
唐の国に夫は早く亡くなり母親が一人娘を育てている家があった。母親は娘を大事にしていたので、外に出さずにこっそりと育てているうちに、娘はとうとう二十あまりになった。しかし外には出さないので、娘は結婚できなかった。昔唐の国では、坊主さんに自分の子供の運を見てもらうので、母親は坊さんの所へ娘を連れて行って、「自分はこんな娘がいるけれど、世間の人はまだこの子がいるのを知りません。今日初めて外に連れて来たので、この娘はどこの嫁に行けるか占って下さい。」と言と、坊さんはその娘を見て娘があんまりきれいなので、昔の坊さんは妻は貰えないのに欲が出て、その娘を自分の妻にしようと考えたそうだ。「ああ、この女はきれいだが、あと十日くらいの命だ。その後は死んでしまう。」と言った。お母さんは、「この子に命を懸けて育てて来たのに、この子が死んだら私はどうしよう。」と思って、「なんとか助からないでしょうか。」と言うと、その坊さんは、「この子をわしにくれたら、わしがすぐお経をあげてね、命が続くようにするからわしにくれんか。」と言った。「そうですか。あんたが生かしてくれるなら、この子を死なすよりはその方がいい。それに決めます。」と言って、日を調べて七日目にお祝いすることに決めたので、お母さんは家に帰ってきた。七日目になったとき、この坊さんから、「こっちから中が人に見えない箱を作ってあんたの家に二人で持たして送るから、その中に娘を入れておきなさい。」と言ってきた。お母さんは、「はい。」と言っていると、坊主さんは、力の強い者二人にご馳走を作って食べさせ、酒も飲ませて、「たくさんのお金をやるから、この箱を女の家まで担いで行って、女を連れて来てくれ。疲れたらこの酒を飲んで元気を出して連れて来い。」と頼んでね、酒を一升持たせて箱を担がせて行かせた。この二人は正直に娘の家に行って、その家の女の子を箱の中に入れて担いで来た。村を越えて道の半分まで来たとき、一升持たせてもらった酒を思い出して、「さあ、少し酒でも飲んでまた元気を出して行こうなあ。」と飲んだら、酒がおいしいから二人で一緒に飲んでいるうちにとうとう二人とも酔いつぶれて、「少し眠ってから行こうか。」とそこに眠っていた。二人がぐっすり眠っている間に家来を連れた若い侍がやって来て箱があったから珍しいと思って箱を開けて見たら、りっぱな娘が中にいたから、この侍が、「この娘を外に出せ。」と言って、そこに子牛が寝ていたから、その子牛の綱を引いて箱の中に入れ蓋をして置いて、その娘はこの侍が連れて行った。箱を担いでいた二人はそんなこと分からないで起きて、「ああ、よく寝たから坊さんの家へ早く持って行って、ご馳走を食べて酒も飲もう。」とヤアヤアと担ぎ上げて行ったら、坊さんが、「さあ、こちらへ連れて来い。」と言うから二人は担いで家まで入れたと。坊さんは、「ああ、ありがとう、ありがとう。」と二人においしいものをくれ、酒もくれ、お金もくれてお礼して帰してやった。坊さんは夜中になったから、娘といっしょに遊ぼうと考えて、箱を開けてみたら牛が寝ていた。「ええ、牛が入っている。これは許しておけない。」と怒って、牛を外に連れて行って、後ろの木に括っておいた。「明日、お婆さんが来たら許さない。」と怒っているうちに次の日の朝になったから、お母さんは、「咋日(きのう)は行かしたけれども、どうしているだろうか。」と心配して嫁入り道具を持ってお寺に来たら、坊主は、「人を騙して。あれは人間じゃない。」と頭から怒るだろ。お母さんはぜんぜん何も分からないから、「はい、私は娘を箱に入れてやりました。」と言うと、「いえ、そうじゃない。箱には牛を入れておいたじゃないか。後ろに牛がいるからあれを連れて行け。」と言った。お母さんは坊さんが何を言っているのか分からないが寺の後ろを見たら子牛がおった。だから、「ううん、昨日は自分の娘をほんとうに、この箱に入れて持たしたけど牛になってる。人間は坊さんにくれたら牛になるかなあ。」と思って、「娘が牛になった。」と泣いていると、坊主さんも怒って、「こんな牛はあんたの家に連れて行け。」と叱ったから、お母さんは、「坊さんにくれたから牛になったのかねえ。坊さんにくれなかったらよかったのに、これは仕方がない。」と泣いて子牛を連れて帰って来て、水浴びをさせたり、夜になったら毛布もかぶせてやったりして子牛を可愛がっていた。お母さんは、一晩は考えてね、これは芝居に連れて行って、たくさんの人を見せたら、もともと人間だから、人間になるだろうと思ってね、この子牛を芝居を見せに連れて行った。その娘は、いっしょに侍の家に行って侍の妻になってるから上等になって、二人で芝居を見に行って、二階で見ていた。一方、お母さんは牛を連れてね、人の中に牛を出して坐って、「さあ見なさい、さあ見なさい。」と牛と話をしていたと。その姿を見て娘は、「この牛をつかまえている人はね、自分のお母さんだよ。あんたはあの牛を箱の中に入れたから坊さんの家から連れ戻されて来てるはずだよ。」と言ったから、侍は笑ったって。そして、この二人は、「さあ行って、お母さんを連れて来てやろう。」と二人とも下に行ったら、お母さんは自分の娘が侍の妻になってるから、娘が、「お母さん、お母さん。」と言っても上等の着物を着てるから自分の娘とは分からない。「いやあ、私はあんたは分からん。」と言うから、娘が、「この牛はね、私の箱の中に入っていたんでしょう。この人が私を出して、その代わりにこの牛を入れたんですよ。」と言っていたら、侍が、「私の妻にしています。どうぞ結婚を許して下さい。」と言うから、「そうですか、そうですか。それはいいことです。」とそれから二人はお母さんを上の自分達の席に連れて行った。
| レコード番号 | 47O202064 |
|---|---|
| CD番号 | 47O20C110 |
| 決定題名 | 牛の嫁入り(共通語) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 大久真徳 |
| 話者名かな | だいくしんとく |
| 生年月日 | 18941018 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県八重山郡竹富町小浜 |
| 記録日 | 19760805 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄県口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 竹富町字小浜T29A02 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | - |
| キーワード | 僧,侍 |
| 梗概(こうがい) | 唐の国に夫は早く亡くなり母親が一人娘を育てている家があった。母親は娘を大事にしていたので、外に出さずにこっそりと育てているうちに、娘はとうとう二十あまりになった。しかし外には出さないので、娘は結婚できなかった。昔唐の国では、坊主さんに自分の子供の運を見てもらうので、母親は坊さんの所へ娘を連れて行って、「自分はこんな娘がいるけれど、世間の人はまだこの子がいるのを知りません。今日初めて外に連れて来たので、この娘はどこの嫁に行けるか占って下さい。」と言と、坊さんはその娘を見て娘があんまりきれいなので、昔の坊さんは妻は貰えないのに欲が出て、その娘を自分の妻にしようと考えたそうだ。「ああ、この女はきれいだが、あと十日くらいの命だ。その後は死んでしまう。」と言った。お母さんは、「この子に命を懸けて育てて来たのに、この子が死んだら私はどうしよう。」と思って、「なんとか助からないでしょうか。」と言うと、その坊さんは、「この子をわしにくれたら、わしがすぐお経をあげてね、命が続くようにするからわしにくれんか。」と言った。「そうですか。あんたが生かしてくれるなら、この子を死なすよりはその方がいい。それに決めます。」と言って、日を調べて七日目にお祝いすることに決めたので、お母さんは家に帰ってきた。七日目になったとき、この坊さんから、「こっちから中が人に見えない箱を作ってあんたの家に二人で持たして送るから、その中に娘を入れておきなさい。」と言ってきた。お母さんは、「はい。」と言っていると、坊主さんは、力の強い者二人にご馳走を作って食べさせ、酒も飲ませて、「たくさんのお金をやるから、この箱を女の家まで担いで行って、女を連れて来てくれ。疲れたらこの酒を飲んで元気を出して連れて来い。」と頼んでね、酒を一升持たせて箱を担がせて行かせた。この二人は正直に娘の家に行って、その家の女の子を箱の中に入れて担いで来た。村を越えて道の半分まで来たとき、一升持たせてもらった酒を思い出して、「さあ、少し酒でも飲んでまた元気を出して行こうなあ。」と飲んだら、酒がおいしいから二人で一緒に飲んでいるうちにとうとう二人とも酔いつぶれて、「少し眠ってから行こうか。」とそこに眠っていた。二人がぐっすり眠っている間に家来を連れた若い侍がやって来て箱があったから珍しいと思って箱を開けて見たら、りっぱな娘が中にいたから、この侍が、「この娘を外に出せ。」と言って、そこに子牛が寝ていたから、その子牛の綱を引いて箱の中に入れ蓋をして置いて、その娘はこの侍が連れて行った。箱を担いでいた二人はそんなこと分からないで起きて、「ああ、よく寝たから坊さんの家へ早く持って行って、ご馳走を食べて酒も飲もう。」とヤアヤアと担ぎ上げて行ったら、坊さんが、「さあ、こちらへ連れて来い。」と言うから二人は担いで家まで入れたと。坊さんは、「ああ、ありがとう、ありがとう。」と二人においしいものをくれ、酒もくれ、お金もくれてお礼して帰してやった。坊さんは夜中になったから、娘といっしょに遊ぼうと考えて、箱を開けてみたら牛が寝ていた。「ええ、牛が入っている。これは許しておけない。」と怒って、牛を外に連れて行って、後ろの木に括っておいた。「明日、お婆さんが来たら許さない。」と怒っているうちに次の日の朝になったから、お母さんは、「咋日(きのう)は行かしたけれども、どうしているだろうか。」と心配して嫁入り道具を持ってお寺に来たら、坊主は、「人を騙して。あれは人間じゃない。」と頭から怒るだろ。お母さんはぜんぜん何も分からないから、「はい、私は娘を箱に入れてやりました。」と言うと、「いえ、そうじゃない。箱には牛を入れておいたじゃないか。後ろに牛がいるからあれを連れて行け。」と言った。お母さんは坊さんが何を言っているのか分からないが寺の後ろを見たら子牛がおった。だから、「ううん、昨日は自分の娘をほんとうに、この箱に入れて持たしたけど牛になってる。人間は坊さんにくれたら牛になるかなあ。」と思って、「娘が牛になった。」と泣いていると、坊主さんも怒って、「こんな牛はあんたの家に連れて行け。」と叱ったから、お母さんは、「坊さんにくれたから牛になったのかねえ。坊さんにくれなかったらよかったのに、これは仕方がない。」と泣いて子牛を連れて帰って来て、水浴びをさせたり、夜になったら毛布もかぶせてやったりして子牛を可愛がっていた。お母さんは、一晩は考えてね、これは芝居に連れて行って、たくさんの人を見せたら、もともと人間だから、人間になるだろうと思ってね、この子牛を芝居を見せに連れて行った。その娘は、いっしょに侍の家に行って侍の妻になってるから上等になって、二人で芝居を見に行って、二階で見ていた。一方、お母さんは牛を連れてね、人の中に牛を出して坐って、「さあ見なさい、さあ見なさい。」と牛と話をしていたと。その姿を見て娘は、「この牛をつかまえている人はね、自分のお母さんだよ。あんたはあの牛を箱の中に入れたから坊さんの家から連れ戻されて来てるはずだよ。」と言ったから、侍は笑ったって。そして、この二人は、「さあ行って、お母さんを連れて来てやろう。」と二人とも下に行ったら、お母さんは自分の娘が侍の妻になってるから、娘が、「お母さん、お母さん。」と言っても上等の着物を着てるから自分の娘とは分からない。「いやあ、私はあんたは分からん。」と言うから、娘が、「この牛はね、私の箱の中に入っていたんでしょう。この人が私を出して、その代わりにこの牛を入れたんですよ。」と言っていたら、侍が、「私の妻にしています。どうぞ結婚を許して下さい。」と言うから、「そうですか、そうですか。それはいいことです。」とそれから二人はお母さんを上の自分達の席に連れて行った。 |
| 全体の記録時間数 | 14:10 |
| 物語の時間数 | 14:00 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |