
あのね、この話の村も私が知っているよ。その村でのことなんだよ。打紙の由来記は。 隣近所同士だがね。貧乏人は仏壇に供え物はなくても、「紙とお線香が減るだけだ。打紙はたくさん供えなさい。」といって、先祖にたくさん供えた。金持ちはまた、打紙はたったの三枚だけ供えて、何もしなかったらしい。それで、後生にいる貧乏人の先祖は金持ちになった。子や孫がみんなで打紙とお線香を供えたので金持ちになった。また金持ちは、たった三枚だけ供えてそれですませた。何にもしなかった。この金持らは。与那からここに来る道中にこの話に出てくる畑があるんだが。この話は、私たちは、青年になってから聞いているんだがね。私の友だちが馬を買いに行こうとしたら、「仲宗根の兄さんを連れて行かないと買うことができない。」ということになって、その兄さんを連れて行って、その話に出てくる畑の前まで来た。そこで仲宗根の兄さんが、「お前たちは、この畑の話を知っているか。」と聞いたらしい。(それで)、「わかりませんよ。私たちはあんな遠くから来ているのに、わかりませんよ。」と言ったらしい。この畑は三百坪あって、周囲にい草が植えられているわけだ。田んぼに。まん中は作物が植えられてね。その畑を前にこの話を聞いたわけだ。それで、この金持ちの先祖は、後生で貧乏になったので、貧乏人の先祖に、「この畑を買ってくれ。」と言うと、(貧乏人の先祖は)、「後生の者同士の売り買いは意味がないですよ。」と断わった。それでも金持ちの先祖が「売り買いはできる。現世と同じようにできるから買ってくれ。」と言うので、貧乏人の先祖は驚いて本気になれなかったが、とうとう畑を買った。そこで、貧乏人の先祖は、現世の子孫に、「あの土地は、私が買ったから、取って使え。」と告げたが、子孫は、「そういうことは道理がとおらない。」と言って金持ちから土地を取らなかった。また、後生にいる金持ちの先祖は、子孫に、「土地は売ったから、貧乏人に渡しなさい。」と告げたらしいんだ。そこで、現世の金持ちと貧乏人は「後生で土地を売った買ったと言っているから、こうなったら、二人で易者のところへ行って占ってもらわんと立派に土地を分けることができない。」と言って出かけた。行くとすぐ、易者ははっきりさせた。金持ちに、「もう、あの土地は取返せない。売ってあるから。三十五万円で(先祖が)売ったんだから。土地は、もう、貧乏人の家のものだから、あなたたちは使っていけないよ。」と易者が占いを出すと、金持ちは、「ああ、これはほんとうかなあ。」と思ったが、両方ともとなり近所なので相談した。金持ちは、「もう、しかたない。もう、ご先祖の言いつけどおりにしよう、たたりがあると、大変だ。」と言って、貧乏人に、「それじゃ、お前たちの土地だ。」と話した。ところが、それでも貧乏人は、土地を自分のものにしなかった。それで、また貧乏人の先祖は、子孫に、「土地は買ってあるから、取って使いなさいと言うのに。」と告げた。それでも貧乏人は、「まちがいないですか。」とお線香を焚いてお伺いをたてたら、「まちがいなく買った。」ということだった。それで、この三百坪の土地は、子孫の供えた紙銭で後生の先祖が買ったので、打紙をたくさん供えた貧乏人は金持ちになって、三枚しか供えなかった金持ちは貧乏になった。この紙銭で富を手離したのは、後生の金持ちということだ。後生の金持ち。それから、この金持ちは、「こういうことだったら、もう悪いことはできない。これからは互いに、親子同様につき合おう。」と言って、貧乏人と二人、約束した。ところで、この貧乏人と金持ちの墓はくっついてあったらしいよ。それで金持ちは、「あなたたちの後生の先祖は、金持ちになって大きくなっているから、私がそれに合うような墓を作ってやるよ。」「私たちの墓と同じように作ってやるよ。」と言って、作ってあげた。そしてお互いに、婿取りや嫁取りまでいっしょにするようになった。それで今では、また同じように両方とも金持ちになっているそうだ。今では。
| レコード番号 | 47O375160 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C207 |
| 決定題名 | 後生貧乏(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | グソーセーキ |
| 話者名 | 荻堂盛仁 |
| 話者名かな | おぎどうせいじん |
| 生年月日 | 18930702 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県恩納村太田 |
| 記録日 | 19760227 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 恩納村T07A03 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 20 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | 首里の玉城殿内のお爺が話し好きで昔話をよく聞かせてくれた。 |
| 文字化資料 | 『恩納村の民話 伝説編』P53 |
| キーワード | 打紙の由来記,貧乏人,仏壇に供え物,紙とお線香,金持ち, |
| 梗概(こうがい) | あのね、この話の村も私が知っているよ。その村でのことなんだよ。打紙の由来記は。 隣近所同士だがね。貧乏人は仏壇に供え物はなくても、「紙とお線香が減るだけだ。打紙はたくさん供えなさい。」といって、先祖にたくさん供えた。金持ちはまた、打紙はたったの三枚だけ供えて、何もしなかったらしい。それで、後生にいる貧乏人の先祖は金持ちになった。子や孫がみんなで打紙とお線香を供えたので金持ちになった。また金持ちは、たった三枚だけ供えてそれですませた。何にもしなかった。この金持らは。与那からここに来る道中にこの話に出てくる畑があるんだが。この話は、私たちは、青年になってから聞いているんだがね。私の友だちが馬を買いに行こうとしたら、「仲宗根の兄さんを連れて行かないと買うことができない。」ということになって、その兄さんを連れて行って、その話に出てくる畑の前まで来た。そこで仲宗根の兄さんが、「お前たちは、この畑の話を知っているか。」と聞いたらしい。(それで)、「わかりませんよ。私たちはあんな遠くから来ているのに、わかりませんよ。」と言ったらしい。この畑は三百坪あって、周囲にい草が植えられているわけだ。田んぼに。まん中は作物が植えられてね。その畑を前にこの話を聞いたわけだ。それで、この金持ちの先祖は、後生で貧乏になったので、貧乏人の先祖に、「この畑を買ってくれ。」と言うと、(貧乏人の先祖は)、「後生の者同士の売り買いは意味がないですよ。」と断わった。それでも金持ちの先祖が「売り買いはできる。現世と同じようにできるから買ってくれ。」と言うので、貧乏人の先祖は驚いて本気になれなかったが、とうとう畑を買った。そこで、貧乏人の先祖は、現世の子孫に、「あの土地は、私が買ったから、取って使え。」と告げたが、子孫は、「そういうことは道理がとおらない。」と言って金持ちから土地を取らなかった。また、後生にいる金持ちの先祖は、子孫に、「土地は売ったから、貧乏人に渡しなさい。」と告げたらしいんだ。そこで、現世の金持ちと貧乏人は「後生で土地を売った買ったと言っているから、こうなったら、二人で易者のところへ行って占ってもらわんと立派に土地を分けることができない。」と言って出かけた。行くとすぐ、易者ははっきりさせた。金持ちに、「もう、あの土地は取返せない。売ってあるから。三十五万円で(先祖が)売ったんだから。土地は、もう、貧乏人の家のものだから、あなたたちは使っていけないよ。」と易者が占いを出すと、金持ちは、「ああ、これはほんとうかなあ。」と思ったが、両方ともとなり近所なので相談した。金持ちは、「もう、しかたない。もう、ご先祖の言いつけどおりにしよう、たたりがあると、大変だ。」と言って、貧乏人に、「それじゃ、お前たちの土地だ。」と話した。ところが、それでも貧乏人は、土地を自分のものにしなかった。それで、また貧乏人の先祖は、子孫に、「土地は買ってあるから、取って使いなさいと言うのに。」と告げた。それでも貧乏人は、「まちがいないですか。」とお線香を焚いてお伺いをたてたら、「まちがいなく買った。」ということだった。それで、この三百坪の土地は、子孫の供えた紙銭で後生の先祖が買ったので、打紙をたくさん供えた貧乏人は金持ちになって、三枚しか供えなかった金持ちは貧乏になった。この紙銭で富を手離したのは、後生の金持ちということだ。後生の金持ち。それから、この金持ちは、「こういうことだったら、もう悪いことはできない。これからは互いに、親子同様につき合おう。」と言って、貧乏人と二人、約束した。ところで、この貧乏人と金持ちの墓はくっついてあったらしいよ。それで金持ちは、「あなたたちの後生の先祖は、金持ちになって大きくなっているから、私がそれに合うような墓を作ってやるよ。」「私たちの墓と同じように作ってやるよ。」と言って、作ってあげた。そしてお互いに、婿取りや嫁取りまでいっしょにするようになった。それで今では、また同じように両方とも金持ちになっているそうだ。今では。 |
| 全体の記録時間数 | 6:24 |
| 物語の時間数 | 6:24 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | 〇 |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |