
これは豊年祈願の話。坊主御主が国内見聞をしに行った話だが、これは人々の豊年祈願の話であるわけさ。坊主御主が、「こんなに被害を受けているのに、人々はどのようにして暮らしているのだろうか、まず国内見聞でもしに行こうか。」と、お供を引き連れて出かけたそうだ。ある夫婦が二人で一生懸命働いていたようだ。よく畑へ行き働いていたようだ。それで、「おい、あそこに夫婦らしいのがいるが、あそこで働いているのは珍らしい事だ。あんなに働く人もいたのか。さあ、あそこまで行ってみようね。」と、供の者に言って、そこへ近づいて行った。「そこの人よ、失礼だが、君達はそんなに働いているところを悪いが、ここでひと休みしなさい。」と、御主が言うと、「いや、今休んだばかりだから結構です。よろしいです。」と答えた。「そんなことは言わず、ぜひ休んでくれ。」「いや、今休んだんですよ。」「いや、それでも人が休みなさいという時は休むものだよ。ほんの少し休んでもどうってことないよ。骨休みに話しでもするとよい。」と言い合っているうちに「そうしますかね。」と夫婦は休むことにした。もう夫と妻の二人が、その御主のいる所へ休みに来た。夫は溝に溜っている水で手を洗って芝生に拭き、妻は、手を洗いもせずにそのまま土もついたままじっとしていたようだ。「私が人からいただいた芋があるので、この芋を一つづつ食べなさい。」と、御主が言った。「御馳走になります。このような飢饉の御時世においしい物がある所もあるんですね。これはもう御馳走になります。」と、二人して喜んだ。そして、夫に芋をあげたところ、芋の中心からこうして折って、中心から折って食べた。妻は、すぐ芋を縦に折ったわけさ。「おいしい芋でしょう。」と御主が言うと、「はい、こんなに香りもよくおいしい芋もあるんですね。この芋の種類は違うのでしょうか。実においしい。」と言った。また、「本当においしい芋を御馳走になりました。」と二人は言った。それから、「さあ、君達二人はよく働いているようだが、君達の家庭は、誰のおかげで大変繁栄しているか、また、誰のおかげでそんなに裕福になっているか分るかね。」と御主が聞いたところ、夫が、「決まってるじゃないか、私は男だから、何でも男だということでしょう。男がしっかりしていればこそ、裕福になる。私が働くからこそ裕福になっているんだ。この他に何とも言えないと思うよ。」と言った。「ああそうか。しかし君達が裕福なのは、君の奥さんのおかげなんだ、君のおかげで裕福になっているわけではないよ。それは奥さんのおかげだよ。」と御主は言った。また、その夫はばつが悪くなった。さらに御主は「そうだね、君達が今のように働くものならば、もっともっと裕福になるだろうから、心を許すことなく、今のようにこうして頑張って裕福になって下さい。君達二人に限ってまちがいなく頑張るはずだから私は、ここにお金を持っているから、このお金をあげるから尚一層頑張って裕福になりなさいね。」と、話したようだ。夫婦は不思議に思った。それは、御主が渡してくれた銭が小判だったから。小判というのは、普通は大加那志(大金持ち)がしか持っていないから、御主が小判を出すと、「今までは、普通の人だと思って、貴方にうっかりと接していましたが、何も分らずそうしたのですから、どうか罪にならないようにして下さい。この度は、御無礼を申し上げてすみませんでした。」と、ここでひざをついてお辞儀をした。それから、私はその話を聞いてからは、芋というものを真中から折って食べたことはない。また、この芋というものはね、ちっとも作り上手じゃない者を貧乏者といって、貧乏者というと失礼になるが、昔は貧乏者は芋が少ないでしょう。それに、畑も少ないさあね、それだから、これだけの指ぐらいしかない小さな芋は折って畑に差しこんでいたわけさ。今度は金持ちの芋はよくできるし、それに大きかったので、真中から縦に割って食べていたようだ。芋は、縦に割るのは豊作祈願という。真中から折ると飢饉到来、飢饉というのは芋も何も無くなることに飢饉という。それだから、豊年祈願というのは、芋を縦に折って食べることを言うのである。
| レコード番号 | 47O370600 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C028 |
| 決定題名 | 坊主御主の芋の割り食い(方言) |
| 話者がつけた題名 | 坊主御主の話 世果報願い |
| 話者名 | 山内真厚 |
| 話者名かな | やまうちしんこう |
| 生年月日 | 19130515 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県読谷村瀬名波 |
| 記録日 | 19461114 |
| 記録者の所属組織 | 読谷村民話調査団第7班 |
| 元テープ番号 | 読谷村瀬名波T04B07 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 20 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集4瀬名波の民話 P251 |
| キーワード | 豊年祈願,坊主御主,国内見聞,夫婦,夫は水で手を洗った,妻は手を洗わない,芋,夫は芋の中心から折って食べた,妻は芋を縦に折った,裕福,お金,小判,大加那志,貧乏者,芋を縦に割るのは豊作祈願,真中から折るのは飢饉到来 |
| 梗概(こうがい) | これは豊年祈願の話。坊主御主が国内見聞をしに行った話だが、これは人々の豊年祈願の話であるわけさ。坊主御主が、「こんなに被害を受けているのに、人々はどのようにして暮らしているのだろうか、まず国内見聞でもしに行こうか。」と、お供を引き連れて出かけたそうだ。ある夫婦が二人で一生懸命働いていたようだ。よく畑へ行き働いていたようだ。それで、「おい、あそこに夫婦らしいのがいるが、あそこで働いているのは珍らしい事だ。あんなに働く人もいたのか。さあ、あそこまで行ってみようね。」と、供の者に言って、そこへ近づいて行った。「そこの人よ、失礼だが、君達はそんなに働いているところを悪いが、ここでひと休みしなさい。」と、御主が言うと、「いや、今休んだばかりだから結構です。よろしいです。」と答えた。「そんなことは言わず、ぜひ休んでくれ。」「いや、今休んだんですよ。」「いや、それでも人が休みなさいという時は休むものだよ。ほんの少し休んでもどうってことないよ。骨休みに話しでもするとよい。」と言い合っているうちに「そうしますかね。」と夫婦は休むことにした。もう夫と妻の二人が、その御主のいる所へ休みに来た。夫は溝に溜っている水で手を洗って芝生に拭き、妻は、手を洗いもせずにそのまま土もついたままじっとしていたようだ。「私が人からいただいた芋があるので、この芋を一つづつ食べなさい。」と、御主が言った。「御馳走になります。このような飢饉の御時世においしい物がある所もあるんですね。これはもう御馳走になります。」と、二人して喜んだ。そして、夫に芋をあげたところ、芋の中心からこうして折って、中心から折って食べた。妻は、すぐ芋を縦に折ったわけさ。「おいしい芋でしょう。」と御主が言うと、「はい、こんなに香りもよくおいしい芋もあるんですね。この芋の種類は違うのでしょうか。実においしい。」と言った。また、「本当においしい芋を御馳走になりました。」と二人は言った。それから、「さあ、君達二人はよく働いているようだが、君達の家庭は、誰のおかげで大変繁栄しているか、また、誰のおかげでそんなに裕福になっているか分るかね。」と御主が聞いたところ、夫が、「決まってるじゃないか、私は男だから、何でも男だということでしょう。男がしっかりしていればこそ、裕福になる。私が働くからこそ裕福になっているんだ。この他に何とも言えないと思うよ。」と言った。「ああそうか。しかし君達が裕福なのは、君の奥さんのおかげなんだ、君のおかげで裕福になっているわけではないよ。それは奥さんのおかげだよ。」と御主は言った。また、その夫はばつが悪くなった。さらに御主は「そうだね、君達が今のように働くものならば、もっともっと裕福になるだろうから、心を許すことなく、今のようにこうして頑張って裕福になって下さい。君達二人に限ってまちがいなく頑張るはずだから私は、ここにお金を持っているから、このお金をあげるから尚一層頑張って裕福になりなさいね。」と、話したようだ。夫婦は不思議に思った。それは、御主が渡してくれた銭が小判だったから。小判というのは、普通は大加那志(大金持ち)がしか持っていないから、御主が小判を出すと、「今までは、普通の人だと思って、貴方にうっかりと接していましたが、何も分らずそうしたのですから、どうか罪にならないようにして下さい。この度は、御無礼を申し上げてすみませんでした。」と、ここでひざをついてお辞儀をした。それから、私はその話を聞いてからは、芋というものを真中から折って食べたことはない。また、この芋というものはね、ちっとも作り上手じゃない者を貧乏者といって、貧乏者というと失礼になるが、昔は貧乏者は芋が少ないでしょう。それに、畑も少ないさあね、それだから、これだけの指ぐらいしかない小さな芋は折って畑に差しこんでいたわけさ。今度は金持ちの芋はよくできるし、それに大きかったので、真中から縦に割って食べていたようだ。芋は、縦に割るのは豊作祈願という。真中から折ると飢饉到来、飢饉というのは芋も何も無くなることに飢饉という。それだから、豊年祈願というのは、芋を縦に折って食べることを言うのである。 |
| 全体の記録時間数 | 5:30 |
| 物語の時間数 | 5:30 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |