
この男は務人であったらしい。首里のお城に務めていた。ある日三人揃って、「今日は八月十五夜、月もさやかに照ることだし、月眺めでもしようや。」ということになり、外に出て月眺めをした。すると、一人の男の首が、影の首が無いのに気づいた。影に首がないので、「おい、この影には首が無いが、あれは誰の首だ。」「そうだな。」と言って、一人一人首をかしげて確かめてみた。一人の男が、「ああ、これは私の首だ!」というと、「そうお前の首だ。」と他の人も同じことをいった。さあ自分の影に首が無いということでその男は、易者に見てもらいに行った。易者の言うことには、「お前の首が無いのは、お前が一番気に入っている、大事にしているものを殺さなければ、お前の首は無いぞ。」と言われた。「えっ!」「お前が、とっても可愛がっているものは何か。」「馬です。」「その馬を殺せ。」と言った。それで一番大事にしている馬を殺そうとしたが、じゃれつきとても殺せなかった。男は易者に、「私には、馬を殺すことはできません。」と言った。「もう一つ何か無いか。」「犬がいます。」と、いうことで犬を殺そうとするが、犬も殺せなくて困っていた。易者は、「お前は、その動物より他に可愛がっているものはいないのか。」と言った。「妻がいます。」易者は「それだ。」と言った。妻は、夫が御殿務めをしている間に、若い男と仲良くなり部屋に連れ込み、誰にもさとられないようにしていた。万一、夫に見られたら大変だということで、うまく隠していた。そして、男は易者から妻を殺せと言われて、「妻を殺せと言われているが…。」と。もうやむを得ず、「易者の言われることだし、自分の首が無いよりは、妻を殺した方がいい。」と言って、弓矢を引こうとした。妻はびっくりして、「さてさて、あなたはいつから頭がおかしくなったのか。」と言った。「いや、お前を殺さなければならない。」そして、妻の手はこうして後手で若者をかばい、夫に見せないようにした。矢を放つと妻には当たらず、寝ていた若者の胸に当たった。それから、「これは月眺めもしなくてはいけない。命も助かったことだし。」ということで、十五夜の月眺めは始まったんだ。これだけ、私の聞いた話は。
| レコード番号 | 47O370213 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C009 |
| 決定題名 | 首のない影(方言) |
| 話者がつけた題名 | 十五夜の月 |
| 話者名 | 金城太郎 |
| 話者名かな | きんじょうたろう |
| 生年月日 | 18860920 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県読谷村長浜 |
| 記録日 | 19750518 |
| 記録者の所属組織 | 読谷村民話調査団 |
| 元テープ番号 | 読谷村長浜T01A10 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集3長浜の民話 P81 |
| キーワード | 首里城務め,八月十五夜,月眺め,影の首が無い,易者,馬,犬,妻,若い男,部屋に連れ込み,弓矢 |
| 梗概(こうがい) | この男は務人であったらしい。首里のお城に務めていた。ある日三人揃って、「今日は八月十五夜、月もさやかに照ることだし、月眺めでもしようや。」ということになり、外に出て月眺めをした。すると、一人の男の首が、影の首が無いのに気づいた。影に首がないので、「おい、この影には首が無いが、あれは誰の首だ。」「そうだな。」と言って、一人一人首をかしげて確かめてみた。一人の男が、「ああ、これは私の首だ!」というと、「そうお前の首だ。」と他の人も同じことをいった。さあ自分の影に首が無いということでその男は、易者に見てもらいに行った。易者の言うことには、「お前の首が無いのは、お前が一番気に入っている、大事にしているものを殺さなければ、お前の首は無いぞ。」と言われた。「えっ!」「お前が、とっても可愛がっているものは何か。」「馬です。」「その馬を殺せ。」と言った。それで一番大事にしている馬を殺そうとしたが、じゃれつきとても殺せなかった。男は易者に、「私には、馬を殺すことはできません。」と言った。「もう一つ何か無いか。」「犬がいます。」と、いうことで犬を殺そうとするが、犬も殺せなくて困っていた。易者は、「お前は、その動物より他に可愛がっているものはいないのか。」と言った。「妻がいます。」易者は「それだ。」と言った。妻は、夫が御殿務めをしている間に、若い男と仲良くなり部屋に連れ込み、誰にもさとられないようにしていた。万一、夫に見られたら大変だということで、うまく隠していた。そして、男は易者から妻を殺せと言われて、「妻を殺せと言われているが…。」と。もうやむを得ず、「易者の言われることだし、自分の首が無いよりは、妻を殺した方がいい。」と言って、弓矢を引こうとした。妻はびっくりして、「さてさて、あなたはいつから頭がおかしくなったのか。」と言った。「いや、お前を殺さなければならない。」そして、妻の手はこうして後手で若者をかばい、夫に見せないようにした。矢を放つと妻には当たらず、寝ていた若者の胸に当たった。それから、「これは月眺めもしなくてはいけない。命も助かったことだし。」ということで、十五夜の月眺めは始まったんだ。これだけ、私の聞いた話は。 |
| 全体の記録時間数 | 2:32 |
| 物語の時間数 | 2:32 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |