
伊野波殿内の庭にはね、とても良い菊が咲いていたんだって。それで、今日は王様がこの伊野波殿内に菊を見にいらっしゃるという相談だからと、ここの伊野波殿内の御主人はね、下男のおじさん、おばさんたち、皆に言いつけて、「今日は王様をお迎えして、菊を見ていただくので、御馳走を用意しておくように。」といって御馳走を準備させたらしいよ。そしたら、息子のモーイがつまみ食いをしてしょうがない。ここのおばさんたちにとっては、旦那の子だから叱ることもできないでしょう。どうしようもない。昔のことだから、たいして多くも作らないから、全部食べられてしまってね。それから、また、父親がモーイに、「モーイ、お前は今日は、王様がいらっしゃることだから、この菊の下葉を取っておきなさい。」と言って言いつけしていたってよ。「はい。」と言ってね。また、下男のおじさんたちには御馳走を準備しなさいと言いつけて、出かけて行かれたらしい。そして、王様を御案内してきたらね、こうだったって。モーイがこの菊の葉を皆、むしり取ってしまってね、花は座敷に向けて折り曲げてしまってね。そうしたら、父親が怒って、「誰がやったか。」と言ったら、モーイが、「ああ、お父さん、王様の前では我々人間でさえも、腰を折っておじぎをするのに、こんな菊が一本、偉そうに顔を上げさせているわけにはいきません、私が折りました。」と言った。菊までも、王様には首を折っているということだってよ。それから、御馳走はね、給仕は自分でするということだからね。豆腐をとても薄く切って揚げるのは、油揚げにするのは、沖縄のことばではルクジューグヮーと言うよ。それで、これを二つ皿にのせて出しながら、その座敷に来ながらね、「六十(るくじゅ)重(かさ)にりば 百二十(ひゃくにじゅう)ぬ御祝(うゆえ)〔六十を重ねれば百二十の御祝〕うかきぶさみしょり 我(わ)御主加那志(うすがなし)〔お元気でいられて下さい、我々の王様〕」という歌を詠みながら、御馳走の豆腐二つ、薄い一切れを持って来たらしい。すると、「そうか、モーヤー。御馳走になった、モーヤー。」と王様はおっしゃったらしい。モーイは大変な知恵者だったらしいよ。
| レコード番号 | 47O375324 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C214 |
| 決定題名 | モーイ親方の下葉刈り(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | モーイ親方の話 |
| 話者名 | 宜志富紹長 |
| 話者名かな | ぎしとみしょうちょう |
| 生年月日 | 18961208 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県恩納村安富祖 |
| 記録日 | 19760225 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 恩納村T11B08 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 13 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | 主にお年寄りや父から聞いた。 |
| 文字化資料 | 『恩納村の民話 昔話編』P222 |
| キーワード | 伊野波殿内,王様,モーイがつまみ食い,菊の下葉,豆腐,ルクジューグヮー,大変な知恵者 |
| 梗概(こうがい) | 伊野波殿内の庭にはね、とても良い菊が咲いていたんだって。それで、今日は王様がこの伊野波殿内に菊を見にいらっしゃるという相談だからと、ここの伊野波殿内の御主人はね、下男のおじさん、おばさんたち、皆に言いつけて、「今日は王様をお迎えして、菊を見ていただくので、御馳走を用意しておくように。」といって御馳走を準備させたらしいよ。そしたら、息子のモーイがつまみ食いをしてしょうがない。ここのおばさんたちにとっては、旦那の子だから叱ることもできないでしょう。どうしようもない。昔のことだから、たいして多くも作らないから、全部食べられてしまってね。それから、また、父親がモーイに、「モーイ、お前は今日は、王様がいらっしゃることだから、この菊の下葉を取っておきなさい。」と言って言いつけしていたってよ。「はい。」と言ってね。また、下男のおじさんたちには御馳走を準備しなさいと言いつけて、出かけて行かれたらしい。そして、王様を御案内してきたらね、こうだったって。モーイがこの菊の葉を皆、むしり取ってしまってね、花は座敷に向けて折り曲げてしまってね。そうしたら、父親が怒って、「誰がやったか。」と言ったら、モーイが、「ああ、お父さん、王様の前では我々人間でさえも、腰を折っておじぎをするのに、こんな菊が一本、偉そうに顔を上げさせているわけにはいきません、私が折りました。」と言った。菊までも、王様には首を折っているということだってよ。それから、御馳走はね、給仕は自分でするということだからね。豆腐をとても薄く切って揚げるのは、油揚げにするのは、沖縄のことばではルクジューグヮーと言うよ。それで、これを二つ皿にのせて出しながら、その座敷に来ながらね、「六十(るくじゅ)重(かさ)にりば 百二十(ひゃくにじゅう)ぬ御祝(うゆえ)〔六十を重ねれば百二十の御祝〕うかきぶさみしょり 我(わ)御主加那志(うすがなし)〔お元気でいられて下さい、我々の王様〕」という歌を詠みながら、御馳走の豆腐二つ、薄い一切れを持って来たらしい。すると、「そうか、モーヤー。御馳走になった、モーヤー。」と王様はおっしゃったらしい。モーイは大変な知恵者だったらしいよ。 |
| 全体の記録時間数 | 1:56 |
| 物語の時間数 | 1:56 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |