火の神の話(シマグチ)

ひのかみのはなし(しまぐち)

概要

かまどはみんな天の火の神だ。どこにもかまどはあるよね。あのかまどの火の神は天と行ったり来たりなさるって。だからこの女というのはかまどをきれいにしないといけないわけだ。このかまどというのはお飾りが、かならずかまどの所にあるが、あれは、恐いもんだよ。私の親戚に久良波の仲本という家があるが、そこでの話だよ。この仲本のお婆さんは比屋根家の娘だから、ここによくいらしたんだ。その時のこのお婆さんの話だよ。仲本家の下女が、かまどをつつきながら、ぶつぶつ文句を言ったらしいんだ。それをかまどの神がお聞きになっていたわけだね。この神は、天にお昇りになるからこのことを報告したわけだ。そして、しばらくしてから、そこの仲本家の主人がね、主人が、山田で酒をお飲みになって、帰っていらっしゃる時に、仲本の家に行くときは、川を渡っていくから、この人の家にはね。今はそうではないが昔はそうだった。川を渡って行っていくから、その川にきれいな女がそこに立っていたらしい。「どうしたんだ。そこはこの深さしかありませんよ。どうして、あなたはここからいらっしゃらないんですか。」と仲本の主人が聞くと、「私はここから川を越えることができないから、私をおぶって川を越えさせてちょうだい。」と女が頼んだんだね。そこで主人が、「よろしいですよ。」と言って、女をおぶって川を越えさせてやると、この女の人は、渡してあげた人の家に入りこんでいったらしい。この渡してあげた人の家に入りこんでいったので、「あれまあ、この人は、私の家の中に入っていくが。」「これは不思議だなあ。」と思ったそうだ。やがて主人は家に戻ると、一番座でこの女の人と二人、向かいあって座ったって。この女の人はもう本当の人間とみられているもんだから。女の人が、「今日はあなたの家に、天からのお使いで『必ずやってこい』と言われて私は来ている。その使いというのはあなたの家、あなたの家庭を『焼いてこい』ということなんだ。」と言うと、この主人は、「ああ、あなたは何てことを言うんですか。この家を焼けという道理がありますか。この家を焼けという道理はとおりませんよ。」と答えた。「でも私は天の言うことを、きいて来ているんた。あんたには私は人に見えるだろうがそうじゃない。私は全身火なんだよ。全身火なんだ私は。だから、私が家を焼こうというんだから仕方ないだろう。」と言うので、主人は、「いや、焼かさない。みすみす家を焼かせてはならん。それじゃあ、今からはかまどの火の扱いを女中に慎ませますから。立派に教えて慎ませますから、家を焼くことだけは見逃してください。」と頼んだ。すると女は、「うーん、あなたは心もちが立派だから、一応見逃がしてやる。見逃すから、明日は、あなたの家の前の広っぱに、葉殻の家を急いで作りなさい。」と言ったらしい。そして、「時間になったら、その家に火をつけて、すぐに『ホーハイ』と叫びなさいよ。」と言いつけたので、主人は、「はい、はい。」とうなずいてそのとおりにしたそうすると、この火魂(ひーだま)はね、あの女は火魂だからね、焼いた証拠を是非持って行くと言って、かまどの中に入っていったらしいが、かまどからおき火を取るとすぐ、プーチャー、プーチャーと吹いて天に昇ったって。それで家を焼かれるのも逃れたんだ。だから、火の神は女がかまどの前で、火をつついて文句を言うのを嫌うっていうことだ。かまどはそういうことをお聞きになっているということだ。


再生時間:5:33

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民話詳細DATA

レコード番号 47O375162
CD番号 47O37C207
決定題名 火の神の話(シマグチ)
話者がつけた題名 火の神の話
話者名 荻堂盛仁
話者名かな おぎどうせいじん
生年月日 18930702
性別
出身地 沖縄県恩納村太田
記録日 19760227
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 恩納村T07A05
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 12
発句(ほっく)
伝承事情 首里の玉城殿内のお爺が話し好きで昔話をよく聞かせてくれた。
文字化資料 『恩納村の民話 昔話編』P38
キーワード かまど,天の火の神,下女,川を渡る,美女,天からのお使い,焼いてこい,ホーハイ,プーチャー
梗概(こうがい) かまどはみんな天の火の神だ。どこにもかまどはあるよね。あのかまどの火の神は天と行ったり来たりなさるって。だからこの女というのはかまどをきれいにしないといけないわけだ。このかまどというのはお飾りが、かならずかまどの所にあるが、あれは、恐いもんだよ。私の親戚に久良波の仲本という家があるが、そこでの話だよ。この仲本のお婆さんは比屋根家の娘だから、ここによくいらしたんだ。その時のこのお婆さんの話だよ。仲本家の下女が、かまどをつつきながら、ぶつぶつ文句を言ったらしいんだ。それをかまどの神がお聞きになっていたわけだね。この神は、天にお昇りになるからこのことを報告したわけだ。そして、しばらくしてから、そこの仲本家の主人がね、主人が、山田で酒をお飲みになって、帰っていらっしゃる時に、仲本の家に行くときは、川を渡っていくから、この人の家にはね。今はそうではないが昔はそうだった。川を渡って行っていくから、その川にきれいな女がそこに立っていたらしい。「どうしたんだ。そこはこの深さしかありませんよ。どうして、あなたはここからいらっしゃらないんですか。」と仲本の主人が聞くと、「私はここから川を越えることができないから、私をおぶって川を越えさせてちょうだい。」と女が頼んだんだね。そこで主人が、「よろしいですよ。」と言って、女をおぶって川を越えさせてやると、この女の人は、渡してあげた人の家に入りこんでいったらしい。この渡してあげた人の家に入りこんでいったので、「あれまあ、この人は、私の家の中に入っていくが。」「これは不思議だなあ。」と思ったそうだ。やがて主人は家に戻ると、一番座でこの女の人と二人、向かいあって座ったって。この女の人はもう本当の人間とみられているもんだから。女の人が、「今日はあなたの家に、天からのお使いで『必ずやってこい』と言われて私は来ている。その使いというのはあなたの家、あなたの家庭を『焼いてこい』ということなんだ。」と言うと、この主人は、「ああ、あなたは何てことを言うんですか。この家を焼けという道理がありますか。この家を焼けという道理はとおりませんよ。」と答えた。「でも私は天の言うことを、きいて来ているんた。あんたには私は人に見えるだろうがそうじゃない。私は全身火なんだよ。全身火なんだ私は。だから、私が家を焼こうというんだから仕方ないだろう。」と言うので、主人は、「いや、焼かさない。みすみす家を焼かせてはならん。それじゃあ、今からはかまどの火の扱いを女中に慎ませますから。立派に教えて慎ませますから、家を焼くことだけは見逃してください。」と頼んだ。すると女は、「うーん、あなたは心もちが立派だから、一応見逃がしてやる。見逃すから、明日は、あなたの家の前の広っぱに、葉殻の家を急いで作りなさい。」と言ったらしい。そして、「時間になったら、その家に火をつけて、すぐに『ホーハイ』と叫びなさいよ。」と言いつけたので、主人は、「はい、はい。」とうなずいてそのとおりにしたそうすると、この火魂(ひーだま)はね、あの女は火魂だからね、焼いた証拠を是非持って行くと言って、かまどの中に入っていったらしいが、かまどからおき火を取るとすぐ、プーチャー、プーチャーと吹いて天に昇ったって。それで家を焼かれるのも逃れたんだ。だから、火の神は女がかまどの前で、火をつついて文句を言うのを嫌うっていうことだ。かまどはそういうことをお聞きになっているということだ。
全体の記録時間数 5:33
物語の時間数 5:33
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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