弟子が)どのように逃げて来るだろうかと、試したんだろうね。それは、自分だけ逃げ、後から入った弟子は、戸棚に押し込めてあるのだからね。そこで、その家では、ガサガサと物音がしたもんだから、「私達の戸棚に鼠が入っているようだ。」と言った。またガサガサ音がして、「ほらほら、戸棚に鼠が入っている。開けて調べないといけない。」と言って、開けてみると、「ワッ!。」と大声を出したかと思うと、弟子が一目散に逃げて行った。それで、「お前は、どうやって逃げてこれたか。」と運玉儀留が聞くと、「こうこうして逃げて来た。」と答えた。「それなら、お前を私の弟子にしよう。」と言って、二人は組んで盗みをするようになった。その弟子というのは油(あんだ)喰(け)ぇ坊主(ぼーじゃー)、運玉義留(うんたまぎるう)というのが大将さ。それは、運玉森に住んでいた人で、義留という名前だったそうだ。それで、運玉森で盗みを習ったから運玉義留とよばれた。西原の人だったそうだ、この人は。 |
全体の記録時間数 | 3:56 |
物語の時間数 | 3:56 |
言語識別 | 方言 |
音源の質 | △ |
テープ番号 | - |
予備項目1 | - |