
この波照間では、魚を取るのに夜待網(ゆうまつあん)というのをやっているさ。夜待網(ゆうまつあん)というのは、夜潮がこう満ちてる時にね、つこう海のちょっと深みのイノウという溝に、網を立てるわけ。そして、翌朝、ちょっと明るみが出る潮が引く時分を待って魚を捕るから、夜待網(ゆうまつあん)と言うんですよ。潮が引くときには、この網を立てて置いたら網から潮はどんどん引いていく。しかし、魚は外に出られないから着物付けていても魚は捕れる。昔の出来事なんだがね、ある漁師がですね、その夜待網(ゆうまつあん)を仕掛けておいたらしいんですよ。そうするとザンと言われる人魚の食べる海草は大海には無くて浅瀬に来ないとその海草は食べられんから、人魚というのは、どうしても満潮のときに海草のある浅瀬に来て餌を食べて干潮の前にまた大海に戻るわけさ。そのとき、その漁師の夜待網(ゆうまつあん)に、子連れのザンが入ってきて海草を食べていたが、干潮になると子どもは小さいから網の下を潜って逃げたらしいが、親はどうも身動きも出来なくて、網から出られなかったんだよ。そうして漁師が夜待網(ゆうまつあん)を揚げに来たら、その捕りにきたらね、ザンのお母さんは、子どものことを思い、「自分は人間のお腹に入るんだなあ。」といって涙を流しておったらしいんですよ。だから、この人魚は漁師に、「何とか許してくれ。今私には小さい子どもがおって、その子どもは私を外で待っているから、行っておっぱいを飲ませないと、あれも死んでしまうから、何とか許してくれ。放してくれ。」と言って、何回頼んでもね、「あんたは、魚のうちで一番おいしいものであるから、あんたを捕っても私達はあんたを食べられない。あんたを食べる人は王様だけです。普通の魚は普通の人間のお腹に入るが、あんたは偉い人のお腹に入るから、いいんじゃないか。」と勧めたというが、「いや、しかし自分は子どもがかわいそうだから、何とか生きないと子ども育たないから何とか許してくれ。」と言って頭を何べん下げても、やっぱし漁師は、「人魚はおいしいというから出来ない。」と断ったらしい。そうすると人魚は、「じゃ、条件がある。あんた達を助ける方法がある。もし私が言わなければ、あんた達は、みんな津波にさらわれる。私を助けるなら、津波がいつ来るか教える。」と言うたらしいですよ。そうするとその漁師は、「これが本当なから津波はいつ来るか分からん。こうなると本当大変だな。しかし、この人魚は何日の日に来る分かるというんだから、それを知るためには、これを放さないと聞かさんというわけだな。」と思ったわけなんだな。もし、ザンの言葉通り津波が来たら、この波照間の部落はみんな海端の浜の上にあって、津波にこの引っ張られたらお終いだから、この一匹は逃がしても知った方がいいと判断してそのザンに、「それじゃ、放してやるから聞かしてくれ。」と約束したらしいですよ。そうすると、ザンは、「そう長らくはない。すぐ明日に津波は来るから、今日ここの草を食べて明日はずっと沖に行かないと自分らも危ないから、自分らもこの津波に耐えられるように腹一杯食べに来たんだ。だから、あんたもすぐに帰って、村の人に津波が来ると知らせて、津波の来ない高台に避難させなさい。」と言うたらしいさ。うするとその漁師と明日ということなんだから、手早く網も魚も捕って行って住民に知らせたらしいですよ。するとその知らせを聞いた人は、家の道具やら荷物を高台に運んで避難したらしいですよ。しかし、中には聞いても信じない人もいて、「そんな人魚が何が分かるか。騙されておるんだ。」と言って、避難しなかったらしい。そうすると人魚が言うたとうりに、翌日になると津波が来て、部落をみんな襲ったらしいですよ。だから高台に行った人は助かって、信じないで、反対した人はみんな流されたという話がある。とにかく津波というのは、ありがちなものであるから、全く無いということではないが、この話は、この島であったかもしらん、また別な島の話かもしらん。はっきりどの島ということは分からん。
| レコード番号 | 47O201479 |
|---|---|
| CD番号 | 47O20C077 |
| 決定題名 | 人魚と津波(共通語) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 勝連文雄 |
| 話者名かな | かつれんふみお |
| 生年月日 | 19170518 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県八重山郡竹富町波照間 |
| 記録日 | 19971122 |
| 記録者の所属組織 | 竹富町口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 捜索中 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 20 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | - |
| キーワード | ユウアツアン(夜待つ網) |
| 梗概(こうがい) | この波照間では、魚を取るのに夜待網(ゆうまつあん)というのをやっているさ。夜待網(ゆうまつあん)というのは、夜潮がこう満ちてる時にね、つこう海のちょっと深みのイノウという溝に、網を立てるわけ。そして、翌朝、ちょっと明るみが出る潮が引く時分を待って魚を捕るから、夜待網(ゆうまつあん)と言うんですよ。潮が引くときには、この網を立てて置いたら網から潮はどんどん引いていく。しかし、魚は外に出られないから着物付けていても魚は捕れる。昔の出来事なんだがね、ある漁師がですね、その夜待網(ゆうまつあん)を仕掛けておいたらしいんですよ。そうするとザンと言われる人魚の食べる海草は大海には無くて浅瀬に来ないとその海草は食べられんから、人魚というのは、どうしても満潮のときに海草のある浅瀬に来て餌を食べて干潮の前にまた大海に戻るわけさ。そのとき、その漁師の夜待網(ゆうまつあん)に、子連れのザンが入ってきて海草を食べていたが、干潮になると子どもは小さいから網の下を潜って逃げたらしいが、親はどうも身動きも出来なくて、網から出られなかったんだよ。そうして漁師が夜待網(ゆうまつあん)を揚げに来たら、その捕りにきたらね、ザンのお母さんは、子どものことを思い、「自分は人間のお腹に入るんだなあ。」といって涙を流しておったらしいんですよ。だから、この人魚は漁師に、「何とか許してくれ。今私には小さい子どもがおって、その子どもは私を外で待っているから、行っておっぱいを飲ませないと、あれも死んでしまうから、何とか許してくれ。放してくれ。」と言って、何回頼んでもね、「あんたは、魚のうちで一番おいしいものであるから、あんたを捕っても私達はあんたを食べられない。あんたを食べる人は王様だけです。普通の魚は普通の人間のお腹に入るが、あんたは偉い人のお腹に入るから、いいんじゃないか。」と勧めたというが、「いや、しかし自分は子どもがかわいそうだから、何とか生きないと子ども育たないから何とか許してくれ。」と言って頭を何べん下げても、やっぱし漁師は、「人魚はおいしいというから出来ない。」と断ったらしい。そうすると人魚は、「じゃ、条件がある。あんた達を助ける方法がある。もし私が言わなければ、あんた達は、みんな津波にさらわれる。私を助けるなら、津波がいつ来るか教える。」と言うたらしいですよ。そうするとその漁師は、「これが本当なから津波はいつ来るか分からん。こうなると本当大変だな。しかし、この人魚は何日の日に来る分かるというんだから、それを知るためには、これを放さないと聞かさんというわけだな。」と思ったわけなんだな。もし、ザンの言葉通り津波が来たら、この波照間の部落はみんな海端の浜の上にあって、津波にこの引っ張られたらお終いだから、この一匹は逃がしても知った方がいいと判断してそのザンに、「それじゃ、放してやるから聞かしてくれ。」と約束したらしいですよ。そうすると、ザンは、「そう長らくはない。すぐ明日に津波は来るから、今日ここの草を食べて明日はずっと沖に行かないと自分らも危ないから、自分らもこの津波に耐えられるように腹一杯食べに来たんだ。だから、あんたもすぐに帰って、村の人に津波が来ると知らせて、津波の来ない高台に避難させなさい。」と言うたらしいさ。うするとその漁師と明日ということなんだから、手早く網も魚も捕って行って住民に知らせたらしいですよ。するとその知らせを聞いた人は、家の道具やら荷物を高台に運んで避難したらしいですよ。しかし、中には聞いても信じない人もいて、「そんな人魚が何が分かるか。騙されておるんだ。」と言って、避難しなかったらしい。そうすると人魚が言うたとうりに、翌日になると津波が来て、部落をみんな襲ったらしいですよ。だから高台に行った人は助かって、信じないで、反対した人はみんな流されたという話がある。とにかく津波というのは、ありがちなものであるから、全く無いということではないが、この話は、この島であったかもしらん、また別な島の話かもしらん。はっきりどの島ということは分からん。 |
| 全体の記録時間数 | 0:00 |
| 物語の時間数 | 0:00 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | × |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |