アガリパトルマ若按司(方言)

あがりぱとるまわかあじ

概要

アガリパトルマバカーズとフムカジという夫婦がいた。二人は村一番の仲の良い夫婦で、バカーズは戦の名人だった。ある日、パカーズは戦に発つ前に、妻のフムカジに、「仏壇の皿の水が濁ったら私は死んだものと思いなさい。濁らなければ元気に帰ってくる」と言い残す。フムカジは毎日、皿の水を見ていたが、ある日、それが濁っているのを見て、夫は死んだものと思い、自分も首を吊って死んだ。ところが、その皿の濁りは、神様が二人の心を試すために、赤髪の子供に化けて現れた時、バカーズがその子を斬ろうとして、過って自分の足を切ってしまったためだった。バカーズは勝ち戦で家に帰るが、妻が死んだことを知って驚き、隣の巫女に相談する。すると巫女は、「一走りで一里を駆ける馬に乗って走らせなさい。その馬が止まった所に、体からダラダラと汁を垂れているライ病の人がいて、その人が『どこへ行くか』と聞くはずだから、その時お前は、『白い手拭を被った女が行かなかったから』と聞きなさい。するとその人は、『私の体の汁を舐めろ』と言うはずだからそのとおりにしなさい。そうすると教えてくれるはずだ」と言った。バカーズが巫女に言われたとおり馬を走らせて行くと、馬が止まったところに病人がいた。バカーズが「白い手拭を被った女が通らなかったか」と聞くと、「私の体を舐めろ。そうしたら教えよう」と言う。バカーズが体を舐めると、病人は、「お前はよい人間だ。教えてあげよう」と言って、「お前がその馬を走らせて行くと、大きな牛が角を突き合わせて道を塞いでいるだろうから、そこを目を閉じて走り抜けなさい。更に行くと、今度は大きな岩がガパンガパンとぶっつかり合って道を塞いでいるだろうから、そこも目を閉じて突っ走りなさい。更に進むと門の前に大きな桑の木のある家に着く。そこは神の座と言っていろいろな神様がおられる。神々はお経を読んだり、碁を打ったりしておられるから、お前は門の桑の木に馬をつなぎ、家の中に入って神々にあいさつをしながら、絶えず馬の方に気を配っていなさい。馬に桑の葉をやったり、馬の背を撫でる女がいるはずだから、お前はその時飛び出して、その女の人を捕まえ、左内股を掛け倒して馬に乗せ、目を閉じて走らせなさい。馬は家に来て止まるはずだが、連れて来た女は蚊になっているはずだから、それを持って行って、死んでいる妻にくっ付けるとお前の妻は生き返るから」と言う。バカーズは教えられたとおり神の座敷まで行き、神々にあいさつをしながら馬の方に目をやると、女の人が馬に桑の葉をやりながら、「お前も死んでここに来ているのに、ご主人のバカーズの姿は見えないね」と話していた。バカーズは飛び出して、女を捕まえると左内股に倒し、馬に乗せ目を閉じて突っ走り、家に着いた。連れて来た女が蚊になっているので、それを持って行き、死んでいる妻の鼻にくっ付けると、妻は眠りから醒めたように生き返った。それから二人には子供もできて幸せに暮らしたそうだ。

再生時間:5:30

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民話詳細DATA

レコード番号 47O235352
CD番号 47O23C283
決定題名 アガリパトルマ若按司(方言)
話者がつけた題名
話者名 佐和田カニ
話者名かな さわだかに
生年月日 19001211
性別
出身地 伊良部村佐和田
記録日 19750425
記録者の所属組織 沖縄国際大学口承研
元テープ番号 伊良部T36A01
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 12
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 いらぶの民話P45
キーワード アガリパトルマバカーズ,フムカジ,夫婦,村一番の仲の良い夫婦,戦の名人,「仏壇の皿の水,首を吊って死んだ,神様,二人の心を試す,赤髪の子供,隣の巫女,一走りで一里を駆ける馬,るライ病,白い手拭を被った女,体の汁を舐めろ,大きな牛,大きな岩,大きな桑の木,神の座,はお経,碁,左内股,女は蚊,、妻は,生き返った
梗概(こうがい) アガリパトルマバカーズとフムカジという夫婦がいた。二人は村一番の仲の良い夫婦で、バカーズは戦の名人だった。ある日、パカーズは戦に発つ前に、妻のフムカジに、「仏壇の皿の水が濁ったら私は死んだものと思いなさい。濁らなければ元気に帰ってくる」と言い残す。フムカジは毎日、皿の水を見ていたが、ある日、それが濁っているのを見て、夫は死んだものと思い、自分も首を吊って死んだ。ところが、その皿の濁りは、神様が二人の心を試すために、赤髪の子供に化けて現れた時、バカーズがその子を斬ろうとして、過って自分の足を切ってしまったためだった。バカーズは勝ち戦で家に帰るが、妻が死んだことを知って驚き、隣の巫女に相談する。すると巫女は、「一走りで一里を駆ける馬に乗って走らせなさい。その馬が止まった所に、体からダラダラと汁を垂れているライ病の人がいて、その人が『どこへ行くか』と聞くはずだから、その時お前は、『白い手拭を被った女が行かなかったから』と聞きなさい。するとその人は、『私の体の汁を舐めろ』と言うはずだからそのとおりにしなさい。そうすると教えてくれるはずだ」と言った。バカーズが巫女に言われたとおり馬を走らせて行くと、馬が止まったところに病人がいた。バカーズが「白い手拭を被った女が通らなかったか」と聞くと、「私の体を舐めろ。そうしたら教えよう」と言う。バカーズが体を舐めると、病人は、「お前はよい人間だ。教えてあげよう」と言って、「お前がその馬を走らせて行くと、大きな牛が角を突き合わせて道を塞いでいるだろうから、そこを目を閉じて走り抜けなさい。更に行くと、今度は大きな岩がガパンガパンとぶっつかり合って道を塞いでいるだろうから、そこも目を閉じて突っ走りなさい。更に進むと門の前に大きな桑の木のある家に着く。そこは神の座と言っていろいろな神様がおられる。神々はお経を読んだり、碁を打ったりしておられるから、お前は門の桑の木に馬をつなぎ、家の中に入って神々にあいさつをしながら、絶えず馬の方に気を配っていなさい。馬に桑の葉をやったり、馬の背を撫でる女がいるはずだから、お前はその時飛び出して、その女の人を捕まえ、左内股を掛け倒して馬に乗せ、目を閉じて走らせなさい。馬は家に来て止まるはずだが、連れて来た女は蚊になっているはずだから、それを持って行って、死んでいる妻にくっ付けるとお前の妻は生き返るから」と言う。バカーズは教えられたとおり神の座敷まで行き、神々にあいさつをしながら馬の方に目をやると、女の人が馬に桑の葉をやりながら、「お前も死んでここに来ているのに、ご主人のバカーズの姿は見えないね」と話していた。バカーズは飛び出して、女を捕まえると左内股に倒し、馬に乗せ目を閉じて突っ走り、家に着いた。連れて来た女が蚊になっているので、それを持って行き、死んでいる妻の鼻にくっ付けると、妻は眠りから醒めたように生き返った。それから二人には子供もできて幸せに暮らしたそうだ。
全体の記録時間数 7:06
物語の時間数 5:30
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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