
新志花重成(あらしまなーさかなり)いう人は、沖縄の人であって、この島の武佐志(ぶさし)という所に部落を建てておられたけど、向こうは、「飲料水がない、土地もやせておる。こちら付近は将来性がない。」と思って、そこを引き揚げて、今の仲筋部落というところに部落を移して住んでいたら、ある晩のこと、下男に牛の番をさせておったところが、牛が屋敷の外に逃げ出して、その牛がうぶうぶと鳴きながら、足で土とか石とかを投げて上げて丘を作っておったので、その翌日に重成(さかなり)さんは、その丘を見て
、「これはいい丘でできたね。」と思って、その牛がうぶうぶと鳴きながら盛った丘だから、ンブフルと名前付けたそうです。そして、そのンブフルに物見台と作られ、また自分の屋敷にして家を建てて、もう仲筋部落を指導しておられたと伝えています。
そして、旱魃で竹富の字の方に飲料水が十分でないときに、その方は、ある晩、犬を連れて散歩に出たところが、犬が芭蕉の生えた中に入って行ったら一時見えなくなって、その後また出て来たら、その犬が、自分を降り回って、「向こうに水があるよ。」と言わんばかりしているから、「これは珍しいね。」と、この重成さんは犬の後を追って行ったところが、犬は蟹の穴に尾を入れて、尾を濡らして、重成さんの足を濡らしたりしたから、「これは妙なもんだね。こんな旱魃に水があるとは珍しいもんだ。」と言って、そこの土を自分の杖でおこしたところが、そこから水が沢山出て池になっておったので、「ここに必ず飲料水の井戸を掘る。」と言って、井戸を掘ったら、その井戸からは、飲料水に適する一番上等な水が出ておったので、非常に喜んで、十年に一度はみんなその井戸に集まってお祝いをして、犬への感謝として仲筋井戸は犬の形に造ってあったそうです。
しかし、最近になってあの井戸も、底の模様も変わって、今はつぶれてしまって、水を機械で上げるというようになったそうです。それでも、その水はまだいい水であるので、子供の生まれた出産の時は、誕生の日に必ずそこの水を家に持って来て、子供に水を飲ませてから子供を育てるとか、また、正月の元旦の朝は必ず住民はそこから水を持ってきて、手を洗い顔を洗い、お茶を炊いて飲むと若くなるということで、正月の若水に使っております。
・新志花重成(あらしまなーさかなり)‥‥島建て六酋長の一人。仲筋御嶽に祀られる。・武佐志‥‥竹富島南の方の小字名。・ンブフル‥‥竹富島の中央に位置する丘で、牛岡とも言う。夜中に飛び出した牛が、角で土や石を放り上げて一夜のうちに築き上げた丘で、牛がその上で「んぶんぶ」鳴いていたことからこの名がついた。当時の酋長新志花重成(あらしばなさかなり)は、これを見ておおいに喜び、この丘を土台に堅固な城を見張台を築き上げたという。現在は高台として、竹富島内を眺めることが出来る。・芭蕉‥‥バショウ科の多年草。草木。沖縄には繊維を取るリュウキュウバショウ(イトバショウ)はじめ生食用のバナナ(ミバショウ)などがある。高さ二~三メートルで、一、五メートル程の大葉を四方に出す。沖縄で作られるムーチーは月桃の葉で包まれているが、八重山のムーチーは芭蕉の若葉を使って包まれる。人々の最も身近な植物で、生活のなかで様々な用いられ方をしている。
| レコード番号 | 47O200165 |
|---|---|
| CD番号 | 47O20C010 |
| 決定題名 | 新志花重成(共通語) |
| 話者がつけた題名 | 犬井戸 |
| 話者名 | 大山功 |
| 話者名かな | おおさんこう |
| 生年月日 | 18921025 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県八重山郡竹富町字竹富 |
| 記録日 | 19750807 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 竹富町字竹富T39B1 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 20 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 沖国大国文学科平成8年度卒業論文 竹富島の民話 p42 |
| キーワード | 牛,丘,犬,水,子供,正月,若水 |
| 梗概(こうがい) | 新志花重成(あらしまなーさかなり)いう人は、沖縄の人であって、この島の武佐志(ぶさし)という所に部落を建てておられたけど、向こうは、「飲料水がない、土地もやせておる。こちら付近は将来性がない。」と思って、そこを引き揚げて、今の仲筋部落というところに部落を移して住んでいたら、ある晩のこと、下男に牛の番をさせておったところが、牛が屋敷の外に逃げ出して、その牛がうぶうぶと鳴きながら、足で土とか石とかを投げて上げて丘を作っておったので、その翌日に重成(さかなり)さんは、その丘を見て 、「これはいい丘でできたね。」と思って、その牛がうぶうぶと鳴きながら盛った丘だから、ンブフルと名前付けたそうです。そして、そのンブフルに物見台と作られ、また自分の屋敷にして家を建てて、もう仲筋部落を指導しておられたと伝えています。 そして、旱魃で竹富の字の方に飲料水が十分でないときに、その方は、ある晩、犬を連れて散歩に出たところが、犬が芭蕉の生えた中に入って行ったら一時見えなくなって、その後また出て来たら、その犬が、自分を降り回って、「向こうに水があるよ。」と言わんばかりしているから、「これは珍しいね。」と、この重成さんは犬の後を追って行ったところが、犬は蟹の穴に尾を入れて、尾を濡らして、重成さんの足を濡らしたりしたから、「これは妙なもんだね。こんな旱魃に水があるとは珍しいもんだ。」と言って、そこの土を自分の杖でおこしたところが、そこから水が沢山出て池になっておったので、「ここに必ず飲料水の井戸を掘る。」と言って、井戸を掘ったら、その井戸からは、飲料水に適する一番上等な水が出ておったので、非常に喜んで、十年に一度はみんなその井戸に集まってお祝いをして、犬への感謝として仲筋井戸は犬の形に造ってあったそうです。 しかし、最近になってあの井戸も、底の模様も変わって、今はつぶれてしまって、水を機械で上げるというようになったそうです。それでも、その水はまだいい水であるので、子供の生まれた出産の時は、誕生の日に必ずそこの水を家に持って来て、子供に水を飲ませてから子供を育てるとか、また、正月の元旦の朝は必ず住民はそこから水を持ってきて、手を洗い顔を洗い、お茶を炊いて飲むと若くなるということで、正月の若水に使っております。 ・新志花重成(あらしまなーさかなり)‥‥島建て六酋長の一人。仲筋御嶽に祀られる。・武佐志‥‥竹富島南の方の小字名。・ンブフル‥‥竹富島の中央に位置する丘で、牛岡とも言う。夜中に飛び出した牛が、角で土や石を放り上げて一夜のうちに築き上げた丘で、牛がその上で「んぶんぶ」鳴いていたことからこの名がついた。当時の酋長新志花重成(あらしばなさかなり)は、これを見ておおいに喜び、この丘を土台に堅固な城を見張台を築き上げたという。現在は高台として、竹富島内を眺めることが出来る。・芭蕉‥‥バショウ科の多年草。草木。沖縄には繊維を取るリュウキュウバショウ(イトバショウ)はじめ生食用のバナナ(ミバショウ)などがある。高さ二~三メートルで、一、五メートル程の大葉を四方に出す。沖縄で作られるムーチーは月桃の葉で包まれているが、八重山のムーチーは芭蕉の若葉を使って包まれる。人々の最も身近な植物で、生活のなかで様々な用いられ方をしている。 |
| 全体の記録時間数 | 4:53 |
| 物語の時間数 | 4:31 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | △ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |