
私が若いときに、「十五夜の月見ということはどういうことであるか。」と聞きましたところ、爺ちゃん婆ちゃんたちから、こういう話を聞かされたのでございます。昔、ある侍が、もう二人連れで、「今日は十五夜でもあり、いい天気もいいから、共々に遊んできよう。」と出たところがです、もう綺麗な月夜でありますけれども、一人の人の方は、もうちょうど影が写らないそうです。だから、もう影が写らない侍は、「私はちょっと遠慮しましょう。」として、まあ、その付近の村みたようなところに行ったところが、爺さんと婆さんがおったらしいです。それで、その侍は、「こういった立派な月夜でありますけれども、みんなはこの月夜に影は写るけれども、私には、この影がない。これはちょっともう珍しいが、爺ちゃん婆ちゃんは分からないですか。」ということを質問したらしいです。そしたら、この爺ちゃんらは、「死ぬ前になったら、今こっちの人でもね、月夜に影はない。まあ、あなた大変だ。これじゃあ、今晩あなたは天国に行くんじゃないか。」と、こういう事を言われて、「それじゃあどうすればいいか。」「よし、それじゃあね、あなたの身の代わりに、これ以上自分には大切なものはないというぐらいのあなたの一番大切な物をね、なんとかして、これを殺すか、見捨てるか、そういうことやらなければ、もう大変だ。」ということを言われたそうです。
だから、その人は帰りつつ、「もう大変だ。もうどうしても自分の一番大切、自分の新しいのはやはり、奥さんである、だから、まあ奥さんを殺さなければ自分はもう死ぬんだ。」といったようなことを考えて、覚悟をされてですね、もう家に来て門から覗いて見ると、奥さんは立派なまあ、化粧もしてもうちゃあんと夫の帰るものを迎えるよな立場でおったわけさあね。しかし、この奥さんは夫は夫としておりますけれども、早くから本当はこれまでも内緒に、秘密の男をちゃんと持っとったそうですね。そして、その晩は、その秘密の男と、「友達と一緒に出とるから、必ず飲んでが帰って来るから、夫の帰って来たときに夫を殺せば、いつかは二人とも、まあ自由だ。」といったような計画で、「共々に本当の夫をも退治しようね。」とそういう計らいごとをやって、ちゃんと自分の座っている裏にはもう板一つね、壁一つで、こんなにして、男を隠してやっておるところに、もうこの月の影がないお蔭で、付近の小屋にも行って、爺ちゃんからこういうこと聞いて来たから、この侍は帰って来て、とにかく弓の矢を一本ですね、妻に向かってやったところがね、妻も後ろの男も却って不意打ちされてですね、二人とも矢で抜かれた。そうして、侍は、「この月に対するお礼は、感謝をうんとせなければならない。」と言ってですね、この十五夜の月見ということをしたそうです。それから、みんなもこの月見ということをこの侍に見習って、思い切って祝うんだと、年寄り達は、そういう事を話されたのでございます。終わり。
| レコード番号 | 47O200021 |
|---|---|
| CD番号 | 47O20C002 |
| 決定題名 | 十五夜の由来(方言) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 前野長用 |
| 話者名かな | まえのちょうよう |
| 生年月日 | 18920405 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県八重山郡竹富町字竹富 |
| 記録日 | 19760805 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 竹富町字竹富T32A03 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 沖国大国文学科平成8年度卒業論文 竹富島の民話 p74 |
| キーワード | 影,身代わり,弓 |
| 梗概(こうがい) | 私が若いときに、「十五夜の月見ということはどういうことであるか。」と聞きましたところ、爺ちゃん婆ちゃんたちから、こういう話を聞かされたのでございます。昔、ある侍が、もう二人連れで、「今日は十五夜でもあり、いい天気もいいから、共々に遊んできよう。」と出たところがです、もう綺麗な月夜でありますけれども、一人の人の方は、もうちょうど影が写らないそうです。だから、もう影が写らない侍は、「私はちょっと遠慮しましょう。」として、まあ、その付近の村みたようなところに行ったところが、爺さんと婆さんがおったらしいです。それで、その侍は、「こういった立派な月夜でありますけれども、みんなはこの月夜に影は写るけれども、私には、この影がない。これはちょっともう珍しいが、爺ちゃん婆ちゃんは分からないですか。」ということを質問したらしいです。そしたら、この爺ちゃんらは、「死ぬ前になったら、今こっちの人でもね、月夜に影はない。まあ、あなた大変だ。これじゃあ、今晩あなたは天国に行くんじゃないか。」と、こういう事を言われて、「それじゃあどうすればいいか。」「よし、それじゃあね、あなたの身の代わりに、これ以上自分には大切なものはないというぐらいのあなたの一番大切な物をね、なんとかして、これを殺すか、見捨てるか、そういうことやらなければ、もう大変だ。」ということを言われたそうです。 だから、その人は帰りつつ、「もう大変だ。もうどうしても自分の一番大切、自分の新しいのはやはり、奥さんである、だから、まあ奥さんを殺さなければ自分はもう死ぬんだ。」といったようなことを考えて、覚悟をされてですね、もう家に来て門から覗いて見ると、奥さんは立派なまあ、化粧もしてもうちゃあんと夫の帰るものを迎えるよな立場でおったわけさあね。しかし、この奥さんは夫は夫としておりますけれども、早くから本当はこれまでも内緒に、秘密の男をちゃんと持っとったそうですね。そして、その晩は、その秘密の男と、「友達と一緒に出とるから、必ず飲んでが帰って来るから、夫の帰って来たときに夫を殺せば、いつかは二人とも、まあ自由だ。」といったような計画で、「共々に本当の夫をも退治しようね。」とそういう計らいごとをやって、ちゃんと自分の座っている裏にはもう板一つね、壁一つで、こんなにして、男を隠してやっておるところに、もうこの月の影がないお蔭で、付近の小屋にも行って、爺ちゃんからこういうこと聞いて来たから、この侍は帰って来て、とにかく弓の矢を一本ですね、妻に向かってやったところがね、妻も後ろの男も却って不意打ちされてですね、二人とも矢で抜かれた。そうして、侍は、「この月に対するお礼は、感謝をうんとせなければならない。」と言ってですね、この十五夜の月見ということをしたそうです。それから、みんなもこの月見ということをこの侍に見習って、思い切って祝うんだと、年寄り達は、そういう事を話されたのでございます。終わり。 |
| 全体の記録時間数 | 6:38 |
| 物語の時間数 | 6:22 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |