
その牛はよ、主人に飼われたのでよ、「もうどうしてあなたへ恩を返そうかなあ。」と考えていたという話だがね。そうするうちに、後にはこの牛は考えてね、主人に、「どこそこの牛と私とをかけをしてけんかさせて下さい。どうしてかと言うと、あの牛も私ももとは人間だった。だけど私たちは悪いことをしたため、こんなにされてしまった。あの牛はね、むかし私から米をかりているが、払わないでいるのだ。」と言った。このけんかの日を何月何日と決めてね。主人に金をもうけさせるつもりで、かけのけんかを「何月の何日に、どこそこでね」とつごうをつけさせた。そうしてまた、「けんかに行くときにはね、この右の角には、この斗掻きを右の角にさげてね、また、一斗桝というと、一斗入る桝だね。ちょうど一斗の米が入るもの、この一斗桝を左の角につるして、けんかに行かせて下さい。」と主人に言うそうだよ。斗掻きと言うのは、米などをマスで計るときに切る棒だよ。それでもう何月の何日はけんかということだったが、「実をいうと、あのがんじょう牛と、私がけんかしてもかなわない。かなわないのだが、あれは私から、米をかりて払わないのだから、右の角に斗掻きをしばって、左には一斗桝をしばって連れて行かれると、はじまるまえに、あいつは逃げるから。」と言ったんだ。争わないうちに逃げるわけさ。正直にいうと、その牛にはかなわないそうだよ。ところが、ほら言ったとおりに、争う前に逃げてしまった。この牛が斗掻きと一斗桝を強くしばっているのを見て、あのがんじょう牛はそのまま逃げてしまった。けんかせずに負けてしまったそうだ。それで、かけをしたこの主人は勝ったわけだよ。こうして主人への恩を返したそうだよ、このやせ牛は。これはこんな話だったよ。
| レコード番号 | 47O376043 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C243 |
| 決定題名 | もの言う牛(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | もの言う牛 |
| 話者名 | 宜志富紹長 |
| 話者名かな | ぎしとみしょうちょう |
| 生年月日 | 18961208 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県恩納村安富祖 |
| 記録日 | 19760530 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 恩納村T42A01 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | 主にお年寄りや父から聞いた。 |
| 文字化資料 | - |
| キーワード | 牛,主人,恩返し,牛と私とをかけ,けんか,右の角に斗掻き,一斗桝 |
| 梗概(こうがい) | その牛はよ、主人に飼われたのでよ、「もうどうしてあなたへ恩を返そうかなあ。」と考えていたという話だがね。そうするうちに、後にはこの牛は考えてね、主人に、「どこそこの牛と私とをかけをしてけんかさせて下さい。どうしてかと言うと、あの牛も私ももとは人間だった。だけど私たちは悪いことをしたため、こんなにされてしまった。あの牛はね、むかし私から米をかりているが、払わないでいるのだ。」と言った。このけんかの日を何月何日と決めてね。主人に金をもうけさせるつもりで、かけのけんかを「何月の何日に、どこそこでね」とつごうをつけさせた。そうしてまた、「けんかに行くときにはね、この右の角には、この斗掻きを右の角にさげてね、また、一斗桝というと、一斗入る桝だね。ちょうど一斗の米が入るもの、この一斗桝を左の角につるして、けんかに行かせて下さい。」と主人に言うそうだよ。斗掻きと言うのは、米などをマスで計るときに切る棒だよ。それでもう何月の何日はけんかということだったが、「実をいうと、あのがんじょう牛と、私がけんかしてもかなわない。かなわないのだが、あれは私から、米をかりて払わないのだから、右の角に斗掻きをしばって、左には一斗桝をしばって連れて行かれると、はじまるまえに、あいつは逃げるから。」と言ったんだ。争わないうちに逃げるわけさ。正直にいうと、その牛にはかなわないそうだよ。ところが、ほら言ったとおりに、争う前に逃げてしまった。この牛が斗掻きと一斗桝を強くしばっているのを見て、あのがんじょう牛はそのまま逃げてしまった。けんかせずに負けてしまったそうだ。それで、かけをしたこの主人は勝ったわけだよ。こうして主人への恩を返したそうだよ、このやせ牛は。これはこんな話だったよ。 |
| 全体の記録時間数 | 1:49 |
| 物語の時間数 | 1:49 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |