里子と養父の心遣(シマグチ)

概要

昔、ある所に子供のない夫婦が住んでいた。夫は温厚で情け深く、人々の信望も厚かったが、子供がなく寂しい思いをしていた。隣村には7人の子供で貧しい家庭があった。子供たちはみんな素直で村中の評判者だったので、子供のない夫婦は何とかして、その中の一人を養子にしたいと考えていた。ある日、夫は勇気を出してその家を訪ね、事情を話して子供を養子に迎えた。養父は養子を連れて家へ帰る途中、ユタのところへ寄って養子の運勢を占ってもらうと、「将来、ある山で鬼の危害を受けて死ぬ運命にある」と出た。養父は、養子の運命を不憫に思い大事に育てた。そのうち、運命の日がやってきた。養父は養子を呼んで、金の入った袋を渡し、「これはお前のために貯えてきたものだ。自由に使うがいい」と言って旅立たせた。養子は泣きながら運命の山を目指して歩き続けたが、その日は山も鬼も見当たらず、日が暮れてしまった。養子が木の下で休んでいると、はるか遠くに小さな灯が見えた。養子はその灯を目当てにとぼとぼと歩き出し、小さな家にたどり着いた。みすぼらしい家の中では、老夫婦が小さな灯の下にうずくまっていた。一夜の宿を頼むと、爺さんは、「狭くて、汚い家だから」と言って断わる。それでも養子が、たった一晩だけ、と重ねて頼むとようやく承諾する。その夜、養子が部屋の片隅で横になっていると、老夫婦が何やら涙声でひそひそ話をしている。養子はがびっくりして飛び起きわけを聞くと、「自分たちは貧しいため、他人からお金を借りて暮らしているが、年寄りで働くこともできず、借金を返す当てもない。明日は貸し主がお金を取りに来る」と爺さんが話した。すると養子は、「心配には及びません。私が全部返してあげるから、安心して休んでください」と言った。翌朝、借金取りがやって来た。老夫婦は震え上がったが、養子は養父からもらったお金で、大金の借金を全額返した。老夫婦は泣きながら両手を合わせた。男の子は老夫婦に事情を話して別れを告げ、その家を後にした。老夫婦は庭に出て養子を見送り、両手を合わせて天地の神、万の神に、男の子の難が救われますようにと祈願した。養子は、自分の運命は詮なきことと諦め、山へたどり着いた。養子がうずくまって鬼の来るのを今か今かと待っていると、向こうから赤鬼、青鬼が角を突き出してやって来た。養子が覚悟を決め、目をつぶって座っていると、鬼たちは養子の周りをぐるっと回り立ち去り、しばらくして息をハーハー吐きながら再び舞い戻ってきた。養子が、今度こそ鬼の餌食になると観念していると、鬼たちはまた2.3回回って静かになった。養子が不思議に思い目を開けると、その中の一つがゆっくりした足取りで近付き、養子にお辞儀をして去って行った。難を逃れた養子が喜んで老夫婦の家へ行くと、老夫婦はそれまで祈り続けていた。養子は老夫婦にお礼を言い、養父母のもとへ帰った。ところが、養父母にはどうしても養子が無事に帰ってきたことが信じられない。仕方なく、養子はまたいつかのユタの家へ行って事情を話すと、ユタは追ってきた養父に、「養父がこの子に尽くしたお陰で、養子の命は助かった」と言い諭す。養父もユタの話でようやく納得し、その後は親子仲睦ましく暮らしたそうだ。

再生時間:8:07

民話詳細DATA

レコード番号 47O234605
CD番号 47O23C240
決定題名 里子と養父の心遣(シマグチ)
話者がつけた題名
話者名 佐和田カニ
話者名かな さわだかに
生年月日 19001210
性別
出身地 伊良部村佐和田
記録日 19760325
記録者の所属組織 沖縄国際大学口承研
元テープ番号 伊良部T01A05
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 12
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 伊良部郷土誌P231
キーワード 子供のない夫婦,夫は温厚で情け深い,信望も厚かった,隣村,7人の子供,貧しい家庭,一人を養子,ユタ,養子の運勢,山で鬼の危害,死ぬ運命,金の入った袋,旅立たせた,木の下,小さな灯,みすぼらしい家の中,老夫婦,借金を返す当てもない,天地の神,万の神,男の子の難が救われますよう,赤鬼,青鬼,鬼の餌食
梗概(こうがい) 昔、ある所に子供のない夫婦が住んでいた。夫は温厚で情け深く、人々の信望も厚かったが、子供がなく寂しい思いをしていた。隣村には7人の子供で貧しい家庭があった。子供たちはみんな素直で村中の評判者だったので、子供のない夫婦は何とかして、その中の一人を養子にしたいと考えていた。ある日、夫は勇気を出してその家を訪ね、事情を話して子供を養子に迎えた。養父は養子を連れて家へ帰る途中、ユタのところへ寄って養子の運勢を占ってもらうと、「将来、ある山で鬼の危害を受けて死ぬ運命にある」と出た。養父は、養子の運命を不憫に思い大事に育てた。そのうち、運命の日がやってきた。養父は養子を呼んで、金の入った袋を渡し、「これはお前のために貯えてきたものだ。自由に使うがいい」と言って旅立たせた。養子は泣きながら運命の山を目指して歩き続けたが、その日は山も鬼も見当たらず、日が暮れてしまった。養子が木の下で休んでいると、はるか遠くに小さな灯が見えた。養子はその灯を目当てにとぼとぼと歩き出し、小さな家にたどり着いた。みすぼらしい家の中では、老夫婦が小さな灯の下にうずくまっていた。一夜の宿を頼むと、爺さんは、「狭くて、汚い家だから」と言って断わる。それでも養子が、たった一晩だけ、と重ねて頼むとようやく承諾する。その夜、養子が部屋の片隅で横になっていると、老夫婦が何やら涙声でひそひそ話をしている。養子はがびっくりして飛び起きわけを聞くと、「自分たちは貧しいため、他人からお金を借りて暮らしているが、年寄りで働くこともできず、借金を返す当てもない。明日は貸し主がお金を取りに来る」と爺さんが話した。すると養子は、「心配には及びません。私が全部返してあげるから、安心して休んでください」と言った。翌朝、借金取りがやって来た。老夫婦は震え上がったが、養子は養父からもらったお金で、大金の借金を全額返した。老夫婦は泣きながら両手を合わせた。男の子は老夫婦に事情を話して別れを告げ、その家を後にした。老夫婦は庭に出て養子を見送り、両手を合わせて天地の神、万の神に、男の子の難が救われますようにと祈願した。養子は、自分の運命は詮なきことと諦め、山へたどり着いた。養子がうずくまって鬼の来るのを今か今かと待っていると、向こうから赤鬼、青鬼が角を突き出してやって来た。養子が覚悟を決め、目をつぶって座っていると、鬼たちは養子の周りをぐるっと回り立ち去り、しばらくして息をハーハー吐きながら再び舞い戻ってきた。養子が、今度こそ鬼の餌食になると観念していると、鬼たちはまた2.3回回って静かになった。養子が不思議に思い目を開けると、その中の一つがゆっくりした足取りで近付き、養子にお辞儀をして去って行った。難を逃れた養子が喜んで老夫婦の家へ行くと、老夫婦はそれまで祈り続けていた。養子は老夫婦にお礼を言い、養父母のもとへ帰った。ところが、養父母にはどうしても養子が無事に帰ってきたことが信じられない。仕方なく、養子はまたいつかのユタの家へ行って事情を話すと、ユタは追ってきた養父に、「養父がこの子に尽くしたお陰で、養子の命は助かった」と言い諭す。養父もユタの話でようやく納得し、その後は親子仲睦ましく暮らしたそうだ。
全体の記録時間数 8:29
物語の時間数 8:07
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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